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2-1-08 予想外の珍客…忙しくなってきた 21/7/13

20210713 加筆修正

6053文字 → 6651文字




 地球からの観測の目が木星に集まっていた正にそのころ、木星の裏側では面倒な事態が持ち上がっていた。


[お母様、アルキオネお姉さまからの緊急通信です]


[肯定。分かりました、あとはこちらで対処します。あなたはシャシ姫の接待に集中してね]


[了解しました。回線をお繋ぎいたします]


『お母様、お忙しいところ申し訳ありませんがご報告が御座います。太陽系外縁、カイパーベルトに設置してあるマルチセンサーより感アリ、未確認の宇宙船をサーチ致しました。現在、真っ直ぐそちら、木星へ向かっております』


[あなたの設置したセンサーに間違いは無いでしょう……どこの船なんでしょう?]


『現在、サーベイヤーのデータベースを検索中……ヒットしました。ディーヴァ族第三王女ラクシュ殿下の艦隊の様ですね、旗艦ほか5隻の小艦隊です』


[……あの子達、つけられたわね……分かりました。後はこちらで対処します。アルキオネは、引き続き監視を続けて頂戴!]


『了解しました。マスターにはお知らせいたしますか? 現在、お昼寝中ですが……』


[起きてからでいいわよ、経過を教えてあげて。場合によっては、こちらに来ていただくかもしれませんから……]


『分かりました、また後ほど……』 プツン


 フフフッ、面白くなってきましたね。

 強き運命は、周りを引き寄せます、どんな風に転がるか楽しみです。




 ◆




「カーリーよ、まだシャシ様には追いつけないのですか?」


「ラクシュ様……、ラーフⅡ世は阿修羅族一足の早い宇宙船です。そうそう追いつけるものではありませんよ。行き先が分かっていれば先回りする手もございますが、どこに向かっているのやら皆目検討がつかない現状では無理です……」


「あの方は、わたくしとの約束をすっぽかしたのです。それなりの訳があるのでしょう。そうでなくては、わたくし許しませんわ」


「シャシ姫さまは、思い立ったら即行動に移すお方、理由など無いように思われますが、アハハハハ……」


「笑い事ではありませんわよ、もう。わたくし、頑張って向こう半年のスケジュールを不眠不休でやっつけて、時間を作って参りましたのに訪ねてみれば、逃げられるなんて……」


「お約束したと言っても、一年前にお合いしたときに次の長期滞在には御一緒すると言う口約束でしょう? 事前のご連絡も無しでは忘れられていてもおかしくありませんよ」


「だって、急に訪ねて驚かせてみたかったのですもの……」


「イヤイヤ、あなたも一応は公人なのですから連絡の一本くらい入れなくては、相手を一方的に責められ無いでしょうよ」


「シャシ様だっていつも飛び廻っているではないですか……」


「シャシ様とラクシュ様では、お立場が違います。羨ましいのは分かりますが……」


《艦長、報告致します。ラーフⅡ世は前方の惑星系に補給等に立ち寄るものと思われます。またはここが目的地と予想されますがいかが致しますか? 現在、ラーフⅡ世は第五惑星のガスジャイアントに確認される人工の施設に接触した模様です。……ラーフⅡ世の反、消失いたしました!》


「ご苦労、やっとしっぽを捕まえましたか。ここは銀河の辺境です、何が出てくるか分かりません。予告もなく攻撃はされないと思いますが、慎重に艦隊を進めなさい」


《了解いたしました》


「姫様、やっと追いついたようです。このあといかが致しますか? 多分、向こうも既に気がついていると思いますがここは銀河の辺境です。何があってもおかしくない所だという事をご承知ください。特に差し支えないようでしたら、このままラーフⅡ世に接触いたしますがよろしいですね?」


「分かりました、通信が繋がったら教えて下さいね」


「了解いたしました」




 ◆




[こちら、私設組織プレアデスナイツの燃料ステーションです。接近する艦隊に警告いたします。そちらは無断でこちらの管制宙域に侵入しております。所属・艦名及び当宙域への接近の理由を述べるか即時の退去を勧告いたします。警告及び退去勧告に応えのない場合は防衛のため応戦させて頂きますのでご了承ください。]


《こちら、ディーヴァ族の第三王女親衛艦隊です。そちらに阿修羅族の王女、シャシ姫はおいででしょうか? おいでであればお取次ぎをお願いいたします。ラクシュ王女がご面会を希望しておられるとお伝え下さい》


[……分かりました、しばしそのままお待ちになってください]


 ・

 ・


[お食事中の所申し訳ありません。シャシ姫にご面会の方が訪ねてこられましたがお取り次ぎいたしましても宜しいでしょうか?]


「ムムムッ、誰じゃ? こんなところまで追いかけて来る暇人な輩など妾には心当たりは無いが?」


[ディーヴァ族第三王女親衛艦隊と名乗る小艦隊からの通信で、ラクシュ姫様と仰言っていますが?]


「ゲェ! なんじゃと? こんなところまで追いかけて来おったのか……あのお転婆め、そういえば仕事を早く終わらせてまた遊びにくるとか言っておったが、いつごろ来るとは妾は聞いておらんぞ」


[姫様、はしたないですヨ。このまま居留守も使えないでしょうから通信をお繋ぎしますね、ポチッとな!]


「待て待て、チョッと待てと言うに……」


 ・

 ・


[お待たせいたしました、シャシ姫が通信に御出になります]


『待て待て、チョッと待てと言うに……ッ!イヤ~、久しぶりじゃなラクシュ殿も息災であったか?』


「……ジトーーー……、わたくしにおっしゃる事はそれだけですか? シャシ様」


『そんな事を言われてもラクシュ殿、妾はお主の来る事など一言も聞いておらぬが、まさか聞いておれば留守になどしなかったであろうな~……』


「グッ、だってわたくしはシャシ様を驚かせたかったのですもの……、グスグスッ……」


『アアッ、これ泣くで無いわ、まったく仕方がないの~……。ハコよ~、ラクシュ殿達をここに入れてやることは可能であろうか?』


[不可能ではありませんが、守秘義務は守っていただきますよ。いかな王族とその近衛兵たちといえども例外は有りません。ここの情報が漏れて海賊なんかに押し寄せられるのは願い下げですからね。幸いな事にこのステーションは、星系内の燃料基地として設計しましたので余裕を持って補給を受けられるスペースが御座います。まだ本格的な稼働前の状態なのですが、シャシ姫様のお願いという事で特別に入港を許可いたしましょう]


『そうか? そうじゃな、妾のお願いなのじゃ! よろしく頼むのじゃ。今の話を聞いておったかな? ラクシュ殿、此奴の案内に従って入ってまいれ、こっちで待っておるぞ~……』 プツン


[ハァ~、ではご案内いたしましょう。入港手続きとして各船と乗員のデータをいただきます。船の補給と共に乗員の慰安施設等の使用許可をお出ししますので、こちらの指示に従ってください]


「了解した。私はこの船の艦長でラクシュ様の側近を務めるカーリーと申す。よろしく頼む。して、入港費用はいかほどになるであろうか? われら辺境の物価には疎いものでな……」


[これはご丁寧な挨拶をありがとうございます。当施設の管理責任者をしておりますハコと申します。以後、よろしくお願いいたします。……そうですね~、先程も申しましたが現在の当施設は、正式な本稼働前の試験稼働中なのです。シャシ姫様たちは、事前の視察に来られたようなものですし、今回かかった費用は特別にサービスとさせて頂きましょう]


「オオッ、気前が良いではないか。実は、こんな辺境まで来るとは思っていなかったのでな、もう生活物資もカツカツで帰りの燃料が貯まるまでどうしようかと思案していたところだったのだ、本当に助かる」


[では、シールドを開放いたしますので接舷用ビーコンに従って1番桟橋から順に入港をお願いいたします。よくおいで下さいました、ご来訪を歓迎いたします] プツン


 ・

 ・


「先程は試験稼働中と言っていましたが、辺境にこれほどの燃料プラントと港を持つ施設組織とは一体何なのか? シャシ姫様とはどういった関係なのか気になるところではありますな……」


「……私設組織プレアデスナイツと言っていましたね。私設の騎士団ということでしょうか? 傭兵? スポンサーはどこの誰でしょう? シャシ様はそんなにお金持ちでは無いでしょうし……直接聞いちゃいましょうか……、これはチョッとワクワクして来ましたよ」


「ラクシュ様、下手に首を突っ込んで火傷をされませぬように……」


「ええ、分かっていますよ、カーリー」




 ◆




「なんとか誤魔化せそうかの~、お主達も余計なことをペラペラとしゃべるではないぞ。あのカーリーには、下手な嘘なぞ通用せんからな成るだけ与える情報は少なくじゃ!」


[姫様、バクーンが合流してきたらどうしますか?]


「そんな事は決まっているであろう、奴に丸投げするのじゃ!」


[……そういうと思っていましたよ。姫様はここで遊びたいだけですもんね]


「何を言っておる。お主の改修が終わるまで妾は時間を潰さねばならぬのじゃ。ついでじゃついで、それに後学のためにも色々と体験せねばならn~、ワハハハハハ。しかし、ラクシュ殿に後をつけられたのは失敗じゃったの~」


[ラクシュ様は、聡明ではありますが思考がお花畑ですからいくらでも誤魔化せると思いますがカーリー様は曲者ですからね。むかしアプサラス様やダーナ様と組んでいたというのは本当の話なんですか?]


「うむ、3人で中央銀河を暴れまわっていたそうじゃ。カーリーは阿修羅族とディーヴァ族のハーフでな、阿修羅族には珍しく3人の中で一番知恵が回る参謀役だったようじゃな。しかし、悪知恵が働く上に腕っぷしも一番でな最後の大魔王と言われていたそうじゃ。今でも母上は、頭が上がらないと言っておったぞ」


[……アプサラス王妃様が頭が上がらない御仁ですか~……、これは少々厄介そうですね]


「ハコはサラッと会話に入って来たの~、さっきの通信は随分と気まずかったのだぞ。これから急に通信を繋ぐのは無しじゃ、よいな!」


[肯定。了解いたしました。取り敢えず、バクーンと合流して地球に下りる手筈でしたが予定を変更いたします。シャシ様達は、新しいステーションの視察で見えられた事に致しました、口裏を合わせてくださいね。この施設に関してはバクーンの知り合いの持ち物なので詳しくは知らないと押し切ってください。あとはこちらで接待漬けのハメ殺しにしますので、ウフフフフ……]


「……チョッと今のお主は怖いのじゃ。それじゃ妾達はこのまま遊んでおれば良いのじゃな? ラクシュ殿は妾が骨抜きにして進ぜよう、任せるが良いぞ!」


[私はステーションの私設桟橋に入港いたしますね。ラーフの現地改修に関しては、ここで進める形となります。地球に下りる場合はこちらで用意する小型船をご利用頂くとして指示には従ってくださいね。ここの他、ステーションの中も退屈しないと思いますし、案内は今まで通りメローペが致しますので心配はいりません。悪いようには致しませんから大船に乗ったつもりでいてください。ラーフⅡ世改修の為に我らのマスターもステーションに呼びますので、直接のご挨拶はその時にお願いいたします]


「了解じゃ……って、お主ら~静かだと思ったら先にデザートに手を出しておったのか」


「ウマウマ♪ 驚嘆すべき美味ですよ姫様、それにこの種類、数え切れません」


「スイーツバイキング……食べ放題……ここは楽園?……」


「お主ら~こっちによこすのじゃ~、妾も食うぞ、端から制覇するのじゃ~」


[程々にしてくださいね、まったく……。ハコさん、私のメイドボディーは、いつ頃出来上がりますか? バクーンを待っているより貴方に頼んだほうが早いとメローペさんが言うのでお願いしておいたのですが……]


[それならあと一時間程で出来上がりますよ。細かい調整はご自分で出来ますのでお好みに仕上げてみてくださいね。船の方はステーションの整備用ドックに移して、あとはバクーンとマスター次第ですね。改修の仕様が決まれば、アッという間ですよきっと……驚くと思います。うちのマスターは既に色々と作り始めてるみたいですけど……]


[へ~それは楽しみですね~]




 ◆




 その頃既に、ディーヴァ族第三王女親衛艦隊は、指定された港のⅠ番桟橋から順に接舷していた。

 旗艦は500m級の円盤型で中心に巨大な蓮の蕾が見えます。

 5隻の護衛艦も250mの円盤型というより蓮の葉の様な形です。

 旗艦の名はロータスⅠ世、巨大円盤の中央の蓮の蕾が何を意味するのか……。


《各艦、接舷完了。機関停止します》


「了解、半舷休息とする。各艦のスタッフは、各種チェックと補給を急げ。早く終わらせれば早く休めるぞ」


《艦長、エネルギー補給や外装のチェックなどは、ほとんど自動でやってくれるようですね。凄い!、接続した通信回線から終了データの詳細がドンドンと送られてきます》


「ほほう、サービスも最新式か……そういえば人の姿がみえないが……」


《先程問い合わせた処、ここは無人だそうですよ。オペレーターもAIでしたし、まだ人は入っていないそうです。我々が最初のお客さんということですかね~。あっ噂をすれば、お迎えがきたようですよ……》


 桟橋の待機所前に、人影が見える。

 最初に通信をして来たメイドが出迎えに来たようだ。

 その時、ここに居る人の全員の頭に直接声が響いてきた。


『ようこそおいで下さいました。皆様に最初にご説明いたします。ここは私設のエネルギープラント用ステーションです。港の中の施設は自由にご使用いただいて結構でございます。宿泊施設、各種医療チェック、お買い物からお食事まで港の中だけでほぼ全てのオペレーションは完結できるようになっております。港から出てステーション内の施設をご利用になりたい場合は、通行パスが必要となります。ゲートにてパス端末用のブレスレットを装着願います。装着したブレスレットは、ステーション内全ての通行パスとして以外にも案内オペレーターを兼ねますので、迷子になることはありません。このステーションは、最大直径70km、最大高5kmの巨大な施設ですので、ブレスレットがなければ確実に迷子になります、お気をつけください。必ず最初にブレスレットの使用法と最初の案内チュートリアルをご覧になってからの行動をお願いいたします。本日は、当ステーションをご利用いただきありがとうございます』


 人工だろう思念波(テレパシー)によるアナウンスが終了した。

 ここに居た全員が、作業の手や動きを止めている。

 ここは、一体どういったステーションなんだ? 全員がそう思った瞬間だった。

 こんな銀河の辺境で、理由も分からず立ち寄った、ほぼ無人の宇宙ステーション。

 ワクワクしている者も居れば血の気が引くような思いで青くなっている者も居る。

 流石に訓練されている軍人らしく、錯乱したり喚き出す物は居ないが胡散臭く感じて居る者たちが大半だった。

 早く補給を済ませて出ていきたいと思う反面、好奇心が膨らんで探検気分も徐々に大きくなっている。


「大した歓迎だ。全員の度肝を抜いて、掴みはOKといったところか……。こちらに害意は無いようだし歓迎を受けよう。全部隊員に連絡、作業終了とともに休暇を与える。ただし、いつ呼び出されても良いように連絡手段を確保し節度を持って行動せよ、以上だ」


《了解、全部隊員に通達いたします。でも、全員休みにしちゃって大丈夫なんですか?》


「多分大丈夫だ、私の勘が囁いている。ここは絶対に面白いとな……、フフフフ」


 カーリーからの通達が伝わるのと同時に全艦隊内から歓声が上がった。

 ウォ~、ワ~ワ~、艦長大好き~、ヒャッホ~~


 程なくラクシュ姫と側近のカーリー艦長が桟橋に現れた。

 桟橋の待機所前で出迎えたのは、やはりハコである。


[お待ちしておりました、シャシ姫様のところへご案内いたします。まず、このブレスレットをお着けになってください] 


「ワ~、おしゃれなブレスレットです~♪」


「フムッ、至れり尽くせりか、細工は流々といったところだな」


[フフフ、そう警戒しなくても噛み付いたりしませんから安心してください。ラクシュ姫様もお急ぎのようですので直接シャシ姫様の所に転移いたします]


 ハコの言葉と同時に、3人はその場からかき消えたのだった。

 旗艦艦橋から3人のやり取りを一部始終モニターしていた管制官は、艦長たちがどこに跳んだのか慌ててサーチしたが港の中以外はシールドされており、その行方が一切掴めず一時騒然とするのだった。

 その後直ぐブレスレットを介してカーリー館長から連絡が入り、冷汗と共にドッと疲れたのだった。






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