5-1-01 遭難0日目
1444文字
何か勢いで書いております。
ここは、遠宇宙。
人類が観測できている限界は、135億光年離れた銀河と280億光年離れた恒星であるが、更に遠い遠い宇宙である。
では、俺達はどれくらい離れたのかと言うとおよそ350億光年くらいだろうとハコが言っていた。
なんじゃそりゃ?
実は、ビックバン以降、宇宙の膨張速度を計算した上で現在の宇宙の大きさを想定した場合、半径464億光年の球形を形作る事になるらしいのである。
宇宙が誕生して135億年、観測できる一番遠い銀河まで135億光年というのは地球に届いている光の速度から逆算した数字でしか無いのだ。
すなわち、前人未到も良いところの今まで誰も観測したこともない宇宙空間に放り出されたことに成る。
これだけ離れると、逆にこちらから銀河系を観測することも出来ない。
早い話がどっちに行けば帰れるのか分からないということである。
どうするよ、これ……少し落ち着こう……、慌てたところでどうにもならない。
まずは、状況の整理をしなければいけない。
俺達にいったい何が遭ったのか……順を追って説明してゆくことにしよう。
◆
ハネムーンに出発した俺達は、何処に向かったか?
嫁達の全権委任で行き先は、俺に一任されたのでおれはプレアデス星団に向けて飛ぶことにした。
俺の名前の由来になった散開星団である。
実は、一度は行ってみたいと思っていたんだよ。
推定443光年とそれほど遠いわけでもない距離だし、チョット寄り道するぐらいの気分だったんだ。
ハコが最初、超長距離ジャンプに拘っていたけれど俺の我儘を優先させて貰った形だ。
この距離なら通常の亜空間ジャンプでも然程時間はかからない筈だった。
ところが亜空間に飛び込んだところで予定した航路を跳んでいないことが発覚。
修正しようにも航法データに異常をきたしており、言うことを利いてくれない。
ハコ達は原因を突き止めようと頑張っていたので時間をかければ直せたらしいが、手っ取り早く俺がシンクロして跳ぼうという話に成り、シンクロ状態になったんだ。
この時点で俺の空間識は、半径約20万光年に及んでいた。
ところがだ、シンクロした途端に目眩のような現象を起こして想定外の座標に跳んでしまい、同時に意識も跳んでしまった。
気がついたときには、亜空間流に流されてとっても遠い宇宙に放り出されていたって事になるんだ。
今にして思えば何であの時、異常の原因を突き止める前に跳ぼうとしたんだろう。
異常が出ているんだ、原因を把握してからでも遅くなかったはずである。
そして、誰も俺が取る異常行動をそれが異常な行動だと思わなかった……変だ。
亜空間ジェット気流?
俺達が捕まってしまった急流のような亜空間の激流。
想定外のスピードで俺達を遠い宇宙まで運んだ亜空間其の物であり、あのまま流されていたらと思うとゾッとする存在であるが、現在考えられる汎ゆる観測用プローブを億に近い数放出したので、そのうち全容が解明されるだろうと思う。
異常の原因は……彼奴だった!
最初は巧妙に隠蔽されていたが、何もかもが落ち着いた途端に『ナイ神父』の痕跡が見つかったのだ。
見つかったと言うよりも時期が来たら見つかるように細工された『メッセージ』が見つかったのである。
『私からのささやかな贈り物です。どうぞハネムーンを楽しんできてくださいね♪ バイ・バイ、m9(^Д^)プギャー、貴方のナイより』
乗員全員、絶句してしまったのは言うまでもない。
もうこの日は何も手がつかず、全員で不貞寝したことだけを覚えている。
母さんの出産予定日まで、残り後49日。




