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第28話 「タマスとの対面」

隠し扉に入り、歩いて早5分。


「よし、ついたぞ」


左右上に火が灯っているロウソクが1本ずつあって、その神秘的なオレンジ色の光が扉を照らしていた。


あいにく、この隠し扉の奥にある道は

一本道で迷う必要はなかったためある意味助かったと言える。


「や、やっと着いたぁ?」


「こわかった……ですぅ」


後ろにいた女性陣から安堵の声が聞こえ始める。


……ま、そりゃそうか。

真っ暗の中5分も歩いていたら不安になるか。


そして俺は扉に向き直す。


「大丈夫か、みんな?」


女性陣に向けてそう言うと、ええ。大丈夫よ。我はこんなぐらいでくたばらん。とかそういう声が聞こえてひとます安堵。


「セレラ」


「え……はい、なんでしょうか」


「この扉の先には、もしかしたらお前の見たくないものが待ち受けているかもしれない」


「……!」


「いっそ、見ない方が……見ないふりをする方が楽かもしれない」


セレラは、長い間タマスの言うことを信じてやってきた。信じていたのに、裏切られるというのは誰だって辛いもの。いっそ、知らない方がよっぽと楽だ。


そして、俺はセレラの方を振り返る。


「それでも、お前にそれを受け止める覚悟はあるか?」


「……」


彼女は考え込むように、顔を伏せる。


もし、彼女が覚悟を持てないというのであれば……ここで待っててもらおう。無理強いは出来ないからな。


こうして少し待った後。

彼女はゆっくり顔を上げる。


「はい……私なら大丈夫です」


「そうか」


彼女の瞳はどこか力強いものが宿っていた。


他の皆にも目を向けると、先ほどの疲れた表情など嘘のように、皆して真剣な表情で俺を見つめていた。


「よし、開けるぞ」


そして、その扉のドアノブを回す──────


┈ガチャ┈


「……」


「…………どうかしたんですか、ラロスさん?」


一向に開ける気配がない俺を心配したのか、

セレラがそう声をかけてくる。


「いや……」


締まりが悪いなコレは。こんな真剣なムードの中で鍵がかかっているなんて。


「この扉のすぐ近くに気配を感じるんだ」


そう……女性陣に誤魔化しておく。


「気配?」


「ああ。ちょっと待っててな」


セレラにそう言って、俺は女性陣に見えないようにスキル一覧を開いて、“施錠解除”を発動させておく。


「よし……行くぞ」


今度こそ、ドアノブを回す。


……よかった、無事鍵は開かれたようだ。

本当に便利だな、“施錠解除”。


そして、ゆっくり扉を引く────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


扉の中は、至って普通な書斎だった。

右を見ても左を見ても本棚に大量の本がすらーっと並んでいた。


「……なんですか、君は」


タマスは、奥にある机の上に何枚かの書類を書き込んでいた。


「どうやって入りました? ましてやあなたのやうな不埒な者が……」


そう言葉を並べるタマスを遮るかのように

俺はこう言い放った。


「どうやってとかは、どうでもいい。それよりもコイツがお前に用があるらしいんでね」


「用……?」


そして、俺の後ろに隠れていたセレラが

タマスの前に姿を現す。


「セレラさん……!」


彼女を見たタマスは、少し目を大きく開いた。

セレラにだけは、ここに入る寸前、“気配隠蔽”を解除しておいた。


「タマス様……あなたが、陛下を手にかけようとしたのは本当ですか」


心の苦痛を感じる表情を浮かべながら、彼女はそう言った。


「……」


そういうセレラを、じっと見つめるタマス。


「……ふふ、ふはははっ」


そして、タマスは不気味な笑いを上げ始める。


「私より、そんなどこの骨かも知らない者の言うことを信じるんですか?」


「……」


そんなタマスの言葉に、セレラは顔を伏せる。


「陛下が倒れられた責任を私に押し付けるなんて……おごかましいにもほどがありますよ、セレラさん!」


反論する暇を与えないように言い立てまくるタマス。


今、俺は純粋に思う。


ツバ飛ばしすぎだ、お前。


タマスは喋るたびに大量の小さなツバを周りに撒き散らす。この書斎の壁にある大量のろうそくの光がツバに反射して光っているからだ。


汚ねえ……くそ、こんなやつが上司の立場かよ。すげえな、セレラ。


俺はセレラに畏敬に近いものを感じていた。


当然、セレラ以外の女性陣は思いっきり嫌そうな顔をしていた。ティニアはこれでも慣れた方なのか、そんな嫌そうな顔はしていなかった。それでも嫌は嫌だが。


「……」


もうこれ以上ツバを撒き散らすのは見たくないため、タマスの話を遮ようと俺はポケットに入れていたメモ帳を取り出す。


「あー“つくづくバカな娘ですね。陛下はまともに話が出来ない状態だと言うのに”だっけか」


そして、そのメモ帳に書かれていたセリフを

復唱する。


「……は?」


「“ティニアさんがいなくなったことは想像外ですが……まあ、あの娘をコントロールしやすくなったと思えば喜ばしいことです”」


「ら、ラロスさん……何を言っているんです……?」


戸惑いを覚えるセレラを横目にして、

言葉を繋げる。


「“ティニアさんを探すとなると金がかさみますし”」


タマスの方を見ると、顔を伏せて肩を震えていた。


「“ふむ、似たような遺体を用意してあの娘を納得させるというのもいいかもしれないですね”」


「なっ……!!」


それを聞いたセレラは、タマスが言っていた言葉だと理解したのか……タマスの方を向く。


「本当ですか!? そんな、酷いこと……!」


強い声でタマスに問いかけるセレラ。


何故このようなことを?


こうでもしないと、タマスの奴いつまでもシラを切るような真似をする気がしたからだ。


「……」


タマスは顔を伏せたまま動かない。


「タマス様ッ!!」


今までで一番大きな声でそう言うセレラ。

そんな彼女に、タマスは反応したのか……

ゆっくり顔を上げた。


その顔は……笑っていたが、邪悪にまみれた表情だった。


つづく

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