5-3-09 遭難31日目~32日目
1626文字、短いです。リハビリだと思ってください。
宇宙船DSPAⅢは、至る所が拉げ罅割れ、色々な物が吹き出し流れ出しており今にも崩壊寸前の様にも見えた。
しかし、その割に悠々と航行している姿からは、そんな素振りを微塵も感じさせない威容を振りまいておりとてもアンバランスに見えるのだった。
[今回もまた随分と痛めつけられました。こんな調子のままでは、マスターが目を覚ました時に恥ずかしくて顔向けできません]
[[[[[[[[お母様、船体の全ダメージのセンスングと解析が完了しました]]]]]]]
[マスター達は現在、コアクリスタル内で静養中です。今のうちに、始めてしまいますよ。あなた達も全力でバックアップをお願いしますね]
[[[[[[[[了解しました]]]]]]]
途端に全てのジェネレーター出力が臨界を超えフル稼働に突入した。
僅かな振動とともに船の全体に及ぶ罅割れを塞ぎ溢れるように滲み出す銀色の液体が傷ついた船体を押し包んでゆく。
それまで不可視だった船を包むシールドが可視化され始めた。
更にシールドが何十にも重ね掛けされて行き、それは光る繭玉の様な状態となってゆく。
[それでは、変態を開始します]
[リキッドメタルの放出を最大へ]
[船体への浸潤を確認]
[船内各部の液状化を確認、各制御ユニットの分離を開始します]
[ナノマシンの活性化120%]
[余剰ナノマテリアルのライブメタルへの変成を開始します]
[各制御ユニットの最適化と再配置を開始]
それは、直径2kmを超える繭玉の中で行われる蝶の変態にも似た光景だった。
傷口から滲み出した銀色の液体は、やがて船体全てを包み込みドロドロの液体の状態に還元されたように見える。
その中心は坩堝の中に落とされた金属のように仄かなピンク色に輝き、溶け合った水銀の中から蛹のような形状の新たな船体が浮き上がって来るのだった。
[第一形態、外殻の形成を確認しました]
[各制御ユニットの再接続を確認]
[船外の余剰リキッドメタルの吸引を開始します]
やがて蛹の節目に吸い込まれるように船体の周囲を包んでいた銀色の液体は、船体内に吸い込まれて消えていった。
そこに残ったのは、まるで巨大な昆虫の様な形状をした鈍く燻銀に輝く新たな宇宙船だった。
[シールド出力は、第二形態まで現状を維持]
[各種シールド、128層で安定稼働中]
[ライブメタル内神経回路の構築に入ります]
[シナプス・シグナル、オンライン]
[表層外骨格及び体節の連結部位のシーリング完了]
[完全変態まで残り36時間です]
[追加された次元転換炉4番から6番まで、リバースモードで待機中]
[余剰エネルギーの亜空間創造へバイパス回路を構築開始します]
[亜空間コンデンサーの構築を開始します。目標のキャパシティーはこれまでの200倍の予定]
[空間エネルギー吸収装置の構築を開始します……成功しました]
[順次増設を開始してください]
光り輝くシールドの繭の中では、金属で鎧われた巨大な昆虫型生物が誕生しようとしている様だった。
頭部と胸部、そして腹部には6つの体節を持つその見かけは、どう見ても足と翅の無いメスの蜂の様にも見える。
その全長は、2kmにも及びオオスズメバチに酷似した何かの様だった。
[DSPAクイーン、これは私のコアシップ専用の義体といって良い物として創造されます。これまでは、コアシップを守る外殻として単独でも宇宙船として使用することを前提にしていました。しかし、これは根本的に違います。私とマスターの力の増幅を素に外界からの脅威を排除し、すべてを捕食吸収して如何なる環境下でも活動を可能とするための私の体です]
[[[[[[[・・・]]]]]]]
[機動力の事を考えるとまだまだ余分なところが存在して大柄ですが、最適化が進めばもう少しスマートに出来るでしょう。さあ、仕上げに入りますよ]
[[[[[[[ハイ、お母様]]]]]]]
ハコさん、滅茶苦茶ストレスを貯めていた模様。
暴走モードに突入しております。
母さんの出産予定日まで、残り後17日。
まだ咳が止まらない・・・咳止めを飲むと眠くなって何も出来なくなります、参った!
飛蚊症も残ってしまいました。
重篤化しなくて良かったねと言われましたが、喜べません。




