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昼を過ぎて、修一が皆に声を掛けて来た。

「そろそろ話し合いを再開したい。オレ目線、どうしても考えておかなければならない事があるから。」

そう言われて、また8人はソファへと戻った。何を話すのかと、洋文も緊張気味にしている。

卓哉は、言った。

「それで、何か村が気付いていない事でもあった?」

修一は、頷いて答えた。

「気付いてないというか、気付いてるけど見ないようにしているってことだ。みんな、真紀さんをどう思う?」

和也が、顔をしかめる。

「今さらだけどな。狂人だろう。有栖さんの潔さを見ても、真だったと思うぞ。オレ達が考えるに、役職を騙って出ていたのは狂人、狼、背徳者。つまり有栖さん真、真紀さん狂人、雅也が真、莉子さんが背徳者、修一さんか洋文さんが狼と真、って感じだ。」

修一は、頷く。

「普通に考えたらそうだ。だが、玲は狼は普通の動きをしないって言っていたんだろう?オレは、狼にはめられてるように思えてならないんだ。」

卓哉は、急に不安になって修一を見た。

「…ということは、修一さん目線じゃどういう可能性があるんだ?」

修一は、真剣な顔で卓哉を見た。

「狂人の場所だ。オレは部屋へ帰って考えたんだ。もちろんオレ目線でも狼は一人吊れてる。残りは洋文と幸太郎だけだからだ。だが、占ったわけじゃないから、まだそれが杏沙さんだったとは確定していない。オレ目線、洋文が狼なんだから杏沙さんが狼だとは思えない。身内切りだとは考えた。でも、霊能者にも騙りが居る以上オレ目線でそれは確定しない。もちろん村に黒出ししたら、必ず片方の真霊能者は白を出す。もう片方がどう出すかが問題で、狼目線狂人がどっちか分からないから指示も出来ない。だから普通は出来ないんだが…。」

和也が、眉をグッと寄せた。

「…もう片方が狼だったらそれが出来るってことか。」

修一は、頷いた。

「そうだ。不思議だったんだ…初日から黒を打って来るなんて。狼だったら破綻の危険があるのに。現に初日は玲も霊能に出ていて、三人だった。狼目線じゃ内訳は真と狂人か、真と背徳者だと思ったことだろう。実際は玲が共有者だったわけだが、残りの一人は、きっと狼だった。オレが恐れてるのは、有栖さんが狼で真紀さんが真、そして狂人が確白の中に生き残っていることだ。」

卓哉は、それを聞いてハッとして皆を見回した。言われてみたら、ここに狂人が生き残っていたら、八人の中に人外が三人ということになる。村人の意見が割れたら、村人が吊られることにもなりかねない…。

そして、今日吊り間違ったら、襲撃が成功したとして明日は六人、人外が三人、半PPという状態になってしまう。

信吾が、怪訝な顔をして言った。

「レアケースじゃないのか?真紀さんは狂人だったと思うぞ。だって有栖さんがあんなに真目をとっていたんだ。吊られる時だって落ち着いたもんだった。あんな風に出来るのって、村人でみんなを信じてるからじゃないのか。」

卓哉が、何やらホッとして頷こうとしていると、和也が隣りで割り込むように言った。

「いや…修一さんに、言われてみればそうだ。」卓哉が驚いて和也を見ると、和也は言った。「確白だったからと安心していたが、この中に狂人が残っていたらどうする?そいつは最終日まで吊られないだろう。今は黒が出ている二人の精査に忙しい。どっちか一組二人を吊ったら、それで勝てると分かっているからだ。だが、もし答えが分かっているのに狂人のせいで村人が吊られたりしたら?」

卓哉は、思わず首を振った。

「そんな事ないよ。有栖さんのことはオレも信じてるし、真紀さんを真目に見る人も少なかったじゃないか。あれで真とかないだろう。」

しかし、雅也が言った。

「オレだってどう考えても真紀さんが偽だと思うから、真紀さん狂人でいいと思ってるんだが…狂人にしては、あまりに孤立してたんだ。有栖さんは皆に真目があると言われて続けていたし、それは玲さんが役職スライドする前からだった。だからこそ、みんな玲さんと有栖さんで悩んでいる風だったし。でも、狼だったら?仲間は、有栖さん真の雰囲気で押し通そうと思って、真だと押してる可能性がある。だから、みんなが口を揃えて有栖さんが白いと言っていたんじゃ。誰もとも繋がらない真紀さんの方が、むしろ白く見えて来るんだよな。ほら、修一さん守りの件でもそうだったじゃないか。どう考えても、あの日妖狐の真里さんを噛んだとは思えないんだよなあ…。」

信吾は、息をついて言った。

「じゃあ、どうなるんだ?修一さんが言うように、有栖さんが狼で洋文さんと示し合わせて黒結果を出し、白黒結果にしたってことか?」

卓哉は、本当に困ったように信吾を見た。

「分からない。そもそも、占い師に役職を占わせてはいないし、発言と行動から有栖さんがほぼ真だろうって思っていたから…でも、洋文さんが狼だったら、確かに杏沙さんの黒結果が偽物だった場合、それを騙るために霊能者にも狼が出て居ないとすぐに破綻して危ない。あんなにあっさり黒を打てたのは、もしかして修一さんが言うように有栖さんが狼だったからじゃって、考えられなくもない。」

和也が、ため息をつく。狂人…もし有栖が狼だったなら、確かに狂人が生き残っている可能性が限りなく高い。昨日死んだ剛が狂人ではない限り、恐らくは生き残って居るのだ。

「油断した。修一さんが言うように、有栖さんが狼だった時に狂人が生き残っている確率が高い。剛は全然わかってないようで議論にもかかわりが薄かったし、狂人っぽくなかったしな。まだ生き残っているのなら、今夜は縄が足りるとか言って安易に吊ることは出来ないぞ。確実に狼らしいところを吊っておかないと、パワープレイで負ける事になる。」

まだ余裕があるとそれほど構えてはいなかった今夜の投票に、卓哉は俄かに緊張した。狂人が居たなら…間違えると明日が危ない。

だが、狂人にもどちらが狼なのか、判断がついていないはずだった。

卓哉は、キッと顔を上げた。

「とにかく、狼は修一さんと太一さん、洋文さんと幸太郎さんのふた組のどちらかなんだ。狂人が居るとしても、どっちがどっちか分かっていないはず。今日は、今朝言ったように黒を打たれた二人のうち、一人を吊る。そして明日は残ったもう一人を吊る。絶対にローラーするから。で、明後日は決め打ちをする。ここまで来たら狂人が残っていたとしても吊ってる暇はないんだ。もう、狂人が居ないと見るか、狼も誰が狂人なのか分からずに噛んで来るのを祈るか、それしか方法はない。戸惑って決心が鈍って間違うのは避けたいから。修一さんが話したことは、一応頭に入れておく。でも、修一さん目線でも杏沙さんが黒だった可能性もあるんだし、白だった場合のことを考えても仕方がない。今はとにかく、確定で狼が二人居る四人のうち、一人を吊る。オレはそう決めた!」

思い切ったようにそう言い切る卓哉に、雅也は同情したような視線を向けていた。卓哉が、無理をして場をまとめようとして、迷っているのにそれを隠してわざと皆を突き離すような言い方で断定して言っているのを気取ったからだ。

卓哉は、握った拳をブルブルと震わせていたし、唇も小刻みに震えていた。

雅也は、卓哉の肩に手を置いた。

「卓哉、それじゃあ狂人が居たら終わりだ。しっかり考えよう。初日からの噛みとか、投票先、精一杯考えて、とにかく一人吊る。明日はまた違うかもしれない。オレが生き残ったら答え合わせは出来る。とにかく、今日は今日出来る事をやればいいじゃないか。誰もお前のせいだなんて言わない。みんなで考えよう。」

和也も、頷いた。

「そうだ。みんなで考えよう。こうなったら一人で考えるなんて荷が重すぎるから。誰に入れるのか、確定白の間で票がぶれないようにまとめよう。」

卓哉は、責任の重さに潰れそうだったので、その言葉には目頭が熱くなった。みんなで考える…もう、自分だけではとても背負い切れるようには思えなかった。

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