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魔術同盟 ~Magic Alliance~  作者: 巫 夏希
第一章 魔術師殺し
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第一章 魔術師殺し③

「……で? 私には具体的に何をすれば良いんだ? 火野在処の殺害か? 魔術師なら殺すことは容易だが」

「いやいや、流石に『五名門』の重鎮たる一人をいきなり殺害しちまったら、そいつは闇の世界で大きな問題になる。だから出来ればそれは避けておきたい」

「ならば、どうするつもりだ?」

「火野在処は今回の事件には関わっていない、ということさ。火野在処はもう八十近い爺さんだ。ついこないだには脳梗塞で倒れたなんて話も聞いたことがある。さて、問題。そんな爺さんに、連続飛び降り事件を実現出来る程の力を持っているかな?」

「……つまり、実行犯が別に居る、と」

「話が早くて助かるよ」


 ペットボトルのコーヒーを一口飲む夏乃さん。

 ちなみに、これは僕が究極的に機械音痴なためである。本来ならば、コーヒーマシーンを使ってコーヒーを煎っておくんだろうけれど、僕の場合はそれすらも失敗してしまったために、仕方なく(夏乃さん曰く、こっちの方が金がかからない)、ペットボトルのコーヒーを飲んでいるという訳なのだ。ゴミが出るのが難点だが、そもそもコーヒーを煎った場合でもゴミが出るのは出る訳だし、そんなことはまったく関係ない訳であって。


「……火野在処は今回の事件には、恐らく関わっていないだろう。ならば、誰が関わっているか。問題はそこになる訳だけれど……、誰だと思う?」

「同じ火野家の人間だろう。恐らくは」

「その通り。火野家の人間が何故そんなことをしでかそうとしているのかはさっぱり見当がつかないけれど……、でもこの魔方陣が発動したら大変なことになることは確かだ。何故なら、半径二キロメートルの人命を犠牲にする訳だからね」

「……それをどうして警察は無視しているんですか?」

「さてね? 大方、火野家から圧力でもかかったんじゃないか。五名門は腐っても五名門だ。たとえ非人道的行為をしたとしても、それが五名門のやり方だというなら否定出来る人間は居やしないさ」

「そんな……!」

「まあ、そういう訳だから。調査をよろしく頼むよ。場所はそのファイルに書かれている。深夜、張り込みをして実際に飛び込みをする現場を止めて貰いたい。そうすれば、きっと魔術師が出てくるはずだ。魔術師は自分の計画が阻止されることを嫌うからね。だったら、そこを狙う。そうすれば道は開けるはずさ。確実に、ね」

「本当ですか?」

「本当だ。私が嘘を吐いたことがあるかね?」

「ない、と思いますけれど……」

「ほら、そこ。変なこと言わない。私の辞書に失敗の二文字はないんだ。分かったら、今から仮眠を取って、深夜になったらそこに向かうんだ。深夜のデートって訳だよ。君にとっても悪くない算段だろう?」

「ええっ、僕も行くんですか?」

「どうせ君もついていくつもりだっただろう?」


 ……まあ、そうなんだけれど。


「ついていくつもりなら、一緒に寝ていたらいいじゃないか。どうせ今日も時間的に一緒に寝てきたんだろ? 別段今更困る話でもあるまい」

「……それ以上言ったら殺す」

「あっはっは! 嘘だよ、嘘! 冗談だってば。だからそのナイフを下ろしてくれないかな!? おーい、恭平くん! こいつを止めろ、大急ぎで!!」

「冗談言い過ぎたのが悪いんじゃないんですか? 僕は止めることが出来ますけれど……。どうしようかな」

「何だ、何だお前達! そんなに給料が安いことが気にくわないのか! 分かった、分かったよ! 来月の給料一割増しだ! それで許してくれ」


 すっ、とナイフを下ろす杏。

 それを見てほっと溜息を吐いた夏乃さん。

 相変わらず、お金には弱い僕達なのであった。



  ※



 それはそれとして。

 普通の業務をしなければいけないのでは――? と僕は夏乃さんに問いかける。

 夏乃さんは鼻で笑って、僕の言葉に答えた。


「今行っている仕事はそれだけだよ。だから別段問題ない。私は定時までここに居るつもりだから」

「居るつもり……って。どうせ三階に上がるだけじゃないですか」


 そう。

 夏乃さんの家はこの建物の三階にある。

 一階は貸テナントとして、今は喫茶店になっている。

 いったい何処の探偵事務所だよ、という突っ込みはさておいて。

 そういう訳で、夏乃さんは常日頃からここで寝泊まりしていることも多い。僕が健康に悪いから辞めた方が良いですよ、と何度も言うのだけれど。

 夏乃さんにここで寝ていけ、と言われたら今回はそれに従うしかない。

 そう思って僕達は二つあるソファを使って眠りに就くのだった。

 このソファで寝るのは、初めてじゃない。暇な時や、夜に仕事がある時にここで寝かせて貰っている。だから別段珍しいことじゃない。これは普通のことなのだ。

 そう思いながら――僕は微睡みの中に落ちていく。

 ゆっくり、ゆっくりと。



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