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5-3-08 遭難30日目

2166文字




[まだ皇帝陛下(マスター)とお后様達の行方(ゆくえ)は、わからないのですか?]


 オヒューカスが問いかけた。


「ええ、余程遠くか別の次元にでも跳ばされているのじゃないかしら」


 それに答えたのは、大きなお腹をした天河希美(昴の母)である。


「その様じゃな。高位精神生命体(天使や悪魔)達からの話だと100億光年以上は跳ばされておるようじゃ。我等の技術を持ってしてもチョットやそっとでは通信も帰ってくる事も叶わぬ距離じゃ。空我とハコの固有スキルでもある量子跳躍航法を使用しても数年は掛かる距離じゃぞ。生存が確認できただけでも良しとするところじゃろう」


 豪華な病室には、オヒューカスの他にドクターアンともう一人、大天使が控えていた。


[マスター昴達は、邪神ナイアルラトホテップ(ナイ神父)による転移座標の改算によって強制的に遠方に跳ばされてしまったようです。普通なら我々天使でも絶望する程の遠距離ですがマスター昴とハコさんのペアには然程の脅威ではないでしょう。多少時間はかかっても無事でお戻りになられると確信しております]


「ガブリエールが自信持って言ってるくらいだから心配は要らないと思うけれど、家族としては心配よね~?」


 お腹を擦りながら希美はオヒューカスにそう語りかけた。


[全くです]


 寂しそうに応じるオヒューカスだった。




 太陽系では、昴達が消息を絶ってから早一月(ひとつき)が経とうとしていた。

 ここは、アステロイドベルト軌道上に再建された主星シン・ニビルの皇宮内にある皇族用の病室である。

 太陽系内では一番安全な場所の一つだ。

 先の皇帝失踪の主犯が邪神である事が判明した事で、昴以外に対抗できて割りと自由に動ける大天使が護衛についているのだった。


[ナイ神父について時空神ソト様よりお言葉(情報)を頂いております。千の顔を持つと言われる彼の邪神は、その言葉通り千に分裂した神格を持ち元の千分の一の力しか振るえないのだそうです。ですから力技よりも姑息な手段に訴える事が多く纏わり付かれるととても鬱陶しい存在なのだそうです]


「面倒な奴じゃな、滅ぼす事は出来んのか?」


[借りにも邪神の一柱ですのでそれは難しいかと……。絶えずちょっかいを掛けてきますが、相手が分かっていれば我々天使でも撃退は可能です。……反撃までは無理ですが……]


「ほんとに面白くない存在よね……」


[今回、マスター昴の無事が確認されましたので、それが一番の奴への意趣返しかと存じます。奴の思惑に乗ってこちらが慌てふためけば、相手を喜ばせるだけです]


「そうじゃな、一々相手にするだけこちらが消耗して邪神は喜ぶっ…か。無視するのが一番という訳じゃな」


[そうです。相手にするだけこちらが馬鹿を見ます。極力無視して相手にしないのが一番の対処法です]


 邪神ナイアルラトホテップの対抗方針はこうして決定したのだった。

 無視して相手にしないのが一番。

 イタズラには極力反応せず、面白みの無い相手に成り切る事である。




 ◆




 この一ヶ月というもの地球では、何処(どこ)彼処(かしこ)も上を下への大騒ぎだった事は予想に(かた)くない。

 勝手にシン・ニビル(独立国)の不動産売買を始める詐欺が横行したと思えば、渡航どころか永住権の斡旋を始める輩まで出始めた。

 そんな許可は『何処の誰にも出していない』というのにである。

 だいたい、勝手な月の土地売買の件もまだ決着が着いてないというのにである。

 一応、地面師詐欺や偽装窓口はその都度潰しているがイタチごっこである事に変わりはない。

 どうして、何故これで騙されるのか? と言った内容なのだが巧みな口車に乗せられてつい金を出してしまうらしいのだ。

 帝政ウンサンギガは、独立国である。

 現在は、地球との全ての外交ルートを閉じている。

 人の想像力と妄想力に歯止めを掛けられないという事は、初めから分かっていた事だがそのエスカレートぶりが余りにもひど過ぎるので現在は、広報窓口を設けて鎮静活動をしてもらっている。

 担当しているのは、キャロライン中里と結城忍の2人。

 今日も有象無象の相手に目を回す忙しさであった……のは、2人のパートナーである管制AIのフォウ()アルク(望遠鏡)である。

 主人の2人はと言うと優雅にお茶しながら世界各地の新聞を並べて読んでいた。


「相変わらず何処の話題も一面は帝政ウンサンギガの事ばかりですね。他に話題がないんでしょうか?」


 忍がボヤくとキャロルが答えた。


「無いのよ! って言うか乗せたくないの……どこも不祥事ばかりで政治がヤバいから。一種の情報誘導で一般ピーポーの頭をそっちに向けておきたい訳よ」


「そんなの直ぐにバレるでしょうに、お疲れ様としか言えませんよね。盛大な墓穴を掘ってるとしか見えないんですけど、度々出汁に使われるこっちはいい迷惑だって話ですかね」


「取り敢えず昴君達の話題振っておけば間が持つと思ってるんでしょ。馬鹿ばっかよね~、宇宙にも上がれないで何を騒いでいるんだか。まぁ、独立されちゃったから焦ってるのは分かるんだけどね」


「あわよくば自陣に取り込みたかったんでしょうけど、残念だったわよね~。ケケケケw」


「それは、たしかに分かりますけどね、まともな交渉も出来ないのに妄想力だけは何処も旺盛ですからね。ウフフフフ」




(随分と楽しそうですよね、マスター達は……ああ忙しい……)<フォウ


(仕方がないさ、勝ち組と負け犬の違いだろ……少しは手伝って……無理か)<アルク






  母さんの出産予定日まで、残り後19日。




あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせ犯人は特定してるのだから天川讓パパに転移で 名のマシンを犯人に掛けて 酷い病気にして贋の特効薬を 売り付ければ?1錠1億円で 現ナマで!売り飲ませて 症状が落ち着けば信じるよね? 最後…
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