5-3-07 遭難29日目
2857文字
1ヶ月ぶりの更新となってしまいました、ご勘弁を。
二次を書くのが面白くてツイッ。
昨日は、酷い目にあった。
でも久しぶりに良く眠れたのは確かだ。
昨夜は、泥のように眠った。
夜のお勤めも無く、只々惰眠を貪ったのである。
そして、目を覚ました後にみんなからお叱りを受けた。
一人で何もかも全部背負い込む事は無いのだと。
嫁が9人も居て10人目も増えたのだから、頼っていいのだと。
寄りかかってくれて良いのだと諭された。
イザとなっても、このメンバーでなら何処ででも生きていけるのだからと。
漂流を始めておよそ1ケ月経って、やっと俺は開き直る事に納得した様である。
まだ混乱していて良く分かっていない状態だが多少は改善するだろう。
今まではどうにかなるさと楽観視している外面と、帰れなかったらどうしようという内心での重圧を隠していた事で眠れないアンバランスな精神状態になっていた様である。
一種のノイローゼ……精神生命体の精神疾患は命取りに成るらしいので今後はもう少し気をつけようと思う。
俺は、チョコッと反省したのだった。
「昴ちゃんは、もう少し真剣に反省しようか……」
しばらくは、俺に対する締め付けが厳しくなりそうである。
◆
旦那様がキュッと倒れた。
自業自得なのだが笑えない。
彼が地球圏に帰るために苦悩し奔走していたのは確かだ。
しかし、私達にはこのトラブルを楽しんでいる部分も存在した。
旦那様が居てこのメンバーが揃っているのだ、何が来てもどうにかなるだろうと開き直るのは割りと早かった。
でも、旦那様は御義母様の出産が間近なことを気にかけてそれまでには帰りたいと考えていたようである。
理想では出産予定日までに帰って、御自分の創造した支配世界(ハコ内の亜空間)で兄弟の誕生を見守りたいと考えていたのだろう。
予定日まで残すところ20日余り。
気が急かされても仕方がないのは分かる。
分かるがこればかりは、こちらの思惑通りにゆかないのが旦那様の人生というか運命のような気がするのは気の所為などではないだろう。
これまで散々とトラブルに見舞われてきた。
私達もいい加減慣れてきたとも言える。
シャシちゃんなんか『昴といると退屈しなくて良い♪』と公言しているくらいだ。
いい加減諦めが肝心だと思うのだが、一人で頑張ってしまうのは性分なのだろうと思う。
そんな旦那様だからこれだけのメンバーが集っているのだとも感じた。
さて、もうそろそろ目が覚めるだろうからご飯を食べさせてお説教の時間である。
何を食べさせようかな。
銀河の日誌より
◆
旦那様は、相変わらずのトラブルメーカーである。
何時の間にか大きな渦中の人になっている。
これも運命なのだろう。
そして、何かしらの理由が存在するのではないかと疑っても居る。
普通の只人が関わるには、何もかも規模が大きすぎるのである。
星の滅亡、種族の再生、そして銀河の繁栄。
字の如く時は流れる事をやめず、繁栄を約束されたと思った矢先の邪神の介入である。
呪われていると言っても良いのでは無いだろうか……いや、呪われてるのだろう実際に……。
普通では考えられないような事が平気で起きている事からもうかがえる。
試練? そんな馬鹿なことが有ってたまるか。
そうゆう星の下に生まれたのだとしても少し酷すぎる様に思っているのは私だけではないだろう。
一人、この状況を喜んでいる人物も居るには居るがそれは少数派だ。
っと言いたい処ではあるのだが、少なからず旦那様との冒険を歓迎している処が無いと言ったら嘘になるだろう。
ここに集ったメンバーは、そんな者達ばかりなのだから……。
ラクシュ妃の手記より
◆
昴兄ちゃんがジェニー姉さんに絞め落とされた。
あれは仕方がないと思う。
遂にヤッちまったナァ~とは思ったけど、昴兄ちゃんが更に醜態を晒す前で良かったと思っている。
普段何考えてるか分かんないような振りして、こっちが心配に成るぐらい周りを気にしている、そんな優しい青年である我等の旦那様にもとうとう限界が来たのだと思った。
昴兄ちゃんがこの1ケ月、まともに寝ていないのにはみんな気がついていた。
少しでも休んでもらおうとベッドに誘っても、こっちが先に落とされてしまう始末、嬉しいけどほんと笑えない……ああゆう真面目な処だよ、ハァ~。
後で、目の下に隈作って安らかに眠る顔でも拝みに行こうかな、寝顔なんてしばらく見てないし……。
双葉の独り言
◆
「やっと寝たね……お疲れ様」
2人は、昴をここまで担いできた。
ベットに寝かしつけた昴に傅いて髪を撫でる聖。
「ほんとに世話が焼けますわよね。何でも熟す我等が旦那様もとうとう燃え尽きた、と言ったところでしょうか」
呆れたと言いながら反対側を占拠して添い寝するリリアナ。
「頑張っていたんだ、仕方がないさ」
「聖さんは、またそうやって甘やかすのですわね」
「私にはこれしか出来ないからな。そういうリリアナはどうなんだ?」
「どうと言われましても……いくら言っても休んでくれないのですもの、しょうがありませんわ」
「昴は昔からそうだ。家族を何よりも大事に思って手を尽くそうとする。たとえそれが自分の命を掛けていたとしても……」
「そういう方ですから私はここに居るのですわ。そして今も、私達の無くした故郷を取り戻す事を諦らめずに戦って居られる」
「昴は、『乗り掛かった船だしね』と言っていたぞ」
「まあ、沈没船ですわよ……旦那様は新品にしてくれそうですが、ウフフフ」
[ガウガウッ(その話しを詳しく、おもしろそうジャ)]
いつの間にか昴の足に顎を乗せるようにミゼーアがこちらを見ている。
「そうですわね、あれは……」
リリアナは、語る。
故郷である射手座矮小楕円銀河の滅亡からのエクソダス、新天地のお膳立てを経て、現在の故郷奪還作戦の遂行までの経緯を……自分の心境を交えて、もうそれは何処から聞いてもピンク色に染められたラブロマンスに他ならなかった。
[ワフン……(それは、惚れて当然じゃな。多少脚色は有るにしてもそれをほぼ単独で実行できる時点で論外。ソト様が惚れ込む訳ジャ……)]
この後も、眠る昴を肴にガールズトークに花が咲くのだった。
◆
まったく旦那にも困ったものだ。
絞め落とした昴を見下ろして溜息をつく。
あれほど休息を取れと言っているのに人の言うことを一切聞かず、自分を追い詰めてこのザマである。
若いって事は、良いことだが何事にも限度という物が有るのだ。
他の妻達が遠慮して出来ないのだからやるとしたら年長の私しか居ないのだが、……仕方がない、後で特別報酬を弾んでもらうとしよう。
「ハコちゃん、船の修理にはどのくらい掛かりそう?」
[3日と言ったところでしょうか。デスストリームの逆流現象のデータも取れましたので次回はマスターが発狂する事は無いと思いたいですね。無駄になったのではなく糧になったと言える様に準備致しましょう]
「そうしてくれるとこっちも気が楽だ」
女帝2人がそんな会話をしながら、シスターズに指示を飛ばし始める。
一時騒然としていた艦橋に平穏が戻り、各自が忙しなく動き出すのにそう時間は掛からなかった。
皆さん、優秀なのであった。
母さんの出産予定日まで、残り後20日。




