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5-1-02 遭難1日目

2582文字

何か勢いが止まりません、がもう息切れががが……。




 こんな時、健康な身体が恨めしい……。

 今日も決まった時間にピタリッと目が覚めてしまった。

 規則正しい生活をすることが美徳なのだと理解はしているが、今朝だけは何かモヤモヤして納得できないでいた。

 時には、こんな事も有るものだ、……ンッ! 誰だ、俺の股間をまさぐってるのは?


[マスター、(へそ)を曲げていても現状の解決には成りませんよ。皆さんも起きて下さい。切り替えていきましょう、行動有るのみです]


「お前な、言ってることは()も立派に聞こえるがやってることがゲスくてチョット違うんじゃ無いか?」


[そんな事は有りません、本能の赴くまま獣になって生産活動に従事しているだけです。そもそもこれがハネムーンの本来の目的でしょう。多少の嫌がらせや横やりが入って少し予定が狂ったくらいでこちらの生産計画まで変更する必要を感じません。『産めよ増やせよ』ですよ]


 そのやり取りを寝ぼけ眼で聞いていたのだろう。

 周りに寝ていた嫁達がゾンビの様に這い寄って来るでは無いか……。

 このままでは、俺の身が危険だ。

 なんとかせねば……。

 

「…了解、そろそろ行動開始しますか……ほら、みんな起きろ!」


[チッ、正気づいてしまいましたか。折角寝込みを襲いましたのに残念です]


「もっとベッドでだらだらしたい~……けど、起きようか。目も覚めたし……フゥ~ァ~」


「お客さん、夕べはお楽しみでしたね。グフフフ……を地で行きたかったのに、その気力が一気に抜けたもんね。おはよ~」


「それは、妾も聞いてみたいのう♪」


「おはようございます、アナタ♪ キャッ♪」


「ダーリン、目覚めのKissは無いのか?」


「起床起床、お腹が減りましたわ……」


「エェ~、乱交しないの~残念……」


「ウゥゥ~……コシコシ……、おやすみなさい……ス~ス~……」


「お前らな~……馬鹿言ってないで早く飯にすっぞ。腹が膨れたら対策会議だ」


 モソモソと起き出してそれぞれに風呂やシャワーに散っていった。


「それで、お前は何で俺の上に乗ってる訳?」


[行動開始とオッシャイマシタノデ……着替えのお手伝いをと……]


「なぜ下だけ脱がす……まったく、後でチャント相手してやるから……」


[ゼッタイ! 絶対ですからね?]


 しかし、ハコが随分と積極的だな。

 溜まってるのかな? 先が思いやられるよ、ハァ~。




 ◆




 食事が終わる頃にはみんな平常に戻っている様だった。


「まずは報告を聞こうか? アルキオネ、頼む……」


[ハイ、マスター。まず我々の現在位置ですが銀河系から見て天頂方向に347億光年ほどの距離に位置していると予想されます。座標基準にする物が定まっていませんでしたので、宇宙の中心を基準におおよその位置関係を割り出しました。この宇宙空間が誕生したビッグバンから138億年、膨張した空間は半径464億光年とした場合周辺銀河宇宙の拡張方向を逆算したところ取り敢えずの絶対座標と言えるものを特定いたしました]


「ふ~ん、そこには何が在った訳?」


「巨大な亜空間の穴ですね。蜘蛛の巣のようにその穴から伸びているのが先の亜空間ジェット気流です。通常空間からでは何も観測できませんでした。放出し続けた観測用ポッドが瞬く間に宇宙全体に拡散、その後中心に向かって収束しました。時間的な移動経路を図式化するとこの様になります。時間加速を行い光点の移動経路が視認出来るようにしてみました」


 眼の前に映し出された立体映像は、透明な球形の中を細い線が高速で移動している様子だった。

 蜘蛛の巣というよりも血管だなこりゃ。


[これまで確認出来た情報から、ご覧のようにこの球形の宇宙空間を走る亜空間流のネットワークを確認する事が出来ました。幸いなことに我々の船は損傷なく乗り切ることが出来ましたが、普通の軍艦程度のシールド出力ではこの亜空間圧力には耐えられません。よしんば乗れたとしても数刻でヤスリを掛けられたように空間に溶けてなくなるでしょう。最低でもうちの探査ポッドぐらい頑丈でないと無理です。ちなみに放出した探査ポッドのうち既に3割方がすり潰されて消えてしまいました。消滅する前に情報を発信する仕様は変わっておりませんので無駄になることはありませんのでご安心ください]


「出来ればもう少し詳しい情報が欲しいところだね。亜空間流の結節点や圧力の強弱や速さ……流れに乗るための転移ポイントとか……」


[その事なのですが……]


「どうしたのさ? 随分と歯切れが悪いけど……ハコ、言いたいことはハッキリと言っちゃいなよ」


[あのゴキブリ野郎が残していった転移座標へのデータが正に亜空間流に乗るための物のようです……納得できません……]


「贈り物ってのもまんざら嘘でも無かったって事? ムゥ~ン、モヤモヤすんね、それは……」


「でも、普通は亜空間に溶けてなくなるんだよね。私達が生きてるのは奇跡ってことでしょ。贈り物っていうよりも玉手箱?」


「まぁ~当たらずとも遠からずってところか。悪意で真っ黒の贈り物だけど、たまたま俺達は、こうして生き残った訳で、逆に使えそうだって事だよね、ハコ」


[マスターとシンクロ状態の私ならばブラックホールの中でだって普通に活動出来ますからね。ちょっとやそっとじゃ消えてなくなるなんてことはありませんよ。実際には、船の周りをマスターの支配した空間という名の絶対領域で覆っているわけですけれど……他の船では無理かもしれないですね。耐えられたとしても時間の問題です。エネルギーが尽きたら綺麗に消えてなくなるでしょう]


「そうするとやっぱりこの空間に耐えられる頑丈な物にエネルギーの心配がいらない永久機関載せてやるのが一番手っ取り早いって事だよね。出来ないことはないな」


「さっきからの話を聞いてると要領を得ないんだけど、帰れそうな訳?」


[肯定。結果からお話すれば……帰れますね。もう少し情報が集まれば安全性と移動する航路等の確度を上げられます]


「こういうのって『瓢箪(ひょうたん)から駒』って言うんですよね?」


「そう。俺達は、この宇宙空間に張り巡らされた高速道路を見つけたかもしれないんだ。(しゃく)に障るけど『彼奴(アイツ)のおかげで』って頭に付くのが気に入らないんだけどね……兎に角、出来るだけ情報を集めて整理しよう。みんな、よろしく!」


「「「「「「「「「了解」です」ラジャー」」ハイ」」まかせて」」フフフ」


「お任せください、マスター……」




  母さんの出産予定日まで、残り後48日。




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