3-1-10 女神の復活?…劇薬の予感 22/7/16
加筆修正 20220716
3005文字 → 3328文字
なんか余計な物までサルベージした感、満載の昴です。
カチャ…カチャ……
アレどうしよう……犬や猫を拾ってきた様な言い訳は通らないと思うし~。
ブーン……バチンッ……
勢いでOKしたまでは良かったけど……ウ~ン。
カチャ…カチャ……
母さん達に、どう説明したら……いいんだ。
バチッ…バチッバチッ……
はぁ~~…、気が重い……。
カチンッ!
[何を落ち込んでいるのですか? スバル殿……] <=アレ・余計な物
「……イエッ、なんでも有りませんよ。そんなことより調子はどうですか? どこか体に違和感などはありませんか?」
[ハイ♪ 順調です。思うがままに動きますよ]
「最初にも言いましたが体を動かすのは久しぶりですよね。身体制御は小脳の代わりをしてくれている義体の副脳がエンリル様の身体運用を覚えれば最適に動かしてくれる様になるはずです。最初はリハビリだと思ってしばらく慣れるまでの間は、控えめにそして意識を集中してお願いします。その義体は、目の前のサイコブースターで強化したサイコウェーブを受信できる様に調整したものですが、常時使用した場合の精神疲労がどういった影響をエンリル様に及ぼすのか分かりません」
[えぇえぇ大丈夫、理解していますよ]
「今の状態は、地縛霊から実体の有る幽霊に格上げしたくらいの物です。今の貴方の状態は、ケレスのこの区画に精神体を固定された事で、辛うじて精神生命体としての条件が成立しています。もっと自由に動ける様にするならばこの区画ごと切り離して船の動力に繋いでやればハコ達と同じ様に動けるようになります。幸いなことにハコ達がそれぞれの義体を動かしている方法がそのまま使えます。要は今のエンリル様を維持するのにどのぐらいのエネルギーが消費されているのか良く分かっていないのです。セバスチャンが今までケレスで使用されたエネルギーの消費分布から、エンリル様の維持にどれくらいのエネルギーが必要であるか割り出しています。何ぶんこれまで前例が有りませんので、手探りにならざるをえません。エンリル様もマイスターであればその辺はご承知だと思いますが……」
[ほんとに馬鹿な話よね。体が無くなってから何も出来ない事に気がついたのよ。本当の大馬鹿物よね! 貴方がここに訪れるまでは本当に自分は幽霊として夢の中に居るのだと思っていたのですよ。ウンサンギガ最後の生き残りとして自分を実験材料にして……いいえ、あれは自殺ですね。もうたった1人で永遠を生きる事にも疲れてしまっていたのです。何の因果か実験は成功してこうして精神体だけが消滅せずに残りました。笑ってくれていいのですよ。こうなるともうそれ以上狂う事も出来ないのです。可笑しいでしょう? 絶望して自殺した人間がある意味最後に進化して正気を保ったまま長い年月を生き残る事になったのですから……。長い長い微睡みから覚めた時、目の前には貴方が居た、これはもう運命だと思ったわ♪ だって管理人は私の事を無視するんですもの!]
「イヤイヤイヤッ、それは認識出来なかっただけでしょう。今のセバスチャンは義体を通して精神波も感知できる様になりましたよね」
[確かに執事になった途端に私に気がついて、相手してくれる様にはなったけれど……、これまでの酷い仕打ちを散々愚痴っちゃったわよ。多分だけど、管理人も私の管理までするのに音を上げたってところじゃないのかしら? ……てへっ♪]
「セッ…、セバスチャ~ン!」
(ホォ~ホッホッホッホッ♪)
◆
当然のごとくエンリル様の存在は、直ぐにバレた……。
本人、隠す気が全く無いので隠蔽など最初から無理だったのだ。
帰宅と同時に各メンバーに招集が掛かり、動けない人間は秘匿回線で聞き耳を立てる事になった。
今俺達は、村の(株)タウルス社屋大会議室で今回の『オヒューカス』サルベージの開始から帰宅までの経緯をサラッと(肝心なところを抜いて)皆んなの前で報告している。
ここでは『ケレス』の存在はまだ秘密なので、非常に説明に窮するのだがウンサンギガ一族の継承の聖地と言うことで誤魔化し、そこにエンキ様の御遺体を納めに行ったら、エンリル様の霊体に絡まれて、最後に置いて行かないでと頼まれたので義体用意したら動いちゃいました、テヘッ! と云う説明をしたところ、何故か皆んなにドン引きされながらも信じやがった。
少し落ち込みながら『あんあたらこの話、そのまんま信じるのかよ?』って聞いたら、俺なら有り得るとか吐かしやがるし……。
俺ってそんなに非常識か?
みんな揃って『お前以上の非常識は、地球上には居ない』って真顔で言いやがるし……。
そこにシャシ姫が『銀河広しといえどもそうそうお目にかかれないレベル!』と太鼓判を押しやがった、……解せぬ!
カァ~、話が前に進まないのでその辺はスルーして説明すると、取り敢えずはみんな信用してくれたみたいだ。
(実際には信用したと云うよりも、よく理解できなかったので流したのが正解!)
[エンリルと申します。皆さん、よろしくおねがいしますネ♪]
と、小柄な黒髪の女性が古風な異国風な出で立ちで深々と頭を下げ、挨拶をした。
本人の要望で17~18歳に見える様に仕上げたが、ここで余計なことは云わない方が身のためだろうと詳しい情報は報告は控えた。
「エンリルさんは、ウンサンギガ一族の前頭首、早い話俺の先代でいらっしゃいます。仲良くしてあげて下さい」
挨拶と説明が終わると俺はメガフロートへ、エンリル様は母さんたち(タウルス女性陣)に拉致られていった。
その後、(女性陣で)どんな話がされたのか俺は知らない。
イヤッ、聞きたくない!
◆
まったくあの昴は、いつもいつもいつも騒動を呼び込んできて解决したと思ったら、予想の斜め上の着地点でいつも周りをビックリさせる。
大体なんで今頃になって、こんな大物がしゃしゃり出て来るのよ、全く。
「エンリル様、改めてご挨拶致します。私が天河希美、昴の母です」
[はい、以前に一度ホログラムでお会いしましたね。……貴女は、私を恨んでいるのでは有りませんか? 御子息に背負いきれないほどの大きな荷物を背負わせた私に……。子孫とは言え、ある意味呪いとも言える運命を押し付けてしまいました]
「……ええ、恨んでいないと言えば嘘になりますが、貴女が背負わせたというより自分で背負い込んだと云ったほうが正しいでしょうね。どうもうちの男どもは、地雷を自分から踏みに行く様なところがありますから、自業自得と言って良いでしょう。付き合う方としては、いつもハラハラドキドキしながら一喜一憂する事になるんですけどね、もう諦めています」
[良いご家族なのですね、そして納得いたしました。昴殿がどうしてあんな風に育ったのか不思議だったのです。我らの因子を持った日本人という種族が如何に地球人から浮いた存在かはおよそ想像がつきますが、その中にあっても更に特異な存在に思えてしかたがありません。普通なら重すぎるだろう運命に押しつぶされる事も無く、我々の想像の斜め上を平気な顔で散歩するように渡っていく。本当に良いご家族に恵まれて育ったのですね]
「ええ、最高の家族と仲間達だと思っております」
[これまでの経緯は『管理人』から聞いていますが、あの……あまりに貴女方が楽しそうなのでいても立っても居られずに来てしまいました。申し訳有りません]
「確かに昴1人では、国家や種族に銀河連合や多種族との交渉など、一つとして実現も成功もしなかった事でしょう。支える家族や仲間が居てこそだと言うこと、そしてあの昴はそれを知っていますもの」
[そう、たかが管制AI一つにも命を掛けてしまう大馬鹿者。我々の思惑などを尽くひっくり返して銀河連合への架け橋さえ繋いでみせてくれた……]
「どうもあの昴と関わると、一緒に何かしたく成るらしいんですよ。それがたとえ管制AIで有ったとしてもです」
[ええ、分かります。私がそうですもの。絶望ではなく『ワクワク』してくるのはなぜなんでしょう?]
「かなりあの昴に毒されていますね、エンリル様」
[貴方もでしょう? 希美様]
[「オォーホッホッホッホッホッ」]
意気投合する者達、混ぜるな危険!
後に『セントラル』が加わり劇薬となる予感……しかしないぞ!




