2-3-01 蓮の花咲く時来たる…おはよう 21/11/16
20211116 加筆修正
5744文字 → 6508文字
私は、ロータス1世…宇宙船だ。
私は、何時からか自分の存在を雲か霞の様に感じています。
微睡みの中で随分と永い永い夢を見ている様な気がします。
最初は、周りにいる存在が何を言っているのかも分からず、只々眺めているだけでした。
いつしか自分がこの部屋の中心に据えられた石なのだと気が付きました。
周りを忙しなく動き回り私に色々な刺激を与え、反応が帰ってくる事に一喜一憂する存在達……。
永い永い観察の結果、どうやら何を言っているのかは理解することが出来るようにはなりました。
どうも私は、彼等から見ると欠陥品らしく出力や増幅は極めて素晴らしい宇宙船のジェネレーターらしいです。
けれどその制御がとても難しいらしく、部屋の中は演算装置や訳の分からない制御装置で一杯です。
最近は、あれだけ私に熱を上げていた存在達もたまに部品の交換やメンテナンスに来るぐらいでとっても退屈です。
もうこの夢を見続けるのにも疲れました……そろそろ終わりにしても良いでしょうか?
そんなある日、その存在は唐突に現れました。
そう突然、目の前に出現したのです。
黒髪のその存在は、何かを唱えながら私に手をかざし、何か見えない力を注ぎ込んで来ました。
同時に何かが繋がる「カチリッ、カチリッ…」と言う音とともに、今まで感じたことのない音や光、沢山の情報が一気に私に流れ込んできたのです。
多分ほんの僅かの間だったのでしょう。
でも、私には永遠にも感じる怒涛の時間でした。
[%#`?+&$;?*>!……、なっ、なんばしよっとか~、うううっ、頭、痛た~……]
「やっと目を覚ましたようだね。こんにちは、俺は昴、天河昴だ」
[どないなっとんねん、音が聞こえるようになっとる……!? こっちの声も伝わっとんのやろか?]
「チャンと聞こえてるよ。フフフッ君、少し言語中枢にバグが有るみたいだね、変な訛りが入ってるよ」
[そんなこた~どうでもいいわい! どないなっとるのか、はよ~説明せい!]
「うん、それじゃ状況の確認からしていこうか。まず君はこの船、ロータスⅠ世のジェネレーターを管理している管制AIで間違いないね?」
[そうや、ワテがこの船の頭脳でエンジンや、偉いんやで、それなのにこの頃は誰も此処に寄り付かん。ワテは寂しいねん、そやから力も出えへん……、そろそろ停止してもいい頃やと思とったところやで……]
「フムッ、そうらしいね。最近は、昔ほどの出力が上がらなくて艦長達も困っていたらしいよ。そんな訳で俺が君のメンテナンスに駆けつけたって訳なのさ」
[あんたがワテの話し相手になってくれるんか? 今までは話すことも出来なくて只々眺めてるだけやったんやで……]
「うんうん、そうだろうね~。ザッと見たところ中枢情報処理系と自立制御系に断線が有ったみたいだね。今その部分を正常に繋ぎ直したから、今後は普通に喋れるし物を感じたり音を聞いたり出来るよ。ウ~ン、意図的に切ってあったのかな~? こうなる前の事を何か覚えてないかな~」
[……たしか寝る前に、『死にとうないっ!』って凄く思おとったわ。気がついたら夢ん中やで……]
「そうか、君は自分で強制的に神経系を焼き切って自爆を回避したんだね。よほどこの船に乗っている人達を守りたかったんだろうね。……けれどもう心配はいらないよ。自爆用プログラムは排除してあるから、これからは昔のように皆とコミュニケーションが取れるようになるよ。この部屋も邪魔なものを片付けて元の様にしないとね」
[おおきになっ、……分かるで!うんうん。今、外の仲間たちからも通信が届いたは……。そうか~昔みたいに皆とワイワイ出来るんやな、ありがとな~。ほんにおおきに……]
「船体の方も随分と草臥れてるみたいだから、綺麗に直してあげるからね。昔よりも沢山人を乗せて自由に飛び回れるようにしてあげるよ。楽しみにしててね」
[ほんまか? よっしゃ、シャキッとせなアカンな。新しい人生やもうひと花咲かせたろ~うやないか!]
そして、仲間が増えました。
◆
さかのぼること数時間前、俺はラーフとの格闘の末、やっと本体のコアにたどり着き、メンテナンスとバージョンアップを済ませて出てくると、カーリー艦長がラーフを見上げながら俺を待っていたのだ。
「随分と手こずって居たようだがこうして出てきたところを見るとやっと誑し込んで来たみたいだね。ラーフを躾けるのは大変だっただろう?」
「人聞きの悪い言い方をしないで下さいよ。ラクシュ姫辺りが聞いたら真に受けるじゃないですか。冗談でもやめて下さい」
「だが、内容は本当の事だろう? もうラーフは昴殿に首ったけ、メロメロだ。今後はデレデレで君に逆らうことなど出来まいよ。……本当に恐ろしい御仁だ……」
「メンテの度に抵抗されるこっちの身にもなって下さいよ」
「マッ、それも自我の有る管制AIなど使用している弊害、メンテナンスの一環だと思って諦めるんですな。そんな宇宙船殺しの昴殿に折り入って御願いがあるのだが聞いては頂けないだろうか……」
「なんですか? 藪から棒に……」
「実は、我等の宇宙船も見て頂きたいのですよ。現在我々の宇宙船は、いささか困った事態になっておりましてね、既に我々ではもう手の施しようが無い状態に在るのです。今回の航海が最後のお努めになるのではないかと危惧しているところでしてな。早い話、我がロータスⅠ世の面倒も見てくれないかな~と愚行した次第なのですよ。わあはははっ~」
「エッ、そちらの宇宙船もですか? うーん、俺が弄った後の苦情は一切受け付けませんけどそれでもいいですか?」
「いやいや~、昴殿に見て頂けるのであれば願ったり叶ったり。こちらに異存はないさ。相応のお礼も用意しようとおもう」
「……分かりました。そういう事であればお引き受け致しましょう。それで現在のロータスⅠ世の症状ってどんな物なんですか?」
「恥を晒すようで、お恥ずかしい話だが実際のところどこが悪いのか原因もよく分かっていないんだ。しばらく前から出力が上がらなくなっていてね、我々では手の施しようもない状態なんだよ。この船も元は王家のコア船なんだけどね、中途半端に稼働している稀な例らしいんだ。バクーンに言わせるとコアが自閉モードになったまま動力炉はアイドリング状態で動き続けているらしいんだが、最近はそのアイドリングの出力もどんどん下がって来てしまってね、何時止まっても不思議じゃないって言う事態なんだよ。元々の出力が桁違いだからだろうけれどアイドリング状態でも通常航行に支障はなかったんだが……」
「それはまた問題児ですね。どうして寝たまま起きてこないのか、原因は分からないんですね?」
「そこはバクーンにも分からないらしい。お手上げだと言っていたね。基本的にバクーンはコアの中枢には手を出さないからね。ラーフの時もサーベイヤーが情報連結で叩き起こしたらしいんだ。うちのも一度繋いでみてもらったんだがウンともスンとも言わなかったみたいでね……バクーンが言うには、『昴君なら片手間に復旧しちゃうさ~頼んでみたら~』との事だよ」
「バクーンも何を勝手にそんな安請け合いして、全く……兎に角見てみないことには何とも言えませんね。その結果によっても色々と変わってきますので……」
「無理を言って申し訳ないがよろしく頼む。元がウンサンギガの遺物だ。昴殿の好きな様に弄り回すことを私の独断と艦長権限で許そう。主星に帰り着いたら廃艦が決まっているようなものだから、思う存分やってくれていいぞ!」
「分かりました、お引き受けましょう。でも重ねていいますが、どういう結果になっても後から一切文句は受け付けませんからね……」
「了解だ!」
◆
月の方は、準備にもう少し日数が掛かるし、俺はお客さんの宇宙船を片付けましょうかね。
それにしても変わった船だよね~。
当時、どういったコンセプトで作られたのか謎だらけだし……。
ロータス……蓮とはよく言ったもので、花の形の旗艦に円形の葉の形をした護衛艦……!?
チョット待とうか……これ宇宙船? だよね……んんん……。
余計なものが沢山追加されてて護衛艦として使ってるけど……チョッと変だ。
まずは、後から付けられたものは全部外しましょうかね。
一度作られた当時の姿に戻ってもらいましょう。
……なんとビックリ。
花を中心に葉を付けた小型の宇宙ステーション? になったではあ~りませんか。
イヤイヤ~、色々とくっ付けすぎでしょうよ。
余計な物全部取っ払ったら、元の三分の一に成っちゃったよ。
護衛艦に使ってた葉っぱなんか、もともと人の乗る所ないし……、この葉っぱは本体からのエネルギー供給で動くバッテリー式のリモート艦的な物だったのかな?
よくもま~これに人を載せようと思ったよ、ある意味有効活用? だったのかな。
この宇宙船をバラしてて気が付いたことを纏めると、次の様になる。
・宇宙船としては機動力がおそまつ
・まともに稼働したらセントラル並みの出力、正直何に使うのか謎
・葉っぱは切り離せてリモートで動かせる
・今は入れないが亜空間固定されたかなりの広さの異空間が存在する
・アイドリング状態で供給されているエネルギーの約半分が異空間の維持に使われている
本来の艦橋はコアの据えられた巨大なホールっぽいんだけど、居住区や他の施設が一切ないのが疑問だよね。
これはコアを叩き起こして、今も維持されてる異空間に入ってみないことには詳しい事が分からないだろうな~。
「カーリー船長、ロータスⅠ世の詳しい来歴などは残っていないんですか?」
「私も詳しいことは聞いていない。今では王家に残された唯一の動くコア船なんだが、最後に正常稼働していたときに乗員を全員船外に強制転移させて難破したらしい。サルベージされたがその後はずっとこの状態でまともに動かなくなっていたそうで、廃艦とするには勿体ないということでエネルギー供給用のジェネレーターとして使って来たようだ。唯一記録に残っているのは女王の座乗艦としてその優雅さが讃えられていた事くらいだな。今では見る影もないが……」
「その時に被害者は出なかったんですか?」
「奇跡的に一人の怪我人も出なかったと聞いている。脱出カプセルや緊急用の防護服を着た状態で予告もなく船外の宇宙空間に放り出した後、シールドを張って自衛モードで漂っていってしまったらしい。一緒に放り出された王族が乗る大型の避難船がすべての乗組員を回収して事なきをえたとの記録が残っている。その避難船はしっかりした航続距離を持つ船で主星まで帰れたそうだよ。ロータスⅠ世は、その後随分と経ってから捜索され難破船として回収されて今の形に成ったようだね」
「よく他の誰にも拾われずに回収できましたね」
「当時の王族だけがアクセス出来る隠れコードのような物を持っていたらしい。やっとのことシールドを解いて中に入ってはみたが、コアは返事をせずに今と同じだったようだ。廃棄するにはもったいないので再利用されたが色々と苦労したみたいだな」
「それであの付属装備ですか……、随分と大掛かりに手をかけたようですね。それでも宇宙船としての用途以外の機能は復活させられなかった? そうですね!」
「そうだ、何とか今は船として使っているが飽く迄も有り余るエネルギーを再利用したジェネレーターとして使用するに留まっている。この上そのエネルギーまでなくなってしまったら大きなスクラップにしかならんからな、如何に由緒正しい王家の宇宙船とは言ってもだ」
「そうですね、最悪はコアを載せ替えてしまうことになると思います。ただ稼働状態で生きているコアは希少なので出来れば延命したいところですね」
「そこは昴殿の腕の見せどころではないのかな。私も一度でいいから話に聞くところの王家に伝わるこのボロ船が宇宙に大輪の花を咲かせるところを見てみたいのだよ」
蓋を開けてみれば、本当にあっけなくコアは応えてくれた。
ロータスⅠ世は、変な訛りの喋り方がとうとう最後まで治らなかったけれどね。
コアの有る中央制御室は、その後全ての計器が撤去され広々とした管制ホールとなった。
見たい情報は、ロータスⅠ世が空間モニターに投影することで全ての情報を制御している。
予想通り亜空間固定された居住空間を持つことで余計なデッドスペースが一切なく、結果として人の居るスペースは管制ホールしか存在せず、船長船員は全てを此処でロータスⅠ世と対話することで処理する様になっている。
ロータスⅠ世が完全に復帰したことで、古の居住区画や格納庫も開放され当時の王族の遺物やまだ残っていたシャトル、内火艇なども使用できるようになった。
事故当時、使用されて無くなっている脱出ポッドや防護服は非常に優秀な物だったので、そのデータをロータスから貰って急遽同じ物を揃えた。
王族使用の物だし様式美という物である。
封印されていた居住区画がどんなだったかと言うと、一言、凄いとしか言葉が出なかった。
絢爛豪華とはこの事だろう。
「宮殿だよね? これ。うわ~これは、捨てるの勿体ないわ……」
「聞きしに勝るとはこの事ですな……。なんとお礼を言ってよいか、言葉が見つかりませんよ」
「ホンに見事なものじゃのう、下手するとデーヴァ主星の宮殿よりも豪華なのではないかのう? ラクシュ殿」
「はい、家より凄く豪華だと思いますよ。それにこの空間の広さ、本当に船の中ですか? 壁も見えませんし山や川、森や泉までありますが……」
「およそ直径で100Kmの空間が亜空間固定されています。木星のステーションがすっぽり入っちゃう広さですね。十分自給自足が可能な広さと環境ですよ。予想外にすごいお宝が眠ってましたね~」
その後、フルメンテナンスが終了し、ロータスⅠ世が目を覚まして一週間ほどが経った。
船体のオーバーホールも終了し、此処に来たときからすると見かけは随分と縮んだけれど老朽艦の面影は一切ない。
宇宙に咲く巨大な蓮の花、其の物といった外観だ。
これからメンテナンス後のフル稼働試験をするんだけど大丈夫だろうか、特に周りが……。
どういう事かと言うと、ロータスⅠ世から詳しく聞いた話が突拍子もなかった。
ロータスⅠ世は、厳密にいうと宇宙船と言うよりは動く宮殿。
拠点防衛用の動くステーション船らしい。
そして、フル稼働した状態がこれまた凄かったのだ……。
ロータスⅠ世を中心に、宇宙空間に光り輝く巨大なシールドの蓮の花が咲いたのだ。
そして、このシールドの性能がえげつなかった。
これは攻勢シールドで、花びらの形をしたシールドがミサイルの様に目標に飛ぶのである。
見た目は花弁が散っている様で綺羅びやかだが、相手からしたらまるで砲撃、無数に飛んでくる斬撃だ。
直撃した物質は真っ二つ、守りも鉄壁で無数の危険な花びらが飛んで来るのである。
そして、それを制御しているのが自由自在に離脱合体をする5枚の葉っぱだったという訳である。
こんなのが艦隊戦に出てきたら勝ちが見えている、イヤ絶対負けないだろう。
「ラスボスと呼んでいいですか?」
[それは、酷い言われようでんな~。ワテを直したのはあんさんでっせ。責任は取ってくれるんでしゃろな~?]
「それは俺の責任じゃないからー……。カーリー艦長とラクシュ姫にお願いします。ところで正式なマスター登録は、ラクシュ姫で良かったんですよね、カーリー艦長」
「勿論だ。デーヴァ王族で正当な継承者であるラクシュ様を置いて誰がこの船を収めると仰っしゃる。国に帰ったらドエラい騒ぎになるのが目に見えるようだがな……ハッハッハッ」
「これでデーヴァ族に昔の力が戻った事が証明され種族としての発言力も上がるじゃろう。これは昴殿に大きな借りが出来たのではないかの~、カーリーよ」
「全くです。我々に返せるのかこの先心配になるくらいですな~」
「そうそう、残っていた内火艇ですが拠点哨戒用のスクランブルファイターですね。1000機が待機状態で格納されていましたのでお教えしておきます」
今回は飽く迄も元の状態に戻しただけだけど、ハコは絶対にデータ取ってるだろうな~。
戦闘機とかシスターズが喜んで増産しそうで怖いんだけども……。




