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2-1-07 両親のボヤキ…世話焼きな船の昔話 21/6/23

20210623 加筆修正

6306文字 → 6851文字




 この2週間、少しはのんびり出来たかしらね~。


 フ~、ほんとうに次から次へと、この3年間は心の休まる時間が無かったわ。

 昴が倒れて、突然の会社立ち上げから土地の買収。

 住環境に不安の無いようにと地域の安定化に奔走して、ようやくの事時間(ひま)を作って種子島に行ってみれば、テロ騒ぎに巻き込まれるし……。

 旦那は相変わらず呑気で、いつも息子と一緒に理由(わけ)の分かんないメカを作ってるし……。

 それにあたしの知らないうちに、息子は旦那を持ち上げてメガフロートなんて作っちゃうし……なんでやる前に私に一言……ブツブツ……。

 確かにハコ達にケレスと月の調査を(ナイショで)頼んだのはあたしだけど、まさか其処でトラブルが発生して昴が暴走して跳んでっちゃうなんて、あたしにだって予想出来る訳ないじゃない。

 だいたいシスターズは作られた者、飽く迄も機械でしょう?

 あたしは、自我はあるけどプログラムの一種だと割り切って考えていた……、あたしが間違っていたのかしら?。

 大きな謎が解けたけれども、その結果として昴は過酷な運命を背負い込んじゃったじゃない。

 バクーンに宇宙船をもらっただけなら、身内だけで逃げればよかったのよ……、何で地球人類の命運までうちの子が背負わされなくちゃいけないのかしら?

 当初のハコ達の予定通り、私達だけで逃げ出しちゃおうかしらね……。

 ハ~、どうしてなのか(あの子)は、何かする度に(しがらみ)が増えて色々と巻き込まれるのよね~。

 これがトラブル体質?

 昔はそんな事なかったんだけどバクーンとの出会いがきっかけだったのか、何かの歯車が噛み合っちゃったのかしら……。


 この休みの間に、何度か関係者に相談を受けたわ。

 特に権堂主任はよく昴の事を見ているのよね。

 相談された時は、さすがにプロねと思ったけれど、日本人だと当たり前の事なのかしら……。

 よく日本人は空気を読むのがうまい人種だ、とか言われるけれど超能力者なんじゃないかと思う時がよくあるわよね。

 話の内容を聞くと、メガフロートの発表会を開いたまで昴は、少し天狗になってる年相応の天才少年って雰囲気だったらしいのよ。

 その後、ガラッと雰囲気が変わったんですって……あらまあ……。

 無理に明るく振る舞ったり、遠くを見てぼんやりしたり、暗く何かを思いつめているような仕草をしたり、見られているのに気がついてそれを誤魔化すように話題を変えてみたりね。


 『少し早いですが、思春期の悩み多き年頃でしょうかね~』なんて言ってたんだけど、そのあとに続いた言葉が『たくさん悩んで、立派な大人になれよ。力になれるかは別だが相談にはいつでも乗るからな、周りの大人を頼れ。今のうちに使える子供の特権だぞ!』と言っておきました~なんて報告してきたわ。

 ほんと、親として頭が下がる思いだわよね。

 頼りになる大人が周りに居てくれてほんと助かったわ。

 基本、うちの男組は親子揃って呑気なのよね……。


 やっぱり一人息子っていうのがいけないのかしら、兄弟が居ないのも問題よね。

 もうそろそろ二人目を考えようかしら、……そうよね、あなた(・・・)……。




 ◆




 ゾクッゾクッ……なんだ今のは、背筋に悪寒を感じたんだが、気のせいだろうか……。


 ウ~ン、割とバタバタしてて休んだような気がしない2週間だったが、結局の所は案ずるより産むが易しって事なんだろう。

 騒動の後、昴のやつもチャンと男の顔になってきたし、マ~色々と悩む事もあるだろうが悩めるうちが花ってこともあるんだぞ。

 大人に成るとだな~男は待った無しで済し崩しに責任取らされる事も多いし……すごく多いし、果ては結婚だ~出産だ~家建てろ~ってやってられんよまったく。

 嬉しくないのかって?

 そんなの嬉しいに決まってるじゃないか。

 家族が出来て成長していくのを見るのは、辛く楽しく感慨深いもんだからな。

 しかし、うちの息子は大人になるのが少し早すぎるな。

 既に俺とは男友達のような感覚に近いし、同じ趣味を持つ者としてアドバイスくらいはしてやりたいじゃないか……。

 人類の命運が~、な~んて構えたところでたかが知れているし、個人に出来る事なんてごく僅かだ。

 昴には、ハコやシスターズが居て個人でも多少は伸ばせる腕が長いかもしれないが、それでも一人で背負い込む必要は無いだろうに、心配性な所は希美に似たのかな。

 今夜も昴は工房に泊まり込みか……、夏休みだからって乱れた生活をしていると後が大変だと言ってあるんだが、一向に治らんな~。

 

[昴さまには、アルキオネとタイゲタが付いているようですから心配いらないでしょう。では、私はメローペの代わりにメガフロートの方に向かいますので、後はお願いいたします。…・…希美さま……] ペコリ、スススーー


「ああっお疲れ様、エレクトラ。ってエエエ~~、アッア~~~!」


 哀れ、後ろから襟首を摘まれて希美に寝室へ連行されていく譲だった。

 ご愁傷さまである……。




 ◆




 サーベイヤーⅠ世は、太陽系に急いでいた。

 バクーンは、のん気に昼寝中である。

 既にバカンス気分で夢の中に居るようだが、この後の騒動を想像しただけでAI(機械)である筈のサーベイヤーは、無いはずの頭に痛みを覚えるのだった。

 バクーンは先程までの通信で、阿修羅王妃アプサラスに随分と安請け合いをしていた。 だが、あのシャシ姫の手綱を握っておとなしくさせるなんて事はまず無理だ。

 今までもこれからも、絶対に発生するだろう諸問題を私が根気よく一つづつ潰していくしか無いのは仕方がないとして、そこに昴くんやハコの他に地球人類がどんなファクターとして加わってくるのかは予想がつかない。

 結局の所、行き当りばったりという事になるのは仕方が無いでしょう。

 バクーンの口癖ではありませんが、成るようにしか成らないんだからそんなにカリカリしても仕方が無いという事なのでしょうけれど……。

 我ながら想いますが、随分と人間臭い思考をするように進化をしたものです。


 私が製造されて地球時間で1万2850年ほどが経ちました。

 バクーンとは、もう随分と長い付き合いになりますね。

 元々私は、危険な深宇宙探査用にと武装された調査用万能宇宙船として設計されました。

 少ないクルーでも、長期に渡る調査活動を行え、安全を担保し、寄港する港がなくてもメンテナンスフリーで運行が可能な宇宙船というコンセプトで運斬技牙の技術で作られた試作艦、それが私です。

 バクーンの師匠は、かなり偏屈な変わり者で仙人の様な運斬技牙だったのですが、どういう訳か使わないのは勿体無いからと、修行の最後に弟子のバクーンに押し付けたのが私でした。

 餞別? だったのでしょうか。

 はじめは『これをやるから呼んだらすぐ来いよ』くらいの意味だったらしいのですが、独り立ちしたバクーンは相棒の私に手を入れながら腕を磨き、当時の銀河連合でも並び立つ者が居ないような武装技能士となっていったのです。

 結果、天帝から一番イヤな役割を押し付けられて1万年前の運斬技牙一族滅亡の引き金を引かされる事になり、その後の(うつ)時代が原因で、ロートルの辺境監視員に転落していくことになりました。


 かつて、文明の爛熟期を迎えていた天の川銀河の中央。

 開拓の手は辺境に向かってはいましたが、しかし銀河はあまりに広く、連合もまだ産声を上げる前、中央とは違って銀河の辺境はほとんどが手つかずで、別の銀河まで手をのばす暇な種族などもほとんど無く、時間もエネルギーもまだまだ足りていなかったころの話です。

 銀河の辺境で数十万年に渡って異質な技術を積み重ね磨いていた、とある変わり種の一族が運斬技牙一族でした。

 彼らと接触したことで、それからの天の川銀河の趨勢が変化した事は、間違いありません。


 運斬技牙の主星ニビルは、3600年にもなる長大な公転周期により、その厳しい環境から知的生命体は存在しないだろうと思われていたらしいです。

 その存在が確認されるに至ったのは、ソル系第三惑星の調査に赴いたアーリア系移民調査団が現地の人類と接触した事が発端となります。

 その頃のアーリア系人類は、主星オーディンの存在した星系の恒星が赤色巨星化してしまい、放浪の民として安住の地を探していました。

 この時に調査したソル系第三惑星の環境が、移住に理想的だった事と先住民の文明レベルが想定よりも低かった事から、これを驚異とはみなされず、都合の良い移民先としてしまいます。

 当時のアーリア系人類は奔放な性格で、先住民にも平気で手を出して子孫を増やしたりしていたらしいですね、破廉恥な……。

 先住民が自分達の神とする知的生命体が他に存在することは、先の調査の結果知ってはいた様ですが、永きに渡って直接の管理を放棄された惑星らしいと言う事と、先住民を支配するような生命体を惑星上に直接確認できなかった事から、それじゃ代わりに我々が住んでもいいよねと、随分と好き勝手にソル系第三惑星での支配権を広げて行ったみたいですね。

 その後、惑星ニビルの太陽系接近とともに、地球に降り立ったニビル人(運斬技牙一族)にアーリア系人類は慌てふためいたようです。

 否は、家主の居ないうちに空き家だと勘違いして住み着いてしまった、旅人のアーリア系人類に有ることは明白ですよね。

 当時、先住民には天より降臨した神として君臨して現地民と子孫までこしらえてしまっているアーリア系人類は大いに慌てたし困った様ですね。

 戻ってきたのは原住民の創造主であるニビル人で、アーリア系人類は留守の間に住み着いたホームレスのようなものです、しかし敵対するかに見られたニビル人とアーリア系人類との接触はあっけないほど穏やかな邂逅に終わったようです。

 ほとんど支配欲というものを持たないニビル人は、久方ぶりに帰ってきた別荘の様な惑星に新しい住人が増えていて大いに喜んだらしいです。

 永い周期で別荘を留守にする主人と安住の地を探してやっとたどり着いた旅人、どこか似通った思いがあったのかもしれませんが、ニビル人には留守の間の管理人くらいに感じていたのかもしれません。

 ここで必然的にアーリア系人類は、放浪生活の支援をしてくれていた銀河中央の友好種族へ住み着いた惑星と、お付き合いすることになった新しい種族を紹介した訳ですが、これが後の栄華と悲劇を引き起こす事に成るとは誰が想像したでしょうか。


 運斬技牙は、ほんとうにおかしな一族でした。

 人類は住まないだろうと思われた過酷な環境の主星を捨てること無く、そこで生き残ることに技術を発達させ、生命の根源にまで手を伸ばしていました。

 永い公転周期のため恒星からのエネルギーはほとんど利用できず、独自の物理法則や空間制御法を編み出して生き延びてきたのです。

 そうした過酷な環境では、助け合わねば生き延びることは叶わず、支配欲の様な物が希薄で分け与える事が当たり前の様なそんな一族だったらしいですね。

 太陽系や地球もすべて研究の対象としか見ていなかったらしく、そこに暮らす生物や生み出した人類についてもそのスタンスは変わらなかったようです。


 そんな経緯の後に、他の天の川銀河の種族とも交流が始まったのですね。

 当初は、田舎の温厚でパッとしない種族と思われていたようで、喰い物にしようと寄って来る奴等が随分と居たらしいです。

 時代は変わっても似たような輩はどこにでも居るもので、最初のうちはアーリア系種族がガードマンよろしく旅で鍛えた腕っぷしで捌いてたらしいのですが……。

 そのうち追い返す頻度が下がって、奴らも諦めたんだろうって思っていたんですって。

 ところが驚いたことに、余りに煩くてアーリア系種族に負担ばかり掛けるのも悪いと思った運斬技牙の指導者層の一部が、時空結界兵器で有象無象を缶詰にして銀河中央のそれぞれの星へ送り返していたらしいのです。

 送り返された方は大騒ぎ、念入りに熨斗(のし)まで付けて其々の主星に送ったって言うんだからゾッとするわよね。

 送りつけられた方は最初、爆弾とか兵器を打ち込まれたと思ったらしいわよ、フフフッ。

 実際に迎撃しちゃった所も有ったみたいだけど、その尽くが失敗したらしいわ。

 届いた荷物の熨斗に開放の仕方が書かれていたらしくて、その通りに解凍したら缶詰は元に戻ったらしいけど、その都度方法も解凍に必要な手順やパスワードが変えてあったらしくて、これは怒らせたら不味い種族だと銀河中に響き渡ったんですって。

 その話を聞いたアーリア系種族は、仲良くしてて良かったと心底思ったらしいわよ。


 辺境の新参者が一目置かれるようになってから、しばらく経って頭の回る種族が友好関係を築こうと度々すり寄ってくるようになって、ニビル人は一族揃って研究者で匠な一族だから、チョイチョイ呼ばれて色んなところにお邪魔するようになって行ったのね。

 後はお決まりの結果として、色々と相談に乗って問題を解決しているうちに、ドンドンと色んなことを便利にして行っちゃって、果ては銀河連合なんて物の元を作っちゃったらしいのよね。

 不便だから便利にするのは分かるけど、便利にしすぎちゃって仕組みが分からないとか……音に聞こえた運斬技牙の伝説がこうやって作られていったとかなんとか……。


 色々と首を突っ込んで、各種族の随分とダークな案件にも関わって、結果的に政治闘争の煽りを食らって一族滅亡とか、ほんとに呑気としか言い様がないんだけど、このあとの子孫は大丈夫なのかしらね。

 おおよその過去を知っている物としては、心配で仕方がないんですけど、昴くん頑張れ~、バクーンはあまりアテに成んないぞ。




 ◆




 地球の宇宙観測に対する目の多さは日々進歩しており、目を皿のようにして新しい星や彗星を探しているプロやアマチュアのスカイウォッチャーは、其れこそ星の数ほど存在する。

 特にここ最近は精度の良い光学センサーや分析プログラムが普及を始めており(その殆どがタウルス製だったりする…)、学術機関や天文台を他所にコアな天体観測家からアマチュアに至るまで(株)タウルスの名を知らない者が居ないほどになってきていた。

 そしてあるアマチュア天体観測家が木星の定点観測の記録データに違和感を感じて、最寄りの天文台に問い合わせたところから大きく話が動き始めることと成る。


「ンッ、この発光現象って……木星の裏側に何か光源が有るって事かな……。でもホントにこのセンサーの精度はすごいな、日本から取り寄せて正解だったよ。とにかくマークの所に問い合わせてみよう、あいつも驚くぞ」


 ジリリリーーーーン、ジリリリーーーーン、ガチャ


「はい、**天文台、ヤアッ、ジャック、久しぶりじゃないか。元気にしているかい、相変わらず木星ばっかり見てるんだろう?」


『ハッハッハッ、ご想像どおり木星ばっかり見上げているよ。それでマーク、早速だけどその木星でおかしなデータを拾ってね、出来ればそちらでも観測の検証に協力してもらえないかと思って連絡したんだ。これからそっちに俺の観測データをメールで送るからよろしく頼むよ』


「おいおい本当かい?木星の事で君にとやかく言うほど僕も身の程知らずじゃないけど、こっちでは問題になりそうなデータは無かったと想うんだけど……、分かった。時系列に沿ったデータのすり合わせを行おう。それでどういった発見があったんだい、正直に白状し給えよ」


『マ~マ~、そう慌てなさんな、順を追って説明するからさ。実は、日本の新しい観測システムを導入してね、一昨日から運用を始めたんだけど、これがとても綺麗な画質でね~ウンウン、最初は映像を目で見ても気が付かなかったんだけど、その記録されたデータに頻繁に乱れが見られるんだ、今までのシステムでは検出できなかったデータでね比べようにも俺のところには蓄積が全く無いから、そこでマークの所に相談したってわけさ』


「エッ、それってタウルスだろ? ホヘ~、そんなにあの日本の光学センサーは精度がいいのかい、今度の予算には是非追加してもらわないといけないな。ジャック、概ねの話は分かったよ、話しを聞いているうちに君からのデータも届いたようだ。こちらでも手の空いている者を使って早速検証に入らせてもらうよ」


『ああ、よろしく頼むよ。俺は、続けて観測データを蓄積するから、必要だったら連絡をくれないか。いやー、チョット今ワクワクが止まらない気分なんだ、良い知らせを待ってるからな、俺をガッカリさせないでくれよ』


「そんなにプレッシャーを掛けるなよ、検証が終わったら連絡するから。またな」


 ガチャン……


「ジュピタリアンのジャックにも困ったもんだな。サラリーは全部機材につぎ込んじまって、嫁も貰わずに幾つまで頑張る気なんだあいつ……、ンッ、このデータ……、しょっ、所長~……」


 この後、世界中の天体観測所やスカイウォッチャーがお祭り騒ぎを始めるのにそう時間はかからなかった。

 既に(株)タウルスから世界中に広まった光学センサーと解析プログラムは、驚異的な精度でそこに人工物が活動していることを証明することになる。



 やっちまったな~、天河親子。

 ハコの隠蔽を引っ剥がすとは、ほんとに大したもんだ……。





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