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第8話 「新たな出会い」

「~♪」


“ラノッヒ”の街道を楽しく歩く俺。

何が楽しいかって?

それはもちろん、

これから魔王に会いに行くからだ。

どんな魔王かはゲームで見たが……

実物を目の前にする機会はそうそうないだろう。だからこんなにワクワクしてるわけだ。


「あ、ミルク……」


みやげにミルクでも持っていこうか。

……帰りにも買っとこ。

アイツら飲みたいっつてたからな。


二人に情が入ってしまっている俺。

ちなみに……セミナとテレアは意外なことに

大人しくあの部屋で待つらしい。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「もしアンタが魔王を奴隷に出来たら……そうね、胸見せてあげる」


部屋を発つ前、セミナが突如挑発的な言動で言った。

どうせあんたには無理でしょうね、と鼻を鳴らすセミナ。

そこまで言うという事は、魔王は相当強いわけだ。


「誰の?」


それはともかく、俺はそう質問する。


「わ……私のよ」


「OK、待ってろ」


まずかったかしら……と言わんばかりの表情を

するセミナ。

ふう、危なかった。

誰の胸とか言ってないからなコイツ。

主語の確認は重要だ。


ちなみにあの部屋は必要最低限の生活用具

しかないわけで、退屈しのぎにと

オヤジからもらった [ウフフな本] を二人に

渡しておく。


「よく、読んでおきますね……」


テレアは何かを期待してるかのような目差しで

そう言った。……考えないでおこう。


「……」


ちなみにセミナは無表情だった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ということだ。


「…お?」


この街の出口に向けて移動していた時、

棚に並べているミルクを

売っている店を見つけた。


その名は……“エルフ商店”。


あれ?どっかで聞いたことがある名前だな。

なんだっけ……


「あ」


そうだ、あの部屋にあったメモ帳だ。

そのまんまじゃねえかって思ったんだっけ。


せっかくだし、その店に出向くことにした。


「いらっしゃいませ~」


なんだかセミナとテレアの声とはまた

違った感じの声。なんというか……透き通った感じだ。


「何にします?」


その声の主である女は、やはりエルフだった。

太陽の光に反射して少し輝く銀髪が印象的。

そして、黄緑に近い緑色の瞳をしていて……

美女とも言える顔立ち。何よりも、

おっぱいが大きかった。

それに店主らしくエプロンを付けている所も

またキャップがあって良い。

……Sランクを付けるぐらいの魅力さ。


「おっぱいを売って下さい」


「……え?」


俺の言葉に少し目を開くエルフの店主さん。


「え? あ、い、いや……ミルクを下さい!」


あまりにもの魅力的だもので、

つい本音が漏れてしまった。

何してんだ、俺……


「は、はい……ミルクですね」


エルフの店主は恥ずかしそうに、

体を前に持って棚に並べている

ミルクを手に取る。


「20ゴールドです」


そして、何事もなかったように

値段を言うエルフの店主。


「……はい」


今度は手ぶらだからぴったり出せた。

そして、1本のミルクを受け取る。


「ありがとうございましたー」


そして笑顔で頭を下げてくるエルフの店主さん。……このままでは気まずい。

何か言わなければ。


「あ、あの……店主さん」


「? 何ですか?」


相変わらずの笑顔で対応するエルフの店主さん。


「このミルクって……どうやって保存するのですか?」


「え?」


その質問の意図が掴めずにいる店主さん。


「ああ……お恥ずかしい限りで、私田舎生まれでして。食料を保存出来るほど豊かではなかったんです」


思いついた設定を、俺はそのまま店主さんに

話す。


「なるほど……」


至って真剣な表情で頷く店主さん。


うぅ、そんな真剣な表情をされると

なんだかこっちが悪いことしてる気分になってくるよ。


「基本的な保存方法は、“レイゾーコ”を使うんですよ」


「レイ……ゾーコ?」


“ゾ” を伸ばしただけで、明らかに冷蔵庫だ。

俺はそう確信した。


「ええ、ここでも一応売ってはいるんですが……」


これからお家の方に戻られます?と

聞いてくる店主さん。


「いえ、大丈夫です。」


俺は咄嗟に店主さんの手を両手で取る。

当然、店主さんは驚く表情をする。


「次の機会に買わせていただきます、必ず」


そして少し強めに握る。

店主さんの手は華麗で、柔らかった。


「ぁ……はい。待って、ます」


店主さんは何故か顔を赤らめてそう言った。


……はっ、何してんだ俺!?


ここまで来て、自分のしたことに気づく。

俺は、慌てて彼女の手を離す。


「じ、じゃあまた!」


「あ……」


そう言って俺はこの場から逃げるように

早歩きで去る。


「ふふっ、おかしな人」


その時、店主さんが恥ずかしながらも、

笑っていたのを俺は知る由もなかった。


……帰りにも買っていこう。絶対に。

そう思ってこの街を出たのだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「さて、と」


“ラノッヒ” を出てすぐ右側にある林の中に

移動する。魔王のいる場所…

まあ、魔王城と呼ぶとしよう。

もちろん、魔王城はそんな所にはない。

なんのためにそこに移動するかというと、

他の人に見られたくないからだ。

それはこのスキルを見れば分かる。


[瞬間異動]


消費MP:10


行きたい所を思い浮かぶだけですぐに

その場所に行ける。

ただし、存在しない場所は不可。

このスキルを発動した際、まばゆい白い光を放つ。


何故“瞬間移動” ではなく、“瞬間異動”なのか。

それは多分……ただの変換ミスだろう。

会社に入って1秒で異動させられそうだが、

中身はちゃんと“瞬間移動”になっている。

それと最後の一文……“まばゆい白い光を放つ”と

書いてある。

街道でこのスキルを使いでもしたら

確実に目立ってしまう。

俺としてもその事態は避けたい。

だから林の中で使う、というわけだ。


「よし」


しっかり魔王城をイメージする。

幸い、このゲームをやり込んでいたものだから

魔王城がどんな所かは簡易にイメージ出来た。

それから、このスキル使用の枠を押す。


「おおっ」


すると、体からまばゆい白い光が放ち始め……

あまりにものまぶしさに自ら目をつぶってしまう。


……

…………

………………

やがて真っ白な視界がどんどん

明けていき、周りの景色が鮮明になってくる。


「……」


何本かの柱が一定の距離ごとに並んでいて、

地面には、赤いじゅうたんが椅子に向けて

まっすぐ並んでいた。

赤いじゅうたんをゆっくり辿る感じで

目線を動かして……

いかにも魔王という感じなの立派な椅子に

ひじ掛けをして足を組んでいる魔王と目が合う。


「なんだ、貴様……?」


ひじで頬に当てて顔を支えているポーズ……

いわば魔王っぽいポーズを取っている。

いや、魔王なんだけども。

というか……いきなり魔王の目の前はないでしょうよ。


「突然白い光が現れたと思ったら……随分と派手な登場だな、人間」


魔王は、眉をしかめて、俺を睨むように見る。

その頭には漆黒の色をした立派な角が生えていた。髪は地面に届きそうなほどの長さで、

魔王らしい黒色。

流石魔王というだけあってその迫力は

伊達ではなかった。だが……今の俺には

さほど迫力は感じなかった。

何故か? それは……


「おっぱいでけぇ」


「……はぁ?」


魔王は目を疑うような表情を浮かべる。


前にも言ったが、魔王は女だ。


やっぱり……魔王クラスになるとおっぱいも

テレアに負けないぐらいに大きかった。


「ふむ」


彼女が着ている人服を眺める。


彼女が着ている服は、ドレスをかじった感じの

黒いドレス。胸の所は露出度が高くて、

隆起が見えてしまいそうなほどの

きわどいライン。


というか……動くだけでポロリしてしまわないのだろうか?とこちらがハラハラするほどのものだった。


「……ッ」


魔王は嫌なものを見るかのような目で

腕で胸を隠すような仕草を見せる。


……そんな露出度が高い服着てたら、

目が行くのは仕方がない。


ここにいない誰かに向けて心の中で

そう言った。


つづく


次回予告


ついに魔王と対峙したラロス!

はたしてどうなるやら─────────




面白かったら幸いです。

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