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実は俺、宇宙船を育てています《イイエ、育てられているのは、ア・ナ・タ》  作者: 夢見る黄龍
第1期 第4章 転

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1-4-03 消滅のアルキオネ…暴走と継承 21/5/20

20210520 加筆修正

5382文字 → 6111文字




 地球では、昴がメガフロートの公開説明会をしている頃。

 アルキオネは、アステロイドベルトの地で万策尽きて途方に暮れていた。

 そこにあるのは、半年以上前から小惑星No1のケレスにおもむいていた、彼女の姿だった。


 私はどこで間違えたのだろうか……。

 これまで撤退のタイミングは有っただろうか……と。


 昨年の9月のこと、私は希美さまからの依頼によりここケレスまでやって来ました。

 現状で調査機材を載せ飛べる船は、改造バスコンしかなかったので、新造機体の方に乗せられるだけのワーカーとセンサー各種、調査機器を載せてアステロイドベルトへと飛んできたのです。

 新造機体というのは、スクラップを改造したバスコンを元にマスターがナノマシン造成で完全再現したコピー機体です。

 コピーと言っても、改造されたオリジナルの不具合や素材強度の変更などを行い、元のオリジナルよりも強度も性能も高いバランスで仕上がっているものです。


 小惑星ケレスについて地球で確認されている情報には、放射線と重力偏差によるマントルの活動とその質量から割り出した地殻の厚さ、そして多分あるだろうと言われる水の存在です。

 予想通りの量の水があるとすると、地球上にある真水よりも大量の水が確認できるはずなのです。

 そう、直径凡そ1000kmにも満たない準惑星に地球上よりも大量の真水が有るってどう考えても可笑しい……。

 地殻マントルの厚さは、およそ190km、中に水が有るとしてそれをまとめて球体としている核は、いったい何で出来ているのか?

 それらを調べるために私はここまで来たのです。


 通常、地球や月などの岩石惑星は、隕石や隕鉄や塵が集まって核となり、木星などのガス惑星は、水素やヘリウムなどガスが集まり中心には水や氷で出来ています。

 どう考えてもケレスは、自然に出来た星とは言い難い……。

 希美さまが『最優先に調べるべし!』と言った事も、あながち間違っていないと思われます。

 さらに、小惑星ケレスの有る場所であるアステロイドベルトは、今は無き惑星ニビルの軌道に重(かさ)なる場所、これだけ状況証拠が揃えば怪しい以外に導かれる答えは無いでしょう。

 それにここに来て分かった事は、今までの観測データはパッシブスキャンのみで有ることです。

 アクテイブスキャンを行ったところ、何かに邪魔されているようにぼんやりとしか分からない事がハッキリとしました。

 分からない事が分かるっていう言葉も可笑しな話ですが、この状況はもっと可笑しいでしょう。

 取り敢えずワーカーを下ろして地殻調査を始めたのですが、表面を数m掘ったところで柔らかい金属層に辿り着いたのでした。

 たぶんこの金属層がスキャニングを邪魔しているだろう事が分かってはきましたが、今まで見たことがない組成の金属で有るため、分析用に一部をサンプルとして地球に送ったのでした。

 そう、送ったはずだったのです。

 しかし、地球についたサンプルの入ったカプセルには、何も入っていなかったのでした。

 後でこのカプセルを詳細に調べたところ、水も漏れない程の微細な穿孔(せんこう)が多数発見されました。

 空のカプセルの連絡にいぶかしみながら、今度は電磁シールドを施(ほどこ)した物を送りました。

 ですが、そのカプセルは地球に着く前に隕石に衝突して消滅したのでした。

 あまりの偶然に、頭を抱える思いでした。

 仕方がありません、サンプルは調査終了時に直接持ち帰ることにしたのでした。


 その後も柔らかい金属層は、形状記憶合金の様に温度と圧力によってその硬度が変化し、時に液状になり掘った穴を埋め、時に固く掘削の邪魔となっていました。

 遅々として進まない調査を根気強く進めながら、私はケレス表面の調査を継続したのです。

 そして、地球から見ると北極にあたる部分の谷間に、人がやっと入れる様な洞窟を発見しました。

 何故かセンサーがろくに効かないので、光学カメラによる分析は続けていましたが、人が歩いて探さないと分からないように巧妙にカモフラージュされており、発見までに随分と時間がかかってしまいました。

 このとき、既に半年が過ぎようとしていました。

 私はこの発見を、早くマスターに会って褒(ほ)めて貰(もら)いたいと逸(はや)る気持ちを抑(おさ)えるのでした。


 先程、今までの調査報告をまとめて送信しました。

 今回はサンプルを持って一度引き上げ、詳しい分析をした後(あと)あらためて来るといたしましょう。


 作業中のワーカーを引き上げようとしたところ、深さ190Kmと随分深くまで掘っていた事に気付きましたが、異変はその時に始まったのでした。

 今まさに引き上げようとしていたワーカーの、掘っていた坑道の底が抜けたのです。

 今まで頑(かたく)なに掘削を阻んできた金属層が、泥濘(でいねい)となってワーカーを飲み込みました。

 時を同じくして、調査のため北極に発見した洞穴の近くに停泊していたバスコンもその谷間ごと地面に飲み込まれたのです。


 マッ、マ…ス……ター……。




 ◆




 俺は、メガフロートの説明会から帰って来て直ぐ、ハコから緊急報告を受けた。


[マスター、ケレスへ調査に行っていたアルキオネとの連絡が途絶えました]


「エッ!」


[難航していた小惑星ケレスの調査ですが、失踪(しっそう)直前に送られてきたデータに依ると足掛かりとなる遺跡の痕跡を発見したようでした。一度引き上げて帰るとの通信を最後に連絡が取れなくなり、現在超空間通信も繋がりません]


「チョット待ってよ、ここんとこ見かけないと思ってたら危ないとこに行ってたの? 小惑星のケレスってアステロイドベルトの中にある?」


[肯定。希美さまの依頼で小惑星No1・ケレスの調査に向かいました。色々と想定外の事が重なり、調査が難航していたようです]


 そこへ母さんがテレポートしてきた。


「昴、落ち着きなさい!」


「早く助けに行かなくちゃ、ハコ、船出してよ、早く!」


[否定。マスター、少しお待ち下さい。これまでアルキオネの集めたデータを只今解析中です、もうしばらくお待ち下さい]


「昴、話を聞きなさい! 今まで送って貰ったデータから、ケレスの機能はまだ健在だと言うことが分かるわ。迂闊(うかつ)に手を出すと、二重遭難(そうなん)のおそれが有るわ……準備が整うまで待ちなさい。……昴?」


「うウうゥァ~~、早く行かなくちゃ消えちゃうよ~、早く、ハヤクッ! ……」


「昴! 力を抑えなさい、落ち着くのよ」


「うううゥ~、ワァ~~~」


 その瞬間、昴の周りの空間が砕けた………同時に装着される厳つい鎧。

 鎧を着た昴が砕けた空間とともに光って消えた……。


 シーーーン


「今のは? ……、ハコ! 昴はどうしたの?」


[暴走です。マスターに施されたリミッターが弾けとびました。安全装置が働いて、戦闘用のコンバットスーツが強制装着された様ですが……現在、跳躍した座標を検索中……]


「暴走って昴はどうなっちゃうのよ? 無事なの?」


[肯定。コンバットスーツが破損していなければ、まず安全です。太陽かブラックホールにでも飛び込まない限りはですが…、すぐに命の危険は心配いりません。ただし、テレポートに失敗した場合はその限りではありません]


「どうすんのよ? 昴はどこに跳んだの?」


[肯定。多分、マスターの事です。ケレスに直接テレポートしたものと思われます。ケレスでは現在ジャミングが酷く、スーツのビーコンは受信出来ませんが、ケレスの方角から微弱にマスターの精神波を検出しています]


「それじゃ直ぐにケレスに行くわよ。船を出してちょうだい……」


[否定。希美さま、落ち着いて下さい。先程のマスターと同じ精神状態になっていますよ。今、私のスタンバイとプレアデス達が其々の護衛艦の最終チェックを行っています。実際に船を飛ばすのは、今回が最初になりますから、テストも無しでの戦闘となると不安も残りますが、出来るだけ急ぎましょう……]


「なるべく早くしてね。流石に私でもテレポートでケレスまでは跳べないわ……」


[肯定。可及的速やかに……」


「……希美おばさん、昴ちゃんが消えちゃったよ? どこ行ったの?」

「昴兄ちゃん、変身してたから大丈夫だよね? 直ぐ帰って来るよね?」

「……消えちゃた!」

「テレポートって? どこ行ったんですか?」

「何か陽炎みたいなの出てたぞ、大丈夫なのか? 昴……」

「兄ちゃん、消えちゃったよ!」


「あっ、あんた達、今の見てたのね?」


「「「「「「おばさん、説明して?」」」」」」




 ◆




 気がついたら俺は、光の差さない岩場に倒れていた。

 ここは、どこだ?

 重力が弱い、体が軽い、浮かんでいるみたいだ。

 周りは暗い、明かりが見えない。

 深呼吸して状況を把握しよう。

 俺はスーツを着ている……なんでだ?


「ハコ、応答して……」


 通信は不通、テレパシーも……繋がらない……。

 さっき母さんの前で、周りが砕け光って………。

 今は随分と頭がスッキリしている、身体が軽い……普段よりも動く?

 スーツの機能は正常、ステータス表示ON。

 エッ、このヴァイタルの数値は、通常の300倍って………。


 ……マ……ス……タ……ー……。


 んっ、誰か呼んだ………?

 アルキオネ……君か……!


〈アルキオネ、無事なの?〉


 ……私…の…事…は…………に…げ…て……くだ……。


 こっちか、今いくよアルキオネ………。




 ◆




 眼の前の谷間には、洞穴が口を開けていた。

 ここまでの道中で、俺は自分のステータスの確認をほぼ終わらせた。

 ここがアステロイドベルトの小惑星ケレスの極地で、アルキオネが捕(つか)まっているのもこの近くだと云う事がなんとなく分かる。

 ここまでの道中、ずっと襲って来る触手のような地面を避けながらやっと辿り着いたのだ。

 この洞穴の前まで来たら、さっきまでが嘘のように攻撃が止んだことから、目的地がここだろう事が分かる。

 さあ、鬼が出るか蛇が出るか……、ここまで来たら全部吹っ飛ばしてやるぞ。

 今の俺なら多分出来るはずだ!

 アルキオネを助けたら、一気に跳んで逃げるぞ。


 洞穴の中は、ほのかに明るく、奥まで続いていた。

 1Kmほど進むと直径50mぐらいのフロアに出た。

 フロアの中心には金属光沢の柱が立ち、その中ほどに、身体を壊されコアがむき出しで固定されたアルキオネが居たのだった。


[ッ、マスター! 逃げて下さい。私は破壊されても、データが船に残っていればまたマスターに直してもらえます。マスターが危険を犯す必要はありません!]


「アルキオネ。確かに元のデータでの復活は可能だけど、完全な自我の補完は出来ないはずだよ。記憶はあるかも知れないけど、作り直された君は別人だよ」


[マスター……]


「さあ、アルキオネを餌にここまでしたんだ、覚悟しろよ。俺はチョッと切れてんだ、今の俺は半端なことじゃ止まんね~ぞ」


 俺はアルキオネのコアのみをアポートで取り寄せた。

 目に見えてればこのくらいの事は、今の俺には朝飯前だ。

 さっと逃げようとしたら、出口は塞がっていた。

 チッ!

 テレポートしようとしたが妨害されているようで跳べない……、むむむ……。


《……そう慌てるな……、お前の力は見せてもらった……、継承者としての資格を示せ……》


「資格?」


《……ここに手を……》


[マスター、危険です。止(や)めて下さい]


「どうせ逃げられないなら、とことん付き合おうじゃないか。アルキオネもごめんよ、付き合わせる事になってしまって」


[何をおっしゃいますか? 私は何処までも一緒ですよ]


「ありがとう……」


 アルキオネが囚われていた柱が淡く輝き、アルキオネのメイドボディーが残骸として下に吐き出された。

 何も無くなった金属柱の正面には今まで無かった祭壇が開き、そこに小さな穴が口をあけていた。

 俺は、ためらいなく左手を穴に突っ込んだ。

 二の腕まで飲み込んだ穴がキュッと縮み腕を包み込んだ。

 そして、ガードスーツ越しにも関わらず左手の中指に痛みが走ったのだった。


「痛(い)っ!」


 するとまた穴が広がり、開放された左手の中指には帯状の指輪が嵌(はま)っていた。

 なんじゃこりゃぁ~、抜けネ~ぞ! これ。

 そのリングは、ガードスーツに干渉されずに指に融合した様に嵌(はま)っていたのだった。


《……継承は果(は)たされた……、新たなるマスターに幸多からん事を……》


「お前は、いったいナニ者だ? 簡単に説明しろ!」


《我(われ)は運斬技牙(ウンサンギガ)の無限ドックの管理人、名は無い》




 ◆




 管理人の話を要訳(ようやく)すると、ここはおよそ40万年前に作られた運斬技牙という一族の巨大な製造工場なのだそうな。

 およそ一万年前、主星ニビルが破壊された時、衛星だったこの星は重大な損傷を受けたが自己修復機能で五千年を掛けて今の状態まで復旧したらしい。

 外郭の地殻とマントルを構成するのは特殊な流体金属であり、内部を満たしているのは、巨大なナノマシンプールであり、核には全てを制御するコントロールセンターが存在するらしい……。

 いままで休眠状態で、運斬技牙の一族が戻ってくるのを待ち続けて居たそうな。

 で、俺はその運斬技牙一族の因子を受け継いでいると……。

 チョット待とうか、どういう事?


[マスターは、確かに運斬技牙の一族ですよ。バクーンの座乗艦のサーベイヤーⅠ世からも間違いないと機密通信で確認が取れています。マスターには、まだ秘密にして、希美さまと我々で一族復活の準備をしていました]


「そう云う事は、早く言ってよ……て、待てよ……前に逃げ出す相談のときに聞いたような……嗚呼嗚呼(ああああ)っ、忘れてた~!」


 気が抜けて床にヘタリ込んだら、イキナリ俺の周りの床が抜けた。

 落とし穴の様に下に落ちただけど、これ時速何キロぐらい出てる?


[現在、時速七百キロ程で移動中、間もなくマントル層を抜けます]


「急にどうしたの?」


《外からの攻撃だ。継承者の身を守るため、安全なコントロールセンターに移動中……》


 ズズズズーーーン、振動が伝わってきた。


「エエッ、攻撃ってどこから? まさか……」


[多分、お母様たちだと思われます。早く止(や)めさせないと……]


「オイ、ジャミングを停止しろ! 外と連絡を取れるようにするんだ。多分、いま攻撃しているのは俺の船だと思う」


《ッ! 了解した。伝達信号の阻害(ジャミング)を停止、通常状態に移行する……完了》


 ◆


『昴~、昴~、返事しなさ~い。昴~~』


『『『昴くーん、どこー?』兄ちゃーん』どこに居るの~?』

『『『昴、生きてたら出てこーい?』昴さーん』』


「母さん、俺は無事だ。攻撃は止めてくれ! み、みんなも来たのか?」


『昴! やっと返事した~。無事なのね! アルキオネは?』


「大丈夫、アルキオネのコアは回収したから直ぐに治るよ」


[希美さま、ご心配をおかけいたしました……]


『取り敢えず、早いところ合流するわよ。船を着けられるとこ教えなさい』


「管理人、500m級の船が下りられる所を用意して」


《了解。コントロールセンターへの接舷用ゲートを用意しよう。南極側、造船ゲートを開放する……》


「ハコ、南極側に船の入れるゲートを開くから入ってきて。この施設は、俺が継承者として受け継いだから、もう大丈夫!」


[肯定。おめでとうございます。やはりケレスの施設は生きていたのですね……]


「運斬技牙(いちぞく)の話は後で詳しく聞くからね、母さんにも!」


『昴、内緒にしてたのは謝るから怒らないで、ねっ♪』


「とにかく合流してからね、また後で」


 全く、締まらないな~、どうしようかな~ここ。

 受け継いだは良いけど、また暇が無くなりそうだよ、ハ~~。





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