1-1-05 自宅を魔改造‥秘密基地はロマンだ! 21/4/25
20210425 加筆修正
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魔の発表会から2週間、美容クリーム『ノルン』の試作も佳境に入り、取り敢えずこの村にいる20歳以上の性別女全員分を用意した。
全員分だ! 大事な事なので2度言ったよ。
最初、必要無いのではと悩むところの村の重鎮5人衆、トヨさん72歳、霞ちゃん81歳(何故か、ちゃん付けじゃないと返事してくれない)、佳代さん88歳、公江さん94歳、村長を洟垂れ小僧扱いするハツさん97歳にクリームが出来上がったら献上する旨を伝えたところ、翌日から消費しきれないほどの野菜が届くようになった。
何歳になっても女は女なんだと再認識させられたのだった。
増産用のタンクは業者に頼んであるがまだ届いていない。
仕方ないので、実験用タンクと容器のナノマシンプラントを急造で仕立てた。
いつも俺がついている訳には行かないので、ナノマテリアルを補充しておけば一個30分くらいで容器を製造してくれるナノマシンプラントを設置したんだ。
ナノマシンプラントの大きさは、畳一畳くらいになってしまったけれど、これで材料と電力さえ供給すれば勝手に指定の数の容器を作ってくれる。
ついでに電気も自宅で発電出来るように、高効率の光発電素子を屋根や外壁に設置して家全体で発電した電気を断熱材と差し替えた蓄電材にためて、普通にコンセントから使えるようにした。
蓄電量は、家全体でおよそ100日分、これでうちの光熱費はほとんど掛からなくなった。
蛍光灯も発光素子に変えちゃったし、地下室を作り秘密保持のためにオーバーテクノロジーな物はすべてそちらに移して隠蔽した。
かなり大きなシェルターで、ここを創るのにかなりのナノマテリアルを消費した。
でも消費した分のナノマテリアルは、地下室を拡張した時の土砂を漏れなくマテリアルに変換したので、逆に備蓄が増えたくらいだ。
地下3階構造で延べ900平米、父さんと二人でハッチャケてしまった。
地下への入り口はハコが管理しているので、他人はもとよりネズミ一匹、ゴキブリも生きて入ることは出来ない。
ちなみに備蓄が完了した暁には、5年ぐらいの籠城も可能だ。
万が一、パンデミックや核戦争が起きても対応する優れものである。
もう少し資材に余裕が出来たら、都度広くして行こうと父さんとニヤニヤしながら増築予定の図面を引いている。
などと母さんに説明したら、父さんと二人で正座させられて思いっきり絞られた。
話が脱線したので元に戻そう。
化粧品の容器は、タウルスのイメージカラーにした碧色のクリスタルガラスにした。
容器の蓋に個人認証とナノマシン散布の仕組みを仕込んで、瓶の方にも情報通信用の電波発信機能をもたせた。
表面に微細な光発電素子を埋め込み給電することで、完全に光がカットされない限りは半永久的に機能する。
X線で見たくらいじゃ微細すぎて分からない様に、均一に分散配置した。
フッフッフッ、完璧である。
後は個人名を刻印して出来上がり、蓋を開ける時に手の皮膚から使用者の情報を吸い上げ、使用時間や使用量をデータ蓄積してタウルスの情報サーバに発信する。
うちのサーバモドキが受信したデータを元に、最適な量のナノマシンを混入する信号を発信し容器が実行する。
クリームが無くなったら空の瓶を回収し、この時にクリームとナノマシンの補給も行う。
ちなみにワークステーションモドキ、サーバモドキにも名前がついた。
ワークステーションモドキは、マイア。
サーバモドキは、エレクトラ。
マイアは、母さんのサポート。
エレクトラは、株式会社タウルスに関するデータ管理と化粧品のコントロール、ハコの代わりに普段のハウスコントロールも行う。
ここに来てナノマテリアルの消費が激しい。
取り敢えず家の周りの要らない物は全て、ハコに吸い込んでもらった。
分解してマテリアル化するのには 鉱物質の物のほうが都合がいいらしい。
生ゴミや有機物は、水分や揮発成分が多いのでマテリアル化した時の質量が稼げないそうで、所謂スカスカなので金属や石材のほうが良いそうだ。
どっかに纏まって落ちてないものだろうか。
◆
夏休み明けに問題になっていた不法投棄なんだけど、処理業者が黙認して出入りの運搬業者が産業廃棄物を運搬中不法に捨てていた。
許されない事実ということで、村の有志による本格的な証拠集めが始まった。
ただし、先立つものが無いと何も出来ないのが世の定め、まずは資金集めだ。
ここでうちの母さんが動いた。
会社を起業したので自宅で色々とやりますよ、と役場に報告に行ったのだ。
そして、村の女子ネットワーク(井戸端情報)を味方につけ、旦那たちを顎で使える様に根回しをしたのだ。
更に村長に掛け合い、過疎の村だから放棄されていて役場管理になった廃屋や土地がかなりあるという事実を元に、土地は会社の租借地として、取り壊してよい廃屋など処分する許可を取り付けた。
この御時世、ただで出来る事などは限られる。
廃屋の取り壊しも無料でやってくれるような人物や企業など、今時皆無である。
それに物を壊せば当然のように廃棄物の山が出来る訳で‥‥手付かずで放置されているのが現状で、倒壊の危険がある物件のみが行政の持ち出しで取り壊し処理をされているのが実情である。
今回、役場の許可を貰った廃屋は、ハコが全て分解してマテリアル化する。
使用者のいない田畑なども、一緒に綺麗にならして整地をした。
これらの撤去作業は目撃されない様に気をつけながら行い、邪魔な障害物や不要な庭石や石垣、古井戸なども綺麗に分解処理された。
綺麗にならしたら、閑静な分譲地の出来上がりである。
ここまでをお膳立てした母さんは、役場の負担になっていた不良債権が一気に整理されて、余った予算を環境美化活動費として引っ張ってきた。
やったね!、母さん。
ちなみに化粧品ノルンは、まだ試験段階なので秘密厳守で無料である。
奥様方は、この無料モニターで釣り上げたらしい。
6ヶ月ほど試用してから、段階的に料金契約を結ぶそうだ。
話を不法投棄の件に戻そう。
まず、大人が現状確認し写真など記録を残し、危険がないゴミを子供が集めたりしている光景も記録に残す。
活動予算から清掃に使う機器備品や重機のレンタル代などを捻出し、整理した租借地に運び分別し処分費用を概算して業者に請求する。
一度綺麗にしてから監視体制を敷く、綺麗にするとゴミは捨て難くなるものだ。
そしてうちの会社がネットワークを構築し、家を基地局にしてこの村の中をネット回線で繋いでしまうことにした。
1999年より一般家庭のADSL接続が普及して、1997年当時月額37,000円もした通信料が、最近は月額2,500円ほどに下がり家庭への普及率も上がってきた。
うちで使用している通信回線は、天文観測所に光回線が施設される時に一緒に業務で使用しているDSL光回線を引いて貰っている。
このネットワーク回線を利用して村中に監視網を構築するのだ。
警備用の監視カメラを設置し、常時マイアが監視映像を記録に撮っている。
見かけは、ホームセンターでも売っている旧式のダミー用監視カメラ。
しかしてその実態は、中身を大幅に改造されたオーバーテクノロジーの産物だ。
監視領域に近づくといかにも玩具ですといった警告音と音声を流して警告される、実はその時の反応を高感度カメラが映像記録に残すのである。
人間とは、物音や興味のある物の方にとっさに視線を向けてしまうものである。
顔がバッチリと映っており御用となる仕組みだが、当事者にはこの監視カメラ、こちらの思惑通りに玩具だと見ているらしく、全くといって用心する様子も無くカメラを気にせずに、平気でゴミを捨てている。
すでに犯行に使用されている車両と業者、作業員などの特定も済ませた。
この情報を 村おこしホームページとして公開を開始、地域テレビやラジオ等のメディアにも公開した。
ヤリ得や逃げ得なんかにはさせないぞ。
ジワリジワリと外堀を埋めて逃げられない様にしてやろう。
はい、釣れました!。
裁判所に民事による賠償請求の申立てを行った途端に県議会議員と連れ立って、県庁の不法投棄対策室の課長という人物が現れたのだ。
不法投棄や無認可処分場の営業に対して、行政処分とその経緯の説明による泣き落とし‥‥、だから裁判所の訴えを取り下げてくれとのたまう。
山林や河川への不法投棄による環境破壊の原状復帰については、行政による補助金で出来るだけ対処しますとの事、それって業者が逃げるの前提の対処じゃないのかな~。
さ~て、主導で動いているのは業者かな~、議員かな~。
答えは、直ぐに向こうからやってきた。
不法投棄の現場視察との名目で先日の議員と課長が現場に現れ、人目が無いのを良いことに色々と不満をぶち撒けていたのだ。
ここでマイアがやってくれた、その場の映像と音声をすべて記録していたのだ。
壊れかけのダミーカメラにしか見えないが、実はオーバーテクノロジーの監視カメラは、この時の会話を鮮明に記録していたのだ。
犯行の主導は、広域暴力団の出先オフィスによる産廃業者と下請け運送業者。
議員は献金貰って行政と課長の擁護と陳情のスルー、課長は裏金を貰って認可を降ろし、手が後ろに回ったら業者は夜逃げ、課長は行政処分を執行した体裁を整えて行政は仕事をしましたよとポーズをとって知らんぷり。
後は、のらりくらりとお役人を気取る気らしい。
真っ黒である、どうしてくれようか。
◆
さあ反撃だというところで、父さんから待ったが掛かった。
母さんの突っ走り方にドン引きしながらもフォローしてくれていた父さんだが、収集整理した情報の裏取りをもう一度やろうと言い出したんだ。
「お父さんは思うんだよ。確かに悪いことをしたら罪を償わせることが正しい事だとは思う。だけど、人間最初から悪人だったなんて人は滅多に居ないんだ。止むに止まれず、悪に手を染めてしまった人だって居るはずだよ。世の中はそんなに甘くないし、正論だけでは生きていけないのも真実だと思うんだ。その辺を納得するのは、昴にはまだ難しいかもしれないけどね。希美さんも少し落ち着いて、もう一度裏を取ろうよ。僕達にはハコも居ればマイアやエレクトラなんて武器も有るんだ。人の人生がかかった話だよ、もう少し視野を広げて対処しても遅くないんじゃないかな?」
「‥‥フッ~そうよね。譲さんには心配させちゃって悪かったわ、私達チョッと熱くなり過ぎてたかしらね。あまりトントン拍子に話しが進むもんだから、歯止めが利かなくなってたみたい。頭の中まで若返って学生時代を思い出しちゃったみたいだわ」
「ウ~ン、難しいことは解んないけど大人の事は、父さん達に任せるよ。俺は、銀河達やオバちゃん校長からの突き上げをどう躱すかで忙しくなりそうだし」
「そうね、昴はまず身の回りの問題から潰していきましょうか。困ったらまずお母さんに相談しなさい、譲さんの助手も誰か必要かしらね、仕事もある事だし‥‥」
[肯定。では、マイヤ達と同じサポートAIを増やしましょう。幸いにして材料はそれなりに補充できましたし、マイヤとエレクトラの妹ということで御用意いたします。ボディーはマスターにお願いしますね]
「了解、後で情報頂戴」
[[マスター! 私達にもボディーをください!]]
「ウォッ、マイアもエレクトラも今のケースが有るじゃないか」
[今の姿は、仕事用の制服のようなものです。出来ればマザーと同じように動き回れるボティーが欲しいです]
[そうです! 私達も外の世界を飛んでみたいです]
[肯定。仕方がないですね。マスター、私からもお願いいたします。この子達にもサポートAI用の小型プローブの造成をお願いいたします。サポートAIの本体は、船の情報統合体の中にありますので入れ物さえ用意すれば服を着替えるように活動できますので‥‥]
「分かったよ、小さいハコを作ればいいんだね」
[肯定。マスターには良いスキルアップになると思いますよ。小型プローブとは言いますがサポートAI達の入る物はそれなりの集積度になります。頑張って下さいね♪]
「ウェッ、それってそんなに大変なの?」
[肯定。調整用ポッドよりも、かな~り大変です。大丈夫、慣れてしまえば片手間で作れるようになります]
「え~、調整用ポッド2つ作るのに一週間掛かったんだよ~トホホ」
[肯定。マスターには頑張って下さいとしか言えませんね。暫くの間は、エレクトラを譲さまのサポートに付けましょう。それで宜しいですね? 希美さま]
「ええ、そうしましょうか。エレクトラもそれでいいわね、譲さんをお願いするわ」
[はい、承知致しました。実は、暇で暇で姉さんの手伝いしてたんです]
そして俺は、再びのデスマーチに突入したのだった。
◆
1991年にバブルが崩壊して10年、廃棄物処理に関するガイドラインが定まり各種リサイクル法が出揃った昨今、法律の網を掻い潜って儲けようとする奴らがいる。
法律が有るからこそ、どこかに抜け穴が発生するという矛盾も発生してしまう。
最終的に一番の貧乏くじを引くのは、消費者または納税者で、事実最後には税金が使われる事が多いのが現実である。
今回も例に漏れず甘い汁を吸った者達は、逃げるか捕まっても軽犯罪で手打ちとなりうやむやになる結末だ。
後始末に公的資金が使われるだろうケースだが、実際には時間と手間が膨大に掛かってその間、後始末をする業者がもうける。
なんて言ったかな~、そうマッチポンプだ。
でも消費者が全然悪くないのかというとそうでもない。
近所にゴミ処理場が出来るのはみんな嫌だし、下水処理場や火葬場なんて以ての外と其処に住んでいる人は思うのが当たり前の感覚だ。
それじゃどこが処理するのかって言うと、昔からそういう施設のあったところに負担が集中する訳だ。
長年可動し続けるゴミ処理場の焼却炉しかり、埋め立てる土地が無くなっていく夢の島しかり、いつかはお世話になるはずの火葬場にしても老朽化は進むのである。
そして、維持費や修繕費はかさんで行くのだ。
そこで真っ当じゃない方法でゴミや廃棄物を金にしようとする者たちが出てくるんだよね。
まだ不用品をリサイクルして海外に売ろうというのはまともで許せるところだけど、人の見ていない山林や川や海に捨てようという奴らは許すことは出来ない。
今回は、そのカムフラージュに架空の産廃処理場が使われた事になる。
【以前、作者の知り合いも、処理を頼んだ産廃業者が不法投棄をしていて、オフィスの伝票からたどってきた市町村の関係者から、回収と再処分を通達されて慌てて回収に向かったと、愚痴を聞かされた事があります。業者に料金とられて、通報されて回収したゴミの再処分費用を取られて、下手したら市町村から厳重注意。踏んだり蹴ったりで泣くに泣けない。その業者を使ってた担当者は、社長から小言を言われて悄気げていたそうだ。経費を安く済ませようとしたら、余計に経費がかかって小言まで貰ったと愚痴っておりました】
今回の背景は、次のような物だった。
先にも述べたが主犯は、ヤクザ。
それも昔の一本筋の通った任侠では無く、今どきのインテリヤクザという奴だ。
幹部は、全員が高学歴で法律に詳しい、収入はいまだにシノギというらしいが半ば合法的に暴力団の収入を得ようと経営されているフロント企業、その内2つが組んで仕掛けたらしい。
ターゲットとして嵌められた被害者は、あの課長だった。
県庁の一課長と言っても、地方公務員である。
年収は、平均して600~700万円程、けっして高収入とは口が裂けても言えない。
マイホームのローンに子供の学費、少し見栄を張って子供を海外留学なんてさせていたりする典型的な中産階級。
当然、足らない収入をどうにかしようと株やギャンブルに手を出して‥‥。
何故かうちの県、県庁所在地にも競輪競馬の場外馬券場なんて無いから代理購入を利用してしまった。
ギャンブル場に県職員が入り浸ってるなんて知れたら大問題にも成りかねないし、そんなところをヤクザに付け込まれたのだ。
損が出ていない時はまだ良かった。
料金は、儲かった時でいいですよとか云われ、手数料の徴収はある時払いでいいですよと云われる。
だがこれらは立派な借金で、ヘドロのように溜まった頃に云われるのだ。
「へ~お役人が借金踏み倒すんですか? 出るとこに出てもいいんですよ旦那~♪」
公務員は、ヤクザが職場に来るのを極端に嫌悪する。
普通のサラリーマンだって、職場に借金取りが来るのは嫌である。
後はもう誰でもわかる悪循環、借金は減らないし増える一方、でも収入は必要でどうにかしなければ破産である。
腐っても公僕の端くれであるプライドが邪魔をして、公にも出来ないし訴える事も逃げる事も出来ない。
これは、生き地獄である。
結局は、借金の利息を棒引きにしてもらって裏金を貰い、ヤクザの言いなりになっているという事の様だ。
あの時一緒に居た政治家は、ある意味やり手で堅実な人間だった。
地域企業からの献金だと思っていたらヤクザのフロント企業だったという騙し討の様なものだが、駄目な物は駄目とハッキリ突っぱねていたらしい。
だが今回は、あの課長が弱みを握られて、いいように使われているのを見るに見かねてフォローに回ったらしい。
出来れば行政にヤクザのトゲが刺さっている状況は、良くないのは分かっている。
どうにかしたいと思っている処に住民よりの突き上げが始まり、火消しに駆り出されたという貧乏くじ。
この人もある意味、被害者である。
正攻法で全部暴露すると破滅する人間が少なからず出ちゃう。
さあ、どうしようか‥‥。
◆
《 プレアデスの七姉妹についての考察 》
ギリシア神話においてプレアデス(プレイアデス)は、巨人アトラスと、ニンフのプレイオネとの間に生まれた七人姉妹。
マイア :七姉妹の長女。ゼウスの子ヘルメスの母
エレクトラ :ゼウスの子ダルダノスとイアシオンの母
タイゲタ :ゼウスの子ラケダイモンの母
アルキオネ :ポセイドンの子ヒュリエウスの母
ケラエノ :ポセイドンの子リュコスとエウリュピュロスの母
アステローペ:アレスの子オイノマオスの母
メローペ :七姉妹の末妹。人間であるシシュポスと結婚して不死性を喪失
ギリシャ神てさ、ヤることやって子が出来ても養わないのね。
不死性が有るからその辺は、奔放なんだろうけど。
ゼウスに3人、ポセイドンに2人、アレスに1人
のこった末のメローペは、不死性を捨てて人と結婚、これは価値観の違いなんだろうな~。