表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だってドラマみたいな恋がしてみたい!  作者: 満点花丸
第二話 いつもの日常と非日常
11/24

十話

 俺たちはすでに講義が始まりつつあるが、実際に履修登録等を済ませての本格的な講義は再来週からである。

 新入生に至っては、今週はオリエンテーションやらなんやらで今週は講義がない。

 というわけで、今日は新入生の課外活動のオリエンテーションが行われており、手の空いてるやつら中心で勧誘などを行っている。

 本格的には夕方から行われる合同説明会を行い、その後お食事会が開かれる予定である。

 そして、俺は永佳と共に結構に寒い外に放り出されていた。

「永佳、オリエンテーション聞きに行かなくてよかったのか?」

「まぁ、他に入るところもないしね」

「それならいいんだけど……」

 俺はそんな会話をしながら、永佳とメインストリートを歩いているとやはり例のごとく永佳のファンだという人が逆に声をかけてくる。

 それが新入生だと、自分は学祭委員に入るから一緒にどうかと永佳が声をかけては釣る。

 正直卑怯だが、マックスの目論見通りどんどん永佳という撒き餌に食いつく獲物が大量に釣れる。

「今年の新歓は楽勝だな」

「そんなこといってないでちゃんと仕事してよ、先輩」

「へいへい」

 俺は何人かの女子に声をかけては、学祭実行委員に興味はないけど、先輩には興味あるかもとか言い始めそうな積極的な女子ーずを狙い撃つ。

 これが意外と効果的ですでに何人かの女の子と連絡先を交換して、今日の新歓行きますという返事をくれている子を複数人ゲットしていた。

「ちょっと、灯貴。あんたいくらなんでも女子にしか声かけなさすぎじゃない?」

「いいじゃん、永佳が男子を誘い、俺が女子を誘う。これほど効率的なものはないだろ」

「むー、そうなんだけど、そうなんだけどさぁ!」

 と俺らが二人で話しながら勧誘していると、突如として舞ちゃんが姿を現した。

「二人ともおしゃべりしていないで、しっかりと勧誘しなさい」

「うぇ、出た。三条舞……」

 昨日の出会いが永佳にとって最悪だったのか永佳は露骨に嫌そうな顔をする。

 舞ちゃんはというと余裕たっぷりな表情で、

「というのは冗談で、春原くん、昨日の件で話があるから少しこちらに来てちょうだい」

 と合宿の件で用事があるらしいので、俺は舞ちゃんとのことを片付けてから再開することにする。

「はいよ、じゃあ、永佳ちょっと待っててくれ」

「うんー。早く戻ってきてよー?」

 永佳は少し寂しそうな顔をして、手を振ってくる。

 可愛いなぁ、まったく。

 俺は舞ちゃんの後ろについていき、教養棟の玄関の辺りにたどり着く。

 しかし、舞ちゃんは急に俺を壁際に押しのけ、ドンと右手で壁ドンをされる。

 え、っと、っちょっとどういうことなのかしら?

「春原くん、これ以上あなた目当ての女子を増やしてもしょうがないので、男子を勧誘してほしいんですけど?」

「ちょ、ちょっと言っている意味、わかりません」

 それに合宿の話じゃなかったのか?

 というか、なんで俺が女子ばかりに声をかけているのを知っているのか?

「気付いてないのかしら? 去年、あなたを目当てに入局した女子十人、全員やめているのよ?」

「でも、それってつまり俺のこと目当てに入ってくれた子が十人もいたってことだよな?」

「定着しなければ意味がないでしょう」

「運が悪かっただけだって! それに、俺のこと目当てで入るなんてそんな本当に多かったのか? 結構仕事大変だし嫌になってやめただけかもしれないじゃんか」

 俺がそう反論すると、舞ちゃんの目は徐々に尖った鬼の目になっていくように感じる。 

確かに舞ちゃんの言うことはその通りなんだけど、何もそんなに怒ることないのに、怖い怖い。

「真岸さんの采配ミスだわ、完ぺきに。ちゃんと仕事しない人を入れても仕方ないの。その尻拭いをするのは私たちなんだから」

「わかった、わかった、怖いからいったん離れて。どうしちゃったんだよ、いつも冷静な舞ちゃんはどこいっちゃったの、それに合宿の話じゃなかったのか?」

 と俺が諭すと、舞ちゃんはようやくに壁ドンから俺を開放し、ひとつため息を入れる。

「取り乱してしまったわ、申し訳ない。でも、本当に今年はたくさん集めようって真岸さんも言っているし、定着してくれそうな人をしっかり根気強く勧誘しましょう。それで合宿の件なのだけど」

「あぁ、それならもう調査済み。バス代コンパ費含めてこみこみで一人五千円行くかどうかってところだ。これまでの積み立てでコンパ費を減らせるならもうちょい安くなるかな。日程的にもどの日でも可だろうって。人数次第ではあるけど、貸し切りにできる人数がいるなら三日か四日入りがいいんじゃないかって言ってくれてたぞ」

 俺が外回りに配置変えされる前はこの時間を使って新歓合宿に関してもっと話を詰める予定だったからこそ、俺は舞ちゃんに迷惑を掛けまいとしっかりと調べておいた。

「そう……。ありがとう。それなら、セミナーハウスでもいいわね」

 舞ちゃんは少し寂しそうな表情を浮かべるが、決まってしまったことがそんなに寂しいのかね。

「じゃあ、俺戻るけどいいか?」

「……えぇ、じゃあ、また後でね、春原くん」

 俺は珍しく表情がコロコロ変わる舞ちゃんを不思議に思いながら、永佳の元へ戻ろうとすると永佳が根気よく一人で声を掛けたり掛けられたりしているのが見えてくる。

「おーい、永佳」

「あ、灯貴、聞いて聞いて」

 永佳は目を輝かせながら俺に話を聞いてほしそうな顔をする。

「この前大学に見学に来た時に知り合って仲良くなった子も実行委員の新歓に来てくれるってさ!」

「おー、よかったじゃん。早速友達できたし、一緒に来てくれるなんて」

「その子も二浪して大学入ったって言ってたから同い年なんだよねぇ。仲良くなれるかなぁ」

 お、おう。そうか。

 永佳と違い、二浪して入ったってことは相当この大学に入りたかったってことなんだろうか。

 馬鹿にするつもりは毛頭ないけど、二浪してまで入るような大学なのだろうか……。

 それとも、その子がちょっとやばい子なんじゃないかと少し勘ぐってしまう。いや、もちろん何回か浪人して入る人もそれなりにはいるんだけどな。

 俺と永佳はそれからブラブラ散歩しながら適当に声をかけて遊ぶゲームをしながら、勧誘活動を続けていた。

 多くイエスを取れた方の勝ちということで、それなりに必死に声をかけたが、さすがに永佳に勝てるわけもなく、休憩にジュースを奢らされたりなんだり。

 合同説明会も終わりいざお食事会に向かうために集合する時間になると、衝撃の展開が俺らを待っていた。

 あらかじめ予約していた店では収容できないほどの人数が集まってしまうという事態だ。

 そこで二つに会場に分散し、一つは大学近くの予約しておいた居酒屋、二つ目は繁華街の方の大箱の居酒屋を改めて抑えたところの二か所で行うことになった。

 俺やマックス、舞ちゃんと永佳は奇しくも繁華街の方に駆り出されることになり、その会場に下級生たちがはぐれないように連れていく。

 会場にたどり着き、みんなが席に着くと早速マックスが乾杯の音頭を取る。

 暑苦しくもむさくるしい涙を浮かべながらマックスは、

「新入生のみなさん、初めまして。委員長の真岸です。今日は集まってくれてありがとう。さすがに未成年にお酒を薦めることはないが、好きに楽しんでくれ。そして、あわよくば入会してくれたらありがたい。それでは、乾杯!」

 と乾杯を促す。

 先に話していた注意事項としては、飲ませない、この一点に尽きる。

 俺たちの目の行き届かないところで勝手に飲まないように、できる限り俺らも酒は注文しないということだったが、実際どれほどそれが守られているかなんてもはや気にしていられない。

 俺は乾杯の時に手渡されたビールのグラスを回りの人々と乾杯していると、後ろからちょんちょんと肩を叩かれる。

「せっかく席座ったところあれだけど、友達紹介したいからこっちきて、灯貴」

 と永佳は俺の同期の女子を引き連れて俺に話を掛けてくる。

 なんだよ、まったく……。

 俺は席を立ち上がり、永佳たちがいる女子だけの卓へ移動させられることになり、俺の代わりに同期の女子が仕方ないというような表情をしながら、俺の席に座る。

 すまんな、モブ同期ちゃんよ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ