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その後、皆はとりあえず逃げ出すことは一旦諦めて、上階にあるという居室へと向かう事にした。

各々の荷物を手に上階へと上がると、そこには長い廊下の両脇に、向かい合いように部屋が並んでいた。

階段をぐるりと上がって向かって右側に4室ずつ向き合って8室、左側に4室ずつ向き合って8室の扉が並んでいた。

階段を上がって正面に当たる面には、右端から1から8まで番号が振ってあり、向かい側の面には9から16まで番号が振ってある。

それぞれの居室は同じ形になっていて、入ってすぐ脇にバスルームとクローゼットがあり、正面には窓、そして窓を横にしてベッドが設置されてあった。

そのベッドの足元の壁には、机が置かれてあって、その上には、ルールブックが置かれてあった。

そこに書かれてあるのは、概ねモニターの男が語ったのと同じことだった。卓哉がそれを見ながらため息をついていると、トントン、と戸が叩かれて、開いた。

「卓哉?」

顔を上げると、そこには隣りの部屋の雅也が立っていた。卓哉は、ベッドに腰かけていたのだが、立ち上がって雅也を迎えた。

「雅也!その…ごめんな、オレが手っ取り早く金を稼ごうなんて思ったからこんなことに。」

しかし、雅也は苦笑して首を振った。

「お前は迷ってたじゃないか。オレが無理にここへ連れて来たようなもんさ。それより、お前は村陣営か?オレ…お前にだけは、言って置いた方がいいかって思って。」

卓哉は、体を硬くした。雅也…まさか、人外だったのか。

「聞かない方がいいんじゃないか。オレは…どっちにしろ、村に知れる役職だったから。もちろん、雅也にだけは言った方が良いって思うけど…。」

雅也は、振り返って確かに戸が閉じられているのを確認してから、それでも声を潜めて、言った。

「占い師だ。」卓哉は、びっくりした顔をした。雅也は、どこまでも真剣な顔で言った。「オレ、占い師だったんだよ。信じてもらえるか分からないけど、でもお前が人狼だったら、オレが真だって仲間に言ってもいい。狐だったら…オレは、お前を占わないけど、今回占い師が二人居るからな。」

卓哉は、首を振った。

「違うんだよ、オレは共有者なんだ。」雅也は、え、という顔をする。卓哉は続けた。「相方のことは言えないけど、オレは共有者なんだ。だから、どっちかが出て村をまとめて行かなきゃならない。村で唯一の村人確定なのが、オレ達なんだ。だから、雅也が占い師だったら、オレと同陣営だ。明日の話し合いで、きっと確定するのは共有者だけだろう。だから、オレを信じてくれていい。オレも、何人占い師が出てもお前を信じるよ。」

雅也は、何度も頷いて、嬉しそうに言った。

「良かった!オレ、お前の深刻そうな顔を見て、もしかして人外か、って思ったんだ。だったら、どうにかしてお前を勝たせてやらなきゃって。だって、オレが行こうって無理にメール送らせたようなもんだからさ。」

卓哉は、雅也がそんな風に思っていたとは知らなかった。それよりも、自分があんなものを見ていたばっかりに、雅也まで巻き込んでしまったと、後悔していたからだ。

「オレのせいなのに!そんな心配、することないんだって。でも、同陣営だったんだから、一緒に勝てるんだし頑張ろう。吊られたりしたら、何をされるか分からないし…生き残ることを大前提に、無理しないでくれよ。襲撃が怖いし…潜伏した方が良かったら、潜伏して。出るのは、占い結果が出てからの方がいいと思う。」

しかし、雅也は真剣な顔をして、首を振った。

「いや、明日出た方がいいよ。」卓哉が驚いた顔をすると、雅也は続けた。「ほら、狐が居るだろう。指定占いして、呪殺が出た時にオレが確かに呪殺した真占い師だってみんなに知ってもらう必要があるんだ。あの人外の数だ、霊能者だって確定するはずは無いんだし、黒を打ってそこを吊っても色が分からないかもしれない。呪殺が一番手っ取り早く真を取れる方法なんだ。」

しかし、卓哉は不安そうな顔をした。

「でも…噛まれるかもしれないじゃないか。狩人は一人しかいないんだぞ。真目をとれるのは確かにいいけど、そうなると人狼にも襲われる可能性が出て来るし…同じ陣営で嬉しいけど、心配だよ。」

雅也は、笑って首を振った。

「襲撃って言ったってどっかに閉じ込められて待たなきゃならなくなるだけだって。それより、オレの真が確定して村がオレの結果を信じられる方が村利が高い。要は村が勝てばいいんだからさ。大丈夫だって。オレは明日の話し合いで出るよ。」

卓哉が困った顔でそれがいいのかどうかと悩んでいると、またトントンと戸が軽い音を立てた。

「卓哉ー?入るよ?」

玲だ。

卓哉は、慌てた。自分は雅也を信頼しているので、役職を教えるのにも抵抗はなかったが、恐らく玲は違うだろう。同じ運命共同体の共有者なのだ。

だが、玲はこちらの状況など知らずに、さっさと戸を開いて中へと足を踏み入れた。

「居るじゃないー。話をしようと思って来たんだよ。」と、雅也を見た。「そうか、君達友達だったよね?」

雅也は、肩をすくめた。

「腹が減ったし、飯でも食いに行こうって誘いに来たんだ。あなたは?」

玲は、じーっと雅也を見ていたが、フフと笑った。

「僕は卓哉に話があって来たのさ。」と、卓哉を見た。「君達、お互いの役職を話し合ったんじゃない?」

卓哉は、身を強張らせた。雅也は、そんな卓哉の前に足を踏み出して、庇うように前に出た。

「それがどうしたんだよ?オレ達は一緒に稼ごうってここへ来たんだ。信用してる。」

玲は、目を細めた。

「ふーん。いいんじゃない?別に僕、それが悪いなんて思ってないよー。でもね、申し訳ないけど、君にはここを出てもらいたいなー。卓哉が言ったなら知ってるだろうけど、僕はね、卓哉の相方さ。」

雅也が驚いたように卓哉を振り返った。卓哉は、渋々頷く。それを見た雅也は、途端に肩の力を抜いて、バツが悪そうな顔をした。

「そうなのか…ごめん、なんか探りに来た人外かって思って。玲さんって頭が良いって聞いてたし、卓哉が騙されたりするんじゃないかって。」

卓哉は、玲までが雅也にそれを明かしたことに驚いたが、黙っていた。玲は、穏やかに微笑んだまま、言った。

「うん。だからね、君しか今、僕達二人が共有者だって知らないんだよー?分かる?僕が危険を冒して君に言ったのは、君しか知らないから、僕か卓哉、潜伏してる方がすぐにあっさり襲撃されたら、君のせいだってわかるからさ。僕は卓哉ほど君を知らないし、信じることも出来ないからねー。牽制なんだー。」

そういうことか。

卓哉は、思って見ていた。確かに、雅也が本当に占い師なのかなど、卓哉にも分からない。だが、雅也がこんな時に嘘を付くはずなど無いことは分かっていた。何しろ、賞金は卓哉の授業料に充てるためだとわざわざ一緒に来てくれたのだ。

なので、今度は卓哉が雅也の前に出た。

「玲さん、雅也は絶対に信じられる。ここへ来たのも、オレのために別陣営になってオレが負けても賞金が手に入るようにって言ってくれたからなんだ。でも…同陣営だったけど。」

玲は、片方の眉を上げた。雅也が、まだ肩身が狭そうな顔をしながらも、言った。

「…占い師なんだ。誰が相方なのかは分からない。でも、人外が多いし騙りも出るだろうから、呪殺で真を勝ち取ろうと思って、明日指定占いするために出ようって話してたところで。」

玲は、うーんと顎に手を当てて言った。

「そうだねえ。あえて潜伏するのも有りだと思うよ。僕達が、君の占い先を密かに言うの。で、呪殺が出たら僕達が指定していた場所だから、分かるじゃないか。ただ…潜伏先のどこを噛んで来るか分からないからなあ。狩人の護衛はまず入らないだろうし、運任せになっちゃう。とはいえ、たくさん出て来たら占いローラーになるかもしれないから、どうかな。君に任せるよ。」

雅也は、頷いた。

「…分かった。状況を見て決める事にするよ。オレが潜伏することで人外がいっぱい出て来るかもしれないし。」

玲は、満足げに頷く。

「じゃ、それで。」と、卓哉と雅也を交互に見た。「じゃ、話し合おうか。みんな下にご飯食べに行ったんだよ。僕もすぐに行くって言っちゃったから、時間がない。雅也は外でちょっと待っててくれない?」

卓哉は言い返そうとしたが、雅也がそれを遮って、頷いた。

「じゃ、廊下で待ってる。」

雅也は、すぐに部屋の外へと出て行った。

卓哉と玲は、部屋で向き合った。

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