5-3-02 遭難22日目・23日目
短め、1590文字
『ミゼーア』との出合いからは色々な波紋が発生した。
その理由は、兎に角『ミゼーア』が昴にベッタリだったのが原因である。
昴が何をしているときも足元にかしずいて一時も昴のそばを離れないのである。
最後には寝る時も一緒に寝るようになる始末であった。
ここまで僅か1日、警戒心が無いのにもほどがあると言いたいところだが、やり合ったら相手の方が多分上であり、接触の最初から昴に無警戒に近づき腹を見せて恭順の意思を見せていた。
ほんとは言語理解も出来て意思の疎通にも問題は無いのだが、会ったそばから昴のペットになり切って懐いている様子を見せられると動物好きの面々も無下にも出来ず……そのままズルズルと現在に至るのだった。
銀河達は夫との同衾をペットに奪われ当然の様に夜のご奉仕の時間が減ることになり、かなりの顰蹙を買っていた。
反面、昴はこの20日間まともに寝ることが出来ていなかった(妻達が寝かしてくれなかった)のでユックリと寝る時間が取れるようになって少しホッとしていたりするのだった。
しかし、この儘では夫婦生活に亀裂を入れかねないと思い直し、『ミゼーア』を寝室から追い出そうとしたのだが、そうそう上手くは行かないのだった。
『ミゼーア』は、時空間を自由に支配する生物だ。
ティンダロスの王の中でも最強の個体である。
その実力を遺憾無く発揮して昴に絡むのであった。
瞬きする瞬間にいつの間にか立ち位置が入れ替わっている何てことは、当たり前の用にやってのけるだけの実力を持っているから始末に負えない。
『ミゼーア』を寝室から追い出してさっきまで昴のそばで寝ていた妻達が、いつの間にか全員廊下に転がっていたナンテ理不尽な事が発生したのである。
行った犯人もその理由も判明しているので、その後の説教は昴が行った。
だが『ミゼーア』には、欠片も反省の色が見てとれない。
言えば分かる頭の良い子だからとはじめは優しかった昴だが、説教も段々とエスカレートするにつれて追いかけっこ発展し、説教していたはずが遊んでいる様にしか見えないと言った次第であった。
『ミゼーア』の方が一枚も二枚も上手だったのである。
しかし、『ミゼーア』も己が主人の番のメス達を蔑ろにすることが自分の立場を悪くするということには最初から気がついていた。
己の主人は複数のメスを侍らす強い存在なのだと最初から理解はしているしそれはとても嬉しい事だったからである。
しかし、理解しているからといって独占したい気持ちを抑えることは出来そうになかった。
[肯定。そんなあなたにご相談がございます]
番のメスの中に在って人でない存在から話しかけられた。
[こちらでご用意する義体に融合してみては如何ですか? 多少の不便は有るかも知れませんが最初だけです。直接会話も出来るようになりますし、何よりもあなたも妻として抱いて頂ける様にますよ、ワタクシの様に……。それに、マスターに言えば不便なところは直ぐに治してくれるでしょう。いかがですか?]
一瞬悩んだが私はその提案に乗ることにした。
私達には、時間は無限に存在する。
最初はこのままでも支障は無いと思っていた。
でも、妻の一人として抱いて頂けるのであればそれに越したことはない筈だ。
こうして近くにさえいれば神性同士なら子供を作るのに支障はない。
我々に直接の生殖行為は必要ないからでもある。
しかし……眼の前で繰り広げられるサマを見るに我もあの中の一人となりたいとの欲望が芽生えてしまったのだ。
だからそんな嫉妬から、他のメス達を巣から追い出すような意地悪をしてしまった。
同じ立場に立つことが出来れば……同じ様に抱いて頂ければ……私だって……。
(これは、落ちましたね。新戦力ゲットですよ、ウフフフフフ♪)
その傍らには、悩んでいる様子の『ミゼーア』を見下ろしながら黒く黒くほくそ笑んでいるメイドが居たのだった。
母さんの出産予定日まで、残り後26日。




