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俺だってドラマみたいな恋がしてみたい!  作者: 満点花丸
第一話 とある日、少女との再会
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一話

 恋愛なんて陳腐だ、ドラマみたいな恋なんてあるわけがない、これは俺の友人の言葉だ。

 それでも、俺はドラマのような心がときめくような恋はどこかにあると言い聞かせ、探し続ける。いい歳こいた男がなんて乙女チックなことを吐くのだろうと思われるかもしれないが、現実は小説より奇なりという言葉もあるくらいなのだから、どこかにあるのであろうドラマのような綺麗な恋を探している。

 だが、そんなに簡単にそれが見つかるのであれば、それこそドラマみたいな憧れるような恋とは言わないのだろう。

 俺の妄想じみたそんな価値観は他所に、俺自身がそんな恋は幻想であると取れるような行動をしてしまっているのだから。

 俺は現在いる場所から天井に目を向ける。

 少し酔っているのだろうか、腹の底まで響く重低音と燦爛と輝くミラーボールに向かい放たれる光が反射しあたりを怪しく照らす光景とに眩暈がする。

 俺は今、地域で最も有名なナイトクラブに大学の友人に連れられて訪れている。格好つけるわけではないが、俺はこういう場所はあまり得意ではない。

 それでもこんなところに訪れているのはここが女性との出会いの場であると大して深く関わりもしない大学の友人が熱く語ってきたからだ。

 身分としては大学生であるため、女性との出会いがないわけではない。

 付き合っていた彼女に振られたと友人に話し、じゃあ飲み会だと連れられ飲み歩き、最終的にはここに行き着いたという話だ。

 しれっと彼女を作っているくせに、先ほどの話はなんだったのか、と思われるかもしれないし、実際に大学で一番仲のいい友人にこういう話をすると女が絶えないくせに反吐が出ると言われる。

 だが、安心してほしい。俺は彼女が出来ても長くは続かない。

 そして、まだ……、童貞だ!

 どうやら、俺は容姿だけはある程度恵まれているらしく、女性から付き合ってほしいと言われることがよくある。自慢ではなく事実なのだ。

 俺はよく知りもしない相手と付き合って、この人とならドラマのような恋が出来るかもしれないと考えて、告白されれば承諾する。そして、俺のこの気持ち悪い妄想じみた童貞妄想オタク思考全開の価値観が露呈してしまう度に、女性の方から振られてしまう。

 そんな感じなのだ。

 ここまで説明じみた、しかも堅苦しいような口調で考え事をしているなんて、酔っているのだろうか。

 俺はカウンターに向かい、最近、パリピ大注目!と書かれたコカレロというレモンコークのような香りを感じるお酒を注文し、一気にあおるように飲み干す。

 今の意味不明な理性を持った自分ではこの場にいても場違いのような感覚が訪れるので、さらに酔いを回すことを決意する。

 有限であるはずのお金を湯水のように使うが、このお金はいつか真に好きな『彼女が出来たとき預金』から出しているので、今日くらいは使ってもいいだろう。

 それから、テキーラだのなんだのかんだの度数の高いアルコールばかりをあおり、余計に頭がくらくらしているときに、俺の裾あたりをちょんちょんと引っ張られている感覚に気付く。

 酔っぱらった頭でもぐわんぐわんする視界でもその目先にいる人物を見た瞬間にシャキンと一瞬にして冷静さを、いや逆に興奮を呼び起こしてしまう。

 彼女は口を開き、何かを言っているようだが、周りに響く流行りのエレクトロニック・ダンス・ミュージックの音で何を言っているのかが全く把握できない。

 俺はその顔をまじまじと見つめてしまう。驚くことにこれまで好きだと言っていたタイプとは少し異なるが、俺がこれまで見てきた女の子の誰よりも可愛く見える。

 暗くて色までは判別できないが、ふわふわでガーリッシュな内巻きのボブヘアーにナチュラルなメイク。たれ目でくっきりとした目に、優しそうな柔らかさがあふれる眉。大きすぎず低すぎないちょうどいい塩梅の鼻。少し薄い小さな唇。ダンスクラブでは明らかに浮いたような少しレトロでクラシカルな着こなし。少しのフリルがお嬢様感を出している。

 俺は問いたい、ユーはなぜここに? と。

 その少女は俺に声が届いていないことに気付き、距離を詰め、耳元で聞こえる様に、

「お兄さん、イケメンだね! 一緒に飲もうよー」

 と割と大音量な声で言ってくる。

 俺は酔っているせいなのか、俺のストライクゾーンにど真ん中を投げてくるような少女のせいなのかわからないが、何割か増しで仕事をし始める心臓の鼓動に驚愕を覚える。

 だが、俺は今日友人と来ているのだから、彼女と飲むことはできないだろう。

「ごめん、友達と来てるから!!」

 と俺も彼女に対して聞こえるような声量で返す。

 しかし、彼女は大胆にも俺の腕を掴み、

「いいじゃん、いいじゃん。ここはこういう場所だよー」

 と無垢な笑顔で言う。

 行動と表情が伴っていない、とは言えない。

「じゃあ、一杯だけ。奢るから、それで勘弁してほしい」

 彼女は少しむくれたような表情をするが、何かを思いついたかのようにカウンターのお兄さんに、

「スピリタスのショット2つください!!」

 と叫ぶ。

 俺はスピリタスってなんだ、とのろまになった思考回路を精一杯働かせてみるが、聞いたこともないお酒の名前だ。

 彼女に渡されるがままそのお酒を受け取ってしまう。

「今日の出会いにかんぱーい」

 という声と突き出してくるショットグラスにつられて、グラス同士を衝突させてしまう。

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