第31.3話 「口から語り始める過去」
30.3話
「せめてのお礼に、一泊して行きなされ」
そう言った陛下の言葉に、私達はありがたく受け入れ、こうして広い部屋にいる。
もちろん、ラロスは別部屋である。
……この城にいるメイド達が急きょ空いてる部屋の掃除に励んでくれたそうだ。
「綺麗ね……」
長年使われていないなんて嘘みたいに綺麗だった。丁寧にベッドのシーツもしいてある。
なのだけど。
「なぜ一つしかないのかしら……」
ラロスの部屋にあるのとは一回り大きいベッド。余裕で5,6人は寝れそうだ。
「いいじゃないですか、セミナさん。親睦を深めるにはもってこいですよ」
私も同じくお風呂を終えたテレアがそう言う。
言わずもがなパジャマ姿だった。
女である私が思うのもなんだけど……本当に“一等品”のおっぱいを持ってるわね。
パジャマだからか、胸の存在感がいっそう増したテレアを見て私はそう思った。
「それにしても、城だからか……お風呂も立派だったな」
「ええ、そうね」
同じく風呂を終えたロエルがベッドに寝転がってそう言う。彼女もパジャマ姿である。
……テレアと同じレベルがもう一人。
ロエルもまたしかりだった。
「いいお風呂だったわね」
「うんっ」
そして最後の二人が、この部屋の扉から入ってくる。
……ぐっ、セレラ。私といい勝負ね。
セレラはロエルとテレアに比べると一段劣るが、それでも私とはいい勝負だった。
……あれ?
私、なんかラロスっぽくなってない?
冷静になって考えると、少しばかり焦った。
「さあさあ、食べましょう~」
深夜であるにもかかわらず、クッキーなどの軽食類を入れたいくつかの袋をベッドの上に置く。
「わぁ、いただいてよろしいんですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。たんとお食べ♪」
そう言われたティニアは真っ先にクッキーをぱくぱくと食べ始める。
「ありがとう。頂くわ」
健康に気遣ってそうなセレラも食べ始める。
ううむ……深夜だぞ、今。こんな時間に食べたら太るのでは……。
「ん、美味いなこれ」
そして、いつのまにかロエルも食べ始める。
「そうですか? ありがとうございます。手作りなんですよこれ」
「ほおー」
「え、そうなんですか! 今度作り方教えて貰いたいですか~」
「いいですよ。今度一緒に作りましょう♪」
などと聞かれたら食べたくもなるだろう。
「……」
「ん? セミナ。お前は食べないのか?」
「た……食べるわよもちろん」
ヤケ気味にクッキーを手に取り、一口でぱくっと食べる。
あ……美味しいこれ。
「セミナさん……そんな急がなくてもクッキーは逃げませんよ?」
「わ、わかってるわよ」
ええい、もうどうにもなれ。
今日だけは自分のやりたいようにやる。
それでいいんだ、私は!
「そういえば、セレラさん」
「なんでしょうか?」
「話は聞きましたが……陛下に恩があるとか」
「ええ……そうですね、例え忘れたくても忘れられない恩があります」
そう言ってセレラはにこっと笑う。
「そうなんですか……セレラさんさえ良ければ、私達にも聞かせてくれませんか?」
「んー……」
そうお願いをするテレアに、セレラは考え込む。そして……
「そうですね、長くなりますが……それでもよろしいですか?」
「ええ、私は良いけど……皆はどうかしら?」
「我は別にいいぞ」
私がクッキーをぱくぱく食べている間にいつのまにか話は進んでいた。
「……どんな話か聞いてもらおうじゃないの」
私はそう言った。正直なところ、気になるから。
「そうですか……では、話しますね」
彼女はベッドにちょこん、と座りティニアを
膝の上に座らせる。
「わわっ、お姉ちゃん……」
セレラは、そんなティニアの頭を優しく撫でる
。
「ティニアも、いいよね?」
「……うん」
ティニアの承諾を貰えたセレラは、
話をし始めるのだった─────────
つづく