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俺だってドラマみたいな恋がしてみたい!  作者: 満点花丸
第三話 人生はなかなか思い通りにならない
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十六話

 俺はいつものようににこやかに俺に冷たくしてくる舞ちゃんと少しの談笑をしつつ、時にディスられていると後ろの方から、

「三条先輩、そんなにディスるほど灯貴センパイのことが嫌いなら私に隣を譲ってもらえませんかね?」

 という声が宴会の騒ぎをかき消すように聞こえてくる。

 あ……、油断してた。

 俺の真後ろから何か見えない圧力を感じる。この声は……胡桃だ。

「ううん、灯貴センパイ! 幹事なんですから、全部の卓にあいさつ回りしに行きましょう、そうしましょう! 私もついていくので♪」

 と、やけに力強く俺は腕を絡められ引っ張られてしまう。

 こんな華奢そうに見えるのにどこからそんな力が沸いてくんだ……。

「胡桃、それはわかったから腕組みはやめてくれ。他の人々の視線がマジでいたい」

「えー。ふぅ、仕方ないですね」

 と胡桃は俺の腕を開放してくれる。

 胡桃はいったい今の今までどこに隠れていたのやら、ふわふわのタオルのような生地のパジャマを着て、頭には同じ柄のヘアターバンで上げた前髪をまとめた様なTHE ふわふわ女子スタイルである。

 ちょうどいい塩梅の広さのおでこで形も丸みを帯びていて可愛い。すっぴんの顔もずいぶんキュートで、正直いくらでもおでこを舐められる気がする。

 あ、ちがう。

 俺の本能よ、突然出しゃばってくるんじゃない。

 本能をどうにか押し込み、胡桃に言われなくてもする予定だったあいさつ回りを開始する。

 これが先ほど、舞ちゃんと話していた大きな仕事である。

 幹事の一つの仕事であるあいさつ回りはOB卓から始まり、合宿に参加してもらったことに対してお礼を兼ねて乾杯して回るという伝統の洗礼である。

 今のご時世こんなのアルハラだ、問題だと言われることもあるだろうが少なくとも参加してもらったことに対する感謝は必要だろう。

 それにその人たちと会話をするという意味では非常に大事な仕事だ。

 アルコールがなければ。

 初めにたどり着いたOB卓ではひゅーひゅー、今年の初カップル! と茶化されながら、胡桃も巻き込まれて飲まされる。

 何杯か飲まされ少し会話をし、次の委員長はお前だなと太鼓判を勝手に押されて別の卓へ移る。

 そういう繰り返しを様々な卓で行った後、とつぜん俺にある種の限界が訪れりゅ。

 あ、のみしゅぎた……、と思っている頃にはモノローぎゅすらうまくせいぎょできらい。

「くるみ、といれ」

「あ、待ってください。一緒に行きましょ。足元フラフラで危ないですよ?」

 おれはくるみに腕を掴まれ、トイレへとつれていかれる

 そこそこにおおきなおっぱいがおれのひじにあたる、うえへへ。

 そのやわらかいかんしょくから解き放たれるのに少しのさみしさを感じつつ男子トイレに入り、俺はようをたす。

 このきんちょうかんから解放された後がいちばん無防備になっているともしらず。

「ぐえ」

 突然、寝間着のTシャツの後ろ襟をつかまれる感触。

 そして、個室に押し込まれる。

「は、あはは、やっと二人きりになれましたね、灯貴くん」

 あ、あれ、なんかデジャヴ。

 ん……?

 俺の身体からアルコールが抜けてきたわけじゃないのに、なぜか急にどんどん冷静になっていく。

 だが、時はすでに遅し。

 胡桃は俺を無理やり個室の便器の上に座らせ、その上に乗っかってくる。

 俺のマイサンは突如として産声を上げた赤ちゃんのごとく悲鳴を上げ始める。

 異常に密着したその態勢になると、胡桃の吐息が耳元をくすぐる。

 胡桃の体温、胸の当たる感触、何から何までもうアウトな態勢である。

「灯貴くん、触って……、ください」

 や、やばい。

 だめだ、これ以上は十八禁の大人の世界に入り込んでしまう!!!

 いけ、俺の理性!! アルコールなんて吹っ飛ばすんだ!!

 なかなか手を動かさない俺を見て、胡桃は超至近距離で俺の顔を覗き込んでくる。

 そのうるんだ瞳やら、お酒のせいか少し上気した頬もなにやら艶やかな大人の妖艶さを醸し出してしまう。

 さらに胡桃は目をぎゅっと瞑り、俺の口元に唇を近づけようとしてくる。

 が、アルコールで動作が鈍くなっていたのか俺の右手はようやく前に伸び、自分の唇を防御する。

 そして、俺の右手の甲に胡桃の柔らかな唇が当たってしまう。

 こんなにも柔らかい感触を唇で受け止めたら……、どうなってしまうんだろう。

 いや、想像はするな。だめだ……。

「灯貴くん、キスくらい良いじゃないですか。それに息子さんもとっても元気ですよ……?」

 胡桃はさらにくねくねと腰を動かし、刺激を与えてくる。

「お、お願いだ、これ以上の描写はアウトだぁああああ!」

 って、なんのことだぁあああ!!

 と内心で思いながら、天を仰ぎ見ると誰かと目があった。

 いや、おかしいだろ。

 普通ではそんなことありえない。

 だが、確実に俺はそいつと目が合う。

 個室の上からのぞき込む、三条舞と!!!

「ま、舞さん!!」

「え、灯貴くん、マイサンがどうしたんですか……? もしかして、そろそろ直接触ってほしくなったんですか?」

 まだそれに気づいていない胡桃は能天気に、でも甘ったるい猫なで声で俺のマイサンを挑発してくる。

「ちゃ、ちゃうわい!! 舞ちゃん!!!」

 俺が天井の方を見て、そう焦っているとようやくに胡桃も気付いたのか天井に目を向ける。

「あ……」

「ってか、舞ちゃん、黙ってないで!! 助けて、助けて!!」

 天よりじっとりと俺のことを見つめる舞ちゃんは終始無言を貫く。

 そもそもなんで男子トイレにいるのかとかその辺は置いておいて、とにかくこの場は助けてほしい!!

 俺の必死な眼差しがようやくに届いたのか、舞ちゃんは器用にも隣の個室から上の隙間を伝って、俺らのいる個室に入ってくる。

 そして、胡桃を引っぺがし俺らのいる個室の鍵を開ける。

「春原くんが性欲大魔人なのだとしても、そろそろお痛がすぎるわね、子猫ちゃん」

 あ、あれ?

 舞ちゃん、ものすごく怒ってらっしゃる?

 舞ちゃんはがっちりと胡桃のせっかくのおしゃれな部屋着の後ろ襟をつかむ。

「は、放してください!!」

「黙りなさい。お説教よ」

 俺の予感は的中しているのか、舞ちゃんは異常に怖い。

 そして、助けてーと胡桃は叫びながら、男子トイレから引っ張り出されてどこかへ行ってしまった。

 その騒ぎが男子トイレの中から聞こえなくなってきた頃、俺はようやくに男子トイレを脱出できた。

 ふ、ふふ。これが因果応報ってやつだ。

 とりあえず、いつものごとくマックスの後ろにびくびくと隠れて今日は終わりにしよう。

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