5-3-03 遭難24日目
2174文字
難産でした・・・気がつけば一ヶ月ぶりの更新となります。
実は、余計なものを書き始めたら止まんなくて・・・言い訳にしかなりませんね、申し訳ありません。
そのうちこのブツは別のところで(二次なので)見てもらう機会を作ろうと思っております。
今後の更新ペースは、また週1に戻ると思いますのでよろしくお願いします。
では、本編をお楽しみください。
「・・・」
[あるじ~。どうじゃ、この人の体は? 我は気に入ったぞ! ほれっ、いつものように撫でるのジャ、ほれっほれっ♪]
メイドエプロンの後ろから伸びるふわっふわの犬尻尾が右に左に大きく揺れている。
頻りに撫でろ撫でろと下げられた頭のヘッドドレスからは、立派な犬耳が元気に立ち上がり嬉しげにピクピクと動いており上機嫌の様だ。
「・・・」
「ガルルルルル……」
昴とミゼーアとの間に割り込んでミゼーアを威嚇している銀河を除けば微笑ましい光景にも見えるのだが、その実よくよく見てみるとミゼーアは『裸エプロン』という如何にもな格好だったりするから普段は見えてはいけない所もチラチラと披露しており素直には笑えない状況だからでもある。
銀河が恥も外聞も気にすることなく凶暴になっているのにも頷ける状況であったのだ。
他の面々は遠巻きにその様子を伺っていて、隙あらばミゼーアのその豊かでフサフサな尻押を撫でたくて仕方が無いといった様子ではある。
それはなぜなのか?
以前の狼の姿だった時には、ほんとに俺以外には一度として触らせてもくれなかったからであるのだ。
それはそれは素晴らしい毛並みで、獣が好きでない者でも一撫でしてみたいと思わせるような姿を存分に晒していたのだからこんな状況になっている当たり前と言えた。
ミゼーアは人の姿となったことで、俺のファミリーというか群の仲間になったとの認識が生まれたのだろう、今では嫌がらずに触らせてくれると言っているらしい。
しかし、まず群の主である俺が構い倒さなければイケないらしいのだが、う~ん。
俺がどうしたら良いか悩んでいると『ボフンッ!』という音と共に今まで目の前にいた獣人美女は、紫紺の色鮮やかな毛並みの巨大な狼になってひっくり返っていたのだった。
[肯定。ふむっ時間切れですね。最初にしては上々の出来です。まだ人の形態を長時間維持するだけのスキルが拙いようですね。短時間で元の姿に戻ってしまった様です。基本的にキシャールの義体データを素にした物ですので獣の形態が本来の形となってしまっているのは仕方がないでしょう。素体となったキシャールも、人の形態を長時間維持できるようになるまでには相応の時間が掛かったそうですので……。まずはこの状態からマスターに躾けて頂きます。そもそも以前の体で暴れられると収拾が付きませんからね、こんな形でリミッターを付ける事が出来たのは幸いな事であったと報告させて頂きます。ここでのルールを叩き込むのはその後でじっくりととみんなでしますので……銀河さん、もう諦めて下さい。お仲間にしたほうが良いのはあなたが一番良く分かっていますよね。危険な存在だからといってそれを全て排除していたら限がありませんよ]
説明に入っているハコの話などそっちのけで、目を回して動けなくなっているミゼーアをモフり倒している銀河がそこには居たのだった。
おいおい、後が怖いからあんまり遊ぶなよ。
みんなもだぞ……っと、周りを見回してみると。
今まで遠巻きにして様子を伺っていた他のメンバーも何時の間にかジリジリと近寄ってきており、両手をワキワキと動かしては、もう触りたくて仕方がないと言った様子であるのだった。
アアッ、君達もストレスが溜まってたのね。
◆
[ガウッ~。ガウッガウッ!(全く酷い目にあったのジャ。吾はデリケートなのだからもう少し優しくするのジャ!)]
文句を言いながらも毛づくろいを始めるミゼーアがそこには居るのだった。
「まあ、自業自得かな。これまで散々彼女達に悪戯した報いだと思って今回は諦めてくれ。兎に角、改めてようこそ、ミゼーア。ウンサンギガ一族の長として君を歓迎するよ」
[ガウッ(末永くよろしくなのジャ)]
[肯定。その義体はキシャールのデータを素に改良を重ねた最新式です。新たに開発したフルナノマシン細胞による義体となります。生体の柔軟性と強靭なケイ素素材の融合による物質で構成された生きた金属『ライブ・メタル』と名付けました。軽量ですが柔軟性と強度を両立致しました。扱いに慣れれば事実上どの様な形状や形態にでも変化変形が可能です]
「アレ完成してたんだ。これで義体技術がまた進むね」
[肯定。この『ライブ・メタル』ですが一種の人工ケイ素系生物と言っても良い物でしょう。我々のベースコアに使用された物質もニビルの原生ケイ素生物であったと聞いておりますので我々との親和性も非常に良好です]
ハコは、そう言葉にしながら自分の腕を剣にしたりフライパンにしたりと色々な物に変形させて遊んでいた。
もう自分の義体にも導入を進めている辺り対応が素早いな。
最近の激変する環境の影響を考えて古い機械の義体に戻す話も出ていたくらいだから開発を急いだのだろうと思う。
最新の培養技術の集大成とも言える生体の義体も俺達への接触を考えた場合にはベストではあるのだが、管制AIとして過酷な状況に対応するには色々とトラブルも抱えていた。
これでどんな状況でも安心して船の運行を制御できる様になるだろう。
そう言えば、月に散在するコアの残骸がルナクリスタルとして残ってはいるけど、確か生きた卵がケレスに僅かに残されていたはずだよな。
その後セバスからの話は聞いてないけど、アレはどうなったんだろう?
太陽系に帰ったら確認しておかないとな……。
母さんの出産予定日まで、残り後25日。




