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5-2-01 遭難10日目

2214文字




 俺達の跳んだ先は、漂流して居るときに近傍に見えていた超巨大銀河の真っ只中、中央にほど近い宙域だった。


 直径が1000万光年を越えるこの超巨大銀河は、その中心に巨大なブラックホールをなんと3つも抱えている異端児だった。

 やがては融合して一つになるのだろうと思うが、今はどのブラックホールも元気に活動しており、回転する3つのブラックホールの強大な重力でこの巨大銀河を一つにまとめているのだった。


 何で俺達がこんな所に跳んだのか、早い話何も無いところに逃げるより星間物質の過密な場所の方が雲隠れするにも打って付けだろうと踏んだのである。

 これまでの観察から予想されるイーターMの行動予測から俺達のエネルギー残滓(ざんし)を追って来ているのならば、それが隠せるくらい余剰エネルギーの豊富な空間、または恒星や新星が多数存在するところに逃げ込めば良いだろうと思ったのである。


 概ねその判断は、間違っていなかったようで現在の結果は上々だ。

 ここに跳んで数十分、俺達の確認できる範囲内にあとを追ってきた様子の生物等の気配は、未だ一つも確認できていない。

 星間ガスが濃密に存在し近傍には、まだ新しく出来上がってそう間もない星々が多数存在している。

 ここが真空とは思えないほどに星間物質の濃度も濃いが、まだまだガスジャイアントの中ほどではない。

 生まれたばかりの星達も、やがてお互いにぶつかり合って淘汰され一つの恒星系へと成長するのだろう。


 (つい)でなので、この宙域でこれまでに消耗した資源やマテリアル、反物質等のエネルギーの補給をすることにした。

 今のこの宙域は、新生惑星の巣とも言える場所だ、ある意味何でも取り放題である。

 

 この先、何時補給が出来るかも分からないいじょう、補給が出来る時にしておくのがベストだろう。

 ジャンジャン吸い込んでしまおう。

 まぁ精々が惑星一個分ほどだ、直ぐに終わるだろうさ……。


 その後、順調に船の試験メニューを(こな)すシスターズを横目に、嫁達が資材補給と周辺観測を続けること半日程が経った。

 この超巨大銀河への興味が尽きる事はないが、あまり悠長にも構えては居られない。

 俺達(主に俺なんだが)は、断腸の(おも)いでこの場をあとにすることにしたのだった。

 しかし、しっかりとやるべき事はやっておく事にしようと思う。


 みんなに仕事を任せて俺は一人、何をしていたのか……これまでの改善点を織り込んで最善とおもえる改修をした観測ポッドの量産に(いそ)しんでいたのである。

 兎に角、ここは俺達から見たら未開の地であるから、情報収集の為にも適度に観測ポッドをばら撒いてゆくことにしたのだ。


 今回使うのは、簡易型量子通信器をのせたパッシブオンリーの観測ポットになる。

 量子デジタル通信で観測したデータを圧縮して送信するだけのセンサーユニットだ。

 下手に電波やレーザーなどでアクティブ観測などしたら、途端にこの銀河に存在する奴らやイーターMの同類に捕食される未来しか想像出来ない。

 まぁ時間もなかったのでかなり手を抜いた代物だが、今回は仕方がない。

 現状で出来る事にも限りが有るのだから、これはこれで妥協することにしよう。




「観測ポッド、順次射出!」


 船のチェックをハコとシスターズが進める一方、銀河達が補給をしてくれている間に、俺とシャシやラクシュが観測ポッドの方を熟してゆく。


「了解、全観測ポッド、射出します」


「これが最後だ。射出終了と共に移動を開始するよ。次は、とうとうデス・ストリームの観測とこの船の耐久試験だ。慎重に行動しよう。……そうだ、みんなこれまでで何か気になることがあったら言ってくれ、出来るだけの検証と対策を考えるから……」


 銀河が訊いてきた。


「あのさこの銀河は、相当に古いし成長も進んでるよね。知的生物もたくさん存在するだろうとおもうんだけど、接触した場合に私達はどういう方針で行くの? 会話? 取引? 支援? それとも敵対?」


「うーん、基本的に今回は無視かな。俺達には時間も無いし、事前情報一切無しで他種族が接触した場合には、大概悲劇が待っていることの方が多いって言うのは地球の歴史が物語っているからね……」


[肯定。何が原因で敵対関係に成るかは分かりません。軽率な判断で手を差し伸べるより、無視して通り過ぎるのが得策と考えます。例えそれがその種族の存亡に関わることであったとしてもです。マスターには、きっちりと釘を差しておかないと勝手に(フラッグ)を乱立しだすので困ります。ちゃんと聞いていますか?]


「……反省しております。もう勘弁してください、お願いします……」


 その時の俺の態度が露骨に平謝りだったので、みんな引いてしまっていた。


「一体どれだけハコに絞られたのよ? かなり来ちゃってるわよね……」


 双葉が呟いた。


[肯定。昨夜は絞り(かす)になるぐらいには、絞り尽くしました。ごちそうさまです……その後チャント回復させていますからご心配には及びません……]


「ふむっ、ハネムーンベイビーは確実じゃな」


「頼むからもう少し自重してね……お願いしますから~……」


[否定。大丈夫です、マスターは絶倫ですからこれくらいは屁でもありません。これを機会に慣れて頂かなくてはなりませんね。まずは、数を(こな)すことです。経験を積み我等の他に色目を使えないぐらいになってもらわなければなりません]


「ふむっ、道理じゃな……協力は惜しまんぞ♪」


「そうだね、分かった!」


「了解だよ」


「・・・♪」


「……トホホホホ……」






  母さんの出産予定日まで、残り後39日。





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