1-1-08 それ反則じゃネ‥物理は何処行った? 21/4/25
20210425 加筆修正
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恒星間万能移民船『ハコ』諸元
※武装はありません
第六期(ハコ端末28面体)
孵化から511日経過
船体は亜空間に次元潜行中
外観 六角柱状のクリスタル、船色 碧色
基礎船殻完成・NT1000トン
内部拡張中 752,231立方km
(10,000平方km、半径56.42km)
全高60m 全幅35m
主機・次元転換炉 現在6基
船殻用ナノマテリアル 在庫 350トン
昴の工作用 在庫 20トン
◆
ここでハコ達の移動システムについて、話しておこうと思うんだけど、3つくらい有るらしくて殆どはこのバリエーションらしい、ウ~ン説明がむずかしい。
1つ目、普段移動に使っているのは、キネティックコントロール、質量の位置エネルギーをコントロールする事による移動で、フワフワ移動している時は、もっぱらこの方法らしい。
一種の慣性制御に近いのかな。
ビックリする程のスピードは出ないと言っていたけど、理論上はエネルギーと時間さえかければ亜光速、およそ光速の30%ほどまで加速が可能だそうである。
基本、エネルギーと時間の無駄なのでやらないと言っていた。
2つ目、空間置換移動、簡単に言うと移動する空間と移動した空間を入れ替えるらしい。
視認して観測できる空間をそっくり入れ替えちゃうから摩擦も空間圧縮もおきないので、エントロピーの増減もない、熱も発生しない、つまり高速移動しても燃え尽きたりしない。
通常空間を高速に移動する場合に使用する移動方法で、空間を飛び石に進んでるように見える。
加速度なんてかからないので、好きな時にストップ出来る。
(後に出てくる量子テレポートとは似て非なる物である)
3つ目、亜空間跳躍航法、本船にて亜空間内を座標移動して遠距離に移動する。
亜空間内の移動なので移動時間と距離が比例しない。
亜空間座標さえ観測記録することができていれば、どんな遠方でも移動できる。
以上3つが主に使っている移動方法で、巷でよく、超加速して光速に近づくとスターボウが見えるとか、ワープ航法でワープ空間に出入りする時に光るとか、超空間ぶち破るとエフェクト掛かって光るとかは一切無い。
スッと消えて、スット出てくる、すっごく地味である。
ハコに聞いたら、そんな無駄なエネルギー使ってどうするんですか? っと聞き返された。
次空間の認識と制御による亜空間跳躍、うん反則です。
エネルギーは、高次元空間から無限にもらってくるから推進剤も燃料もいらない。
クリーンでエコロジー? なのだろう、多分、Maybe?
実現されていることが高度過ぎて、真似できないレベルなのだと云う事はよく分かった。
◆
「父さん、9月のH-ⅡAロケットの3号機も打ち上げが成功するといいね」
「そうだな~、2000年のM-Vロケット4号機は失敗したけど、その後のH-ⅡAロケットの打ち上げは1号・2号と続けて成功したね。純国産ロケットの開発が進めばもっと安く出来るはずだし、頑張ってほしいな」
「H-ⅡAロケットって幾らぐらいするの?」
「およそ1発100億円くらいかな~高っかいよな~。今年、アメリカで設立されたスペースXは、80億円くらいで打ち上げる予定らしいんだけど実用化に何年ぐらい掛かるんだろうな~。価格的には、フランスのアリアンロケットといい勝負なんだが‥‥」
「スペースシャトル・コロンビアは、久しぶりに今年の3月にハッブル宇宙天文台のメンテで飛んだけど、ミッションは新型カメラの設置と太陽電池パネルの交換、あと不調だったNICMOSカメラの修理だったよね。うちのデジタルスチルセンサー使ってくんないかな~、絶対いい絵が撮れるはずだしオススメなんだけどな~」
「ハハハ~それはまだ無理な話だよ。弊社には実績がないからね~。でも良い物は、いつか必ず日の目を見るものさ、特にスカイウォッチャーは目が命だからね♪」
「そうだよね、絶対にこれからはデジタルでリアルタイム観測とデータ記録が主流になるはずだよ。アルキオネがね火星の写真撮って来てくれたんだけど、ホント綺麗に写ってたし、絶対売れると思うんだ」
「‥‥昴、ちょっと待とうか‥‥今、火星って何の話だい? 父さんに分かるように説明してくれるかな?」
「エッ、この間七姉妹用の移動強化ユニットの試験に、火星に行くって言ってたから写真頼んだんだ~。父さんも見る? 綺麗~に撮れてるよ♪」
「ウェ~ィ、カッ火星に行ってきたって、いっ行けたのかい? 本当に~?」
「うん、センサー出力の関係で空間の置換距離が短いらしくてさ、到達まで3時間掛かったって言ってたよ。でも現状では、十分だろうって言ってた!」
「移動強化ユニットって、あの厚みのあるシャンプーハットみたいなのかい? 」
「そ~だよ。後ねクラゲみたいなのが、強制ジャック用のマルチアタッチメントだよ。地球上の端子なら何にでも強制介入して乗っ取れるって言ってた」
「オイ~、程々にしといてくれよ~」
◆
2001年11月19日の夜は、しし座流星群のピークによる観測会が天河邸にて開かれていた。
昴のほか主要メンバーは、庭にテントを張りキャンプ気分で流星群の観測を行っている。
外のイベントに他者の意識が向いているスキに、ハコとプレアデス七姉妹は地下施設にて会議を始めるようです。
[それでは、定例会議を行います。まず、マスターの近況報告から。今月の側付きは、プレアデスⅦメローペでしたね]
[ハイ、お母様。身長162cm、体重58kg、成績は全て5です。今期夏休みに造成していただいた各種アタッチメントと強化ユニットのカリキュラムにより、ナノ造成レベルも3に上がりました。こんな短期間でのレベルアップは驚異的です。通常想定されている5倍のスピードですね、素晴らしい!]
[肯定。地球人、特に日本人は、ものづくりに関して特別に優れているようです。譲さまも優れた技師ですし、このまま成長すれば銀河連合でも類を見ない造成技師として活躍できる可能性が大きいですね。各種装備については、何かありませんか?]
プレアデスⅣ、アルキオネが受けて喋りだした。
装備備品に関しては、アルキオネが担当しているようだ。
[そちらは、私からご報告いたします。姉妹たちが装備することにしたマルチアタッチメントですが、現在確認されている全ての地球の接続端子とのチェックが完了しております。これにより地球の規格であれば、どこのどんな機器でも事実上乗っ取る事ができます。次に行動強化ユニットの試験結果です。正規の船外活動ユニットを簡易化したものですが、現状で単独での重力井戸からの脱出、大気圏突入、火星までの高速移動試験を完了しました。正規船外活動ユニットによる単独転移とまでは行きませんが、現状では必要十分の機能だと思われます]
[肯定。次に、プレアデスⅠマイア。希美さまの近況報告をお願いします]
[ハイ、お母さま。先ごろ鷺ノ宮校長となにやら画策しているようで、この村の環境を利用した教育施設を構築して、学生を集め教育特区として文部科学省に認めさせようとしているようです。マスターの特異性をあまり表に出したくない希美さまのアイディアだと思います。近隣の土地買収も順調に進んでおり、来年には校舎を中学までの合同教育校として建て替える予定です。これで、中学卒業までの4年間、時間が取れますので本船の無人試験前に、体制を整えることが出来ます。マスターが街の中学校に通うために、別居するなんて私は嫌ですよ。それと先日、海外から仕掛けられたM&Aですが、株式を公開していない強みで突っぱねました。完全に舐めて掛かっていたので見せしめとして、ハッキングをはじめあらゆる手を使って集めた情報を使って、相手経営陣を丸裸にしてやりました、ホッホッホッホッ。その時の対応をする希美さまを見せたかったです、顔は笑っておられましたが目が般若でした、側にいた私までチヂミ上がる思いでしたよ。以上です]
[肯定。次に、プレアデスⅡエレクトラ。譲さまの近況をお願いしますね]
[イエス、マイ・マザー。譲さまは、今年8月に打ち上げに成功したH-ⅡA1号機に続いて、来年2月に2号機、9月に3号機、12月に4号機と立て続けに打ち上げられる事になり、観測業務の取り纏めにお忙しいようです。今年、タウルスの精密機器部門の名前で譲さまとマスターが共同発表しました高精度レンズとデジタルスチルセンサーによる映像取得ユニットは、業界で話題となってきており、天文台や観測所、ヘビーなスカイウォッチャーからの問い合わせが増えております。そろそろ譲さま用のマザーマシンの構築も考えたほうが良いと提案いたします]
[肯定。来年夏休みのマスターの課題カリキュラムに織り込んでおきましょう。次は、プレアデスⅤケラエノね。アメリカと中東の様子はどうかしら?]
[ハーイ、お母さま。アメリカは、先日の911同時多発テロの影響で蜂の巣をつついた様ね。大統領は、テロ組織アルカイダとの繋がりを疑って、アフガニスタンとイラクに対して戦端を開く腹積もりのようね。でも、このテロで戦争が起きると一番に誰が得をするか考えると、かな~り怪しいのはアメリカ現政府よね、兵器産業とか。あんまり突っつくとどこに飛び火するか解んないから、私達からはノータッチと言うことでスルーしときましょうよ。中東は、ここ20年世界の火薬庫って言われてるけど、今回のテロが引き金になって第三次ワールドウォーなんて事にならないことを祈っているわ。結論としては、こっちに火の粉がかからなければスルーで‥‥]
[肯定。テロと戦争には関わらないと言うことでいいわね。ケラエノ、貴方強化ユニット持ち出してアメリカのグランド・ゼロ行ってきたでしょ。言っている事とヤッている事が噛み合っていませんよ]
[ごめんなさい、お母さま。ワールド・トレード・センターにうちの顧客が1人行っていたのよ。難は逃れたようだったから無事を確認して、献花して帰ってきたんだけど、グランド・ゼロはひどい有様だったわ]
[あらっそうだったの、それはお世話様。プレアデスⅢタイゲタは、近隣住民の監視と護衛だったわよね]
[ハイ、御母様。確認している不審者は、主にノルンに絡んだ取材関係者と産業スパイですね。ほとんどは穏便に帰っていますが、近隣の住民宅にまで盗聴器やカメラを仕込んでゆく悪質な者もおりましたので、全ての機器を排除したあと証拠とともに通報いたしました。マスターのご学友の方々ですが、薄々天河家の特異性に気付いていますね。特に銀河ちゃんは間違いなく確証を持っているのではないでしょうか。度々、マスターに聞こうか迷っているようですし‥‥]
[そうね、そろそろ我々の基盤も整ってきたし、希美さまと相談して抱え込みに動きましょう。マスターのパートナーとしての候補にも上がっていますしね。その辺りどうかしら、プレアデスⅥアステローペ]
[はい、DNAマッチングテストでも優秀な子孫が期待できると出ています。それに双葉ちゃんも優良ですね。出来れば譲さまと希美さまにマスターの御兄弟をあと2・3人生んで頂けますと、ベースデータも増えてマッチングがやりやすいのですが‥‥]
[肯定。そのへんは、二人のお考え次第ね。肉体年齢は若返っていますから、いつでも妊娠出産は可能ですし、希美さまには伝えてありますから進展はあるでしょう。最後は私から。昨年、産廃処理場を撤去した更地を買収して、倉庫兼地下秘密基地の着工に踏み切ります。最終的には、本船の地下格納庫として機能するものを目指しますから貴方達もよろしくね]
[[[[[[[ハイ、お母様]]]]]]]
◆
2002年ゴールデン・ウィーク
俺は、今年六年生で、去年の春に一が卒業してから生徒会長をしている。
それと今年の春に転入生が3人入ってきて、在校生が7人になった。
そのうち2人は、母さんがタウルスの社員としてヘッドハンティングしてきた、後輩の娘と息子。
もう1人は、おばちゃん校長の孫である。
おばちゃん校長は、『ノルン』のおかげで見かけ30代前半の美魔女校長へと進化を遂げ、今年定年なのにそんな事は、おくびにも出さず学校が落ち着くまで五年延長するそうな。
来年は中学だけど、この村で中学卒業まで合同教育することになり先生も1人増える予定になっている。
街の中学に行った一は、残り1年なのでそのまま街の中学を卒業するそうだ。
「アルキオネ、次元転換炉って外燃機関の一種だよね、地球で作れないとしても小型で良いエンジンって無いかな」
[そうですね~、次元転換炉は一種の相転移エンジンです。地球の技術では低効率のものでも、まだこのレベルのジェネレーターの製作は、無理ですね~。地球人が主に使っている内燃機関は、燃料を運動エネルギーに変換してから動力または電気にして利用するものが多いですよね。燃焼した時に出る熱、膨張力をピストンやクランク、タービンブレードなどで回転運動にして、車輪やプロペラで動力とし、発電機で電力としています。これは基本、ガソリンエンジンでも原子力発電所でも一緒です。逆に聞きますが、マスターは地球で使用されているエネルギーの元を知っていますか? ]
「石油とかウラン、あとは風や地熱、太陽光も使ってるよね」
[そうですね、放射性物質以外はその殆どが太陽による直接または、間接的なエネルギーだということに気がついていますか? ]
「使ってるエネルギーがみんな太陽からのエネルギーっていうのは初めて聞いたかも、ウランはなんで違うの? 」
「ウランなどの放射性物質を使う方法は、原子の分裂崩壊エネルギーを取り出そうというものです。太陽の中で行われている核融合反応は、水素が融合してヘリウムに変わるときにエネルギーを放出していますので、似ているようですが全く逆の事が起こっている訳ですね、高重力によるにエネルギーの循環と見ることも出来るでしょう。まだ地球人は、安全に原子のエネルギーを取り出す術を持っていませんから、危険な火遊びをしている子供と一緒です。不幸なことですが武器として使われた以外には‥‥、安全な処理の出来ない放射性廃棄物の大量生産に目をつぶって危険を承知で使用している状況ですね。太陽光はそのまま、風力は大気圧による物ですから大気の対流を生み出している太陽熱と地球の自転エネルギーに依るものですね。石油や石炭天然ガスなど化石化燃料の殆どは、太古に地球に降り注いだ太陽光により発生していた動植物などの化石化したものですね。結局、現在のエネルギーサイクルの頂点には太陽が有るわけです」
「ふ~ん、原子力発電って危ないんだね」
[はい、とっても人体において危険です。我々は宇宙空間の他、色々な環境での作業に対抗策を持っていますが、現在の地球人に安全な対抗策は完成していません。出来れば私が地球上の危険な放射性物質を完全分解したいくらいですが、廃棄物も含めてほとんどの放射性物質は、国家が管理保管しています。勝手なことをするとマスターにご迷惑がかかりますので、自重しています]
「そんなに危険なら、原子力発電なんて直ぐやめちゃえばいいのにね」
[今のマスターの様に反対している方々もいらっしゃいますが、無責任にやめれば良いという訳には行きません。先に述べたように、放射性廃棄物の処理や現在稼働し続ける原子炉は、その可動を止めたとしても放射性物質をバラ撒き続けます。今の地球の技術でそれを止めることは出来ませんし、安全域まで抑えるためには30~40年は掛かるでしょう。その間、稼働を止めた原子炉を管理し廃炉に持っていく技術者は、どこから収入を得て暮せばいいのでしょうね。確かに原子力事業で良い思いをした人もいるでしょう。でも社会の発展のために原子力事業に身を投じた技術者の、多くが放射能の恐怖に震えながら仕事をしています。出来ることならば、そうした恐怖を取り除いてあげたいですし、頑張っている人には不安のないように手当して頂きたいですね]
「アルキオネは優しいね~。もう少し俺が大人で、力と発言力があれば、いつか実現しようね」
[はい、マスター。でもそんなに先の話では無いと思いますよ。船が完成して私達が本格的に動き出せれば、不可能ではない未来です]
「そうなればいいよね~。話が反れちゃったけど、現実的に今、俺達が使えるものって何がいいだろうね」
[そうですね~、この家でも使っていますが太陽電池パネルの発展型の太陽光発電素子が一番目立たないかと思います。使用する材質表面に配置しておいて、発生した電気は小型バッテリーに蓄電しておけば夜でも問題ないでしょう。家で使っている発電素子の変換効率は83%ほどですから、実生活に使用するには十分な電力が得られます。内燃機関は、燃料が必要ですしメンテナンスが欠かせません。その他ですと移動体に使用するには大掛かりになりすぎて現実的ではありませんし、効率が悪すぎます。強いて言えば水素エンジンが小型化も出来て内燃機関にはもってこいです、排気もクリーンですしね。ただ、今の地球の冶金加工技術ではまだ製作できませんね、マスターなら片手間に作れますが、まだ作っちゃ駄目ですよ。譲さまに怒られちゃいますからね。でもマスター、いったい何に使うんです?効率のいいジェネレーターなんて]
「うん、了解。あ~、みんなで移動に使う乗り物に使えるものって何がいいかなと思ってさ、キックボードにしようと思ったんだけど、この辺山道で坂が多いから動力付けちゃおうと思ってさ」
[キックボードですか~、それなら小型のホイールモーター仕込んでやれば直ぐですけど、割と簡単に引っくり返りますから安全対策のほうが難しいかもしれませんね。ヘルメットとプロテクターを魔改造しましょう。使用者の安全が確保できれば、ある程度危険な行動をとっても安心です]
「そっか、乗り物に安全機構を構築するより搭乗者の安全を確保する方が簡単だね。安全なプロテクターのデータって有るかな~。アルキオネに任せるから、設計して造成データにしといてよ。時間有るときに人数分作っちゃうからさ」
[わかりました任せてください、絶対に安全な物を設計しますよ。希美さまや譲さまの分も作っちゃいましょうね。用意しといて無駄にはなんないでしょうし]
「お願いね~」
これが、ただのプロテクターだったら良かったのにね‥‥。
◆
ゴールデン・ウィーク開け放課後の村を走り回る小さな仮面ヒーローの一団が居た。
近年のライダー復活によりライダーブームが到来し、三作目のライダーでは複数のライダーが入り乱れて戦うというストーリー構成と女性ライダーの登場で話題を呼んでいた。
村の大人達は、子供たちがコスプレして遊んでいると思っているが、頭を抱えている人間がここに1人。
「エレクトラ、一寸確認したいんだが昴から貰ったこのブレスレット、どんな仕掛けなんだい。これを持ってれば、絶対安全だとハコにも太鼓判を押されたんだが、まともな代物じゃないんだろう」
「デザインは、悪くないのよね~。材質が不明で、私にもくれたんだけど唯の飾りじゃないんでしょう?」
[イエス、そのブレスレットは本船のクルーが常備する防護スーツの装着ユニットを流用した物です。同時に生命維持装置となっておりますのでとても安全です。子供達が装着しているのは、デザインを今風に変更した簡易版ですね。簡易版と言っても、地球の戦車並みの強度を誇りますので、安全の確保には最善と思われます。デザインは、任意に変更が可能ですので、普段着にしている者もいたほどです。着心地は保証いたしますよ、装着すれば宇宙空間でも深海でも普通に活動できます。スーツがパワーアシストされていますので、生体調整されていない個体でも使用できますし、ご安心ください一度登録されたスーツを他者が着ることは出来ません。それに、使用者に生命の危険が迫った事を感じると自動的に装着されますので、イザという時など事故に巻き込まれても安全を確保できます]
「安心できな~い! ナンテ物を渡してくれたんだ、まったく‥‥」
「ウ~ン、でもあの格好見て、戦車が走り回ってるとは誰も思わないわよ、あなた。可愛いもんじゃないの♪」
「希美はそう言うがな~、もし車に轢かれたりしたら車の方が危険だぞ。そうなったらどうすんだよ~。保険なんておりないぞ」
[その時は、私達が全てを無かった事にいたしますので御心配にはお呼びません。事故の起きる前以上に人も車も綺麗に直して差し上げますよ。当然記憶も少々曖昧になるでしょうけれど‥‥オ~ホホホホ♪ ですが譲さま、交通事故を装った誘拐などが発生してからでは遅すぎます。営利誘拐が発生してもおかしくないお立場になっているという事を肝にお命じください]
「「‥‥」」
◆
私は長谷川銀河、5歳の時からわたしは、昴くんが好きです。
だから分かります。
二年前の夏休みに何かがあって、昴くんもおじさんもおばさんもそれ迄とは、何かが変わった事を。
幸い中身は私の好きな昴くんのままだったからホッとしたけれど、断然格好良くなってしまった事で、ライバルが増えるんじゃないかと別の心配が増えました。
普段ボ~としてるのに、何もかも完璧で、何故かお母さんが何があっても昴くんから離れちゃ駄目よと応援してくれています。
絶対に昴くんの一番になってみせようと頑張っています。
この間プレゼントしてもらったブレスレットは、私のだけ星が散ったような飾りがついてました。
銀河って意味だよね、期待しちゃうよ、私。
私は双葉だよ。
銀河ちゃんは昴にーちゃんが好きなのダダ漏れだから邪魔はしたくないけど、私も健太より昴にーちゃんがいいな~。
うちの一にーちゃんは、昴にーちゃんに変なライバル心燃やしてたけど、勝負になんかなんないよね~。
健太は、双葉のナイト気取りだったけど今一かな~。
でも勝負は、まだまだこれから。
この間、昴にーちゃんがくれた腕輪、双葉のマークついてて可愛かった、大事にするよ~。
昴にーちゃん、大好き~。
アタシは、鷺ノ宮 裕美 11歳
お祖母ちゃんが校長先生をしていて、この春から、お祖母ちゃんの学校に転入したの。
なんか凄い頭の良い子が居て、絶対にその子と仲良くなれって言われたの。
都会の学校からこんな田舎の学校まで来て、頭が良いって言ったってたかが知れてると思ってたんだけど、聞きしに勝る天才だったわ。
都会の進学校にも、たぶ世界中探してもこんな子は居ない。
みんなで遊ぶからってブレスレット貰ったんだけど、ほんとに変身するとは思わなかったわ。
絶対、昴くんと仲良くならなくちゃ。
ボクは、西園寺 聖 12歳
これでも女の子だ。
お母さんが保険会社を辞めて、この村のタウルスって言う会社に就職した。
会社の社長さんはお母さんの先輩だと聞いていたのに、すごく若いお姉さんだった、えっ年上?
ここに引っ越して来る前、社長さんが訪ねて来てその日のうちにお母さんは会社をやめた。
職場で嫌なことが続いていたらしい、その事を持ち出したらスンナリ辞められたとスッキリした顔で笑っていた。
都会では、お母さんと弟の尊の三人ぐらしだった。
マンションではいつも尊と2人きりだった。
シングルマザーで鍵っ子の2人、都会でイジメられる理由はそれで十分だった。
私が弟の尊を守らないとって頑張っていたのが嘘のように、この村は穏やかで私達に優しい。
特に生徒会長の昴くんは、転校してきたボク達に親切だった。
弟の尊も実の兄のようになついている。
今のお母さんは、昴くんのお母さんと何が嬉しいのかいつも笑って仕事をしている。
保険のセールスレディーをしていた時は、お酒を飲んで帰ってくる時もあったけど、今は夕方には真っ直ぐ帰ってくるし、夕飯も一緒だ。
休みの日も家にいるし、お風呂にも一緒に入れる。
ボクは、この村にきて本当に良かった思う。