5-2-05.5 通算1000万PV達成記念
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通算1000万PV達成しました。
お礼を申し上げます、ありがとうございました。
死屍累々、そう言い表しても良いような有様で置き去りにされた帝国艦隊。
その一部始終を遠目に観測し記録していた同盟艦隊がその後どうなったのか。
後日談として語ろうと思う。
未確認艦は、いつの間にか水に溶けるように宇宙空間に消え去ったあと、帝国軍は反乱軍へ停戦を申し入れ今回の会戦を無効とすることに成功していた。
最後は、味方に撃たれるという恥を晒した貴族艦隊は、反乱軍との停戦にも終始貝のように押し黙っており、同盟軍は、帝国軍のあまりの惨憺たる様子に『今回だけは、武士の情け』と停戦の申し入れを快諾したのだった。
しかし、その後の同盟軍の情報開示により帝国貴族が今回やらかした一部始終やそれに巻き込まれた帝国艦隊本隊の哀れな惨状が白日の下に公表されるに至って、帝国の評判はドン底に突き落とされることになるのだった。
通常なら戦闘詳報の内容は軍事機密の重要事項に中たるのだが、今会戦は無効試合となった事も手伝って特に損害等もない同盟軍では、アッサリと情報公開がゆるされてしまったのである。
帝国は、この報道に沈黙を守り続けたのだった。
しかし、同盟では更に突っ込んだ報道がなされた事は、想像に難くない。
◆
この日、同盟全局ネットの報道番組で特集が組まれていた。
その内容は……。
「皆さんこんにちは、司会の▲▼です。本日は、軍事情報に明るい〇〇教授をお招きして、今話題となっております先日行われました☓☓会戦を詳しく紐解いてみようと思います。〇〇教授、よろしくお願いします」
「凸凹大学の〇〇です。よろしくお願いします」
「さて、今話題の☓☓会戦ですが、開戦直後に未確認艦の介入が確認されており、この後直ぐに帝国軍艦隊は、予定されていた同盟軍との戦闘を一切行わずに未確認艦の追跡に移ってしまいます。状況を客観的に見てゆくと、戦場に迷い混んだ一隻の未確認艦船が帝国軍の先頭に接触してしまいその後、帝国艦隊は酷く混乱しながらその未確認艦艇の追跡に移るわけですが、目の前には我ら同盟軍艦隊が存在するにも関わらず、帝国艦隊は戦闘を放棄していますね。この時いったい何が起きたのでしょうか? 専門家の〇〇教授がご覧になったところでのご意見をお伺いしたいと思います。突っ込んだご意見をお願い致します」
「そうですね、普通に考えて戦場にしゃしゃり出て来た時点でこの船は撃沈されても言い訳は出来ませんね。帝国艦隊としては、邪魔な艦艇を排除することになるでしょう。露払いぐらいの感覚だったんだと予想できます」
帝国艦隊の先頭と未確認艦が接触する直前の映像が画面に映された。
「しかし、ここを見て下さい。帝国艦隊の先頭艦艇は、未確認艦艇に対して砲撃を開始していることが確認できます。カメラさん、ゆっくり映像を進めて下さい……止めて、ここです。先頭集団を形成する帝国艦隊からの砲撃が複数未確認艦艇に直撃している事が確認できます。全て弾いていますよね、この後です……先頭の3隻が未確認艦艇に突っ込んで接触、小破して擱座してしまいます」
「こっ、これは避けきれなかったという事ですか?」
「うーん、帝国戦艦は避ける気が無かったんでしょう。砲撃した時点で障害物、ここでは未確認艦艇の事ですが破壊して真っ直ぐ突破する気だったのだと考えられますね」
「しかし、それは実現出来なかった?」
「ええ、見た限り帝国軍の砲撃はことごとく弾かれていますね……その後突っ込んでいった帝国戦艦3隻との衝突でも未確認艦艇に損傷を受けた様子が有りません。接触した帝国戦艦は航行不能になっていますが未確認艦艇はそのまま戦場を通り過ぎてゆきます」
「確かに気にもとめていないと言った感じですね」
「ええ、普通あれだけの攻撃を一度に受け体当たりまでされればいくら守りの固い重戦艦でも木っ端微塵になるはずですよ……いったい何で出来てるんですかね~興味は尽きません」
「観測に当たっていた同盟の情報観測班の分析によると未知のテクノロジーが散見されるとのことですが、これはどういう事でしょうか?」
「そうですね~、まずはこれを御覧下さい」
教授の指し示したボードには、未確認艦艇のイラストと1000m級の同盟戦艦と帝国戦艦の写真が並べて映し出されていた。
「ここに描かれているのは未確認艦艇と両陣営の標準戦列艦です。ご覧の通り比べて頂くと分かる通り、その大きさは然程変わらないことがわかります。大型輸送船などはこの3倍ほどもありますから吃驚するほど巨大だった何てことも無いわけです」
「確かに比べてみるとそれほど大きさに違いは有りませんね」
「しかし、観測班が計測したエネルギー量は測り知れませんでした。重力場や各種エネルギーの総量などを科学省の大型コンピューターで計算させた処、計測不能≒無限大との計算結果が出されたのです。これでは相手にもされないのも頷けます」
「無限大っていうのはどういうことなんですか?」
「そうですね。▲▼さんは、同盟の恒星系にある太陽のエネルギー量をご存知ですか?」
「エェ~知りませんよ。太陽は、エネルギーの塊ですよね。知っているのは核融合反応炉が小さな太陽の雛形だってことぐらいです」
「太陽は、実に1秒あたり約42兆キロカロリーの熱エネルギーを放出しています。しかし、無限では有りません。ちゃんと計測できるわけです」
「……計測不能ということは、まさか太陽よりも高いエネルギー量を持ってるってことですか?」
「そうなりますね。寧ろあのサイズに収まっているだろう恒星を超える動力炉など想像もできません。自称科学者の私が口にするのも憚られますが、それこそ神の領域ですよ。神の存在を信じている科学者という者は、皆さんが思っているよりの多いんです」
「それは、意外な話ですね」
「アハハハ、実に科学者とは信心深い者達なんですよ。研究の新発見など最後は神頼みですからね」
「そんな物なんですか?」
「ええ、そんな物なんですよ。話がそれてしまいましたね、元に戻しましょう。そう言う訳で帝国艦隊は、恒星級の相手に喧嘩を売ったわけです、敵う訳がありませんね」
「……確かに……言葉がありません」
「最悪、喧嘩を買われていたとしてまともに相手をされていたらと思ったらゾッとしますね、結果は秒殺でしょう。私は、考えたくもありませんよ」
「あの未確認物体が優しい対応をしてくれていたということで良いのですか?」
「多分ですが、毛ほども相手にされていなかったという事で間違いはないでしょう。本当に運が良かったのだと私は思いますよ」
「それで〇〇教授の考察をお聞きしたいのですが、未確認物体は、一体何だったのだとお考えですか?」
「我々の知らない未知の高位文明の存在か神に連なる存在の乗り物としか言えませんね。私があの場にいたとしたら何を扠置いても突撃して交渉を試みたでしょうね。それほどの存在です」
「惜しいことをしたと言う事ですか?」
「ええ、もしも接触に成功していれば人類の大いなる進歩になった事でしょう。それほどの存在だったと言っても過言ではないでしょう」
「接触が開戦間際の戦場だったというのが不運でなりませんね。帝国軍は、とことん貧乏くじを引いたということですね。ご愁傷さまとお悔やみを進呈して特集を締めくくりたいと思います。〇〇教授には分かりやすい解説をありがとうございました」
「いえいえ、楽しかったですよ。こういった話題でしたらばまた呼んでください。今後も研究は進むと思いますが、我々には未だ未知となる物が存在するのだということを肝に銘じて、慢心することの無いようにすることです」
「耳の痛いご意見ですが、現実は非情であるということなんですね」
「ええ、『慢心する事無く、謙虚タレ』と言う事でしょう」
「綺麗に纏まったところで、本日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
余談だが、この特集の視聴率は歴代最高の数値を叩き出したことをここに記して置く。




