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俺だってドラマみたいな恋がしてみたい!  作者: 満点花丸
第三話 人生はなかなか思い通りにならない
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十五話

 それから、少しの気まずい時間を仕事でごまかしながら、晩御飯、風呂などの一連のルーティーンを済ませたのち、宴会がスタートする。

 今回の乾杯の音頭は幹事の俺か舞ちゃんが行うことになっていたが、舞ちゃんが乾杯の音頭以外の飲み会の仕事は全部やってくれるでしょ、と俺ににこやかに囁きながら引き受けてくれた。

 ほんの少し憂鬱な気分になるが……、まぁ、舞ちゃんに仕切ってもらって俺は陰で舞ちゃんを支えよう。

 俺の隣に座る舞ちゃんは時間になると立ち上がり、

「では、みなさん、合宿お疲れさまでした。宿泊の行事だからと羽目を外しすぎず、事故のないように宴会を楽しみましょう。かんぱーい」

 と乾杯の音頭を取る。

 俺は周りの人たちと乾杯をし、席に座りなおす舞ちゃんに対して乾杯をする。

「今日はいろいろと迷惑かけてごめんな」

「いいえ、いいのよ。春原くんもこれから大きな仕事があるのだから、このくらいはお安い御用よ」

「ほんと、助かる」

 寝間着姿でリラックスしたような面持ちで舞ちゃんは俺に微笑みかけてくれる。

 化粧を落とした舞ちゃんは化粧前後で顔の雰囲気が結構変わる。化粧をしているときは普通なら大人っぽくなるはずだが、舞ちゃんの場合、逆に少し幼くなるのだ。

 化粧に関してはよくわからないのだが、すっぴんの舞ちゃんは少し目がキツめになるから俗にいう愛されタレ目メイクとやらをしているのだろう。

 すっぴんの時はすっぴんのときで元々の顔の良さもあり、美人系できれいな顔立ちをしている。

 だからこそ、中学生の時は深窓の令嬢と言われていたのかもしれない。

 中学生の頃からやけに大人びた感じだったのを思い出す。

「それより、あなたのお気に入りの二人はちゃんと仕事をしてくれそうなのかしら?」

「うーん、正直、永佳の機嫌を損ねさせちまって機嫌が直るまではどうなるのやらって感じだな。胡桃の方は意外と熱心に仕事してくれてる」

「そう。冬咲さんとはもうそんな仲になったのね」

 舞ちゃんまで、呼び名が変わっただけなのにそこを突っ込むのかね……。

 俺はあまり意識したことがないけど、普通はそういうものなんだろうか。

 それに今回に関しては半ば強引にそうなってしまっただけなのであって、俺から前向きにそうしたいと思っていないからな。

 俺は手に持ったビールを思い切りぐいっと一気に飲み、グラスを卓に置く。

「まぁ、胡桃も案外しっかりしたやつなんだよ……、それは認める」

 確かに、胡桃はやけにくっついて来たり永佳と話そうとすると邪魔してくるが、いざ仕事になると真面目にしっかりやってくれていたから見直したりもした。

 ちょっと強引すぎて怖いところもあるけど、話すだけなら別に嫌悪感もないし、意外といい子なのかもしれない。まぁ、ビッチだけど。

 周りを見渡すと、今回参加している全員が楽しそうに宴会に参加している。

 永佳もいろんな学年の男女に囲まれて楽しそうにしている。

 飲み会特有のゲームに精を出し始めている奴らもいるし、単純に会話を楽しんでいる連中もいる。

 きっと、内心もやもやしているのは俺だけなのだろう。

 飲み会を楽しめる気持ちではない。

「あ、あの。春原先輩、お注ぎしましょうか?」

 と少し顔を赤らめながら俺にそう提案してくる彼女は今年の新入生だ。

 お団子ヘアにまとめて、顔も印象に残らなさそうな塩顔女子。俗にいうモブキャラという奴だろう。

 いや、それは失礼だな。

「ありがとう、えっと君は……、確か、佐藤さんだっけ?」

 俺は彼女がビールを注いでくれるのと同時に、うろ覚えの彼女の名前を確認してみる。

「はい! 先日、学校で道に迷った時に助けてもらいまして……」

「あぁ、そんなこともあったね。佐藤さん、ちょっとモブっぽいから忘れてたなぁ」

 俺がそういうと、佐藤さんの顔が一瞬曇る。だが、俺はそれから目を背けず、続ける。

「でも、勇気を出して話しかけてくれたおかげで今ちゃんと佐藤さんのこと覚えられたよ。せっかくだし、今日はもっと佐藤さんと仲良くなりたいな」

「ふ、ふぇ……」

 と俺がいつものように自然とそんな風に絶妙にディスり、アゲとそして、ちゃんと彼女を見ていることを笑顔でアピールする。

 だが、すぐに俺の太もも辺りに指すような痛みを感じる。

「あ、あの舞ちゃん。つねるのやめて、痛いんだけど……」

 笑顔を崩さず、俺は隣にいる舞ちゃんに小声で舞ちゃんに攻撃をやめるようにお願いをする。

「雄の飼い犬が他人の雌犬に盛り始めるのをやめさせるように躾をしているだけよ」

「あ、あの、俺いつから舞ちゃんの飼い犬になったのかな?」 

 俺の言葉は逆効果だったらしく、舞ちゃんの攻撃はより苛烈になる。

 そんなに爪を立ててつねられると、出血しちゃう!!

「あ、舞先輩もお注ぎしますね」

 俺がそんなやり取りをしているとも知らずに、少し顔を赤らめながら佐藤さんは恥ずかしさを逸らすように舞ちゃんにビールを注ぎ始める。

 その行動は舞ちゃんの手が俺の太ももから離れるのにも役に立ち、佐藤さんをGJと内心でほめたたえる。

「あ、あの! お聞きしたいんですけど、春原先輩って、胡桃ちゃんと永佳ちゃんと舞先輩を三股にしてるって噂本当なんですか!?」

 はい! 前言撤回!!!

 地雷爆弾を突然投下してくるんじゃない、モブ子!!

「その噂には一つたりとも真実は入っていない。胡桃とも永佳とも舞ちゃんとも付き合ってない! ない、よな?」

「……ないわね」

 舞ちゃんも俺らの関係が嘘であることをしっかりと否定してくれる。

「そっか、そうだったんですね。そうですよね! 三股なんてドクズがやること、春原先輩がするわけないですもんね!」

 モブ子のくせにやけに毒舌だな……。

 ってか、周りから見たらそう見えるのか? 

 ある意味ではドラマみたいで内心ニヤニヤしてしまいそうになる。

 だが、大丈夫。俺の中ではすでに永佳と付き合うことで頭がいっぱいだ!

「安心しなさい、佐藤さん。彼がクズであることには変わりないのよ? だから、もしさっきので少しときめいてしまったのだとしても、サークルの先輩程度にとどめておいた方がいいわよ?」

「ちょっと、いくらなんでもひどくない?!」

 舞ちゃんは俺を思い切りディスってくるが、何もフォローする気すらないのか俺の方を見てニコニコ笑っているだけだった。

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