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2-1-09 やっと来たバクーン…遅いよ~ 21/7/14

20210714 加筆修正

5713文字 → 6106文字




 3人が転移して現れたのは、盛大な花火に彩られたプレアデスパレスに隣接する見るからに高級な作りのホテルのメインホールだった。


[シャシ姫様は、こちらのホテルの最上階、ロイヤルスイートにご宿泊です。一緒のお部屋にも宿泊いただけますし、お隣の部屋もご用意できますが如何が致しましょう?]


「では隣に部屋をとって頂こう。それでよろしいですね? ラクシュ様」


「はい、カーリーに任せます。綺麗ですね~、お祭りですか?」 空を見上げてキョロキョロ


[ここは、巨大な遊園地、レジャーランドになっていますのでいつもお祭りの様なものですよ。ご案内いたしますのでそのままお進みください]


 この時、カーリーの通信機が不通になった事を知らせる警告音が鳴り響いた。


「ハコ殿、旗艦との通信が切れたようだ。こちらから連絡を入れたいのだが……」


[分かりました、その通信機を少々お借りできますか?]


 ハコはカーリーから使えなくなった小型の通信機を借りうけると両掌(りょうてのひら)で包み込み瞬きを数回、すると警告音を出していた通信機が静かになり正常に動き出した様子でカーリーに手渡して返してくれた。

 カーリーは、戻ってきた通信機を再度確認したところ正常に作動するように成っていたので安心の溜息をもらすのであった。


[お借りした通信機を解析させて頂きました。現在、お使いのブレスレットをリレーして船と通信致しております。直接ブレスレットからの通信も可能と成りましたのでお使いください]


「了解した、感謝する」


[では、お部屋にご案内いたします]


 先にシャシ姫に会いたいというラクシュ姫の希望で、ロイヤルスイートに向かった一行は、向かった部屋で取っ組み合いでスイーツの争奪戦をする三人組と、忙しなく追加のスイーツを運ぶピンク色のメイド、それらの様子を呆れ顔で眺める目のさめるようなブルーサファイアの髪と瞳の大柄なメイド? と遭遇することになったのだった。


「それは、妾によこすのじゃ! お主は先程6つ食べたであろう、すこしは遠慮をいたせ!」


「姫様は7つ食べたでは無いですか、遠慮はいらんと常日頃からおっしゃている事は嘘ですか~」


「……こっそり横から失礼……、7つ目ゲット~……」


「「なんと~!」ノ~!」


「これは賑やかですな~、シャシ姫様も相変わらずのご様子。カーリーは安心致しました」


 カーリーが声をかけると3人はピタリと固まった。

 ギッギッギッギッと壊れた人形のようにドアの方を振り向いて、最初に口火を切ったのは矢張りシャシ姫だった。


「ホウッ、随分と早かったではないか。チョッと恥ずかしい所を見られてしまったのう。ラクシュ殿もカーリーもよう参られた、まずは茶でもしばきながら、積もる話をしようではないか」


 言葉とは別の生き物の様に、止まっていた手が動き出し、目一杯スイーツを抱えて席を立つ3人。


「これから此処で歌劇が見られるそうじゃ、窓辺のテラスに場を移そうぞ」


[さあ~お待ちかね、(わたくし)メローペのマペット軍団とプロジェクションマッピングによるミュージカル・ショウをお楽しみくださ~い♪]


 窓辺で両手を広げて口上をのべるピンク色のメイド。

 そして一体何がはじまるのか……。

 先程までうるさいほど空に上がっていた花火も賑やかに踊り回っていたカーニバルの音楽もライトアップの明かりさえ消え去り、辺りは暗闇に包まれ其処に浮かび上がる一つのスポットライト。

 光の中浮かび上がった吟遊詩人がリュートを片手に語るのは、この星系の昔話。

 銀河に隆盛を極めたある一族の繁栄から滅亡に至るまでのおとぎ話。

 所狭しと躍動する配役達、一瞬で背景が変わるプロジェクションマッピングと壮大な音楽に乗せて物語は終焉に突き進む。


 そして、あっという間に3時間が経ち、第一部創生篇・完となった。

 ご丁寧にスタッフロールまで映されている。


 

 出  演  マペット軍団 


 演出美術  エレクトラ

 音楽製作  アステローペ

 音響監督  タイゲタ

 技術監督  アルキオネ

 撮影編集  マイア

 宣伝広報  ケラエノ


 脚  本  バクーン

 時代考証  サーベイヤーⅡ世


 監  督  メローペ


 製  作  天の川銀河連合対策委員会



「ふ~、引き込まれたの~、何という演出じゃ。見事な物じゃのう、早く続きが見たいのじゃ」


「本当に、今この身で体験して来たような気がしました。これまで体験した事のない演劇ですね」


「素晴らしい、しかし興味深い内容の話でありましたね。バクーンの最後に苦悩しながら消えていく所などはカッコ良すぎでしたが、この物語が史実に基づくものだとしたら……、バクーンが脚本ですか、絶対に盛ってるでしょう、アレ」


[第二部の地球篇は明日、同じ時間に公演予定ですよ。第三部の復活篇は時代も進みますのでガラッと雰囲気が変わると思いますが、主演のマスターが公開を嫌がっていまして……、アハハハハ]


「それはどういうことじゃ?」


[『恥ずかしすぎて死ねる』と言っておりました、関係者は皆んな乗り気なんですけどね~。この企画で時代の真実を一気に明るみに出して、それぞれに自分の事を考えさせるのが目的なんですけど、宗教や思想、反対勢力なんかの妨害もあるとは思いますので全地球規模で電波ジャックしてでも一斉に公開しようかなと動いているんですよ。ただ、復活篇はマスターがヘタレなところが盛大に入っているので撮り直しを要求されています。お母様方は、可愛い所をたくさん盛り込んで編集したのにとおっしゃっていたのですが、マスターには取り付く島も無く……]


「チョットまってくれメローペ殿、サラリと重要な内容が出てきたのだが、この物語は現実に続いているのだな……、と言うことは運斬技牙一族は今も生き残っているというのか?」


[はい、ここは我らのマスターが運斬技牙の正当継承者として復活させた技術で建造されました。切っ掛けはバクーンの気まぐれからなんですけどね~]


「カーリーよ、そういう訳で妾達はお忍びでこんな辺境まで来ておるのじゃ。事の重大さは分かるであろう」


「シャシ姫様、思いっきり我々を巻き込む気ですね?」


「追いかけて来たのはそち達の方であろう、今更逃がすと思うのかや?」


「まさかここまで危ない事に首を突っ込んでいようとは思いませんでしたよ。これは藪蛇どころの話では済みそうにありません、チョッと参りましたね~」


「参りましたなどと心にもない事を申すでは無いわ、さっきから玩具を見つけた童のように随分と楽しそうでは無いか」


「???、カーリー、さっきから何のお話ですの? ラクシュにも分かるように説明を要求しますよ。あなたは参りましたと言いながら皆様と楽しそうに笑ってらっしゃいますし、ラクシュも仲間にいれて下さいまし……」


「ハイハイ、あとで姫様にも分かるように噛み砕いて説明してあげますからね。メローペさん、このあとのご予定は?」


[もうそろそろ(おそ)いお時間ですし、ご入浴のあと就寝のご準備に移りましょう。ここのお風呂は凄いですよ、マスターはお風呂にはスゴ~くこだわる方なので退屈はしないと思います]


「ほう、それは楽しみだ、続きの話は風呂につかりながらするとしよう。皆のもの、付いて参れ!」


「「「「分かりました~」は~い」…了解…」お付き合いいたしましょう」




 ◆




「……なんと……これは……言葉が出てこんな……」


「広~~い!」


「……感無量……」


「スッゴイですね~、カーリーこんなお風呂は見たことありませんよ」


「私も銀河中を色々と周っていますが、ここほどの設備の湯殿は経験したことがありませんね、確かに退屈はせずに済みそうです」


[ご説明いたします。ご存知の通りここはホテルの地下にございます。露天風呂にこだわったマスターが屋内ですが風景や空を再現しています。巨大浴船のほか各種スパは50以上、サウナからエステサービスまで完備しています。自慢のエステは最短30分コースからフルコース2時間までありまして、最短コースでも別人の様に美人さんになれますよ、一度は経験される事をおすすめいたします]


 このあと、ラクシュ姫がのぼせて運ばれたり、メローペの間違った指導で入浴後に皆んなで仁王立ちしてフルーツ牛乳を飲んだり、全員がエステにハマって毎日通うことになったりとそれなりにエンジョイすることになるのは当然の結果と言えた。


 皆、其々に寝室に消えて行く中、リビングに一人残る大柄なメイド。

 不思議に思ったカーリーは、いつも見かけるのに今日に限って側に居ない物を思い出し、そのメイドに声をかけた。


「もしやお主は、ラーフでは無いのか?」


[……ええ、良く気が付かれましたね。普段は、シャシ姫の周りをプカプカと浮いているだけのラーフですよ。こうしてお話することもほとんど有りませんでしたね]


「お主の色に気が付かねば分からなかったぞ。その姿はどうしたのだ? 人に成った訳ではあるまい……」


[どうもここではこの格好が当たり前らしいので、私も挑戦してみました。存外、これは良いものですね。新鮮な感覚や発見が多すぎて勝手が違うところもありますが、この義体のセッティングを進めていくと奥が深い、一部演算が追いつかず意識が飽和していたところです。まさか、機械の体で嗅覚や味覚、触覚まで再現しているとは思いませんでしたし、視覚と聴覚も今までとは全く違うので慣れる迄しばらく掛かりそうです]


「ホウッ、それほどの物か? 義体を使用するアンドロイドやロボットも存在することは知っているが、見た処は人と変わらんではないか。鼓動や体温も感じるし所見では生身と変わらん、注意してみなければ義体とは気が付かないだろう」


[身体欠損者用の義手義足からサイバーボディーへと進化した物らしいのですが、いかに自然な動きを再現し、最適のパフォーマンスを発揮するかを突き詰めた製品だということですね。秘めたる強度とスピードにパワー、私達AIが制御し使用することで驚くほどのスペックを発揮します。まだ試していませんが、単独でも機甲師団の一つくらいなら相手に出来そうですよ。護衛には過ぎた装備ですね、ウフフフ……]


「……それはビックリだ、もしやここに居るヒト型は全員……」


[ええ、カーリー様のご想像の通りです、ここのスタッフに生身の人間は現在一人もいません。あのハコさんも仮初の体です、元は私と同じ存在ですから……]


「そ、そうか……」




 ◆




 予定外の客、ラクシュ姫が合流して2日後、やっとバクーン達がやって来た。

 そして第一声が……。


「なんでカーリーがここに居るの~?」


「お前、人の顔見て第一声がそれなのか? まったく……、ラクシュ姫の護衛に決まっているだろう」


「だからなんでラクシュ姫とカーリーが居るの~? 説明して~よ~。僕の定年後の悠々自適な田舎暮らし計画が掛かってるんだから~……」


「なんだその定年後とは? お前に定年などが有る訳なかろう。だいたいアプサラス様からシャシ姫の動向調査と護衛を任されているのでは無いのか? 私が知らないとでも思っているのか」


[さすがアプサラス王妃様、バクーンだけでは心配でしたか……]


「イヤイヤ、サーベイヤーだから話すのだがたまたまシャシ姫を追いかける(つい)でに連絡を取ったところ、バクーンがサボらないように頼まれただけの話なのだがな、その様子ではサボる気120%といったところか?」


「そっ、そんな~~」 ガックリ


 そんなコントの様な一幕もあったが、木星の衛星軌道上に存在する巨大な反物質燃料プラントステーションが出来ていることにバクーン達も驚いている様でした。

 そして施設を一回りした途端にバクーンは『ここに住んでも良いかな?良いよね?』と盛んにハコにすがり付いて了解をとっています。

 現在、シャシ姫そっちのけで遊園地で遊んでいますが、仕事をする気は全く無いようですね。

 サーベイヤーは、既にバクーンに作らせたらしいメイドボディー、コミュニケーション・コアと同色のシトリンに輝く髪と瞳のヒト型になっていた。


「サーベイヤー、お前もその恰好なのだな……」


[ええ、生まれ変わった様ですよ。本当に人の体とは不思議な物ですね]


「……ここは一体どういった所なのだ? 使用されている技術は見ただけで我々よりも数段進んでいるが、使われているのは遊園地や生活に接する部分がほとんど、目に見える武装をしている様子もないし宇宙を渡る我々からしたら不自然にも見えるのだが……」


[ここの持ち主は、使える技術が有るなら何も不便にしておく必要は無いよねという人物、ある意味怠け者なバクーンの上位互換のような少年です。最初から戦闘する事なんて頭に無いので武装が無いのは当たり前らしいですよ]


「ここは無法な宇宙なのだぞ、理不尽な暴力もまかり通る。このままでは悪意を持った存在からは何も守れん。危険ではないのか?」


[カーリーの意見もご尤もですが、その心配は家族とも言える管制AI達が随分と対策を練っているようです。主は預かり知らずに勝手にやっている様ですがね。目には映りませんが心配しなくても大丈夫だと思いますよ、極力マスターにプレッシャーを掛けない様に見えないよう隠しているのでしょう。それで、ラクシュ姫は相変わらずシャシ姫のオッカケですか? 貴方も苦労が絶えませんね]


「ああ、おかげで今回は随分と危ない話に巻き込まれるハメになった。バクーンはろくに使えないと思うがサーベイヤーはアテにさせてもらうぞ」


[私は宇宙船だけに大船に乗ったつもりで居てくださいとしか言えませんよ。ま~ここの連中は、ビックリ箱のような者達ですから退屈だけはしないと思います。何よりも直接話してみるのが良いのではないですか]




 ◆




[やっと揃いましたね、お母様]


[肯定。マスター達との顔合わせと今後の打ち合わせを段取らなければいけませんね。プレアデスアークⅠ世の居住空間はステーションへそっくり移してしまいましょう。このままだと船が使えませんから不便で仕方が有りません。あれは、イザという時の脱出用カプセルみたいな物ですからね、このステーションに移して使っちゃいましょうか。船の方には新しい亜空間を固定しなければいけませんが、それは何時でも出来ますからね]


[お母様、メインコアの空間固定はどこまで進んだのですか?]


[およそ直径3,000Kmほどね、お月様がやっと入るくらいかしら、直径4,000Kmを超えたらケレスと同化して内部空間の環境を整える予定ですよ。ケレスの自動工場群があれば、当初予定していたタイムスパンを大幅に短縮できるわ。アステロイドで集めた鉱物はほとんどこのステーションに使ってしまったし、また集めてこなければいけませんね。マスターに専用の資源回収船を作って頂こうかしら……。兎に角、これから本格的に忙しくなるわよ、メローペのマペットマスターとしての手腕に期待しているわ]


[お任せください。メガフロートでテストした成果を存分に奮っちゃいますよ。まだ、想定されている10%も使っていないんですから]


[そうね、まさか貴方にこんな適性があるとは思ってもいませんでしたよ]


[義体操作のロジックは生まれる前から知っていた様に感じます? どうしてでしょう……]


 (それは、俺が仕込んだからさ……何時気付くかな♪ ハハハハハ)By.ロキ





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