外れスキル《うんち》が広域化して大惨事になったけどハーレムが出来ました
「アルム。お前をギルドから追放する」
ギルドリーダーのダニエルが言った。
あまりにも急な通告にアルムは困惑を隠せなかった。
「どうしてだ。僕はギルドに貢献してきたじゃないか」
「……お前、ギルドに入って2年間で何をしてきた?」
加入したのが丁度2年前、16歳になって間もない頃だった。
ギルドでやることといえば各自がスキルで貢献することだ。
「僕のスキルは《うんち》だ。だから2年間毎日うんちしてきた」
「そうだよなあ。で、場所は?」
「主にトイレだね。僕の記憶が正しければ91%だ」
「でもって残り9%が会議室や作業場だ。それも狙ったように窓のない換気の悪い部屋」
ダニエルのこめかみに血管が浮き出ていた。
採血しやすくて看護師さんに好かれそうだ。
「掃除係を雇っているがそいつらの職務範囲は常識的なゴミの掃除だけだ。まさか雇用契約結ぶときにうんちの掃除もさせられるとは思っちゃいない。しかたがないから俺が毎回処分してきた。なあアルム、頑張ってギルドリーダーにのし上がったのに週に一度うんちの処分しなきゃならない俺の気持ちわかるか?」
ダニエルの引きつった笑顔がアルムに近づけられた。
「寒い日は手があったまって嬉しかったと思う」
無言で蹴り飛ばされた。
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行く当てのないアルムはひとまず公衆便所に向かった。
男子トイレに三つ並んだ個室の真ん中に入るとズボンを脱いで便座に座った。
16歳のとき神からのギフトとしてスキルを獲得して以来、アルムはトイレで気張ったことがなかった。
唸らなくてもスキルを使えばうんちが出せた。
ただ《うんち》はあまり戦闘向きのスキルじゃなかった。
裏方の事務作業にもそこまで使えない。
もしかしたら外れスキルだったのかもしれないとアルムは思った。
「外れだったら転職先探すの大変なのかなあ」
そのとき突然目の前にステータス画面が開いた。
【スキル《うんち》がレベル10になりました】
【スキル《うんち》に広域化が付与されました】
何の拍子かわからないけどスキルのレベルが上がった。
「広域化かあ。魔法ならすごいんだけどなあ」
広域化は文字通りスキルの範囲が広がることだった。
主に魔法のスキルで重宝される。
特に回復魔法のスキルとは相性がよかった。
攻撃魔法は広域化を想定して敵に密を避けられるといまいち使えないが、回復魔法は味方が意識すれば密になれるから恩恵を受けやすい。
「僕も魔法が使えたらよかったのになあ」
とはいえせっかく付与されたので試しに使ってみることにした。
「広域化に切り替えてっと……スキル《うんち》!」
左「ぶり、ぶりぶりぶりっ!」
僕「ぶり、ぶりぶりぶりっ!」
右「ぶっ、ぶぶっ、ぶちゃぶちゃぶちゃっ!」
公衆トイレに三重奏が響き渡った。
右の個室からスマホを落とす音が聞こえた。
「おお、近くの人もうんちするんだこれ」
そのときアルムはひらめいた。
広域化うんちは凄いかもしれない。
**********
「次の方、お入りください」
ここはギルドの新人面接会場。
ダニエルは昼すぎから延々繰り返される自己PRにうんざりしていた。
(バイト副リーダーとサークル副リーダー多すぎだろ……)
ゲンナリした顔が、入ってきた男を見るなり奇妙に歪んだ。
「……何しにきたんだ」
アルムは腕を組んで得意げにしている。
「えーアルムさんですね。特技はありますか」
「ここでお披露目します。スキル《うんち》!」
ぶり、ぶりぶちゃぶちゃぶりりり!ぶぶり!ぶーぶちゃ!
ダニエルはじめ面接官五人が一斉に脱糞した。
厳密にはアルムもうんちしたが彼はあらかじめおむつをしていたのでノーダメージだった。
異臭の漂う面接会場から出てきたアルムを、扉の前で待っていた女たちが嬌声をあげて迎える。
「きゃーアルムさま!はやく私にもスキル《うんち》を使ってー!」
「なによ次はわたしの番よ!」
「わたしもわたしも!」
みな便秘に悩まされてきた女だった。
今ではアルムの広域化で解消している。
「わたしもうアルムさま無しでは生きていけないわあ」
「わたしもわたしも!一生ついていきます!」
アルムは満足げに腕を組んで、それからうんちした。
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