第13話 「ミルクの飲み方」
“レイゾーコ”のコードをコンセントに挿して
いつまでも使える状態にしておく。
この異世界にも、コンセントってあるんだな……と感服していた。
「……」
俺は無言でイスに座り、テーブルに腕を置いてもう片方の手でミルクを飲む。うん、美味い。
俺はあまりミルクを飲まない方だが、
こうして飲んでみると、毎日飲むのも悪くないかもな。なんて思ってしまう。
……あの店主さんにも会えるし。
「んはッ」
やけに色っぽい声を出す主の正体は、テレア。
いがみ合っている二人の前にミルクを
見せびらかしたらすぐに食いついて来た。
改めてミルクの威力はすごいなぁなんて思ったのだ。
「はぁッ」
次に同じく色っぽい声を出す主の正体は
ロエル。そう、魔王なのにミルクが大の好きというのが印象的だったのだ。
……というか、お前らミルク飲むだけでなんでそんなにエロいんだ?普通に飲めよ、普通に。
「あっ……」
またもや色っぽい声が聞こえる。
なんだ、と思い声をする方を振り向くと……
「!!」
そこにはあまりにも過激すぎる景色が広がっていたんだ。何故なら……テレアがミルクを少しこぼした。こぼしただけならまだしもそれが服の下に隠れている大きい胸の上にこぼれ落ちたのだ。
そんな馬鹿な……ミルクだぞ。
ミルクなはずなのに、まるでそれが違うものに見えてしまうのは気のせいだろうか。
「あぁ……もったいない……」
そして本当に何故か分からんが、艶かしい表情をして、彼女は胸をゆさゆさと揺らす。
何故そこで揺らす。俺を誘ってるのか?
くそ……本当にいいおっぱいしてやがるぜ。
それを見て何かが反応しそうになったのは
ここまでの話だ。
これ以上見るのは危険だと思い、
ロエルの方を見てみる。
「はぁ……ッ」
……ロエル、お前もか。
どこかで聞いたような言葉を思い浮かんで
彼女を眺めた。
ミルクを一気に飲むのではなく、ゆっくり飲んで味わうかのように飲む。それだけならいい。
なのだが……何故舌を出す?
彼女はミルクの飲み口に近づける時、
なんでそういうことをするのかはわからんが、
いやらしく、口を開いてそこから舌先を
出して……自分の口が飲み口に接触すると、
出した舌先をゆっくり引っ込んで、飲む。
この部屋の電気から放つ光が反射して
少し輝く舌が……うん、エロい。
なんでそういう飲み方するんだ?
くどいようだが、普通に飲めよ。
コイツ本当にあの魔王か?
初めて会った時のあの魔王の面影は完全になかった。
ロエルの方も危険だと思い、
今度はセミナの方を見て見る。
「ごくごくっ、ふぱぁ!」
セミナはベッドから立ち上がり、まともな飲み方をしていた。今まで、まともとは思えなかった彼女が今初めてまともに思えてきた。
「……何?」
そんな俺の視線に気づいたのか、セミナは
こちらを振り返る。
そんな彼女に俺はニッコリと笑顔を浮かべる。
「ありがとう、セミナ。どうかそのままでいてくれ」
「あ、ああ……うん?」
なんだか歯がゆいなぁ、と彼女は
少し照れながら残りのミルクを一気に飲み干す。
飲み干した後の彼女の幸せそうな表情を見ると
なんだかこっちまでホッコリしてくる。
「セミナ、もしかしてお前もミルクが好きなのか?」
そんな彼女に、ロエルが声をかける。
「ん? ああ、いや……そこまで好きではないんだけど……」
そして彼女はロエルに耳打ちをする。
何を言ったのかは聞き取れなかった。
「なんだと……ミルクにそんな効果があるのか」
彼女は納得したように、自らの胸を眺める。
「ええ、ハッキリ言ってあなたの……羨ましいわ」
「ん、羨ましいのか。言っとくが大きい胸というのは何もメリットだけじゃないぞ」
「そうなの? 詳しく聞きたいわ」
……ミルク、飲んどこ。
俺は、まだ半分も残っているミルクを一気に飲んだ。
そして二人の方を見てみると、いつの間にか
テレアも参加していて3人で楽しくガールズトークをしていた。
その日の夜は本当に苦労した。
なぜなら、テレアとロエルが俺と添い寝したいと言い出してまたもやいがみ合い始めたのだ。
あいにく、この部屋にはベッドが一つしかない。ベッド一つに、4人。
どう考えても狭いのは明白である。
幸い、ベッドはダブルベッドで女三人でなら
何とか寝れるぐらいだ。
「俺が椅子で寝るからお前らはベッドで寝ろ」
「いえ、ラロスさんをそんな所で寝かせる訳にはいきません」
「ラロス。我はお前が大事なんだ。椅子なんかで寝かせるぐらいなら、せめて一緒にベッドで寝よう」
そう言うと、テレアとロエルは反対してくる。
いや……その……傍から聞けば、喜ばしい限りである。だが、これがずっと続くと思えばゲンナリしてしまいそうだ。
「はぁ……」
ため息を吐いてから、二人を軽く睨んでこう言った。
「大人しくベッドで寝ろ。女に椅子で寝かせる訳には行かねえよ」
軽く睨んだはずが、何故か二人は赤面をして
瞳をうるうるとして俺を見つめる。
「そ、そこまで言うなら……分かりました」
「我は嬉しいぞ……ラロス」
おやすみなさい、と少し恍惚とした様子で、
二人は同じベッドに入っていく。
……なんだ? 何が起きた?
よく考えれば分かることだが、俺は考えないことにした。ちなみにセミナは遠慮なくベッドで寝ていた。
やがて寝につく三人を見ると、ようやく俺も
椅子に背もたれながら眠りに入る。
ロエルを連れてきて、初めは馴れ合えるか心配だったが……普通に仲良くベッドで寝る3人を見ると、そんな心配は要らないようだ。
それにテレアとは初対面であるにもかかわらず
本音で言い合っている辺り、良いライバルになるかもな。
……そうだ、明日は軽くこの街をぶらつこうか。コイツらを連れてどっかに行きたいしな。
俺は、まるでコイツらの親のような考えを浮かべていた。
やれやれ、初めは“悪役になりきろう”としてた所がすっかりこの世界の人達に影響されてしまった。……ま、それはそれでいいかもな。
そう思って、俺はついに眠りに入った。
つづく
次回予告
こうして、ロエルという新たな仲間を受け入れて一日を終えた一行。しかし、就寝中に何かが起きる……!?
面白かったら幸いです。




