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1-1-06 ハコとコバコと宇宙開発‥大人の落とし所 21/4/25

20210425 加筆修正

5882文字 → 6209文字




 恒星間万能移民船『ハコ』諸元

 ※武装はありません

 

 第5期(ハコ端末24面体)

 孵化から130日経過


 船体は亜空間に次元潜行中

 外観 六角柱状のクリスタル、船色 碧色

 基礎船殻完成・NT1000トン

 内部拡張中(3,000平方km)

 全高60m 全幅35m

 主機・次元転換炉 現在5基

 

 船殻用ナノマテリアル 在庫 48トン

 昴の工作用 在庫 3トン




 ◆




 11月29日 ハコも第5期に入った。

 基本設計を地球人に合わせて再設計し加速調整した結果、第10期で無人試験運用をへて第15期で完成体となる予定だ。

 完成は、2010年8月、現在タイムスパンに遅れは無いそうだ。

 流石に恒星間宇宙船、完成まで時間かかるね。

 でも、これでも3倍速だと言われた。


 父さん達と話し合った結果、あまりに進んだテクノロジーは、地球人類の為にならないだろうという事で時間をかけてゆっくり小出しにして行く事になった。


 現在東西の冷戦は、ほぼ集結して宇宙開発競争も一段落した。

 去年から地上約400kmの上空に、国際宇宙ステーションの開発も始まり、アメリカ・ロシア・カナダ・日本・ESA加盟国15カ国が参加して来年には完成する予定だ。

 今の日本宇宙科学研究所は、完全国産のH-Ⅱロケットの打ち上げに失敗して足踏みをしている状況だ。

 1990年までの国産衛星は、国産ロケットで打ち上げていた風潮が、スーパー301条の適用により、ロケットの打ち上げは国内の実用衛星も全て国際競争入札になってしまい、より安く打ち上げが可能なアメリカのロケットに持っていかれている。

 日本にはもう少し頑張ってほしい、どっかで少しテコ入れできないものか要検討だね。



 サポートAI用小型プローブも、完成に扱ぎ付けた。

 通称は、コバコとした。(小さいハコです)

 かな~り安易です、ごめんなさい。

 イヤイヤ、デスマーチ明けで物を考えらんなかったんだよ、タハハハ~。

 大きさは、およそ12cm の正12面体で、Ⅰ~Ⅶまでのナンバーが振られている。

 そう、Ⅰはマイア、Ⅱはエレクトラ、Ⅲはタイゲタ、Ⅳはアルキオネ、Ⅴはケラエノ、Ⅵはアステローペ、Ⅶはメローペ、プレアデスの七姉妹である。

 機体の初期性能はすべて一緒だが、25%ほどの拡張領域を残してあるので、姉妹たちの性格や成長具合で最適化と増強が進むと思う。

 今までのマイアとエレクトラのボディーだったマシンは、各仕事に特化したサブボディーとなりAI無しの自立起動マシンとなった。

 ハコが接続する非接触ユニットの小型のものがそれぞれに付いて、姉妹達が取っ替え引っ替え接続を繰り返している。


 ハコより二回り小さいが、ハイスペックである。

 自ユニット含めて1トン程の重力制御と、シールドの構築、光学迷彩とステルス機能、各種高性能なセンサーを装備し、ハコより少量だが船との物質転送も可能とする。

 船からパワー供給されているので無補給で可動出き、さらに情報供給とサブボディーとの接続で活動範囲を広げられる。

 そして、姉妹達はすでにそれぞれに個性の発露が見られる様だ。

 いきなり賑やかになった我が家では、トップ会議が開かれている。


[肯定。マスターの頑張りでサポートAI・プレアデスの七姉妹も揃いました。これから本格的に、地球上の情報収集活動に移りたいと思います。マイアは、今までどおりに希美さまのサポートと今後は護衛もお願いね。そして、エレクトラには、譲さまのサポートと護衛を引き続きお願いしましょう。下の5人は、地球になれるまでローテーションを組んで、情報収集とマスターのお手伝いをお願いしますね]


「父さん、うちの車をコバコ達が接続出来るように改造していい? 運転してる時にナビゲーションと通信管制をしてくれるって言うんだ。固定するユニットを付けるだけだから車検に引っかかったりしないと思うんだけど‥‥」


「ほう、そいつは有り難いな。ぜひ頼もうか」


[肯定。車検制度に通るように、材質の変換等も随時行いましょう。安全性と燃費の向上を望めます。出来る事ならば私の船外活動用ユニットの規格で改造をして頂ければ、月くらいならドライブ感覚で移動できるんですが‥‥]


「それは流石に無理ね。もう少しゆとりが出来たら、みんなの意見を纏めて余所行き用の移動手段を考えましょう。きっと必要になる時が来ると思うの。イザとなったら家族揃って逃げ出す時の為にね」


「希美、それは最後の手段だぞ。俺は今の仕事を下地に、日本の宇宙開発を後押ししたい。君には是非、今迄どおり手伝ってほしいな」


「ええ、分かってるわよ、あなた。うちの会社がこれから世に出すハイテク機器は、どこにも真似の出来ない製品になるはずよ。見てて下さいな」


「お手柔らかにね。でも、地球の技術レベルを上げようと思ったら、あまり掛け離れたオーパーツを世に出さずに、頑張れば作れるレベルにしないと不味いと思うよ」


「ええ、そうよね~。それじゃ先ず世界各国の特許についてマイアに頑張ってもらいましょう。材質の特許も必要ね、サブマリン特許なんかで告訴されるのは願い下げだし、そういえば、この間の議員さんと会ったんでしょ? 譲さん、そっちはどうなったの?」


「うん、天文観測所からのコネを使って、視察に来てもらう様に根回ししたらね、割りとすんなりと話が出来てね、今日話を付けて置いたよ。今回の件は、行政執行で処分場の立ち退きをしてもらって、追い出した後地を俺達が自由に出来るようにする代わりに訴えを取り下げる事になった。議員の顔も立つし、課長は予定通りに動く、極力誰も損をしない様に収めて、あの課長には今の仕事を辞めてもらう。幸いな事に宅建の資格持ちだったから、独立してもらって村の不動産関係を任せようと思うんだ。村長には、逆に喜ばれたよ。更地の運用が出来るってね。それにあの議員さんもホッとしていたみたいだよ。残った処分場と廃棄物の山は、昴とハコに消してもらおうと思うんだ。これでこの騒動も収まってくれると良いんだけどね。君たち一月ほど経ってほとぼりが冷めたら掃除をしてくれるかい?」


[肯定。譲さま、ご苦労様でした。誰にも知られずに跡形もなく、綺麗にして差し上げますよ。これで、しばらくマテリアルの心配は要りませんね]




 ◆




 12月22日、今日は終業式だ、明日から冬休みになる。


 村の更地に集積したゴミは、雪が降る前に全て処理が済んだ。


 あの課長さんは、来春で依願退職して独立して不動産屋を始める事になった。

 普通は、大手の不動産屋に努めて地主や大家さんにルートを作ってから、出資先を探してから独立するらしいけど、村の土地を一手に引き受ける事が決まっていて、後はうちの会社がバックアップする事になっている。

 どっちかって言うと、うちの会社がこれから買い占める土地取引を任されることになるみたいだ。

 このクリスマスから売り出す事になった化粧品ノルンシリーズは、すでに奥様方の間では噂が持ち切りで、発売は未だか未だかと待ちきれない様子だ。

 テストベットとして最初に試用を行った奥様達からは、歓喜の悲鳴が連日鳴り止まず、秘密厳守の筈がいつの間にか近隣の奥様方に漏れてしまい、連日の問い合わせに発売を繰り上げる事になったのは、ついこの間の事だ。


 多分運動会と村の秋祭りを一緒にやった時にバレたんだと思う。

 母さんやおばちゃん校長ほか美容クリーム・ノルンのモニター達の容姿が、激的に若返っているのに気がついた他の奥様方が祭りそっちのけで群がっていたんだ。


 不法投棄の賠償請求の取下げの代わりに動いた行政(議員と課長)の素早い対応で、行政執行に踏み切った役所に対して、廃棄物処理業者はノラリクラリと知らず存ぜぬの体制だったが、僕たちが集めた証拠の他に、ハコ達が情報を集めた裏帳簿や契約書が見つかり施設や集積物は全て差し押さえられ、立ち退きを迫られた。

 根っこはヤクザだしもっと粘るかと思われたが、割とあっさり立ち退きに応じる姿勢を見せ、去り際には、一言。


『余計なお世話かも知れねえがガラクタを片付ける前に、絶対お祓いをした方が良いぞ。ここは出るんだ‥‥』


 と、親切に知り合いの宮司さんを紹介していったらしい。

 なんかの祟りにでも合ったのだろうか、不思議である。




 ◆




 私は、恒星間万能移民船の管制人格『ハコ』です。


 私の元の持ち主は、天の川銀河連合・宙域調査部・特別監査官 &%$#$w-bakun-%~$!&%<>LHG~、通称『バクーン』ですが、食い意地の張ったいい加減な奴でした。


 彼の特務艦の管制人格をパーソナルコピーして出来たらしいのが私です。

 彼の船は、特別監査官の特務艦ということで当然の如く武装艦です。

 彼等の仕事は、銀河辺境に育ちそうな脅威を未然に処分することです。

 普通ならこの地球も処分される予定でした。

 そう、処分される予定だったのです、大事なことなので2回いいます。

 ところが食い意地の張ったバクーンは、事もあろうに任務を放棄、地球の食料を土産に帰ってしまいました。


 但し、私という安全装置を残す事で言い訳の出来る体制を作ってです。

 初めは、私ばっかり貧乏くじじゃないかと思っていましたが、私の託された人物が私の好みド真ん中だったのです。


 10歳の幼生体、イイ‥‥。

 チョット小太り、改造したい‥‥、ハアハア‥‥。

 素直で優しそう、私好みに洗脳ィァィァ‥教育をしたい‥‥。


 ま~、地球人類が楯突いたりしない様に監視しながら、辺境でノンビリするのも良いですよね。

 地球人類は、見ていて飽きませんね。

 環境破壊なんて、度が過ぎれば自分の住む所が無くなるのに。

 群れなければ生きていけないのに個人の欲望で他を排除したり、矛盾の塊です。

 本当は、まだ独り立ちするには未熟な生命体ですが、可能性が無い訳では有りませんね。

 実際に天河一家は、知的で平和的な生活を維持していました。

 地球人類とは、安定を求める因子と破壊を求める因子が混在している生命体なのかもしれません。


 ここで私には、一つの疑問が生まれていました。

 あまりに近いメンタリティー、イエッ近いなんてものではなくほとんど同じと言っても良いこの思考と感情は何なのでしょうか?

 バクーンに依って弄られてはいますが、わたしは天の川銀河連合(大昔)の標準プロトコルで稼働しているはずのAIユニットです。

 それが、こんな辺境の知性体とそのメンタリティーが一緒というのはどう考えてもおかしな話です。

 遺伝子形質一つを取ってみても、相性が良過ぎるのが引っかかります。

 地球人類には、何か我々に繋がる秘密があるのかも知れません。

 要調査項目に追加しておく事にいたしましょう。

 

 私は、マスター昴が夏休みで引きこもっている間に色々と動いていました。


 マスターのご両親は、調整ポッドに隔離する事で、マスターへの教育という名の刷り込みを色々行いました。

 闘争心は無くさずに、探究心と不屈の忍耐力、そして甘味料のように甘い性格、フフフフフ、完璧です。


 村周辺を探索していると、山むこうに如何にもガラの悪い風体の人類が集まっていました。

 ステルスモードで話を聞いてみると、産廃業者をかたった暴力集団の会合のようです。

 この土地も不正に手に入れたようなので出来れば出ていって欲しいと思い、色々と嫌がらせをしました。

 廃棄物の山を消してみたり(チョチョイとマテリアル化)、出入り口に(つまづ)くようにゴミを置いたり、重機の鍵を別な所に隠したり、踏み出した足の所に今までなかった穴を開けてみたり、耳に聞こえない低周波で気分を悪くしたり、共鳴振動波を使ってコップやガラスを割ってみたり、と色々と悪戯を行ったところ呪いだの祟りだのと失礼な事を言い出す者たちが多発した。

 そして、プレハブに住み込んでいた人間はみんな逃げ出して行ったのだった。

 ここに在る物は全て私が頂きますので持ち込んだものは置いてって下さいね。

 さあ、これからどんな風に地球でバカンスを楽しみましょうか、アッ違った、仕事です、仕事♪




 ◆




[マスターは私達がステルスや迷彩として使用する能力が、地球で言われている能力とは違うことをお分かりですか?]


「何となく分かるよ。こう‥空気に溶けるような感じだよね」


[肯定。私達の使っているのは、空間の位相差による隠蔽能力です。対象の生物やセンサーに感知できない位相に潜り込むことで、対象から感知できなくしています。対して私達は、質量・重力波やエネルギー量、精神波なども観測できますので、対象を見失う事は基本的にはありません。位相をズラす事はそう難しくありませんし、省エネです]


「ふ~ん、いつかは地球でも君たち見たいなのを作れるのかな~」


[否定。現状では、何万年かかっても無理ですね。何らかのパラダイム・シフトが発生して、空間制御に対する技術か次空間認識の能力が発現しない限りは、どこまで行ってもオーパーツです。マスターは、私本体、いえファースト次元転換炉と情報集積体の3次元空間での大きさと質量がどれくらいか把握していますか?]


「見掛けの20cmじゃ無い事くらいは分かるよ。この間、コバコ達造ったときに一つ造るのにナノマテリアルを1トン以上使ってたもんね」


[肯定。船体以外の私本体は、空間圧縮を解いた場合およそ直径100kmほどの球体になります。初期船殻の質量こそ1000トンですが、次元転換炉とコントロールしている情報集積体はそこに含まれていません。これから艤装等が進んでいけば、船体は見掛け1000トンに加算されてゆきますが微微たるものです。しかし、亜空間内の実質量は準惑星級になりますので覚悟していてください。そういう訳で、地球での建造は無理です]


「えっ、準惑星級って‥‥。その質量どっから持ってくるの?」


[肯定。第10期、船体の無人試験運用の時に木星まで散歩に行ってきます。高重力及び高大気圧の強度試験を行いながら、必要質量の摂取を行います。太陽でも良いんですが、あっちは少し暑いですし、余りに高い重力下ですと亜空間や高次元へも影響するので次元転換炉に悪影響が出る可能性もあります]


「木星からそんな質量採ってきちゃって大丈夫なの? 」


[肯定。木星の質量は、地球の317倍以上ありますから、準惑星レベルの質量なら誤差の範囲です。もし地球で摂取したら地軸に影響の出るレベルですが‥‥]


「そっか! それで前にどれくらい大きくなるのかって聞いた時に、秘密ですって行ってたんだね」


[肯定。ですが船の中に、星を丸ごと飲み込む訳ではありません。理論上は、惑星系を全て抱え込むことも出来ますが、星系の重力バランスやエネルギーの循環サイクルなどに異常をきたして、死の星になってしまいます。恒星系ごと抱え込めるだけのパワーがあれば話は別なんですが、私の船内で再現される生命循環サイクル系の大きさは、オーストラリア大陸ぐらいと覚えておいてください。コバコ達同様、今後造成予定の内火艇や大小プローブは、地球の技術では作れませんし破壊も無理でしょう。太陽の中心にでも放り込む事ができれば或いは、破壊できるかもしれませんが無理でしょうね]


「ほえ~、丈夫なんだね~」


[肯定。一度建造したら、丈夫で長持ち、潰しが効かないくらい長い間ハビコリますので、後の面倒はよろしくお願いいたしますね、マスター]


「ウ~ン、寿命が続く限りは一緒にいようね」


[肯定。末永い御付き合いを‥‥]


(言質はとりましたよ、未来永劫よろしくお願いしますね。スバルくん(・・・・・)♪)




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[一言] マズイですよ.......スバルくんはもう救えないw
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