2-5-05 ルナベースにて…地球在住異種族会議 22/2/9
20220209 加筆修正
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ここは、ルナベース。
現在、月のコアとなっているセントラル中央スフィアに存在する巨大な議事堂内では、これ迄にないイベントが行われていた。
すり鉢状の議場には、こんなに隠れて居たのかとびっくりするぐらいの地球在住異星人(7割方が地球人との混血)が一堂に会していた。
元々、数万年前からウンサンギガ一族により居住を許されてきたアーリア系惑星人(ギリシャ神族や北欧神族)や過去の地球に取り残された阿修羅族やディーヴァ族の生き残り(ディーヴァー神族)など今でも身元がハッキリと分かっている者達のほか、いつの間にか地球に流れ着いて人間に紛れて暮らす様になった銀河の世捨て人や宇宙の遭難者。
中には一体何からどういった理由で逃げて来たのか分からないが、酷く怯えており保護を求めてくる者達も多数居た。
今日、ここへ辿り着くまでにも他の異星人に見つかり攻撃を受けた者が少なからず居たようで、未だに周りを警戒する者やそれぞれの種族に固まって様子を伺う者達。
うって変わって酒だろうか食事を持ち込んで盛大に宴会をしている者達もチラホラと存在し、ザッと数えても2万人ほどの雑多な人に近しい者達が、ここには集まり地球の管理人たるバクーンに確認なり陳情なりを訴えに来た訳で、バクーンの登場を今か今かと待っていた。
やがて巨大な議場に、聞き慣れた音が鳴り響いた。
それは、日本の公共の場などでお知らせの時によく鳴り響く予鈴の音だった。
ピンポンパンポン~、パンポンピンポン~♪
そして、予鈴が鳴り止むと議場全体のの照明が少し落とされ、すり鉢中央の演台のもとに一人の女性が現れ、その直上には拡大された立体映像が浮かび上がった。
そこに現れたのは、シックなメイド服を着て落ち着いた雰囲気のメイドさんで、丁寧なお辞儀と共に挨拶を始めるのだった。
『本日、ここにお集まり頂いた全ての方々に御挨拶申し上げます。はじめまして、私はこの月基地の全てを預かっております管制AIのセントラルと申します。そして、古の記憶をお持ちの方にはお久しぶりとのべさせて頂きたいと思います。およそ1万年前には天の川銀河連合の中央コロニーを管理して居りました。この声に聞き覚えが有る方もいらっしゃるかも知れませんので先に述べておきたいと思います。さて、皆様お待ちになっていらしゃるバクーンの挨拶の前に、現在地球の置かれている現状と皆様の選択せざるえない未来のお話をしたいと思います。しばらくの間、お耳を拝借いたしますので、お静かにお聞きください』
セントラルの登場に騒然としていた議場は、静寂に包まれた。
先程まで怯えシクシクと泣いていた者達や、ドンチャンと宴会をしていた者達も全ての耳目がセントラルに集まった。
『皆さんもこの天の川銀河宇宙に暮らす者達です。バクーンの名を聞いた事がないという方は少ないと思います。バクーンの正式な敬称は、天の川銀河連合・宙域調査部・特別監査官でありますが、陰では銀河連合の始末屋、銀河辺境一の怠け者、宇宙海賊からは恐怖の船として恐れられているサーベイヤーⅠ世の船長として知られています。そうです、皆さんがここに来る一寸前に見た宇宙船です。一隻で有りながら団体で殴り込んできた敵性宇宙船達を相手に無双していたあの宇宙船の船長が彼なのです。そしてその実態は、かつて地球を支配し地球人類を作り上げたウンサンギガ一族の最後の弟子であり、一族滅亡後に太陽系周辺の管理を委任されている正式な管理人でもあります。この事は天の川銀河連合も認めるところであり、だからこそこれまでは太陽系を含むこの周辺宙域に天の川銀河連合の手は伸びておらず、無法を働く宇宙海賊や悪質な異星人は少なかったのです。ま~皆無とは決して申しませんがね。図らずも今回訳あって地球の各国に行いました一連の連絡活動により、今まで影に隠れていた宇宙海賊や宇宙のマフィア、敵性異星人や外来の有害生物を炙り出す事に成りました。結果一緒に炙り出されてしまった皆さんには、傍迷惑な話だったかも知れませんがお許しください。バクーンに代わってお詫び申し上げます。また、事前にご忠告申し上げますが、当基地に入った時点で武器や危険物は、その全ての使用を封印させて頂きました。ここで暴れるのであればそれ相応の覚悟を持って行動なさってください。ちなみに当基地は、サイキックシールド及びジャマー完備です。いかなる超能力や異能を使用してのテロ行為も強制的に排除いたしますのでご遠慮くださいますようにお願いいたします』
さっきまで静かだった議場にザワザワとざわめきが大きくなった。
セントラルの言葉通り、携帯していた武器や自分の能力が制限されている事に言われて初めて気がついたのだ。
『皆さん、お鎮まり下さい。危険物を制限されて頂いているのは、当基地内だけで御座います。それぞれの船にお戻りになれば、また使用できるようになりますのでご心配にはおよびません。そして一緒にお知らせいたしましょう。まず今現在、地球上で行われている戦闘をご覧下さい。この緑色の物体に心当たりのある方は、後ほど情報のご提供をお願い致します。有用な情報は、それ相応の待遇または金銭やエネルギーに変えて御礼させて頂きますので、宜しくお願いいたします。さて、皆様がこの場にお集まりになった発端は、バクーンが地球の各国に発した月居住の表明だと把握しております。元々、月はバクーンとサーベイヤー1世のゴミ捨て場でありましたが、最近のズサンな管理により崩壊寸前で有りましたところを長年に渡りわたくしセントラルがコアとなって支え防いで参りました。縁あって今年の夏、我らがマスターが月の修復を手がけられ当基地が建造される運びとなり、今まで定住先のなかったバクーンは月に住む事となりました。そして、地球のグリニッジ時間で12月25日午前0時に、地球全人類に向けてメッセージを送る事と致しました。バクーンは、月に腰を落ち着けて今までサボっていた管理人としての仕事をする予定でおります。これまで見落としてきた地球外からの違法入植や侵略行為を排除し、場合によっては地球環境の修復も行う方針でおります。依って、地球在住の皆様には今後3つの選択肢が与えられます。1つ目、今まで通り地球に居住する。この場合は今後違法行為の取締対象となる場合もありますのでご注意下さい。2つ目、月に移住しバクーンの活動に協力する。この場合は、社員として高待遇で衣食住の保証と報酬を御用意いたします。残り3つ目は、速やかに地球を退去し、この宙域以外に拠点を設ける事です。ただし退去したくても船が故障している場合やエネルギーや物資が不足していて故郷に帰れない方には、相談に応じさせて頂きますので、この後遠慮なくご相談下さい。我々には、豊富なエネルギーや各種物資、宇宙船を治すための技術力も御座います。以上3つの内から今後の身の振り方を決めて頂ければ幸いです。もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、我々は現在木星軌道上に反物質生成ステーションを保有し、各種サービスを開始いたしました。このムーンベースを含め、正規従業員として随時スタッフの募集をいたしますのでお知らせしておきます。当基地を預かる者と致しましては、社員や仲間として御協力を頂ける事をオススメして置きたいと思いますが、純粋に顧客としてのお付き合いでも構わないと思っております。どうぞよろしくお願いいたしますね。前置きが長くなりましたが、ではバクーンの挨拶に移りましょう』
セントラルが立ち位置を変えると今まで彼女が立っていた所の床下から、処々に金属の付いた服を着た銀髪のバクを両手で抱えた上げたパンク調のメイドさんが現れました。
[ちゃんと自分で立って歩きなさいよ、まったく貴方はホントに横着ね!]
「別に何時もの事だし~、運んでくれても良いんじゃないか~……。あれこれ本番?」
セントラルは、こめかみを抑えながらため息をついた。
『ハァ~~、二人共、シャキッとしなさい。本番ですよ!』
「セントラルの話が長すぎて~お腹減っちゃったんだけど~……」
『! な・ん・で・すって?』
[まーまー、姉さんもそう目くじら立てないで。この後はチャンと殺るから♪]
「サーベイヤ~、それ意味違うような気がする……[ギロリッ!]、いや宜しくお願いします~……」
[野郎ども、アタシが特務監査官付掃討艦サーベイヤーⅠ世だ。文句の有る奴は漏れなく受け付けるから掛かってこい! 以上!]
バチコォ~ンと良い音が響き、ハリセンを持ったセントラルと後頭部を押さえて屈み込むサーベイヤーⅠ世。
その横で呆れて見上げるバクーンというド追き漫才の様相に、これまで弛緩していた議場が一気に湧いたのだった。
[痛ッッッ、掴みはオッケイ! マスター後は任せた……]
「エ~~~、それ酷いんじゃな~い? 君の事だから何かヤルとは思ってたけどさ~これドウすんのさ?」
[ヘッヘッヘッ♪]
大柄なメイドさん2人に挟まれて小さくなっていたバクーンは、オズオズと一歩前に出るとそれでも戸惑う様に喋り出した。
「僕がバクーンなんだナ! 知ってる顔もチラホラ居るみたいだし~皆んなの方が詳しく僕の事は知ってると思うんだけど~、挨拶は大事だから~取り敢えずしておけ~とセントラルに説教されたんだナ~。さて~、皆んなも~有る程度の情報は~手に入れてると思うんだけど~如何して今頃になって僕が此処に来たのか~不思議に感じてる気がするんだけど~、だからその辺の事から~話そうかナ~と思うんだよね。皆んな不思議に~思ってると思うんだけど~、この基地やさっきセントラルから説明のあった~木星の反物質生成ステーションの事だと思うんだ~。一体誰が~いつの間にこんなモノ造ったのかな~? 先に言っておくけど~僕じゃないからね~。その辺の事が今回の件の核心に成るんだけどさ~。元々、この辺境の縄張りは僕のお師匠様から押し付けられたところなんだけど~当時の天の川銀河連合、特に天帝に睨まれていた場所だっただけに~あんまり介入しないで放置してたんだよね~。それにしても君達も結構度胸あるよね~こんな曰く付きの星に住もうなんて~いつ星ごと消されても可笑しくなかって云うのにさ~……」
そんな地球の経緯を知らなかった者達は、バクーンの物言いに青くなって居たが、古くからの者達は鼻にもひっかけない様でほくそ笑んでいるのだった。
そして其の時、何処からか声が掛かった。
『やっと現れたのだろう? 正当なこの星の継承者が……。お前が此処に居るって云うことはヨ~!』
「その通りご名答~♪ 其れも今までに類を見ない飛びっきり生きの良いのがね~。彼が此処や木星のステーションを作る切っ掛けになっていてね、既に阿修羅族の姫やデイーバ族とも縁を結んでいるよ~。すごいと思わないかい? 何もないところから彼は切っ掛けを掴んで3年で此処までの物を独自に作り上げたんだよ~。一族に嵌められていた枷が外れて完全覚醒したのは、つい半年前と来たもんだ。言っちゃ何だけど僕は何もしてないからね。ホントびっくりだよ、伝説の一族と云われるだけの事はあるな~と納得サ~。そんな訳で此れで僕もやっとこさ肩の荷が降りるって喜んでたんだけど~セントラルに顎でこき使われてるって訳なのさ~。どうせだから~この際共犯者は多い方が~僕の負担も少しは軽減されるかなと思ってるんだけど~、皆んな~一緒になってお祭りに参加してくれないかなぁ~。今、共犯者になれば~漏れ無く伝説の一族と仲良くなれるよ~♪」
『あ~、確か天帝から抹殺指令が出てなかったか? あの一族は……』
「う~んその辺なんだけどね~、その指令を出した前天帝の弱味を盾に阿修羅族のシャシ姫が受けあっていったからさ、今頃はもう中央で大騒ぎを起こしてるんじゃないかな~。阿修羅族のアプサラス王妃もやり手だしさ~、今回はディーヴァ王族にも恩を売ってたみたいだよ」
バクーンがニヤリッと悪い笑顔をした、……つもりらしいがバクがそんな顔しても似合うわけがない。
『ブゥフッ! 似合わね~! 似合わね~よバクーン。ヘラもそう思うよな、けど俺はこの話に乗らせてもらうぜ、もう退屈で存在が消えそうだったんだ、そうだろう?野郎ども!』
アーリア系惑星人の団体から歓声が上がりました。
『下品ですよゼウス。もう少し上品に振る舞えないのですか? あなたは』
『そんな事言ったってよ~、や~っと正式な相続人が現れたんだぞ! ヘラだって知ってるじゃね~かよ、あのマルドゥークの野郎が好き勝手に地上を引っ掻き回したおかげで、地球人類はチョッと目を離すと直ぐに滅んじまう様に成っちまったじゃね~か、俺達は間借りしているだけでバクーンみてえな管理人じゃね~んだからよ。だいたい大家が何もしねえ怠け者だから店子が苦労するんだぜ』
『その割に随分と過去の地上に介入して遊んでいたようですが……』
『ッ! いやそれはだな……継承者を探せね~かな~と俺たちなりにだな……』
『そうじゃ、我らは稀人じゃ。この星の事はこの星の人類に任せるのが一番じゃて……。そして正当な星を継ぐ者が現れたのであれば、潔く明け渡すのが道理ではないかのぅ……転居先はそちらで用意してくれるのかのう?』
『オーディンもこう云っていますし、既に我々がちょっかいを出して良い時代は、とうに過ぎ去ったと云って良いでしょう』
他の種族からも声がかかった。
随分と彼らは憔悴しているようだ。
『待ってくれ、我々にはもう他に行く場所も無い。追い出さないでくれ……このままでは地球にももう戻れない……』
「良いんじゃな~い! 此処に住めば~。だよね? セントラル~」
『はい、先行きの目処が立つまで……等とケチな事は言いません。そのまま居着いてしまっても構いませんよ。ただし適度に働いていただきますけれど』
「だよね~、君ってそういう奴だよね~」
『奴とは酷い言われようですね、「働かざる者、喰うべからず」と言うでは有りませんか。居候は居候なりに率先して「お手伝いしますよ、お姉さん」位の事が言えないものでしょうか、まったく……』
『無理!!! バクーンにはそれ絶対に無理だから!』
『サーベイヤー、永年に渡ってあなたが甘やかし続けてきたから、バクがいつの間にかナマケモノになっているでは有りませんか? まだ中央コロニーに工房を置いていた頃はもう少しマシでしたよ』
『うーん、面目ない! 正直、あの後は酷かったんだよ。引きこもっちゃてさ~。想像できないでしょ塞ぎ込んだバクーンの様子なんて。やっとここ1000年くらいまともに顔出すようになったんだから、そんなにバクーンを責めないでやってよ、姉さん』
『あ~ら、それは悪かったかしら……でもね、ケジメだけはチャンと付けさせなさい。ここに居る者達は、直接ではなかったとしても少なからずあなた達の迷惑を被った者達よ。尻拭いまでさせてたんなら尚更にね』
セントラルがバクーンの不始末を扱き下ろす度に、バクーンはべそをかきながら小さくなっていきます。
蚊の鳴くような声で謝罪を述べていますが、高性能な音声機器が拾っているようです。
「……ごめんなさい。僕が恩知らずにも天帝庁の命令なんか聞いたから、(ぐすんっ)許して下さい、皆さん。そして地球の管理を放り出してて~、フラフラしてて~ごめんなさい……(ズズズッ)」
『いいって事よ! その事はもう水に流そうや? セントラルもその辺で許してやったらどうなんだ、結局は継承者を見つけてきたのはバクーンなんだろ? ここに顔を出してるくれえだしよ。いいから鼻水拭けよ、汚えな~』
サーベイヤーがバクーンの顔を何処から出したのか、濡れタオルで拭いています。
セントラルは呆れ顔で話をまとめに入るようです。
『今日、ここに来てはいませんがウンサンギガ一族は晴れて復活を遂げました。そして当の継承者は、まだ年若く中央銀河の魑魅魍魎に対峙するには貫禄が足りません。皆様の御尽力を持ってこれからの太陽系辺境をもり立てて頂けないでしょうか。私からも、よろしくお願いいたします』
セントラルが深々と頭を下げると、いつの間にか周りに何人ものメイド立ち並び、一緒に頭を下げているでは有りませんか。
そして、議場は盛大な拍手に包まれたのでした。
◆
『それで、どんな奴なんだ? 今代のウンサンギガ一族の当主て云うのはよ~』
バクーン達の立体映像が消えるのと入れ替わりに、昴の立体映像とプロフィールが表示されました。
[ここからは、私が御説明申し上げます。皆様、はじめまして。現ウンサンギガ一族当主、天河昴の御座船を拝命して居ります「恒星間万能移民船・ハコ」と申します。以後、お見知りおきください]
前に出てきたのは、立ち並ぶメイドの中で一番貫禄のある如何にもメイド長といった出で立ちのメイドさんでした。
『おい! チョッと待ってくれ。最新型かよ……構想は有ったかもしれねーが当時はまだ夢の船だった筈だぞ』
[そうですね、当時は移民船と言えばあなた達アーリア神族の所有するアトランティス位でしょうね。自慢ではありませんが私は万能と謳うだけのスペックは満たしていますよ。更に自己進化と自己増殖に最適化をマスターに許されています。私はマスターと共に果てしなく成長する船なのです]
『……お前さん「移民船」って云ったか……お前さんは地球を捨てて天の川銀河連合から逃げだす気かい? だが、其の割に逃げ出すって様子には見えねえが……』
[ゼウス様、お見事です。ご推察の通り、我らの当初の方針は地球から脱出、天の川銀河からのエスケープでした。しかし、我々が何もかも擲って地球を捨てれば程なくして地球は死の星となるでしょう。皆様がこれまで地球の命脈を繋いで来てくださった事は存じております。何も手を打っていなければ既に地球は死の星と成っていたでしょう。計算するにこのままですと地球の寿命は後100年余り、資源は掘り尽くされ、自然環境は破壊され、人類は人口爆発により飢餓に苦しむでしょう。既に人類全てを養うことは今の地球にも限界と成りつつあります。如何に神々と云われた皆様のお力を持ってしても、もう歯止めが効かなくなっているのでは有りませんか?]
『悔しいが其の通りだ。大地の管理神ガイアの姉さんは、不眠症で神経もお肌もボロボロだ。特に俺たちもこの50年、人類の宇宙への進出を陰ながら支援してきたんだが、人類同士での内ゲバが絶えない。戦争から宇宙開発競争に舵をきるところまでは上手く行ったんだが、近年宇宙開発の予算は減らされる一方でまたぞろ兵器産業に流れていっちまってる、このままでは人類が宇宙をフロンティアとする前に地球の方が先にパンクするのは目に見えていやがる。苦肉の策で実施した筈の戦争は目的の人口削減とまで行かずに、過剰に反応して悪循環に嵌まり込んじまった。奴ら、自分たちが戦争をコントロール出来てると勘違いしていやがる……。これもド畜生のマルドゥークが実施した共通言語の剥奪や種族間に対する不信感の植え付けなんかが現代でも根強く残っているのが要因だ。まったく碌な事をしやがらねえ、末代までも祟るかよ!』
[抜本的な改革が必要ですが、各国には既にそれだけの体力が有りません。マスターが表舞台に立てばいくらでも挽回は出来ますが、それでは地球人類は今までの歴史を繰り返すだけだとマスターは考えているようです。今回のバクーンの引っ越しをスケープゴートにすることで、人類には外宇宙からの脅威を大きく取り上げさせ、地球外の外敵や脅威となり得る隣人、それも見上げればいつでも見える月に異星人の基地が有るという事実を突きつける事で、取り敢えず人類を1つに纏めようと考えているようですね。アメーバ状モンスターなんて余計なモノまで出てきちゃいましたが、この際大いに利用させて頂きましょう。バクーンには、一旦悪者になって頂くという事だったんですが、少々役不足だったので丁度良いのではないでしょうか]
『フムッ、我々では出来なかった事を別のアプローチでやろうと云うのじゃな……』
『フ~ン「昴君」て云うんだ~! 今度、是非紹介してね~、何だったらハーレムに入れてもらッテも……』
ヘラのこの発言に、周りの女神達がワイワイと騒ぎ出した。
そこにオーディンの雷が落ちた。
『ヘラよ、お前は少し年を考えよ! お前たちもだ馬鹿者め! せめて生まれ変わるぐらいの気概を見せるなら、儂が取り次いでやるのも吝かではないがのう。今代は今までとは一味違うようだしのう、儂も会うのが楽しみじゃわい♪』
『物は相談なんだがな~、アトランティスのメンテナンスなんて頼めね~かな? もう随分とガタが来ててよ~、海に沈めとくのも辛くなって来てんだわ。そろそろ燃料の補給もしねえと遠からず動かなく成るんじゃねえかと思うんだが、何ぶん面倒を見る奴がもう居ねえんだよ』
[燃料補給とオーバーホールですね、お任せ下さい。多分、マスターなら涎を垂らして喜ぶと思いますよ。そういうのが大好きな子ですから……]
『ホホ~ソリャッ立派な変人だな。クククッ面白そうじゃねーか! 俺も嫌いじゃないぜ、そういう奴はよ』
[ではここにお越しの皆様には、漏れなく御協力頂けると受け取って宜しいでしょうか?]
拍手と歓声と共に第一回地球在住異種族会議は、良好な結果を残す事となった。
昴君は、本人の知らない処で色んな方にロックオンされてしまった様です。
ガンバレ!!!




