5-2-08 遭難17日目
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何事も世の理りとは、繰り返し巡るもので……。
又も俺達の目指していた先に先客がいました……チャンチャン! で、終わらないし済まないのが昴クオリティー。
自称帝国軍からの一方的攻撃から逃れて2日、すこし時間は飛んでおりますが、あれから5度ほど手を変え品を変え銀河を変え規模を変更しては挑んでいるんです。
しかし結局、またまた追いかけ回されております。
知性の欠片もない宇宙怪獣は仕方がないにしても、宇宙船を乗り回しているある程度文明と名が付くものを持つ知的生命体ならば、有無を言わさず攻撃してくる事は無いだろうと思っているのは俺だけだった?
何なんだよ?『置いてけ置いてけ』って、山賊と何も変わらない有様だった。
まったく、困ったよね。
流石にこれが6度目ともなると、ぶっちゃけもうそろそろ逃げ回るのにも疲れてきてる。
[ストレスもたんまりと充填されておりましてよ、オホホホホ]とハコも可笑しな調子だ。
オラオラァ~、責任者出てこいやァ~!
おっと、俺としたことが失礼。
しかしこの状況は錯乱待ったなしの状態だと御理解頂きたい。
「いったい何なんだよ。こっちが下手に出てりゃ~調子に乗りやがって、人の話をマトモに理解する奴等は、この周辺銀河宇宙には一匹も居ねえのかよ?」
[肯定。そろそろ逃げるのにも飽きてきましたし殲滅しますか? 良いですよね? 殺っちゃいますよ?]
「「「「「殺っちゃえ、殺っちゃえ♪」」」」」 <<地球勢はトリガーハッピーに
「仕方がありませんよね♪」 <<ラクシュ、お前もか
「エーイ、鬱陶しいワ。何にかならんのか? 主様」 <<シャシ
「ウフフ~、アハハァー」 <<緊張とストレスで壊れてきたリリアナ
冗談抜きでストレスがマッハで加速中の様だ。
これはいい加減ガス抜きをしないと不味い……本当に不味いぞ!
「よし、新兵装の試験をしてしまおう。ディメンジョンブレイカー起動!」
「「「「「「「ヒヤッホ~♪」キャ~♪」」」」」」
[肯定。やっとですか……ディメンジョンブレイカー起動します]
「了解。ディメンジョンブレイカー、エネルギー充填開始します」
「射撃モードは、ランダム転移モードに固定せよ。まあ、峰打ちということで邪魔な奴らを吹き飛ばす!」
[肯定。……強制的に空間ごと吹き飛ばすわけですね、分かります。普通なら数光年~数十光年吹き飛ぶだけ、運が悪ければ天体の重力に捕まるか衝突もありますね。責任は持てませんが……]
[発射トリガーは、各制御席に分散配置しますので、眼の前のターゲットをお撃ち下さい。360度満遍なく敵だらけですので遠慮はいりません」
「「「「「「「「発射!」ハッシャー!」逝け~」死に晒せ!」オラオラオラ」・・・」ウフフフ」」
……何か鉄砲持たせちゃイケナイのが居るな。
この後の展開は、御想像にお任せするとしよう。
兎に角一方的な蹂躙劇が開始されたのだった。
◆
あれから3時間後、端迷惑な追っかけは綺麗さっぱり近辺からいなくなった。
チ~ン! 御愁傷様である。
[フゥ~、清々しましたね]
「いやいや試験してみてよかったよ。こんな結果になるとは思ってなかったけどね。でも想定外って、どこにでもころがっているもんだ」
ここで昴が言っている想定外とは何だったのか。
それは一方的な鴨撃ち状態の中、奇跡的に一つのターゲットに複数のディメンジョンブレイカーが同じタイミングで命中した事で起こった不思議現象のことであった。
そして他にも複数のパターンが存在することも分かってきた。
これは凄く面白いことが分かってしまった。
怪我の巧名、瓢箪から駒、棚からぼたもち……兎に角ディメンジョンブレイカーには別の使用法が発見されたのだ。
[測定の結果、観測できた結果は次の4つです]
一、当初の通り、直近のデスストリームの座標に亜空間転移させる。
(地獄送り・これが本来の使い方)
転移距離、数万光年~数十万光年。
二、転移座標ランダムで吹き飛ばす。
(運が良ければ里帰り・手抜きモード)
この時、対象物の強い意志によりランダムで空間干渉が発生する模様。
運がいいと故郷とかに飛ばされる場合あり。
対象が複数で同時に中った場合、強い思考波によって行き先が分かれる場合も。
転移距離、数万光年~数十万光年。
三、ターゲットに同時に2つの手抜きディメンジョンブレイカーが当たる。
文字通り空間破壊により素粒子以下にまで分解されてしまう。
ジェノサイドまっしぐら。
でもナイアルラトホテップレベルだと復活する。
転移距離0。転移されずにその場で消滅。
四、手抜きディメンジョンブレイカーを転移間際にさら連続して当たった場合。
転移距離がべき乗される。
連続2発、転移距離は数百万光年以上。
大当たり連続3発、転移距離は数千光年を超える。
「思ったより距離が出たよね。4番目は、ちょっと可哀相だったかな」
[否定。我々の気持ちをじっくりと味わって頂きましょう]
母さんの出産予定日まで、残り後32日。




