5-1-03 遭難2日目
1818字
チョット短いです
情報は、武器である。
どんな危険な武器も当たらなければどうという事は無い。
もしくは撃たせなければ良いのである。
そして、これは逆も又真理であるのだ。
相手が使えるのならこちらも使えるはずである。
どうしたら使えるのか?
危険?
どの様に危険なのか……知っていれば回避できるし対策も立てられるだろう。
知らなかったで済めば良いのは、保護者の存在する赤児だけだ。
無知は、ある意味罪でもあるのだから……。
情報を持つということは、交渉や取引においてのより良い未来を掴み取る為の鍵である。
その為の引き出しが多い者ほど生き残る確率が高くなる。
しかし、力無き者が情報を持った場合、逆に狙われ危険に陥る場合も想定しなければならない。
『知らなかった』で逃げられるほど、この世の中は甘くないのである。
長々と講釈を垂れ流してきた訳だが、何が言いたいかと言うと……。
『このゴキブリ野郎! 思いっきり罠に嵌めやがって……俺達に手を出したことを後悔させてやるからな。後で泣いたって知らないぞ!』
と、恨み言にしか聞こえない負け惜しみが言いたかっただけである。
このまま泣き寝入りなんか、絶対にしてやらないんだからな!
◆
現在、天の川銀河に帰るための努力として、今集められるだけの情報を収集し整理している。
その中から使えそうなものをピックアップし、帰還プロジェクトを計画立案し実行に移す。
その為には、『俺達が嵌められた罠さえも利用するのだ』と最初は息巻いていたのだが、詳しい情報が集まるに従って段々とみんな冷や汗をかいて顔色が悪くしていった。
色々と集まってきた情報から導き出した結果から、俺達が送り込まれた亜空間流は半端なく危険な代物だった事が分かってきたのだ。
接触したが最後、そのほとんど全ての存在を接触したのとほぼ同時に『分解吸収してしまう』という恐ろしい代物だったのである。
これっ! 普通の亜空間じゃないだろう!
吸収するって何だよ?
良く耐え抜いたな、俺とハコ……。
そして、この時になって以前ソトちゃんに聞いた有る事柄を思い出したのだ。
たった今まで思いもしなかった、聞いた事さえすっかり忘れていた内容をである。
……忘れていた? ホントか?
もしかすると消されていた記憶なのかもしれない……全部、思い出したわけじゃないので定かではないんだけどね。
それは、創造主アザトース……。
この宇宙を作った存在の事についてらしい。
そしてそれは、ソトちゃん達上位神や邪神(ナイ神父も含め)の崇拝する存在であり、遍くこの宇宙に存在し、全てを支配する存在……宇宙そのものなのだと言う。
しかし、くわしい実態は謎に包まれており姿容も分からないのだという。
図らずもこの時、アルキオネが投影して見せた宇宙のもう一つの姿……まさにこれが……そうじゃないのか?。
俺は、アレを見て気がついてしまったんだ。
血管のように張り巡らされた亜空間流とその中心にある空間の穴……心臓の様にも見える空間の裂け目……そして、何もかも吸収してしまう亜空間流……。
創造主アザトースの今の姿が、これなのではないだろうか。
何もかもを飲み込み、唯唯大きく成長するだけの空間的存在。
拡大膨張し続ける、この宇宙その物に見えないだろうか?
もしそうだと仮定すると、その血管に送り込まれた俺達は、アザトースに捧げられた供物と捉える事が出来る訳で……栄養? カンフル剤?
ナイ神父は、アザトースの神官であり供物を捧げる存在だとすると、ソトちゃん達は共生する者……細胞内のミトコンドリアの様な物とも捉える事ができる。
何か頭がオーバーヒートしてしまいそうだぞ。
[……そういう事ですか。収集された情報から、マスターが弾き出した答えが正しい事柄だとすると、この宇宙の真理にまた一つ近づいたということでしょうね。創造主の力をお借りする事が出来るのであれば私達は家に帰れますね]
「ッ!、俺の思考は、ダダ漏れかよ! そうだよ! その通り! 帰れるさ……こいつを使っても良いのならね。でも、俺達なんかが踏み込んで良い領域じゃないだろう……」
[否定。それをお決めに成るのはマスターです。ここにはそれを咎める者は存在しません。我等は、運命を共にする者でしかありません。マスターの為さりたいように為されば良いのではありませんか、結果がどうあれ誰も文句など言いませんよ]
「ムゥ~……」
[では、こうしましょう。全員にお聞きになれば宜しい……家族なのですから……]
母さんの出産予定日まで、残り後47日。




