3-1-07 ゴミ革命…メイドライバー 22/6/25
20220625 加筆修正
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「ただいま帰りました」
『おかえり昴君、欧州では大変だったみたいだね~。頸飾もらったんだって? あとで見せてね』
「陛下、何を女王陛下に自慢してるんですか! 冷や汗を搔きましたよ」
『そう目くじらを立てないで、だって嬉しかったんだモン!』
「モンじゃな~い!」
日本に帰ってきた途端に文部科学省と厚生労働省と外務省から、役人が連れだって押し寄せて来た。
なんか面倒な雰囲気で五月蠅そうだったので、チョッと待ってもらい壁一面のTV電話で陛下に帰国の御挨拶をしたところ、みんなしおしおと黙ってしまいました。
後でそれぞれ文書で通知しますと云って帰っていきました。
あれは何だったのでしょう?
「あいつらはな、手ごろな駒に使えそうな子供に群がるハエみたいなもんだ、気にする必要はないぞ」
「荒垣さん、こんにちは! 珍しいですね、態々メガフロート迄来るなんて」
「お前が欧州で暴れまわったから、永田町は台風の直撃食らったみたいになってんぞ。まっ、これでお前らに下手に手を出してくる政治家も減るだろうさ。お前は、Handle with care! 取り扱い注意! だとよ」
「心配して来てくれたんですね、有り難う御座います♪ あっ、これお土産です。美郷さんにどうぞ!」
「フンっ、有り難く頂くとしよう。後でローマでの話聞かせろよ、じゃーな」
「えっ、もう帰っちゃうんですか?」
「俺は、彼奴等の引率だ。最後まで面倒見ないと迷子になるからな」
「ほんとにお疲れさまです」
まったく世話の焼ける話だ。
正直、今の日本の官僚組織がここまで腐っているとは思いたくなかった。
もう少し風通しも見通しも良くして行かないとな。
しかし最近の日本の好景気も昴の影響が大きい。
新しいインフラが出来る事で今までとは別の金が動く。
金は淀んでいると腐るもんだ。
絶えず循環させて居ないと、経済という生き物は酸欠を起こし、端から壊死が始まる。
昴は、日本のエネルギー問題が解決する緒を与えてくれた。
水素発電ユニットは、順調にその数を増やし普及を始めた。
これからは、電気料金の占める意味合いが変わってくる。
今までは、原料の化石燃料と再生可能エネルギーと原子力に占める割合で電気料金が決められていたが、これからは発電ユニットの料金とそのメンテナンスに当たる人件費が大きな割合を占める事になるだろう。
各家庭に1台、それを廻す人の数は膨大に膨れ上がるだろう。
これは、新しい雇用の創出だ。
そして、限られた化石燃料は、化学工業の原料としてその殆どが使われるように成り、原子力は早急に廃炉へ向かうはずだ。
イヤッ、廃炉に向かわなければいけないのだ。
技術者が居る内に始めなければ、高齢化が進み原子力従事者が居なくなってからでは遅いのだ。
幸い昨年末にメガフロート技術者有志により開発されたVRリモート作業装置(VRワーカー)は、人の出来ない危険な仕事を現役の作業者が操作することでその手順やスキルを覚え、処理することを可能にした。
放射能に汚染された廃棄物は、ハコさん達の除染技術(ナノマテリアルに還元)で他の資源に変換しており、現在まで備蓄されていた廃棄物も密かにその数を減らしている。
要らない物は、原子に返してしまえば良いらしい……。
それ、反則だろう!
とにかく日本のゴミ問題は、核廃棄物に始まり、燃えるゴミ、再生資源、粗大ごみなど本当に頭の痛い案件だったが、ここに来て全て原子に還元して再利用する未来が見えてきた。
メガフロートは、昴が最初から『全てゴミで出来ています』と公言していた。
日本の全てのゴミを資源に出来るとしたら、もともと原材料の乏しい日本にとっての朗報以外の何物でも無いだろう。
今、日本各地のゴミ処理場を集積場として利用する試みが始動しようとしている。
決まった場所に集めてくれさえすれば処理しますよ、と云うのだ。
そして『再生された原材料の20%をリアルタイムで還元します』との事で地方自治体は既に動き出した。
マァ~分解した物質の内、貴金属やレアメタルを 見ている側からポンと出してくれるんだから、喜ばない人間は居ないだろう。
だが偶に迷惑なやつが居るんだ。
家の裏山を更地にして金に変えてくれなんて馬鹿なことを言い出す奴らが……。
昴は、『出来ますよ。けれどやりませんけどね。そんな面倒な事』と云って憚らない。
分解するにしてもエネルギーは使っているわけで、貴方はそれを賄えるんですか? と言う訳だ。
20%は飽く迄も収集してくれた手数料としてリターンしているんであって、山を原料にするなら元からゴミ集めなんて頼まないのだそうだ。
確かに、子供でも分かる理屈ではある。
『ゴミ沢山出して下さい、全部頂きますよ。不法投棄で困ってる方は(株)タウルスまで御一報下さい!』
うんうん。
『ただし拾得物扱いはやめてくださいね。俺のゴミだから返せなんて云われても困ります』
もっともな話だ。
日本のゴミの年間排出量は、凡そ5千万トン。
これが中国だと3億トン、アメリカで2億2千万トンになるらしい……。
ゴミ大国だな、オイッ。
絶対に中国は、後で返せって云うだろうな。
何か云ってきても無視だ無視!
日本の粗鉄生産量が年間凡そ1億トン。
もしも、ゴミの20%を全て鉄で回収出来れば年間粗鉄生産量のなんと1割にもなるのだ。
これをレアメタルやレアアースに還元した場合、比率がどのくらいになるか検証を勧めてもらっている。
ハコさんは、還元される変換率は、現存する元素の比率に比例すると言っていたので、それなりだろうとは思う。(本当は自由に変換できるらしい、ただしそれだけ消費されるエネルギー量が比例して増えるのだという事。これは、知らなくても良いことでしょう)
何にしても、海外から原料を買って加工して売るという図式が変わってくるに違いない。
ハコとシスターズがはれて自動車運転免許を取得した。
彼女達には、戸籍を作ってもらいましたが、今もちゃんとした身分証明書はありませんでした。
更に(株)タウルスの社員でも有りませんでしたから、社員証も作っていませんでした。
これはいい機会ですので、ちゃんとした立場と言うものを押し付けて会社の重役扱いにして、しっかりと給与を支払うことにしました。
実際に掛かる人件費が少なすぎると怪しまれていたのです。
(株)タウルスは、短期間で業績を伸ばして膨大な利益をあげていますが、役員3名と従業員265名、合わせて268名の所謂中小企業でしかありません。
実際には何百~何千人分の仕事をハコ達がやってしまいますし、それこそ一人で何十人・何百人分もの作業量を熟してしまいます。
そこにオートワーカーなどを使用していたとしても制御しているのは彼女たちなのです。
実際、どうしてこんな事になったのか?
それは、ゴミの収集に宇宙船を使う訳にも行かなかったからという単純な理由からでした。
ゴミ収集には専用の車両を開発したのですが、一般人に運転させる訳には行かなかったからです。
最初は、簡単に考えていました。
いつもハコがその辺に転がっている邪魔な物をヒョイヒョイと吸い込んで居たので、それがどれだけ凄いことなのかあまり難しく考えていなかったのです。
ワダツミにも同じシステムを積み込んだのですが、実際には宇宙駆逐艦相当のエネルギーを湯水のように消費するシステムだったのです。
そんな得体の知れないシステムをトレーラーサイズに詰め込むのは、これ冗談抜きで厳しいものがありました。
その場でゴミを分解して再利用可能な資源にするって、ハコが簡単にやっていたので軽く考えていたらトンデモ有りませんでしたよ、ホント。
結果、ハコ達は大型特殊までの運転免許証を取得し、予備の義体を使用して業務に当たっています。
えっ、予備の義体?
いったい何体有るの?
それがそれぞれ100体くらいあるそうで、心配する必要は一切無いと云われました。
へ~、バリエーションも色々有るのね~。
俺は、別の意味で心配なんですが……。
今までプライベートや社用で使用している車両等は、運転せずとも免許を持っている人に運転席に乗ってもらっていました。
でもこれからは、自分達だけで操作できると喜んでいます。
本当は、無人でも運用できるのですが、日本の法律ではまだ公道での無人運転は認可されていません。
現在、予備の義体のうち1体は必ずどこかの資格試験会場におり、新しい技能試験や免許証の交付を受けています。
どうも資格マニアになってしまったようで競うように資格が増えて行っているようです。
ちなみに俺が最初に作った義体はオリジナルとして大事に保管してあるそうです。
そんな訳で予備義体のハコとシスターズ達(ヒュアデスを除く)がメイド服のまま大型トレーラー型のマレキュールマテリアルマシン※を乗り回し、週に一度各市町村のゴミ集積場を巡回し、回収したゴミから20%の資源に還元して置いてくるという業務が始まったのです。
2004年11月、全国の一般廃棄物処理施設は凡そ1200ケ所、1日10ヶ所を8台で回るとして80ケ所×7日間で560ヶ所回れる事になるのですが、最初からすべて回る必要は無いので気が楽です。
環境省の指標により処理場は減少傾向にある様ですが、『ここで一気に2分の1にまで減らす!』と誰かが鼻息を荒くしていました。
あとは誤差の部分を、時間をかけて予備車両で回収すれば、事実上一般廃棄物処理施設やゴミ処理場をカバーできる計算です。
見るからに巨大な車両をメイドさんが運転しているので、最初の週は何度もパトカーや白バイに止められる事になったそうですが、チャンと大型特殊運転免許証と(株)タウルスの社員証、ダメ押しで経済産業省の実験的事業であることのお墨付きを提示した処、次の巡業からは逆に白バイが先導してくれる親切さであったと云います。
(絶対この白バイ、下心が有るよな! 美人のメイドさんだし……)
各市町村のゴミ集積場では、大型車両を乗り付けたメイドさんに最初どう対処して良いのか分からず固まっていたそうです。
しかし、そこは対人スキルの塊として成長したメイドさんです、難なく関係者の緊張を解きほぐしゴミを回収する作業に就いたそうです。
魔法のようにトレーラーの中に消えてゆくゴミを見ながら、世間話兼情報交換を行い、その日回収した詳細な内訳と分解したマテリアルの20%としての内訳を立ち会いの担当者に手渡し、次回から変換可能な資源や貴金属の一覧表も手渡し、20分ほどで次のゴミ集積場へ移動を開始するのでした。
その流れるような無駄の無い所作と対応をする小柄だがスキの無いメイドさんは、終始ニコニコと笑顔を振りまきながら山のように集められていたゴミを一つも残すこと無く回収して、何事も無かった様に立ち去っていったのでした。
目の前で魔法を見せられた担当者は、手渡された書類を見て青い顔で震えだしました。
ゴミの中に普通は処理に大変手間の掛かるPCBや重金属類など法的に問題のあるのも、ゴチャ混ぜにされた産業廃棄物や医療廃棄物までがリストアップされていたのでした。
初回は、ゴミを集積するに当たって日常的にゴミ処理場で処理している物を対象にした筈でした。
ところが回収リストには、絶対有ってはならない物が混じっていたのです。
その旨の報告を上司にした処、既にメイドさんから同じ書類がメールされており、こう添え書きが有ったそうです。
[お送りした廃棄物回収リストですが、当初の予定に無い品目の物が含まれておりました。弊社システムには、回収品目の制限はございませんので、特に問題はございませんでした。ですのでご心配には及びませんが予定外の品目の廃棄物が持ち込まれた意図は当方には図りかねます。違法な行いとなる場合はそちらで対処をお願い致します。今回、不法と思われる廃棄物の持ち込みを行った車両を特定して居りますので、別紙に写真を添えてお送り致します。宜しくお取り計らい願います。本日は、ご利用を有難うございました]
別紙リストには、5社の産廃業者と3社の個人企業が列記され、廃棄物を集積場に投棄したと見られる車両と痕跡をカムフラージュしている様子を克明に写した写真が添付されていました。
このままには出来ないと、既に社名から連絡先まで明記されているリストから犯人達へ連絡を入れたのでした。
担当者は、『取り敢えず急いで帰って来い』と云う上司と対策を練るため職場に急いだのでした。
事の顛末は、今まで高額な廃棄物処理費用をとっていた産廃業者の嫌がらせと、廃棄物処理費用を浮かそうと不法投棄を行った個人の犯行でした。
今回のゴミ回収は、正規の処理業者を圧迫しないように配慮して段階的に処理品目を増やす予定だったのですが、自分達の仕事を取られると勘違いした件の産廃業者達が先走って妨害に動いたらしいのです。
蓋を開けてみれば全然嫌がらせにはなっておらず、いたずらに事を荒立てただけに終わりました。
回収作業そのものが無くなる訳ではなく、最終処分をメイドさんがすると云う事が分かり、後日集積場に謝罪のため整列していたそうです。
そこで、当然のようにまたまた魔法を見せられた面々は、真面目に回収業務に従事するように成り、毎回メイドさんに会うため集積場に訪れ、いつの間にか共同で休憩所を建て、作業の間メイドさんを持て成すようになりました。
なんだそれ?
◆
「全国にうちのメイドさんのファンクラブが出来たらしい……」
[肯定。私のも有りますよ。先日は嫁に来ないかと誘われましたが、マスターが私の全てですとお伝えしましたら、泣きながら走ってゆかれました。車に轢かれなければ良いのですがあれでは前が見えません]
「!、それでか。このごろ俺宛の手紙やメールが妙にトゲトゲしいのは……」
[勧誘がすごいんだけど全部無視してるよ~。偶に変な勘違い野郎が出るけど、教育してからゴミ回収会社の社長さんに預けてきた。今は真面目に働いてるらしいよ~]
[肯定。ええ、居ましたね。そんなのも。『街を綺麗にするためにがんばります!』とおしゃってゴミ集めに汗を流している暑苦しいグラサンにリーゼントが……]
[あれ、地廻りの若頭だったらしいんだけど、その後は顔見知りのチンピラをみんな更生させてるらしいよ。『メローペさんは俺の嫁!』とか、プリントしたTシャツ着るのやめて欲しいんだけど……]
「実害が出るようなら〆て良いからね。マ~ほどほどに……」
[肯定。計画通りマテリアルの合法的な回収は順調に推移しています。当初、マスターが心配していたゴミの拾得物と云う扱いも、間に行政を挟むことで合法的に処理されています。今まで溜め込まれてきた廃棄物の処理が終了すれば、保管場所にも資源にもかなりの余裕が生まれるはずです。最終的には核廃棄物と原子力発電所その物をマテリアル化する事で、無害化する予定です]
「そこまでやっちゃえば安心だよね」
[肯定。順次、有害なPCBや重金属類の処分もプログラムに加える予定です。最初にあった妨害は、ある意味良いカンフル剤になった模様ですね]
「雨降って地固まるって云うからね。固まったって云うよりグズグズの様な気もするけど……」
※マレキュールマテリアルマシン
:原子まで分解したマテリアルを分子変換し素材として還元するマシン。実際にはかなり大型のマシンだがトレーラーサイズに偽装するため亜空間固定用のエネルギーが別途必要になった。
面倒臭くなった昴がエネルギー過剰とも言える駆逐艦用の改良型次元転換炉を使用した事で、ハコやシスターズ以外は使用できないキワ物として出来上がった。
(ワダツミに1台、トレーラータイプは現在予備も入れて10台存在する)
10台のマシンでどうやって処理するの? との意見がありましたので、簡単なそろばん勘定を加筆しました。
8台×10ヶ所×7日間=560カ所
全国の1200ヶ所の処理場を半分の数の集積場に集約=600ヶ所
余剰分を予備車両で処理する事で、すべてを処理可能だろうという卓上の予想値です。
経済産業省の実験事業として開始しますので、最初は半分でも回収出来れば成功です。
現在は有料で廃棄物処理がなされていますが、これなら無料化の実現も夢ではありません。
環境破壊も無く、収集の手数料も入ってくるのです。
行政と住民の負担はほぼ0%に出来ますね。
うまく回せば、黒字にも出来るかも……。




