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プロローグ

　ここは神々が住まう天上。

　地上に住まう人々は、科学の発展により神に祈ることが激減、または形式的なものになってしまっていた。

　だが天上では今日も粛々と神々が自分の役目を果たすべく、神力を持って地上に恵みをもたらしていた。

　一見平和に見えた天上であったが、ある宮殿では悪魔と見まがう形相の神が、重々しい椅子に座して一人の少女を見下ろしていた。

「お、お父様！お許しください！」

　少女はスカイブルーの大きな目いっぱいに涙を溜めて、震える手で纏う、まるで水をたたえたような衣の裾を握りしめ、父親に懇願した。

「ならん！

雨留（うる）！お前はいまだ神力どころか舞の一つも踊れん。

それだけならまだしも、日がな一日部屋に閉じこもってばかりじゃ。

それもこれも末子だからと甘やかし育てられたからに他ならん。

お前は今から下界へおもむき、水神として自分の為すべきことをしかとその目で見極めてこい。

それまでは天へ帰ることを許さん！」

「そ、そんな……！！」

　あまりのことに顔面に色を無くしてしまった娘の頭上に、父親の右手に携えられていた神杖が容赦なく振り下ろされた。

すると杖からドドドド……という轟音とともに大量の水が渦となってあふれ出て、少女を飲み込み、やがて消えた。

　あとには、水泡がキラキラと神力の残光に反射するばかりであった。