ゴブリン
「おい、拾ってきたぞ」
「ずいぶん時間かかったのう」
「いや~、俺解体見たくなかったんだよね」
「そうじゃったんか。そう言ってくれれば呼びに行ってやったんじゃかな」
「あと、ゴブリンと対峙したぞ」
「逃げてきたんかの」
「いいや、倒してきた」
「そうか、ならその死体は埋めて来たんじゃろうな」
「いや、そんな事はしてないぞ」
「おい、ゴブリンはああ見えて鼻がきくんじゃ」
「俺ゴブリン殺したけど、血も何も流してないぞ」
「そうか、でもなあいつら体臭がきついんじゃ」
「そうか、そこまで臭くなかったけど」
「臭いのはゴブリン内だけじゃ。あ奴らは自分たちのにおいで場所を判別できるんじゃ」
「つまり」
「そこに死体を置いておくとゴブリンが見に来るんじゃ」
「そして・・・」
「仲間を呼んで来て殺した奴を探すんじゃ」
「俺今からでも埋めてくる」
「もう手遅れじゃ」
「どうしてだよ」
「もう死体がある場所についてるじゃろ」
「行ってみないと分からないだろ」
「もし、いなくても探しに来とる。もし出会ったらどうするつもりじゃ」
「ック」
「分かったらここで夜飯食ってどこか少し離れて寝るしかないんじゃ。まぁ殺し方が魔法で良かったな」
「どうして」
「ゴブリンが持ってるものに少しでもかすればにおいが残るからな」
「そっ、そうか」
「お主まさか死体触ったのか」
「え~っと、その枝で」
「つまり、少なくともここには来るじゃろうな」
「じゃあどうすんだよ」
俺はギリギリ『リバイブ』で倒せるけど爺はMPほとんど余って無さそうだしな。
無理に回復すれば爺が倒れる。
どうすれば。
きっとここに来てその後の煙の臭いを追って俺たちの所に来る。
くそ。
俺が無知のあまりに。
あぁ、めんどい。
異世界のくせにどうして俺がチートじゃねぇ~んだよ。
「飯を食ったら川を渡るぞ、分かったかのう」
「分かった。でも、悠長に飯なんて食ってていいのか」
「あやつらは結局頭が悪い。正しい決断が遅いんじゃ」
「つまり、何度か間違った判断をするって事か?」
「そうじゃ、でも急いで飯を食うぞ」
「おう、飯を見せてくれ」
「そうじゃな。ちょっと待っとれ」
きっとテレビで見るようなすげー調理何だろうな。
ワクワクするぜ。
どんなんだろうなぁ~。
早く帰ってこないかなぁ~。
あぁ~、腹がなるぜ。
「おし、これじゃ」
「えっマジで」
「大体こんなもんじゃろ」
俺の目の前にはなんと二体の得物を解体して焼いたものが出てきた。
単なる燻製肉と焼き肉だった。
きっと山だから何か山菜みたいなものがあると思ってたのに。
料理が出てくると思ったのに。
男飯とは・・・・。
はぁ~。
長年受け継いだ知恵はどうしたんだよ。
てか、爺食いだしたし。
「どうした、食わんのか」
「食うよ」
「そうか、さっさと食うんじゃ」
「ああ」
ちょっと。
いや、かなりショックだ。
飯を食い終えた俺たちは木の棒に熊か鹿か分からんが油を塗り川とは逆に歩き出した。
「川渡るんじゃないのか」
「渡るぞ。じゃがな、いきなりそこで臭いが消え取ったら怪しいじゃろ」
「まぁそうだな」
「そのためにこっち側に臭いを持ってきてるんじゃ」
「なるほど」
「さらにこの油を撒いておくんじゃ」
「においを広めるためか」
「いいや違う。合っとるところもあるが主には罠じゃ」
「何を起こすんだ」
「この火種を置いておき一網打尽って寸法じゃ」
「なるほど、これで俺たちの方へ来るゴブリンの数をより少なくしようって事か」
「そうじゃ、さっきの焚火にも罠を仕掛けてあるんじゃ」
「村長地味にやるなぁ~」
「派手にやるんじゃ」
「そういう意味じゃねぇ~よ」
「まぁ、それはともかく。さっさと川に行くぞ」
「はいよ」
これで襲われるリスクが減ってきたな。
このままいけばゴブリンたちに襲われることもなさそうだ。
まだ、この世界に来て二日目なのにかなりの疲労感だ。
はぁ~。
ゆっくり休みたい。
急いで川を渡りたい。
そのまま寝床見つけて寝たい。
「こっちから渡るぞ」
「了解。って川底見えないんだが。さっきの浅いところから渡ろうぜ」
「何言っとるんじゃ。わしらのにおいも消すんじゃから体全部が川につからんと意味がないじゃろ」
「マジか」
「マジじゃ。さっさと入らんか」
そうだな。
嫌がってる暇はないな。
ゴブリンに追いつかれたら面倒だしな。
よし、行くか。
「ふっけ」
「こっちじゃ。」
「おう」
爺は川の流れを理解してる。
こればかりは経験則。
つまり『長寿の勘』の効果か。
なかなか、生きながら勝手に効果が出てるのか。
なかなか、すごいスキルだなぁ~。
このスキルマジで化け物だ。
少しでいいから知識分けて欲しいな。
「おい、流されてるぞ。しっかりついて来るんじゃ」
「すまん」
かなり流れが強いな。
泳ぐの得意じゃないんだよな。
でも、まだ海水じゃなくて良かった。
海水じゃ目開けれないし、辛くて口に入ったらたまったもんじゃないしな。
「あとちょとじゃ踏ん張れ」
「おう」
爺が俺の事を無理やり引っ張てくれるから結構楽だ。
俺も筋トレとかした方がいいのかな。
近接は無理だろうしなぁ~。
他の攻撃魔法覚えようにも魔法攻撃力0だしなぁ~。
威力出ないんじゃ意味ないし。
どうしたもんか。
こうなったら蘇生魔法回復魔法の出来るだけ効果がある魔法覚えて行くしかないな。
一応リセットってあったし『ヒール』とか忘れて『ハイヒール』とか覚えればいいか。
おっ、足がそろそろ着きそうだ。
「よし、上陸」
「ここから離れるぞ」
「おう」
「早く寝たいじゃろ」
「そうだな。マジで俺は疲れてぶっ倒れそうだ」
「ゴブリンも来る可能性が高いから木の上で寝るんじゃ」
「本気で言ってるのか」
「当たり前じゃろ」
「落ちたらどうすんだよ」
「落ちないようにするんじゃ」
「どうやって」
「これじゃ」
爺が持ってたのはロープだった。
絶対体にくくりつけるつもりだろ。
どうやって寝るんだよ。
辛くて寝れるわけないだろ。
クソ、絶対この爺は何も無くても寝れるくせに。
「一応聞いとくがそれどうするんだ」
「お主の体と木を括り付ける」
「やっぱりな。それで寝れるわけないだろ」
「大丈夫お主疲れとるじゃろ」
「まぁそうだけど。それで寝れるわけないだろ」
「一回やれば分かる。騙されたと思って一回やってみるんじゃ」
「寝苦しかったらすぐに解けよ」
「分かっとるわ」
俺は自ら体を縛られ木の上の方で寝ることにした。
あぁ、手足動かねぇ~。
寝れるわけねぇ~だろ。
でも、今日はいろんなことがあったなぁ~。
思い直すだけでも面倒なくらいに。
こんなところじゃなくて、もっとちゃんとしたところで・・・




