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第14.5話 「女たちの本音」

「…ふぁ」


私───テレアはふと、深夜に目覚めた。

ベッドに膝をついて少し体を起こして回りを見渡す。


「……?」


あれ……ラロスさん、トイレかな?


ラロスの姿がいないことに気づいたテレアは

今の自分の姿勢を解いてべッドに寝直す。


「起きていたの、テレア?」


「わっ、びっくりした……」


突然声をかけられたものだから、びっくりするじゃないですか。とセミナにそう言うテレア。


「あはは、ごめんって」


「もう……」


セミナは体ごと私に向けていて、顔もこちらを向けていた。

この人とは長い間一緒に旅した仲間だけど、いくら見てもやっぱり力強い瞳が綺麗に映った。


そういえば、セミナさんって……

ラロスさんのことどう思っているんだろう?


「セミナさんは……その」


「んー?」


深夜だからなのか、それともこの状況が

特別だからなのか、セミナはいつものあの締まりがきいた表情ではなく優しい表情だった。


「ラロスさんのこと、どう思っています?」


「……ラロス、ねぇ」


意外だった。彼女は優しい表情を変えずに、

天井を仰いで考え始めたからである。

いつものセミナなら……


『はぁ? ラロスなんておっぱい魔人以下よ』


とか言いそうなもんです。

いや、おっぱい魔人以下って何? っていうツッコミはナシにして。


「うーん……ハッキリ言って、変態ね」


清々しいほどの表情でそう言うセミナ。


「ふぁ」


へ、変態と来ましたか。

うぅ……確かにラロスさんは変態ですけど。


「出会ってすぐ胸を触ってくるし。その時はもう“コイツ殺す”なんて思ったわ」


「そ、そうですか」


「ふふっ、でもね……少しの間だけどラロスと一緒に過ごして分かったこともあるの」


「分かったこと?」


「ラロスはどうしようもないおっぱい好きだけど、そこまで悪い奴なんかじゃない」


そう言ったセミナの表情は至って穏やかな表情をしていた。


「セミナさん……」


「まあ、一緒に過ごすと言うよりも、過ごされてると言った方が正しいけどね」


ふふっ、と軽く笑うセミナ。

それにつられてテレアも軽く笑ってしまう。


「ラロスさんのこと、少なくとも悪くは思っていないってことですよね」


「ん、まあ……そうだけどね……」


どこか歯切れが悪いセミナ。

どうかしたのか、と私は聞いてみる。


「ほら、ラロスっておっぱい魔人じゃない」


「そうですね」


私もこれには賛成だ。

普通の男の人はおっぱいに興味があるぐらいは知っているが、ラロスさんはそれを凌駕するぐらいの執着ぶりだ。

……なにしろ、女性を目の前にして“おっぱいを語り合う会”なんて言うから。


「おっぱいに興味を持つのはいいけど、出来れば普通の話もして欲しいわね」


「え? 興味を持つのはいいんですか?」


またまた意外だった。

セミナのことだからおっぱいに興味を持たれるのは嫌だと思っていた。


「当たり前じゃない。おっぱいに興味を持つと言うことは、女として意識している。でもあるじゃない。女として意識されないよりはマシだわ」


「な、なるほど」


確かにそうなのかも。

おっぱいをジロジロ見られるのは嫌だが

全く気にも留めないというのは……それはそれで嫌かもしれない。


「ただ、ラロスの場合は……ストレート過ぎるのよ」


「あぁ、確かに。“おっぱいを語り合う会”とかですね」


その言葉を聞いたセミナは軽く笑う。

その笑いは、失笑などではなく……

ラロスに対しての好意を込めた笑い。


「そう。あんな男、初めてだから……なんだか気になるのよね」


「ん? え? 気になる?」


「あ、き、気になると言っても人としてね? 男としてじゃないからホントに」


やけに慌てた様子で言い直すセミナ。


これは……また一人ライバルが増えましたね。


と悟ったテレアだった。


「そ、それよりもテレアはどう? 立派なおっぱいしてるから」


「わ、私ですか!?」


話を逸らすように話題を私に移してくるセミナ。そんな状況に少し驚きを覚えてしまう。


「ええと、実は、このおっぱいコンプレックスなんですよ」


「え、そうなんだ……意外だわ」


そう、私はこのおっぱいにコンプレックスを感じている。一部の人には批難されそうだが、

大きすぎるのである。普通に歩くたびにおっぱいが、ぷるん……と揺れてしまうのだ。

そのせいで人の目が気になってしまう。

もちろん、周りはそんなことしないのは分かっていたが……それでも気になる。


「でも、こんなコンプレックスもいいかなって最近思っていたりします」


そういって私は自然と微笑んでしまう。


「それは……やっぱりラロス?」


「はい。ラロスさんは、私が要らないと思っていたこのおっぱいを……“一級品”だと言ってくれました」


そして、私は胸に手を置く。


「嬉しかった。私はこのままでもいいんだって思わせてくれた人だから……」


「そっか」


そんな私を見て、セミナさんもまた

嬉しそうな表情を浮かんでいたのでした。


「こう思うと……ラロスって凄いよね。セクハラまがいなことしてるのに、何故か最終的には許してしまうのよね」


「ぷっ。確かに言えてます」


ふふっ、と私たちは二人して笑いました。

もちろん私の隣に寝ていたロエルさんに配慮して小さな声で。

だけど……そんな配慮もいらなかったようです。


「……ふん」


そんなテレア達に返事するかのように鼻を鳴らすロエル。


「なんだ、ロエル起きてたの……ってあれ? ラロスは?」


そんなロエルさんを覗き込むように、

ベッドに膝をついて周りを見渡すセミナさん。

そして私と同じくラロスさんがいないことに気づきました。


「トイレだと思いますよ」


「あぁ」


私がそう言うと、セミナさんは納得したように

バタッ、とベッドに倒れる。


結局、その後セミナさんはトイレから出てくるラロスをからかってやろうと待っていたのですが、なかなか出てこないため……諦めて寝ました。


ラロスさん……トイレ長すぎですよ。

あ……も、もしかして男だけしか出来ない処理でもしてるのかな?


そう思うと恥ずかしさが込み上げてきて

私も布団を被るように寝ました──────


つづく


次回予告


ラロス編に戻ります。


面白かったら幸いです。

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