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卓哉は、キッチンでパンを漁っていて、ふと、ここのところパンばかりを食べているような気がした。

なので、ふと冷蔵庫の方を見ると、一応コンビニのおにぎりのような物が並んでいるのも見えたので、それを幾つか手にして、それからカップの味噌汁にお湯を入れ、箸を手に部屋へ戻ろうとくるりと体の向きを変えると、そこには、雅也が立っていた。

「わ!なんだよ、真後ろに居たのかよ。」

卓哉が言うと、雅也はあからさまに傷ついた顔をした。

「居たのかよってなんだよ。お前が居間を飛び出してすぐについて来たっての。飯を一緒に食おうと思って。」

卓哉は、雅也のことをすっかり忘れていた自分に驚いて、慌てて頷いた。

「ああ。ごめん、でも部屋へ帰りたいから。雅也も持って来てくれるか。」

雅也は、頷いてカップ麺のカップを持ち上げて見せた。

「ああ、湯を入れたとこ。で、考えようと思ってるのか?」

卓哉は、何度も頷いた。

「そう。今聞いた意見を誰が言ったのか、しっかり頭に入れておこうと思って。そしたら、変なことを言ったら違和感を感じるだろ?誰が何を言ったのかなんて、真里さんと太一さんみたいに言い合ってたら覚えてるけど、そうでなかったらうろ覚えだからな。メモってないと全く駄目だ。だから、もう一度見返しておくんだ。」

雅也は、頷いて歩き出しながら、言った。

「お前ってほんと、試験前とか真面目だもんなあ。ゲームでも同じかよ。」

卓哉は、それには真面目な顔をした。

「だって、命が懸かってるじゃないか。それも、9人だよ?15人中6人が人外なんだから、残りの9人が村陣営。みんなを生きて帰すためには、頑張らなきゃ。」

そう考えると、残酷なのだ。つまりは、その6人には9人のために犠牲になってくれ、と言っているようなものなのだ。

しかし、雅也は階段を上がりながら、唸った。

「そうだよなあ。どう考えても村陣営が勝つのが犠牲が少なくて済むんだもんなあ。狐なんか、勝っても助かるのは二人だけだぞ?そう考えたら、やっぱり数の論理で村陣営が勝つのが正義な気がしてしまう。自分が村側だから言えることなんだろうけどな。」

卓哉は、階段を上り切って、自分の部屋の戸へと向かいながら、答えた。

「違うんだ、説得するには人数が多い方がいいかと思って。」卓哉の言葉に、雅也が怪訝な顔をする。卓哉は続けた。「生き残って、他の陣営の人達も、蘇生してくれるように頼もうと思ってる。それにはみんなで考えて説得しなきゃならないだろ?だから、向こうは頭が良いんだろうから、こっちは人数で勝負かなって。でも、オレのそんな気持ちは知らないから、狼も狐も、複雑な気持ちで会議に参加してるんだろうと思う。だから、人狼だって襲撃先を選ぶのに、本気で考えて来ると思うんだ。今日はグッジョブが出てるから、明日からだけど。連続ガード無しだから、狐噛みで無いなら明日は必ず誰か死ぬ。二連続噛んで確実に村の数を減らす方向で考えてるだろうから。」

雅也は、あーあ、天を仰ぐような仕草をしながら、卓哉の部屋の戸を開いた。

「そうかあ。ちゃんとゲームしないと、説得の時も相手の機嫌が悪かったら聞いてくれないかもしれないしな。襲撃されたのは玲さんかなあ。それとも、有栖さんかな。卓哉では無いと思うんだ。多分狼は、今日の結果を見せたくなかったんだと思うから。杏沙さんが白でも黒でもね。」

部屋へと入って戸を閉めると、小さなテーブルの上に持って来た食べ物を置いて、卓哉は言った。

「そうとも限らないと思うけど。もし洋文さんが人狼だったらさ、黒だったら色は絶対見せたいじゃないか。それを材料に真を取りに行くつもりなんだろうからね。他の占い師だって、偽者だったら色は見せたいよ。杏沙さんに投票してるし吊るのに反対しなかったんだもの。もしオレだったら…そうだな、占い師を噛む。」

雅也は、片眉を上げた。

「え、護衛は?」

卓哉は、笑って首を振った。

「昨日は多分霊能を守りたい場面じゃないか?だって黒を吊ってるんだし。オレが人狼だったら、そう思って今の内にって占い師を噛むけどね。狐対策をするなら、真占い師一人残したらいいんだもの。あんまり発言の強くなさそうな所を残して、確実に真だと思われる方を噛む。ま、人外目線三人しか占い師に出て無いから、自分以外は真なんだけどさ。」

雅也は、深刻な顔をした。

「それって…もしかして、だけど。洋文さんが噛まれてるって事は、ないか?」

言われて、卓哉はハッとした。そういえば、確かにそうだ。自分ならこうするけど、普通ならこうだろうなあと思って意に介さなかったが、自分がそう思うということは、人狼だってそう思って占い師を噛んでいるかもしれない。

「え…じゃあ、もしかして明日は洋文さんが?」

卓哉が、その事実に愕然としていると、雅也が険しい顔で頷いた。

「そうかもしれないぞ。でも、狐噛みかもしれないし。修一さんが真に見えてそっちかもしれない。どっちにしろ、一人一人面会して狩人を探すんだろ?誰を守ったのか聞いたらいいじゃないか。」

卓哉は、考えても仕方ないと、頷いた。

「だな。でも、洋文さんだったとしたら、連鎖的にその黒先は正しいことになるし、有栖さん真で真紀さん偽が透けるけどそれは良かったってことかな。」

雅也は、肩をすくめた。

「さあ?もう吊られたんだから杏沙さんの黒確定はどうでもいい、って噛みになるもんね。ってことは、真紀さんはそれを知らないってことで、狂人か狐陣営。案外真紀さんを噛んで死体無しになって、狼に狐が透けたとも考えられるかもなぁ。」

考えれば考えるほど分からなくなる。

玲の意見も聞きたいが、玲が共有の片割れだと今知られたくなかった。なので、一人ずつ部屋を訪ねた時に、聞いておこうと卓哉は思い、おにぎりにかぶり付いた。とにかく体力を維持して、生きている限りは頑張って村勝利に導かなくてはいけないのだ。

狩人の事は、雅也にも言わないでおこうと卓哉は心に決めていた。


9時になり、卓哉は約束通りに部屋を出て、まずは二番の剛の部屋を訪ねた。

剛は最初に自分の所に来る事が分かっていたようで、もう部屋で待っていてくれた。

卓哉は、言った。

「待っててくれてありがとう。それで、何か言いたい事はある?」

訪ねる人数が人数なので、卓哉は単刀直入に言う。剛は、首を振った。

「何も。オレは素村なんだ。役職があったらもっと積極的にもなれるけど、何も分からないから何も言い様がなくてな。」

本当に困っているようだ。卓哉は頷いた。

「分かった。それで、何か個人的に気付いた事はある?別に公表しないでほしかったら言わないけど。」

剛は、疲れたように下を向いた。

「うん…いや、この状況だからな。みんないつもと違うと思うんだけど、信吾はいつも通り、オレと話していつもつるんでる。知ってる学部の人だって居ないし、不安だからつい、いつも一緒に居るんだよ。メタばっかりだけどこんなゲームだから言うと、狼同士なら学部どうの言ってられないから、多分話すと思うんだけど、信吾とオレは消灯時間まで飯を食うのも一緒。あいつは、他の人達とキッチンとかで会ったら話すけど、オレも居るだろう。他と話してる様子はないんだよ。だから、白いって言ってるんだけどな。信吾も同じ気持ちだと思う。」

卓哉は、そうなのか、と驚いた。自分と雅也は、そこまで一緒に居ない。卓哉自身がいろいろ考えたいし、部屋に一人にしてほしかった。確かに食事の誘いには来るが、消灯まで一緒ということはなかった。

「なんか、その気持ちは分かるかな。オレは確かに雅也と仲が良いし、ここにも一緒に来たけどオレが共有だから、つい考えることも多くてそこまで一緒に居ないんだ。うーん、じゃあ、やっぱり信吾は白なのかなあ。」

剛は、頷いた。

「そうだと思うよ。今も、一緒に上がって来たんだ。でも、卓哉が来るから部屋に入っただけだし。」

卓哉は、頷いた。

「…分かった。一応それは頭に入れておくよ。他は、ある?」

剛は、遠い目をした。

「そうだなあ…。反対に、莉子さんと全く話してないのが気になるかな。そこそこ仲良いんだけど、やっぱりオレ達が男だから、今回は女子達と一緒なんだろうけどね。話し掛けても来ないのが、逆に目立ってオレ達には違和感があるかな。だから、あの中で誰か一人が人外だって言うなら、オレ達には莉子さんでも驚かないな、って感じだな。自分の白じゃないから信用出来なくて話し掛けて来ないのかもだけどね。」

卓哉は、そこもメモに書いた。これで少しは、誰と誰の繋がりとかでも見られたら…。

「そうか、ありがとう。じゃ、次へ行って来る。信吾は部屋に居るんだね?」

卓哉が言うと、剛は頷いた。

「ああ、居ると思う。待ってるって言ってたから。」

卓哉は、頷いて戸を振り返った。

「じゃあ、行って来る。また何か話があったら何時に来るとか言っといてくれたら、一人で待つようにするから、部屋へ来てくれ。」

剛は、苦笑いした。

「なんか言えるほどいろいろ分かる頭ならいいんだけど。残念ながら難しいよ。オレ、ほんと全く分からないんだ。」

卓哉は、戸を開きながら自分も苦笑して返した。

「オレも。誰が真とか分からないし、そりゃプレッシャーなんだって。じゃあね。」

そうして、隣りへ部屋の戸をどんどんと必死に叩いた。こうしないと聞こえないからだが、よく考えたらノックするのは女子の部屋だけでいいか、と、勝手に戸を開いて中へと入ったのだった。

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