2-4-10 突撃取材4…Job change 21/12/8
20211208 加筆修正
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アルキオネの操るワンボックスカー(型のシャトル)は、楕円軌道で月への最短距離を飛び52分後には、月の裏側の巨大クレーター上空にて停止していた。
[これからルナベースに入港します。今見えているクレーターは光学迷彩による立体映像です。このまま突っ込みますよ、ィ~ヤッホ~~♪]
「「「「「「「キャー!」キャ~♪」ギャーッ」ウォ~」ワ~イ♪」……」(白目)」
停止状態から一気に目の前に見えるクレーターに逆落としに突っ込んで行くワンボックスカーの中は、阿鼻叫喚の坩堝と化した。
全員が地面にぶつかると思った瞬間、今まで見えていた地面をすり抜けて巨大なトンネルの中を突き進んでいました。
やがて目の前には巨大なゲートが立ち塞がるように迫っていました。
通り抜ける瞬間に、僅かにワンボックスカーが擦り抜けるだけの隙間が開き、ワンボックスカーはそのままスピードを緩める事無く次々とゲートをクリアしてゆきます。
このゲートは、一体何層あるのでしょう?
[アハハッ!、ビックリした? ここは、月の中心核にあるルナベースまでつづくセントラルピットよ。入口の直径60km、ルナベースまで真っ直ぐ1300km続いているわ。それぞれの隔壁は20層ほどになるからゲートも20箇所くぐるわよ。今日はルナベースへ直行するけれど、普段は外からのお客さんには、セントラルピットの各層に配置された宇宙港に入港してからルナベースに下りてもらう事になるわ。今日は、私が一緒だから特別♪ さあ、まもなく到着よ]
アルキオネさんの言葉通り、ワンボックスカーが着陸して停車しました。
そして……。
「遠い所をよくおいで下さいました。歓迎しますよ、皆さん」[ナァ~ン、ゴロゴロゴロ……]
出迎えたのは、白い子虎を抱いた天河昴、本人だった。
◆
月に地球からお客さんが来た。
キャロライン女史には仲間になってもらい、表の情報戦を戦う戦士になってほしい。
メガフロートで治療を受けた子供達は、この先うちで働く事に同意してくれている。
これまで色々と辛い経験をして生きてきた子供達は、下手な大人より現実が見えていて最初は信用してくれなかったが、何とか説得はうまく行っているようで良かった。
どんな所にも偏見のある人間は存在するもので、子供は敏感にそういう気持ちや態度を感じるものだ。
特に障害などを持っていると、大人や介護者の顔色を窺うようになる。
施設の子供達は、両親の庇護を受けられず少なからず親族や周りの人間から厄介者扱いを受けた経験のある者がほとんどだろう、親のない子は尚更だ。
早いうちに自立を促すのも一つの方法ではある。
しかし、出来れば子供の内は子供にしか出来ない経験を積んでもらいたいもので、今はリハビリとして秘密裏に我が村へのホームステイを少数づつで行っている。
(村の年寄りが喜ぶんだわ、これが……)
田舎暮らし、特に障害を克服して自由な体で走り回り、田舎の田畑や森で生き物や植物の在りようを経験しそこに暮らす人と接する事で、氷の様に冷え切って笑う事を失っていた子供たちに、生きる事の楽しさと厳しさを経験してもらい、人は何を糧に生活し歳を経るのか、食べる事の大切さと有り難さを教え諭す。
都会の大人は、人の生きる術なんて子供に教えないし、学校でもそれは同じだ。
危ないから触っちゃ駄目よと言うだけで、何がどう危ないのか説明もしない親や先生。
今更ボーイスカウトみたいにサバイバルを教えろなんて事は言わないが、せめて自分たちの生活の基礎や最低限度の知識ぐらいは教育に組み込んでもらいたいもんである。
うちの分校の鷺ノ宮校長は、校舎裏に畑を作っている。
世話して育った作物をみんなで毎年収穫して、料理して食べている。
ここで、食べることが重要だ。
その時は、村のジジババも一緒に色々なことを体験し覚えるのだ。
でっかい物、小さい物、良く出来た物、良くなかった物、何故そうなったのかみんなで考えることが次の収穫に繋がってゆく。
季節はめぐり、生命は受け継がれ、それは未来へ繋がってゆくという事をその身で体験してゆく。
昔は、農家の手伝いや山の手入れなどにも子供が戦力として考えられていた。
日々の生活の中、お手伝いや農作業をしてゆく中で年長者が必要なことを伝え戦力となるように生きる為の経験やスキルなどを鍛えて居たわけだ
昔はどこの小学校でも米や芋を花壇に植えて、秋の収穫時には煮炊きして食べた経験のある人もいると思う。
今どきの子供に花壇の土いじりなんかさせた日には、服が汚れるからとPTAが黙っていない。
そんな事は、用務員にやらせろとかわめき出す。
生徒に怪我なんかさせちゃったら大変だ、直ぐに責任者出て来い! である。
今の子供は、経験がなさすぎる。
誰も教えないから何をするのも危なっかしいし、怪我をするし物を壊すのは当たり前である。
昔は自然の中で自分で遊びを見つけ道具を作り、自分たちの「楽しい!」を見つけ出していた。
当然その過程で怪我することも有るだろう、それが経験だ。
何が危なくて、何が安全で、何が美味しくて、何が不味いのか。
どの季節に何処で何が採れるのか。
田舎の子供はそんな事は当たり前に知ってるし、自分より小さい子に教えて一緒に遊ぶのだ。
都会の子だって、田舎に里帰りした時に爺ちゃん婆ちゃんに教えてもらうもんだった。
随分と脱線してしまったけれど、生きる事の厳しさと楽しさは学校では教えてくれない。
ましてや親は働くのに忙しくて子育てなんてそっちのけ……ネグレクトか?
今の世の中はどうなってるんだ? マッタク。
それにこんな事を考えている13歳って、我ながら可笑しいよね~♪
ま~何にしても、うちで治療を受けた子供たちは、リハビリと田舎体験で真っ当な人間に近づいていると俺は思っている。
そんな中から順番でコッソリ宇宙体験をさせている訳だけど、今回はおまけが一人くっ付いて来た訳である。
このお姉さん、若いけど割とヤリ手だとAI達からはかなり高く評価されている。
まだ20歳と若いのに、厳しい報道の世界で頭角を表してきた努力家でもある。
あと一歩でキャスターとしてメインを張れるくらいに頑張っているけれど、メガフロートに飛ばされてきた。
本人は、大抜擢されたと思っているけれど、その実態はキャスターなのにカメラマンも付かず、取材期間の指定も受けていない。
何を取材するかの指図もなく、無い無い尽くしの体の良い左遷みたいなもんである。
取材期間中の費用は普通は向こうが出すもんなんだけど、1円も出す気が無いらしいのでウチが全額出している。
普通はカメラマンが付いて来ない時点で気が付きそうだけれど、本人は割と御人好しで会社を信じ切っている所が救われない。
薄々は気がついている様だが、気付かない振りをしている辺り可愛いもんである。
表の窓口として(株)タウルスに連絡が有った。
代表の母さんの秘書をしているエレクトラが一手に仕切っている訳だけど、基本記者会見や公開実験以外は全ての取材を断っているんだ。
更に今回の取材の申し込みがされた時、エレクトラが逆指名なんかしたのが向こうさんは気に入らなかったらしい。
エレクトラもエレクトラで、売り言葉に買い言葉、費用はこっち持ちにするから可笑しなプロデューサー(笑)なんか着いて来るなよと啖呵を切ったらしいので、キャロライン女史は要らぬ厄介事に巻き込まれた可能性が高い訳で……。
交渉していたBBCのプロデューサー(笑)本人に、『お前は、信用出来ないから付いて来るなよ』と言った訳だ。
当事者は、面白い訳がない。
本人の知らないところで、哀れキャロライン女史はそのキャリヤを断たれてしまったと言う次第だ。
可哀そうなキャロライン女史、この際だからこっちの仲間に引き入れて謝罪しとこうよと、相成った訳である。
色々調べる段階で、その清廉潔白な気性と子供たちに接する思いやりなどに偽りは無いと分かり、幹部AI満場一致で仲間に引き入れる事が決定したらしい。
この時、冷や汗を流しながら『計画通~り!』と握りこぶしを突き上げている者が約一名。 ……エレクトラぇ……
エレクトラ曰く、あのプロデューサー(笑)が上から目線で何様だよ! と気に入らなかったらしい。
[如何にも『取材に行ってやれるぜ、有り難いだろう?』って調子で捲し立てられたものですから、カッチーン! と来てしまいまして……オ~ホホホホホ]
その辺のところを詳しくキャロライン女史に聞いてみた処、『ああっ、彼奴か!』っと、こめかみに青筋浮かべてプルプルしながら何度も頷いていた。
思い当たる人物が居るらしい、ご愁傷さまである。
多分そのプロデューサー(笑)に、もう出世の未来は無くなっただろうね。
だって、最大の敵をここに作っちゃたし訳だし……。
結局のところ、キャロライン女史は自分が海外取材という名目で体良く飛ばされていた事実を知る事に成り、二つ返事で(株)タウルスへの転職に同意することになった。
早速、これまでの取材リポートを当たり障りのない穴だらけの物に差し替え、退職届けと共に内容証明郵便で上司の所へ送りつけましたとさ。
後で見せてもらった最初の取材リポートはそれは素晴らしいものだった。
もしこの取材リポートが我々のプロジェクトの執行前に報道されていたらと思うと、ゾッとするよ。
このリポートがまたほんとによく出来ててさ、計画がブチ壊しになる処だったんだ。
月まで来て貰って脅迫するみたいになったけど、仲間になってくれてありがとう。
給料は、弾むからね期待してていいよ。
ウチでは、子供でもお手伝いするとそれに見合ったお小遣いが貰えるからね、皆んながんばってよ。
うんうん、喜んでる喜んでる。
◆
全くあの腐れプロデューサー、碌な事をしない。
目の前に居たら、一発ぶん殴りたいところだわ……。
イヤッ!
いつか絶対に良いのを一発、御見舞してやるんだから、見てなさいよ。
しっかし、未だ会って無いけどエレクトラさんて人に逆指名されて居たとは知らなかったわ。
道理で、事前の打ち合わせも取材計画も何もなく、フォロースタッフの一人も居ないまま放り出されたと思ったのよ。
体の良い厄介払いだったってことか~、ハフ~。
腐っても仕方が無いし切り替えて行きましょう。
そうよ、今に見てなさいよ、吠え面かかせてやるんだから。
それに、これで堂々と昴くん達の秘密に迫れるわ。
聞きたい事は、まだまだ山ほどあるんだから……。
ナ~ンテ思ってた私が馬鹿だった……。
聞きたい事を聞く前にどんどんと説明が進み、現地球人の起源から先史文明の繁栄と滅亡の歴史とその遺産。
そして、その原因となった簒奪を企てた馬鹿と一族に掛けられた汚名と粛清に至った経緯。
現存する天の川銀河連合の有り様と今後の対応と対策。
そして肝心なのが、もうすぐ訪れるクリスマスに計画されているらしい『エイリアンが月に引っ越してきましたよ』宣言。
アッ、頭が痛~い……。
私にこれを手伝えだって?
無理、無理、無理、出来る訳が無いでしょう。
あんたら、ちょっと頭おかしいよ!
人間に分かりやすく、なるべくソフトランディング出来るようにプロデュースしてくれれば技術的なところは全部やってくれるわけなのね……、ウ~ン。
これ、私みたいな新米に務まるはず無いわよ~。
えっ、私なら出来る? ウ~ン。
そんなに言うなら話だけでも聞きましょうか?
フムフム、そんな事まで出来るんだ。
ほほ~、へぇ~それは面白そうね♪。
まっ、まあっ御手伝いくらいなら出来るんじゃないかしら?
仕方が無いわね~、袖擦り合うも他生の縁って言うし……。
えっ、この後の人生の面倒全部見てくれるの(それってプロポーズじゃないわよね)。
ま~、それなら良いかしら……。
[(ネエネエ、マスターも面倒事を押し付ける相手が見つかって嬉しいのは分かりますけど、簡単にあんな事言ってしまって良いんでしょうか。キャロライン女史の目がハートマークに見えるのは私だけでは無い様に思いますがどうですか? アルキオネ)]
[(マスターも罪作りですね~。また犠牲者が増えてしまいました。既に確定候補が6人、狙ってる女性は数しれずですよ。コーディネートを受ければ肉体年齢はあまり障害に成りませんから、後はマスターの胸先三寸ですが……)]
[(肯定。子孫繁栄のためにも候補者は沢山居た方が望ましいと思いますよ。既に希美様には了承を頂いております。『責任を持って育てるから、何人居ても良いわよ』だそうですよ)]
[[おおっ!]]




