ゾンビは迷った時に文化に目覚める・・・
泣きごといっても神はいない、私と同じように神も死んだのかも知れないな。
違うか・・・『我の神は死んだのだ!彼の神はまだ生きている!』という話。
ヒトはそれを不幸と呼ぶんだろう。
ここは山奥の奥、人間の気配一つ無い[自然が友達]な場所に潜んで数ヶ月くらいたったと・・おもう。
最初の数日は森を歩き回る事すらしなかった、あきて座っていたら体にナマケモノのような青カビが発生し始めまして、ついに腰を上げた。
人間どころか動物すらすくない陰気な谷間、硫化水素でも溜まっているのか鳥すらいないまさに無人の荒野・・森?。
(ゾンビドックが立ち去ったあと背後で・・「うわぁぁあl化物~~~」とか聞こえていたから彼は良い仕事でもしてくれたのだろう・・・惜しいヤツを無くしたよ)
そう言えば他にも数匹ゾンビ犬を出したから・・・もうアノ墓場は使えないなぁ
安全と暇を確保した私は取りあえず木を切って、小屋を建てた。ロビンソン=クルーソウでも意外と何とかなりました。
次ぎに人間に備え武器と罠の制作に取りかかる。穴を掘って木を突き刺し蓋をする、蔓で網を作り縄を作る。
道具作りは比較的楽しい・・・・よく考えれば獣すら避けて通る場所に人間が来る訳が無いのか?(全くの役に立たないじゃないか?)・・徒労・・・・。
(ゾンビでも、多分心までは腐っていない)はず、ヒトの感情を殺しちゃ駄目だ。
精神を腐らせる行為は自殺行為!無為徒食より愚かな行為・・・・そうだ!
「最低限、文化的な事をしよう」
木を刈り石を退け一定の空間を作り出す、穴を掘り出し広葉樹を植え苔生した石を配置した。庭作り・・文化的です。
何せ時間と力だけは有るゾンビ、雪が降り出す頃にはそれなりの庭を造り、小さな社すら拵えた。
別に神を信望する訳では無いですが、動物もいないこんな場所。
神様くらいはいても良いでしょう。
神が死んだなら、オレのようにゾンビとして生き返るかも知れないし・ね。
やおよろずの神って言います、石にも木にも神様はおわすでしょうから。
『文字・言葉・通貨・信仰は人間の4大発明』次ぎは農耕・土器・金属の開発でもしようか?
食べる必要の無い者が農耕をする意味は有るのかは不明ですが。
・・・・食べ物が出来れば、他者との交流も出来るとおもう。
たとえ私がゾンビでも、食べ物を持っていれば交渉でもしようと思うはずだ。
持つべき物は金と物、世の中はそういう風に出来ている。
空気が悪いので傾斜地に畑を作る事にした、少し探せば野性の蕎麦や大麦っぽい物くらいは見付かる、
畑の為に石を退け棚畑を拵え、農具は無いので木の棒や石を使っての耕作。
ソレも雪が降り出すまでです。
まだ畑は3分4分といった所で、真白な土地は土も固まり作業が止る。
気温はどうでもいいですが、雪が降っている間は暇でしようが無かった。
白銀の世界を見ているだけなのだから、ドサッと時折落ちる雪の塊が谷に響きソレも雪が音を飲み込んでいくのだ。
最低限の文化的行為を目指したつもりが・・少しやりすぎた感があります。
ここは・・氷に塩をかけて糸で吊る・・くらいでよかったのでしょうが・・
「まあ・・退屈なのはこっちも同じなのだがな」
呆けた若年のように数日を過ごしてきたせいで、幻聴も聞こえて来た。
冬と言うのはなんてもの悲しい、これなら夏の暑さの方が何倍もマシという物だ。
「春も夏も秋もお前からすれば同じだろぉ?気温も感じぬ体のくせに」
・・・・
ジッとしていたせいで精神も腐り始めた?随分自虐的な幻聴です。
内に秘めた鬱屈した心が闇落ちでもしようと・・・。
いいえ・いいえ、ゾンビとは言えど世間に腐っていてはなにも変えられぬ。
雪の日には薪でも削って仏像でも作りましょう、そう!修行僧のように。
「いやいや、いい加減現実見ろよ。お前ゾンビのくせに人間も襲わず仲魔も増やさずこんな所で庵を構えて、老後の楽しみみたいに自給自足か?いくつだよ!老成しすぎだろ!頑張れよ!立身出世して天下取ろうぜ!」
・・・・・だれ?