雨の日、大学にて
「わー。すごい降ってきたなぁ。傘持ってきてないから、購買で買うしかないかなぁ・・・でも節約しなきゃだし・・・」
「ふ、待たせたな。妹よ」
「おにぃ?なんで大学にいるの?」
「いやなに。たまたま通りかかっただけだ。気にするな」
「傘二本持ってるのに?」
「ほう。これが見えるのか・・・成長したではないか。さすが、俺の妹だな」
「心配で迎えにきてくれたの?」
「バカ言え。俺がそんな出来た人間に見えるのかよ?」
「あ、ダメ人間だっていう自覚はあるんだね」
「違うな・・・間違っているぞ妹よ。俺はダメ人間ではない。ダメなのは・・・世界のほうだ!」
「傘はありがと。でもおにぃと一緒に帰るのは恥ずかしいから、先に帰って」
「ツンデレめ・・・照れるな妹よ。たまには兄孝行してくれても、いいんじゃあないか?どうだ?」
「兄孝行ってことなら、普段からしてると思うんだけどなぁ」
「なに、安心しろ。普段のお前の行いは、高く評価しているぞ。それに、小学生の頃はよく一緒に帰っていたではないか」
「子どもの頃の話を持ち出されてもなぁ・・・っていうか、おにぃの隣を歩きたくないだけだよ」
「おいおいツンデレも大概にしたまえ妹。それではまるで、お前が俺のことを嫌っているみたいじゃあないか」
「うん。あながち間違ってないね」
「はっはっはっ。どこまでもツンデレキャラを貫き通すというのだな?いやいやその精神、見事だぞ妹よ。褒めてつかわす」
「いや、結構ガチで嫌いな部類なんだけどね」
「・・・・・・ま、マジで・・・?」
「あ、素に戻った」
「う、嘘ですよね妹さま?だ、だってほら、一緒に住んでるし、毎日お風呂一緒に入ってるし・・・」
「いやお風呂は入ってないでしょ。入ってたらキモイよ」
「そ、そうか・・・あの光景は妄想だったわけか・・・」
「そんな妄想してたの?おにぃきもちわる」
「くっ・・・し、知っているか妹よ・・・『きもちわるい』という言葉は、ときに『キモイ』と言われる以上のダメージを相手に負わせることになるのだぞ・・・」
「そうなんだ。じゃあおにぃ以外には使わないようにするね」
「ふ、ふ・・・ドS系妹キャラか・・・悪くない」
「じゃあ私買い物して帰るから、おにぃは先帰っててね。あ、ごはん二合炊いてくれたら嬉しいかも」
「ま、待て待て妹よ!そ、その・・・俺のこと・・・好き、ですよね・・・?実の兄のこと、嫌いなわけ・・・ありませんよね・・・?」
「んー・・・人としても兄としても嫌いだけど、まぁおにぃだし」
「な、なんだそれは・・・意味がわからん。いっちょんわからんぞ・・・」
「えー。兄妹ってそんなもんじゃないの?嫌いでも家族なわけだし。小さい頃からずっと一緒なんだからさ。いいところも悪いところも知ってるからなおさらっていうか・・・離れようと思って離れられるものでもないと思うんだよねー」
「そ、そんなこと考えたこともなかった・・・ちなみに、俺のいいところって、具体的にはどんなところ?」
「・・・・・・」
「・・・ふ・・・そういうことか」
「まだなにも言ってないけど」
「いいところはある!だがそれを言ってしまうと俺に気持ちがバレてしまう!それを恐れているのだな!?安心しろ。鈍感主人公を演じきってやる」
「急にどうしたの?」
「ほう・・・俺に言わせる腹なのだな・・・いいだろう。乗り気じゃないが、そこまで言うなら叫ぼうじゃないか。ふたりの愛を・・・!」
「あ、雨やんできた。私帰るけど。おにぃ、風邪引かないようにね」
「・・・・・・はい」
―――おしまい―――