3-1-13 架け橋…良いのそんな物作って? 22/9/1
加筆修正 20220901
4350文字 → 5109文字
追加された閑話3からつながっった話です
プレアデス・アカデミーには現在、地球の名だたる頭脳が集まっている。
しかし、それだけではない。
在学生やスタッフはもとより、VR通信講座に接続する汎ゆるジャンルの世界中の頭脳が、今ある一つの物を創るためにその知恵と技術をフル回転させていた。
そう、太平洋のど真ん中にど偉い物の建造が始まろうとしていたのである。
◆
燻っていた中東紛争は、911が導火線に火を点けた形で一気に燃え上がった。
だが、友好的な異星人の来訪と相反する異星生物の侵略により、中東紛争は、呆気なく吹き飛ぶことになる。
最初のエイリアン戦闘がアメリカのネバダ州エリア51で勃発、インド内陸とアフリカでは挙句の果てに戦術核兵器まで使用されるに至って、地球人同士で戦争なんてやってるところじゃないだろうと、世界中の軍隊が最終決戦と見られる南極に集まる事になる。
そこで繰り広げられた異次元の戦闘に、兵士も指揮官も現行兵器の限界を痛感していた。
非力な人類の守護には、いま何が必要なのだろうか?
極寒の南極の地にあって、いま我らが戦えているのは誰のお陰だろうか。
まず、南氷洋は辿り着くだけでこんなに苦労するとは誰も考えていなかった。
現代科学で作られた軍艦も氷の世界では、何の役にも立たない。
普通は専用の砕氷船でも無ければ、南氷洋は何もかもが凍り付く死の世界である。
経験したことの在る現場の人間は多少は知っていても、指揮官はそんな事は知らなかったという意味では有るが、こんな所で戦争なんかはしないからだ。
武器は凍り付き、船の中でも凍死の恐れさえ出ていた。
幸い南半球は夏を迎えていたが、少ない流氷の代わりに巨大氷山との衝突の恐怖に震えることになる。
そんな中、一つの座標と指令がそれら全ての艦船に届くことになる。
そこは、ガーディアンズが今回指揮するに当たって用意された施設であり、その座標に存在する簡易基地に集結せよと云う通信文だった。
通達された座標には、メガフロートの技術を応用した簡易とは名ばかりの立派な宿泊施設が存在した。
ほぼ一夜にして、極寒の地に60平方kmに渡る前線基地を出現させていたのだ。
そして、氷山の恐怖と戦いながら辿り着いた軍艦や輸送艦は、全てがそこに収容されそれまで寒さに震えていた兵士たちは暖かな食事と寝床を与えられた。
凍り付いた武器や船は、兵士が休息を取る間にメンテナンスマシーン達による手厚い整備を受ける事になる。
一体誰がこんな物を作ったのか?
そう、皆んな知っている!
こんな事が出来るのはこの世に一人しか居ないという事を。
しかしこれを作っただろう少年は、いったい何時ごろから準備していたのだろうか?
我々兵士には、武器が有ってもそれを活かして戦える土俵が有ってこそである。
彼は常々云っていた、『武器は作りたくない!』と。
然り、武器など有っても何の役にもたっていない。
今回がいい例だろう。
補給中にこの基地で聞いたガーディアンズの活動対象は、人類では無いのだそう。
ガーディアンズは、人類守護の為に組織され、理不尽な敵対物を排除する事が最優先とされる。
この世は、宇宙も弱肉強食、理由もなく搾取され殺される事も有るだろう。
人類が動物や虫を見るように、異星人は人類を下等生物と見るかも知れない。
幸いなことに月に現れた異星人は例外であり、これから我々が戦う異星生命体は、まともな意思の疎通も相互理解も出来ないのだそうだ。
そして、奴らをこのまま放置すればやがて地球は、奴らの餌場と成りはて全てを奪われるだろう。
資源もそこに住む生物の命さえも……その全て、全部がである。
アメリカでの戦いは映像で見せられた……あんな化け物の一部になって、永遠に奴隷として働かされるのかと思うとゾッとする。
一晩をこの基地で過ごし、耐寒装備に身を固めた陸上部隊が続々と南極大陸に上陸していった。
そして艦船の兵員達は、艦砲による援護砲撃の合図を今か今かと待っていた。
攻撃命令の無いまま、唐突に戦闘は始まった。
何処にでも人の話を聞かない馬鹿は居るもので、誰何すれば『一番槍!』などとほざく有様、救いようが無いとはこの事だろうか。
第一撃を全部隊の最大火力で集中し、敵の体制が整う前に片付ける筈の作戦が、一人の大馬鹿者のお陰で台無しである。
敵は、オーストラリアで見せた重力の薄い壁で身を守り、こちらの疲弊を待っている。
結果から言おう。
人類側の現行兵器は、一つを除いて敵に何の痛痒も与えていないことが分かった。
その唯一の武器も、現在敵の急所に当てることが出来ずに居た。
それは、今までの個体の中でも一番巨大な敵だったからである。
数体の分裂した手下を前面に出し、本体には主力の攻撃が一撃も届いていない。
ミサイル艦からの高速巡航ミサイルも戦闘艦からの艦砲射撃も成果を上げてはいなかった。
上がる火の手は敵に届くことはなく、前線の味方に向かって跳ね返される始末。
こちらの攻撃は通らず、散発的な敵の攻撃に味方は徐々に削られてゆく。
戦線は膠着し、具体的な対抗策もないまま時間だけが過ぎていった。
対抗策がない、どうしよう?
また、核兵器で吹き飛ばすのか?
南極を核で汚染するしか無いのだろうか?
みなの思考が核兵器に向かっていたその時、上空から白い物が降り注いだ。
雪ではない。
雪にしては重そうだし、纏まって落ちてくる。
敵のビームに当たっても爆発もしないで飛び散るだけ。
どうも爆撃機ではなく、掻き集めた大型の輸送機により高空からバラ撒かれているだけのようだ。
一人の兵士に飛んできた白い粉、その直撃を受けてやっとそれが何なのかが分かった。
塩だ!
大量の塩が空から投下されているのだ。
撒かれているのは大量の食塩や岩塩、何故か胡椒や唐辛子にハーブソルトまで混じっている始末で、司令部はこれから南極で焼き肉パーティーでもする気なのかと問い合わせの連絡が殺到した。
司令部からは、かの少年のアイディアであるので結果が出るまでしばし待機との命令であった。
どうも、ヒルやナメクジには塩でも掛けて動かなくなってから止めを刺せば良いじゃないかとの話らしい。
子供の発想と笑い飛ばす事も出来るが、言い出したのがあの少年では無視もできない。
打開策のない状況では、これが子供の戯言でも何かのヒントに成ればと作戦が実行されたそうである。
攻撃が止んでしばらくすると、辺り一面が雪でなく塩で白く化粧されていった。
山と成りつつ有る塩にまみれ、それまで活発に動き回っていた敵斥候の動きが緩慢に成り、やがて禄に動かなくなってきた。
イソギンチャクの様に伸ばされていた触手も、縮み上がって動かなくなり、本体も一回り小さくなったように見える。
オイオイ、本気かよ!
これは、現実なんだよな?
無線から歓声が挙がり、さあこれから攻勢に出るぞ! と云う状況で、ほとんどの部隊から弾が無いとの連絡が相次いだ。
実は、俺の所にも弾はない。
さっき予備の弾薬まで使っちまった。
それこそこの極寒の中を銃剣とC4担いで突撃でもカマスかなんて迷っていると、後方から猛然と突っ込んでくる奴らが居るじゃね~か。
あれは、移動司令部になってたガーディアンズの大型トレーラーと護衛の装甲車に武装トライクだ。
彼奴等も派手に撃ってたし、すでに弾切れのハズだよな?
ナァ~!
なんじゃアリャ~~?
俺が今、眼の前で起きた見たままを話すぜ!
突っ込んでいった大型トレーラーが逆噴射したと思ったら仰け反って90度で直立したんだ。
そこに、一瞬で走り込んだ装甲車が足に変形して合体したんだ。
トレーラー本体から頭と腕が飛び出し、腕の肘から先にすっぽりとトライクが収まって巨大ロボットになったんだ。
『ガーディアンズロボ、見参!』と、大音響で響き渡り、ポーズを決めて見得を切ったっんだ。
そして、更に武装名だろう叫びを上げて突貫してゆくじゃないか。
『レーザーアーム!』 ブゥ~ンン!
と、両腕を光らせながら干涸らびた敵の斥候を引き裂き、それまで無傷だった敵の本体を掘削し始めたんだ。
モウモウと立ち上る水蒸気とガーディアンズロボの背面からのブーストの炎だけが、視界を埋め尽くしていた。
時折聞こえる獣の悲鳴のような鳴き声とジュウジュウと肉を焼き焦がす音だけが辺りを支配していったんだ。
それから凡そ1時間後、急に静かになった現場では敵本体の活動停止が確認された。
ただし、同時にガーディアンズからの救助要請の無線が届いたのと同時だったんだ。
『『『『『『『誰か助けてくれ!』』』』』』ヘルプミー!』
それでやっと、俺達の勝利が決定したんだ。
◆
あの南極決戦から、早くの1年が経とうとしていた。
あの時、南極に建設されていた仮設基地は、今では赤道まで移動しており巨大建造物の基礎部分になる為に改築工事が進められていた。
「昴、本当にここに建てるのか?」
「他にどこに建てるって云うんです? どこの国にも所属しないで建てようっていうんですから立地だって配慮してどこにも所属しちゃイケないでしょ。確かに陸地のほうが若干楽ではあるんですけどね」
「まあ、公海法が規定する処には抵触はしないと思うが……どうなんだ? その辺は、冴島~」
『ミスター荒垣、その辺は今も世界中の頭脳が集まって議論しているところだ。しかし、公海法そのモノが海を汚染せず、他の国の現状の利益を損なわず、公海の航行に安全を約束する事が海洋法として基本的に理解されていて、公海上でもこれに倣うことになる。ま~無法地帯では有るがだからこそ、相手によってはこちらも好きな対応が取れると云うものだよ』
「ハミルトン教授……あんたずいぶんと性格が変わってないか?」
『フムッ、そういえば最近みんなから云われるな。そんなに変わったかね?』
「ああっ、最初に会った時とは別人じゃないかってくらいだ! 随分とフランクになったな」
『うむっ、以前は物事の最悪を想定して発言も行動もしていたけれど、今は最善とどうする事が我々に必要なのかを考えて居るからね。何事もポジティブにとらえる様になったという事だね。みんなスバルのおかげさ♪』
「ソリャー良かったな。確かにこの1年で世界の動きも随分と変わったが、まだまだ俺達を煙たく思ってる奴等は沢山いるんだ。このプロジェクトにも食い込みたくて仕方がないようなんだ」
「まだ分からないんですかね~。1円のお金にも成らないんですけど」
「金じゃぁ無いのさ、利権に群がって来るんだ! 特に大陸の奴等は権威とかが大好きだからな」
『その辺り、USAはドライだよね~』
「あそこは、最後に自分たちが損しなければ良いのさ。資本主義ってのは究極そういうもんだろう? それでプロジェクトはどこまで進んでるんだ?」
「海底1000mまでの基礎アンカー、この規模だと支柱と言った方が良いですね。これは、ほぼ固定が完了しました。これでこの移動南極基地は赤道基地として動けなくなりました」
『元が簡易とはいえ軍事基地として機能したものだから、再利用には最適だったよね♪』
「俺もまさか南極海からこの規模の建造物をここまで持ってこられるとは思わなかったよ。広さだけならメガフロートより大きいんだろう?」
「メガフロートも増設を繰り返していますので、初期の倍にはなってますよ」
「最初は25平方km……今は、50平方kmか~、東京ドーム何個分だ~? ……1069個分ってことは、三宅島に迫るのかよ」
「人口は、東京都のどの島よりも多いぐらいだがな。それでこっちはどうするんだ? 今は、メンテロボはそのままにガーディアンズと各国からのレスキュー部隊がわずかに常駐してるだけだろ?」
「流石にここに手を出すと世界中から口撃されますからね」
『地上部分の方はこれから内装設備の充実を図ってゆく事になるね。上に行くまでの待機所にもなるしね』
「上は……アルキオネ~、今どんな感じ?」
[軌道ステーションの各パーツは、月の工廠で完成度82%の進捗状況です。接続されるカウンターウエイトは、物理的に用意する計画のためアステロイドベルトから私の船で牽引中ですね。今年のクリスマスには間に合わせますよ]
『計算道りなら12月のはじめに最初の単分子ワイヤーの接続、順調に工事が進めば最初の往復はクリスマスに決行するよ♪ 僕も上に行くからね! これだけは決定事項だ!』
「……ハミルトン教授、テンション高っ! 随分とハッチャケたな……」
「荒垣よ~……彼さ、ずっとこの調子なんだよ。付き合わされるこっちは、ハァ~……」
「お疲れ様……」
「良いじゃないですか♪ 生きる目標が見つかっったんですから、ネェ~教授!」
『そうそう、宇宙に出るのに訓練なんかしてられるかって言うんだよ~♪』
「「……ですよね~……」」




