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第一話 ②

 目を開くと見知らぬ場所に寝かされていた。


「ここは……?」


回らない頭でこれまでのことを思い出す。

お父様の怒りを買い、水の渦に飲み込まれたところまでは覚えている。

それで……


すべてを思い出し、わたしはがばっと起き上がった。


わたし、人間界に堕とされちゃったんだ!!


部屋を見回すと、見慣れない布団、家具、天井……。

すべてが本でしか見たことがない、人間独特の物たち。

ぎゅっとほっぺをつねると痛い。


夢じゃ、ないんだ……

わたしは今、本当に一人で人間界にいるんだ。


じわ、と目に涙が浮いてくる。


これからどうすれば……


『お前は今から下界へと赴き、水神として自分の為すべきことをしかとその目で見極めてこい!

それまでは天へ帰ることを許さん!』


お父様の言葉を思い出す。


水神として為すべきこと……


思い出すのは苦い記憶。

小さな頃、わたしは水神として稀代の才能ともてはやされ、甘やかされ、大事に育てられていた。

そう、調子に乗ってしまったのだ。

わたしは取り返しのつかない失敗をおかし、それ以来力は使わないと心に固く誓って今日まで生きてきた。

神力は使えなくなってしまったと、皆に嘘をついて。

ただ、部屋に閉じこもって、何もせずに。


あの時のことを思い出すと、今でも胸が引き裂かれそうに痛む。

ぐっと胸を押さえうずくまったとき、がらりと勢いよく引き戸が開いた。


「あ、起きたか……って、大丈夫か!?」


慌てて駆け寄る男が持っていたお盆から入っていたお茶がこぼれそうになったのを、咄嗟に神力を使い湯呑に戻す。


男の見開かれた目に、やってしまったと悟る。


「おまえ……」


ここは天上ではない、人間の世界だ。

人間にこんな力はない。

どう言い訳しようかと頭をフル回転させるが、言い訳がひとつも浮かばない。


どうしよう……


体中から嫌な汗がふきでる。

でも、男から発せられた言葉は以外なものだった。


「お前、やっぱ神様なのか?

すげーのな。」


「え?」


わたしが神だって知ってる!?


興味津々という感じできらきらした目で見つめてくる男に二の句が継げないでいると、「起きましたか」と空きっぱなしの戸からもう一人の男が顔を覗かせた。


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