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実は俺、宇宙船を育てています《イイエ、育てられているのは、ア・ナ・タ》  作者: 夢見る黄龍
第2期 第4章 浮島

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2-4-08 突撃取材2…接触 21/12/2

20211202 加筆修正

9962文字 → 11947文字





 瞼(まぶた)を開くと見渡す限りの星の海……どこですか、ここは?

 何でわたしは、こんな所に居るのでしょう?

 たしか船から降りてメガフロートへの上陸手続きしたあと、そのままカートに乗ってホテルに行く途中のはず……ホテルは、どこに行ったのよ~。


「……4号ちゃん、ここはどこ?」


 4号ちゃんに呼びかけても、応答が無い。

 座り込んで、どうしたらいいかと途方にくれようとしていた時、突然後方から声を掛けられた。


[その疑問には、私がお応えしましょう。遠いところをようこそおいで下さいました、キャロライン中里様。初めてお目にかかります、わたくし天河昴の筆頭メイドを務めております、ハコと申します。どうぞ、お見知り置き下さい]


「……それで、その筆頭メイドさんが私に何の用があって、こんな何もない所にいるのかしら?」


 私が後ろに首を回して答えると、そこには碧い長髪で年齢不詳のどう見てもメイド長~て貫禄のある女性が、こちらを見下ろしていたのでした。

 目が合うと丁寧なお辞儀のあとに、言葉を続けてきました。


[私どもより中里様に折り入ってお願いしたい事が御座いまして、失礼を承知でこの様な場所にお招きした次第です。突然の事に驚かれていらっしゃると思いますが、お許しください。実は、中里様がメガフロートに御滞在中の間(あいだ)面倒を見られると宣言なさいました足立萌(あだちもえ)さまについてのお願いでございます]


「萌ちゃんがどうかしたの?」


[中里様は、足立萌(あだちもえ)さまの病状をどこまで把握なされておいででしょうか。簡単にご説明いたしますと足立萌(あだちもえ)さまは、3歳の事故に合われた時の頭部外傷により失明されましたが、現在こちらで診断した結果、直接の失明の原因は視床下部に食い込んだ金属片に依るものと判明いたしました。当時の外科手術では取り除く事は出来ずにそのまま放置されてしまったようですね。奇跡的に命は助かりましたが、体の成長とともに更に脳の深い所に金属片は移動してしまっており、現在の先端医療技術を持ってしても外科手術による回復は望めないでしょう]


「えっ、4号ちゃんは萌ちゃんの目が治るって言っていたわよ?」


[ええ、困ったことに4号が貴方と足立萌(あだちもえ)さまに何の問題も無く目が治ると告げてしまった事で、少々私どもの予定が狂ってしまいました。4号は、チョッと余計なことまで喋り過ぎるのが玉にキズですわね……困ったものです。しかし、足立萌(あだちもえ)さまの治療はメガフロートにて予定通り行われます。そこで中里様へのお願いなのですが、足立萌(あだちもえ)さまの事をニュースにするのを少々待って頂きたいのです。ニュースにするなとは言いません、こちらでの安全が確認できるまでニュースの発表をしばらく先送りして頂きたいのです]


「そう……、萌ちゃんは確実に治るのよね?」


[ええ、完治いたします。それに関しては、わたくしが保証いたしましょう。ただし、そのために今後ここメガフロートで足立萌(あだちもえ)さまに施術される治療行為は、まだ現人類が知るには早い物なのです]


「フ~ン……、それで私はどれくらい公表を先送りすれば良いわけなの? 私もこんな所まで物見遊山に来ている訳じゃないのよ。この先、私のキャスター生命が掛かってるかも知れないんですからね」


[勿論(むろん)、中里様に損はさせません。年内の発表を控えてくだされば良いのです。今年のクリスマスをすぎれば問題有りません。その時になれば多少の出来事は、軽く吹き飛んでしまいますので……]


「今年のクリスマスには、何かが起こるって事なのね?」


[それは後のお楽しみと言うことで取っておく事にいたしましょう。とっても楽しいイベントが有るとだけ覚えておいて頂ければ宜しいかと存じます。……そうですね、中里様には特別に我々との連絡役として4号(ホットライン)をお残しいたしましょう。何かお困りの際は遠慮なくご連絡下さい。連絡法など詳しくは4号からお聞き下さい。それでは、またお会いいたしましょう、御機嫌よう……]




 ◆




〈……な…か……なかさと…さま……中里様、ホテルに到着致しましたよ。起きて下さい、中里様!〉


「……うっう~ン、あれ、わたし寝てたの?」


〈ほんの5分ほどですがグッスリと爆睡しておられましたよ。上陸受付で中里様は、専属プレス待遇でVIP専用のブレスレットを受け取られました。そして、カートに戻られた途端に昏睡されたんです〉


「ウ~ン、何か星の海みたいな何もない空間に浮かんで『ハコ』って名乗る偉そうなメイドさんに会ったんだけど、4号ちゃん知ってる?」


〈アワワワ……、中里様は直接『ハコ』様にお会いになられたんですか? 中里様、凄いです♪ 流石、VIP待遇♪〉


「ふ~ん、彼女はそんなに偉い人なの? 4号ちゃんの事を『喋り過ぎる』って言ってたわよ」


〈ヒャ~、お仕置きは嫌です。わたし……再教育されちゃうんでしょうか?〉


「詳しい事は4号に聞けって言ってたし、たぶん大丈夫なんじゃないの?」


〈なんでそこで、疑問形なんですか~〉


「一々4号ちゃんていうのも煩(わずら)わしくなってきたわね…『ハコ』さんの話だと貴女はわたしの専属になるみたいだし……貴女は今から『フォウ』と呼ぶわね、4号だからフォウ(4号)! 良いわね?」


〈わたしの名前ですか? 『フォウ』、ありがとうございます、中里様〉


「その中里様っていうのも何か他人行儀よね~、キャロルで良いわよ」


〈了解しました、キャロル様!〉


「さあ、ホテルに荷物を置いて、早速、メガフロート巡りをするわよ!」


〈ハイ、お供いたします♪〉




 ◆




「ここの施設を一周りした感想を一言で言うと、『夢の様な浮島(せかい)』ね」


 エネルギーや食料の心配は要らず、住む場所さえも提供される。

 その代償は、厳しい審査基準をクリアしてここの大家に認められた研究と技術開発をここの厳格なルールに従って行なう事、そして其処にいるの者達が生活する事こそがデータとして重要な対価となる。

 世間の巨大企業の様に開発者の名声や利益を毟(むし)り取る訳でもなく、権威や名声の為に競争相手を握り潰す訳でもない。

 ただし、ここでは口だけの詐欺師はどんなに儲かりそうな話を並べ立てても門前払いを受ける事だ。

 かたや実現(じつげん)するのがどんなに難しい研究でも、それを実現するためにはどれだけのお金が掛かってしまうとしても、その先に開けた未来が有る物と認められれば受け入れられる可能性がある。 

 ものすごい浪費のようだけれど、とっても浪漫があるお話よね。

 これらのすべてが人類の未来への投資なのだとしたら、これは凄い事よ。

 ここが本格的に動き出して、世界中から意識の高い人間が沢山集まったら、人類の技術革新はこの先どこへ向かうんだろう。

 今まではお金に物を言わせて、人を従えさせてきた富豪や投資家なんかは、地団駄を踏んで悔しがるんでしょうね。

 今迄は、資金的に追い詰めて研究を買い叩いたり、あの手この手で事業を乗っ取ったりして美味しい思いをしてきた事の何割かがここに吸い上げられることで潰(つい)えるでしょうね。

 だから、手が出しにくくて邪魔のし辛いこんな何もない海の上に島を作ったのかしら?

 真逆(まさか)そこまでは考えていないわよね……。


「イヤ~ほんと、このまま此処に住めないかしら?」


〈……住めなくも無いですよ……、キャロル様がその条件さえ揃える事が出来ればの話ですが……〉


「その条件て? 非常~に興味をそそられるんだけど……」


〈それには、2通り有ります。1つは研究者として島の東側に住む事。そしてもう1つは、文字通り此処の人間に成ることです。ある意味、人類を辞める事にも繋がりますので良くお考えになってからにしてくださいね……〉


「その人類を辞めるってところが今一引っかかるんだけど……、私に化け物にでも成れっていってるの?」


〈!!!ッッッゥ~……禁則事項です。この先は、クリスマスまでお預けとの事だそうです〉


「あははは、上から待ったが掛かったわけね? ごめんなさいね、フォウ」


〈イエ、口を滑らせた私のミスですから、キャロル様のせいでは有りません〉


「でも、口を滑らせるAIね~……、ほんとに中に人が入ってるとかじゃないのよね?」


〈ハイ、私はナビゲートAI・No4のフォウですよ〉


「それじゃ、話題を変えましょうか。萌ちゃんの治療は、何時頃から開始される予定なの?」


〈少々お待ち下さい。アステローペ様に問い合わせてみます……フムフム。治療は、すでに開始されているようです。治療用カプセルで4日ほど掛かるようですね。経過データの確認ですがキャロル様には開示許可が下りているのでホスピスへ行けば、アステローペ様が直接説明してくださるみたいです。それと、『是非検診にいらして下さい。隅から隅までお調べいたします』との事ですよ〉


「チョォ~ッとニュアンスが怖いんだけど、アステローペさんてどんな人? 聞いた様子からだとドクターみたいだけど……」


〈そうですね、素晴らしく優秀なマッドドクターです。別人に生まれ変わった様にお体を直してくれますよ〉


「マッド……、それホントに治療してくれるの?」


〈死ぬような事はありませんよ、逆に寿命が…伸(の)…び…lo+sa"#du7b.8457^104@3; .xld……〉


「あららら、また禁則事項に引っかかったわね。聞いたわたしも悪いんだけど……、フォウ、大丈夫~?」


〈……pi…po……再起動しました……。うううっ酷い目に会いました……大丈夫です〉


『4号、貴方も学習しないわね~、禁則事項のチェックをもっとしっかりと行いなさい』


 急に目の前に現れた立体映像に固まった私は、そのメイド服の上に羽織った白衣姿から、彼女が今話題になっていたマッドドクター・アステローペさんだと確信したのだった。


『はじめてお目にかかります。プレアデスシスターズ、No6のアステローペと申します。ここメガフロートと(株)タウルスの医療に関する事すべてを監督している物(・)です。以後、お見知り置き下さい』


 目の前でお手本のような見事なカーテシーを決めて、挨拶をするアステローペさん。


「こちらこそ、キャロライン中里と申します。キャロルと呼んで下さい」


『それでは、キャロルさん。早速ですがメガフロートへの滞在規定に則(のっと)り健康診断を行います。速やかにメディカルエリアへの出頭を命じます。本日中に受診出来ない又はこれを拒否された場合、メガフロートから強制退去となりますのでお早めに受診を済ませてくださいね。上陸時間06:00、現在時刻19:23です。メディカルエリアは24時間開いておりますのでまだ大丈夫ですよ。今夜は、ホテルに帰れないかも知れませんけれどね、ウフフフ。それではまた後(のち)ほどお会いいたしましょう、御機嫌よう……』


 必要なことを伝えたからだろう、幻(まぼろし)のようにアステローペさんの立体映像は消え去った。


「ギャー! フォウ! なんで教えてくれなかったのよ?」


〈ッ、忘れておりました……、エヘへ~♪〉


「可愛くな~い!!!」




 ◆




 私は今、人も疎(まば)らなメインストリートをブレスレットのナビマップを見ながら小走りに走っています。


「フォウ、あんたナビゲーションAIなんだからチャンと仕事しなさいよね。まったくもう!」


〈申し訳ありません、キャロル様。私も島巡りをするのは今回が初めてだったので、テンション上がっちゃってました、アハハハ。……そろそろ見えてきましたよ、あれです!〉


 前方に見えてきたのは、ぽつんと佇む小規模な薬局の様な建物でした。

 ほんとに此処でいいの?


「ハァハァハァ、……間に合った……わよね?」


 息も絶え絶えに入り口へ駆け込むとメディカルエリアには人っ子一人居らず、受付カウンターの向こう側には私を待っていましたと言わんばかりに手を振るアステローペさんが、ニコニコと微笑んでいました。


[オホホホホ♪ 随分とお早いお着きで、そんなに慌てなくても此処は消えて無くなったりしませんよ]


「健康診断って言うから病院を想像していたんですけど、想像より随分と小さな建物なんですね?」


「ええ、基本的にここの主要施設はこの下にありますからね。地上で見かけるのは受付か開放空間が必要な厚生施設くらいです。キャロルさんは、来たばかりですから勘違いされているようですがすぐに慣れると思いますよ」


「エッ、それじゃ~船を降りてから1日見て回ったのは?」


「メガフロートの上層施設、それもほんの一部ですね。全体の5%もご覧になってはいませんよ。今日は、船が着いた日なので海上に浮上していますが夜間には海中に沈降してしまいますのでお気をつけくださいね。頑張って全島を隅々まで制覇なさってください。お母様から貴女には全て見せてもいいとお許しが出ておりますので……。ただし、他人の耳目のある場所での情報交換はお控えください、分かったわね? 4号!」


〈ひゃい! アステローペさま〉


[フフフ、分かればよろしい。それじゃご案内いたしましょう。メガフロートの奥の奥へ……]


 そう呟(つぶや)いて、アステローペさんは受付を立ち、すぐ横のエレベーターへ私を案内したのでした。




 ◆




 先に立って私の前を進むアステローペさん。

 何度目かのゲートの様な入り口をくぐり、『この先ですよ~』と案内してくれたのは良いのですが、そこはロケットの打上げ制御をする管制室によく似た広いホールでした。


「あの~アステローペさん? 私の検診は……」


[キャロルさんのメディカルデータなら既にここにありますよ]


 アステローペさんがサッと手を振ると、眼前の空間に透き通ったモニターがズラリと並び、私のバイタルや詳しい健康状態、むかし罹(わずら)っただろう病歴などが克明に表示されていました。

 そんな、いつの間に……。


[このデータは、上陸時に渡されたブレスレットと各施設の対人センサーから集められたものです。今日一日だけで、随分と色々な所を周られたようですね。おかげで、沢山の有力な情報が集まって来ていますよ]


 確かに通常の測定データだけではない。

 肺活量やエネルギー代謝の比率や時間あたりに消費したカロリー。

 現在の運動機能のレベルや血流量まで、ありとあらゆる私のデータがそこには表示されていました。

 そこには当然、身長体重からスリーサイズに体脂肪率まで……。


「ウギャー!!! 消して消して見ないで~、見ちゃ駄目~……」


[キャロルさん、少々運動不足ぎみですが、お腹の弛(たる)みもなくて余計な脂肪も付いていません。ほぼ健康体ですが恒常的な睡眠不足による肌荒れにはご注意くださいね、もし眠れないというのであれば副作用の無い鎮静剤を処方いたしますがどうしますか?]


「……あゝはい、お願いします……」


[では、軽いコミュニケーションはこの辺にして本題に入るとしましょうか。……キャロルさん? どうかしましたか?]


「……強烈! インパクトが有りすぎ、イヤハや貴女はどういった方なんですか?」


[そうですね~、ご説明いたしましょう。端的に言って我々は人では有りません。マスター昴とハコお母様の手によって生み出されたAI、人工知能です。中でも最初期の8体はプレアデスシスターズと呼ばれる個体で、こうして人とそっくりな義体を持つことにより独立した単独行動が許されております。それぞれに自我を持ち独立した思考も確立されていますので、人工機械知性体とでも言ったところでしょうか]


「エッ、貴女も機械なの? AI? って人間以上に人間してるじゃないのよ! 嘘でしょう?」


[イイエ、本当の事ですよ。わたしも4号と同じAIなのです。決して人では有りません。信じられない様ですので証拠をお見せしますね、ほらご覧になって下さい……]


 アステローペさんは、その綺麗な指を揃えて胸元へと伸ばし、カチリと音を点てて左右に開いたのです。

 その胸の中心には、レモンイエローに明滅するクリスタルが鎮座し、神秘的に輝いていました。

 開かれた体の内部には、血の通った血管も人間に必要な臓器も見当たらず、クリスタルを取り囲むように見知らぬ精密機械が詰め込まれていたのです。


「………」


 開いていた胸を閉じて身繕いをすますと、アステローペさんは言いました。 


[私達は作られた存在ですが、思考し行動するという点では人間と少しも変わりません。冗談も言いますし悲しいという感情も有ります。そして、楽しければ笑う事も出来ます。今はまだ涙は流せませんが、そのうちマスターが解決してくださるでしょう]


「天河昴という少年は、それほどの人物なのですか? 私の知る限りこんな技術は地球人類の物ではありえない筈です」


[いえ、これはマスターに依って多少アレンジされていますが人類の技術ですよ。人類は人類でも地球人類を誕生させた先史文明の遺産といった物ですが、今はその全てを正式に継承したマスター昴の所有する物(ぎじゅつ)です。今の地球人類から見れば確かに人間離れしているかも知れませんね……]


「先史文明ですって? それはいったい何時(いつ)頃の物ですか?」


[地球人類が誕生した14万年前を更に遡ること45万年ほど前、この太陽系を支配していた種族の名はウンサンギガ一族と言いました。次元空間を支配し星の海を自在に渡って他の星系にもその名を轟かせていた黒い髪に大きな黒い瞳の人類種の一族です。そして、神代の時代およそ7万年前にその支配下種族としてこの星で手が加えられたのがホモ・サピエンスと言われる現在の地球人類の祖先であり、1万年前その地球人との間に誕生した混血種は、当時シュメール人とも呼ばれていました。日本人はその子孫であり、生き残った直系の後継者だったようですね]


「それじゃ地球人類は、その一族に作られた生物ってことなの?」


[作られたと言うには語弊が有りますね。進化を加速するために一部に手が加えられたと言ったところでしょう。実際には、同じ様に手が加えられて他の種族も混じっているようですよ。現在、確認中ではありますが、神代の時代に神族として振る舞っていたアーリア系の種族も同じ様に混血を多数残していたようですね]


「アーリア神族って聞いたことがあるわ。北欧神話の神様やギリシャ神話の神様のこと?」


[ええ、そうです。その神話の神々はかつて、ウンサンギガ一族の支配するこの星系に移民してきた一族ですね。ウンサンギガ一族の主星ニビルは、その公転周期が3600年と言われていますからその間、地球の管理人として存在していたのがアーリア神族なのだと言われていますよ]


「ウ~ン、それで彼等は色々と人類にちょっかいを出したり、矢鱈と子供作ったりしてたって事? 神話やおとぎ話では無く?」


[『事実は、小説より奇なり』と言うじゃないですか。的を捉(とら)えた良い言葉ですよね、あははは]


「それで、どうしてその古代種族が現代に蘇った訳なのよ? 話の流れからすると、そういう事なんでしょう?」


[まあ、お察しの通りなんですが、ある偶然の出会いからマスター昴が現在の太陽系を管理下に置いている異星人とお友達になりましてね。その時に貰った置き土産がマスターのパートナーである筆頭メイド『ハコ』の初期状態のコアユニットだったんですよ。契約を結んだ事が切っ掛けとなってその血に眠っていたウンサンギガ一族の権能が蘇ったたという訳ですね。一族の頭領となったのには、また別の話が有るんですがそれは追々お話するとして、ザックリとご説明させて頂きました]


「ザックリとし過ぎよ、ザックリと。するとあの夢に出てきた『ハコ』さんも人間じゃないって事?」


[ハイ、恒星間宇宙船の管制AIコアユニットだったんですが……]


「何よ? ……だったって言うのは? 随分と不穏な響きね……」


[イヤ~、自分達の生みの親を捕まえて言うのも何なんですけどね、マスター昴と契約してこの3年で異常進化してますから、これをなんと表現すればよいのか……。マスターも全容は把握してないようですし……]


「なにそれ? そんなだから日本人は、外国人から変な種族って言われちゃうのよ。何でもかんでも魔改造しちゃうんだから、それ本当に大丈夫なんでしょうね?」


[……たぶん? 大丈夫ですよ『マスターが生きている限りは』と添え書きが付くと思いますけど、何分私も作られた存在ですからね~]


「それで、私にどうしろって言う訳? そこまでの秘密を話しておいて何も無しって事は無いんでしょ?」


[ええ、そんなに難しい要求では有りませんよ。キャロルさんにはかえって良いお話では無いかと思います。正直なところで『私達の仲間に成りませんか?』という事です。決して悪い話では無いと思いますよ]


「フーン、私にはどんなメリットが有るのかしら?」


[そうですね~、確実なところでは知識にお金、健康と寿命、女性ですし永遠の美ってところでしょうか。他にも数え上げたら沢山ありますが何かご質問は?]


「それって私に今の仕事をやめろって言ってる訳? 報道の仕事は私の小さい頃からの夢なのよ。世界中へニュースを届ける……その為に私がどれだけ努力して今の職場に食い込んだのか、あなた達は知らないでしょう……」


[そうですね。わたし達は、キャロルさんがどれだけ努力したのか、残っているデータと行動履歴から想定することでしか見て感じる事は出来ません]


 アステローペさんは、そう言葉をつないで手を振り上げました。

 振り上げられた手の先から零れ落ちるように表示されてゆく映像やグラフ、論文や作文に各種伝票や申請書類や請求書に領収書の数々。

 ッ!、これ全部私の個人情報の資料じゃないのよ。

 私のプライベート、全部丸裸~!

 時系列順に遡ると私が生まれる前、ダディーとママの分まで……一体どこまで遡(さかのぼ)って調べあげたのかしら?


「ハァ~でっ、アンタ達は私にいったい何をさせたい訳? 私が嫌だって言ったら抹殺でもする気?」


[イイエ、そんな無駄な事はしませんよ。私達は、報道と情報操作のプロが仲間に欲しいだけなんです。残念ですが御協力頂けない場合は、これらの事実が公表されるまでの間は解けない暗示を掛けさせてもらうだけですよ。ただし、私達との縁もそれまでだったという事になりますけどね、本当に残念な事ですが……]


「そのタイムリミットが今年のクリスマスって事なのね……その時、どんなプレゼントが人類にもたらされるのかしら、とっても興味をそそられるはね……」


[ハイ、理解が早くて助かります。人類へのクリスマスプレゼントは既に用意されています。要は全世界へのプレゼンテーションとその後の情報操作について、私達は専門家の意見が聞きたかった訳です。出来れば今後もうち専属のスポークスマンをお任せしたいのですが如何でしょう? 一躍有名になれる事、請け合いですよ♪]


「返事は、……少し待ってもらえるかしら。それまで此処での情報は、一切外に漏らさない事を約束するわ」


[ええ、かまいませんよ。2週間の滞在期間の間で返事をお決めになって下さい。お互いより良い返事が聞けることを期待しておりますよ、うふふふふ♪]


「何か返事は始めっから決まってそうだけど、悔しいから最終日まで粘ってやるわ。そのくらいいいわよね?」


[どうぞどうぞ、キャロルさんが何時まで粘れるか私も興味が出てきましたよ。では、勧誘はこの辺にして萌ちゃん達の処に行きましょうか。前もって言っておきますがこれから目にする内容には、少しショッキングな物も御座います。ですが生命や安全には責任を持って処置していますので、見た目に反して命を失うような危険な事は有りませんのでお断りしておきます。いいですね?]


「分かったわ、早く案内して頂戴。それで萌ちゃんとは話せるのかしら?」


[意思の疎通は可能です。機械音声になりますが御了承下さい。どうぞ此方です]




 ◆




 それから私の目にした光景を説明しましょう。


 本当なら言葉にするのも憚(はばか)られる様な光景が……止めましょう。

 報道を生業にしている者の端くれとして、客観的に事実だけをお伝えする事としましょう。


 そこには、多数の巨大な試験管のようなカプセルが立ち並んでいました。

 透明なカプセルの中には、光る細いコードに繋がれ薬液に浮かんだ子供たちの姿が見て取れます。

 私が案内されたのは、そんな異様な光景が立ち並ぶまるで工場の様な部屋でした。


 子供たちは全員、銀色の水着のような物を着ていました。

 全裸では無かったので、第一印象で感じた人間の標本? とは違っていたようです。

 胸が動き生きていることが分かって、少しホッとしました。

 部屋の中央には、巨大な立体映像のモニターがあり、そこには広大な公園が映し出されており、透明カプセルに浮かぶ子供たちが走り回っています。

 これはどういう事でしょう?

 ……あっ、あそこで走り回っているのは萌ちゃんです。

 周りが見えている様子で他の子供たちと笑い合って遊んでいます。

 皆で縄跳びを始めましたが、縄を回して一緒に遊んでいる子を透明カプセルに探すと腕が有りませんでした。

 今、一緒に縄を跳んだ子には両足が膝から有りません。


「どういう事か説明して? この映像は何? なんでこの子達はカプセルに浮かんでいるの? 死んでないわよね?」


[はい、皆さん生きておられます。現在、体の方はメディカルナノマシンに依る人体修復作業を進めております。今まで欠損していた体に慣れてしまった脳を健常な体に慣らすためのリハビリとして電脳空間で過ごしていただいております。電脳空間での五感や運動信号は本来の脳へフィードバックされますので実際に体を動かしているのと同じ記憶や情報となって脳に記録され、健常な体になった後の後遺症を最小限にする試みです]


「子供たちは、眠っているの? あの中央の映像は、みんなの見ている夢?」


[いいえ、皆さん覚醒状態です。あの映像はバーチャルリアリティーですが、紛れもなく現実として体を動かしてあの中で五感を感じて生きているのですよ。体の修復と並行して脳と神経系のリハビリをすることで、治療期間の短縮にも成功いたしました。通常今までの治療では、術後に健常な体になった事を脳や神経に覚えさせる為に厳しく辛いリハビリを行っていました。リハビリを行うと少なからず脳が神経系の接続を痛みとして感じてしまいます。十分に脳が正常な体を認識した状態で、そこから拾い上げた運動信号を修復された体へ電気信号として流し、神経からの信号が筋肉や各臓器へ正常に伝達されるよう調整されて、晴れて退院となります。萌ちゃんは、すでに視床下部の金属片の分解除去に成功しています。現在は破壊されていた視覚野の修復と寸断された視神経の再接続を行っていますので4日ほどでカプセルから出られる予定です。後は見えるようになった目を日常生活の中で慣らしていけば完治ですね。ここに居る間に一般人と同じ、もしかするとそれ以上になって帰れるでしょう]


「他の手足の欠損している子は、どうなるの?」


[現在、ナノマシンにより擬似細胞を生成して欠損部を急速再生した後、ここでリハビリ生活をしてもらいます。ゼロの状態からなのでナノマシンの義体生成に2週間程かかりますね。ナノマシンの疑似細胞体は順次自分の細胞に置き換わってゆき、やがて全てが自分の細胞に置き換わります。これには完治まで6ヶ月程かかりますがナノマシンの義体は生身の手足と同じように動きますし痛覚、触覚もあります。当然血管も繋がっていますから血も流しますので、見ただけでは義手義足とは分からないでしょう。一応精密機械の集合体とも言えるので強磁場や電磁波は控えてほしいのでMRIや電子レンジの近くには近寄らないよう教える必要がありますね]


「臓器に障害のある子は、どうなるの? 手足と同じ様な治療法に成るのかしら?」


[基本的には同じですが、我々の人工の臓器の方が拒絶反応も出さずに生体以上の性能を発揮しますので、本人の選択に依りますね。臓器不全は、生体に戻ったあとでまた再発する場合もありますので、出来れば再発の危険は犯したくないところです]


 ここで治療を受けている子供たちは、目に見える範囲でおよそ200人ほど、大人は居ない。


「ここで治療しているのは、子供だけなの?」


[現在は、脳に柔軟性の有る10代前半までが治療対象となっています。それに生まれつき障害を持っている場合は別のアプローチに成りますね。障害期間の状態記憶が短いか又は回復後の状態への順応力でしょうか。成人以上になりますと逆に痛覚をともなったリハビリを行ったほうが脳が納得するようですね、人間は難しいです。基本的には義手や義足、人工臓器への交換等のほうが完治も早く回復も早いことが分かっています。ただし、本人がそれで納得すればですけれどね]


 ここで私が見ている治療行為は、たしかに人体実験か生体改造を行うマッドサイエンティストと言われてもおかしくない行為だけれど、ここに居る子ども達は現代の医学ではどんなにお金を出しても元の健康な体には戻れないだろう。

 所謂(いわゆる)世間から見放された子供達だ。

 普通ならこのまま一生ハンデを背負って、生きて行かなければならないだろう事は、誰が見てもハッキリしている。

 たとえ私の見た印象が治療というより改造であり、手術というより培養に見えたとしても、ここは我慢するしかないトコロなんだろうか?

 でも実際のところ治らないと思っていた体が元に戻ると囁(ささや)かれたら、誰だって悪魔に魂を売るだろうことは予測できる。

 ここの連中は、悪魔と言うにはお人好し過ぎるようだけれど……。


[見た目に反して、それほど酷い事をしている訳では無いんですよ。キャロルさんには、その辺りの事も納得できる様に覚えて置いて頂きたいところですね]


「そうね、納得が行くまで取材させて頂くわ……」


 とりあえず、返事は保留させてもらったけれど、既にこの時には答えはもう出ている様な気が、私にはしていた……。


[ウフフフフ、頑張ってくださいね♪ キャロルさん]






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[一言] 子供達は一般社会に復帰するよりか 此処で過ごす事選ぶ子が多いだろうな? 一般社会で大人に裏切られた子が多いので! 社会フッキはせんよな萌えちゃんは 身内の屑に裏切られたトラウマを 忘れられな…
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