4-5-02 星からの招待状
2021文字
昴達の結婚式から遡ること、2週間ほど前になる。
その日、地球の至る所で不思議な現象が発生した。
何処からともなく結婚式の招待状がダイレクトに届き、本人が確認されるとその手の中で光りだしたのである。
◆
荒垣宅、マンションのリビングでは、
「うわっ、まぶし…!?」
『荒垣 聡様、御本人と確認されました。これよりメッセージをお伝えいたします』
その音声は、手首のブレスレットからしているようだった。
それと同時に、周辺からバシッという音とともに複数の何かショートするような音が発生した。
『……予め盗聴器等の排除を致しました。ご安心ください、これは、アフターサービスです。それでは、メッセージを再生します』
「おいおい、真面かよ。いつの間に……って始まるのか……」
部屋を見回した後、シゲシゲとブレスレットに視線を移すとそこから立体映像が立ち上がった。
『荒垣さん、先日のキャンプは楽しかったですね。また、やりましょう、今度は、俺の星で……。すいません、今回こんな形でメッセージを送ることを許してください。色々と良く無い物が寄ってきていますので妨害対策をしていまして申し訳ありません。実は、前々から予定していました俺の結婚式の場所と日取りが決まりましたのでお知らせします。当日は、小旅行3日間ほどの準備さえしていただければ、直接ハコが何処へでも迎えに伺いますで心配いりません。では、指定の日時にお迎えに伺いますのでよろしくお願いします』
メッセージが終わると 小さくデジタル表示が視界の端の方に開始された。
これが迎えまでのタイムリミットのようである。
この表示、何気に親切な仕様らしく『消えろ』と思えば見えなくなるし、また『見たい』と思えば再び視線の先に表示される事が分かった。
「おいおい……」
今までの成り行きに少し呆れていると、落ち着くのを待っていた様に電話がなったので……出てみると。
『オイ! お前のところにも来たか? 今、俺のところに……』
案の定、冴島だった!
「それよりも盗聴器はどうした? お前のところにも仕掛けられていたのか?」
『……ああ、あったな……昴が焼き切ったみたいだが……全く、油断も隙もねえよな~』
「最近、大人しくなったと思っていたんだがまたぞろ動き出した連中が居るってこったろう。昴が警戒するぐらいだ、用心に越したことは無いだろうな」
『ああっ、了解だ。それじゃ~この見えてる日時は、口にしないほうが良さそうだな』
「そうだな、多分全員違う表示がされてるだろうしな」
『それじゃ~旅行の支度をして、果報は寝て待つか……』
「お前、寝てられるほど暇じゃね~だろう?」
『……違いねえ……、じゃぁ~またな……』 チンッ
「忙しない奴だ、全く……」
昴の結婚をよく想ってない奴らが居るのか……相変わらずの人気者だな。
◆
場所は変わって、ヴァチカンでも……、
「大司教、お手紙です」
「ホウッ珍しい、誰からですかな?」
「それが、差出人がありません。ただ、このような紋章が……」
そこには、牡牛座とスバルを象った印章が押されていた。
「ほう…これは、聖者殿からですな……ッ……」 ピカッ
『パウロさん、ご無沙汰しております。すいません、今回こんな形でメッセージを送ることを許してください。……以下、荒垣さんへのメッセージと同文……』
「パウロ様、大丈夫ですか? 今の光は、一体何だったのですか?」
「フムッ貴方には聞こえませんでしたか……。ホォ~ホッホッホォ、これは彼らしい趣向だ♪ 大丈夫、危険はありませんよ」
「良かった…先ほどと同じ物が法王様宛にも来ておりますがお渡ししても宜しいでしょうか?」
「ええ、大至急お届けしなさい。大変お喜びになる事でしょう」
「ハイッ、では急いでお届けしてまいります」
バタンッ
「ホッホッホッ、さぞかし驚くでしょうね~♪」
この人も、悪い性格をしているよ……。
◆
那須の御用邸でも……。
「どこに連れて行ってくれるのか楽しみですね~……」
「まあ、子供みたいですよ。あなた……御目出度い席への御呼ばれなんですからシャンとしてくださいね」
「はいはい、ついでに貴女の体も見ていただきましょう。私はブレスレットを頂いてから調子がいいですからね」
「そういえば英国の学者さんも体を治して元気にしてもらったんでしたね」
「ええ、今では軌道エレベーターに住み着いてしまったらしいですよ、アハハハ」
「英国は、それを許したんですか?」
「何でも、彼の伝手で軌道エレベーターへ真っ先に登ったらしいですよ。彼女も元気ですよね~。そのうち私達もお邪魔しましょうか……」
「ええ、どんな光景が眺められるのか楽しみです」
「でも、今回の御招待のほうがスリリングで絶景が拝めるかもしれませんよ♪」
「えぇえぇ、本当に楽しみですね♪」
昴からの招待状は、全地球規模で配達され、そして昴の関係者や恩人には、万遍無く届いたのだった。
ついでに周辺の掃除も、ある程度同時に行われて警備体制も見直されたようです。
準備は、着々と進んでゆく……。
次回、『吃驚な披露宴会場』




