この世界について考えた。
「でも、私この世界で動いてみて、触ってみて五感で感じた事だけどこの世界がとても偽物、いえ夢の中だとは決して思えないの」
「それは俺も薄々感じ始めている。という事はつまりこの世界は現実。つまり危険物乙四類の本の中に入ってしまったって事だな」
「ええ、でもどうやったらこの世界から抜け出せるのかしら」
「多分、俺達の恰好を見る限りこの世界は冒険の世界のようだ」
俺は自分の体を見回しながら言った。俺の服装は冒険者の恰好その物だ。そして鈴の恰好はこの世界の案内人的役割、あるいは妖精的存在。
「ええ、多分そうだと思う。だからこの冒険の世界から抜け出す方法は多分だけど……魔王的存在を倒すしか方法はないと思うの」
「うん。そうだね、鈴。でも一つ疑問があるんだ」
「何? マサル」
「どうして俺は冒険者の恰好をしているのに、鈴は案内人的、あるいはマスコット的、はたまた妖精的な存在の恰好をしているのかって話だ」
「それは私の憶測だけど、いえ多分合っていると思うけど、私は危険物乙四類の資格を持っているからだと思うわ。だから私は冒険者になれなかった。一度危険物乙四類魔王を倒しているから」
「なるほど……この世界に勇者は二人はいらないってわけか」
「ええ、多分そう」
「上等じゃねえか。俺もこの世界をクリアして文字通り勇者になってやるぜ!」
「頑張ってね。マサル。私達の将来の為にも。でもこの世界の時間は一体どうなっているのかしら、私達がいた元の世界とリンクしていたとしたら大変な事ね」
「そうだな。だけどそんな答えの出ない心配事をしていてもしょうがないだろう? それにもしここで過ごした時間が止まっていたとしたら、元の世界に戻った時、他の人よりアドバンテージになる。それにこの世界で過ごし多分だけ人より人生を多く過ごしたことになるから、いずれにせよ。分からんものはしょうがないから進むしかないんだよ。分からないから立ち止まる事も、後退する事も時には必要だと思うけど、今俺達が直面しているこの事態の場合は進むしか道がないんだから」
「そうね。分かったわ。進みましょう。そして私は危険物乙四類の資格を取る為の案内人になろうじゃありませんか!」
「おっ、やる気が出て来たね。リン」
「うん」
鈴は手を上げて可愛げに微笑んだ。




