1-2-06 共闘?…老兵はサイボーグ 21/5/1
20210501 加筆修正
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バタバタしているうちに、NSAチームの車両が到着したようだ。
慌てて部下が誘導に走っていった。
外部を映すモニターに映っているのは、キックボードに乗った部下だった。
ヘッドライトも付いている、自走はしてないようだが、一度のケリで進む距離は普通じゃない。
なんか楽しそうに走ってるな、コケたら痛そうだが受け身くらい取れるだろう。
「あれ、どこのメーカーのキックボードだ、装備にほしいな……」
[お気に召しましたか? あのキックボードは、昴さまのオモチャですよ。近所の子供達も持っています。小型ホイールモーターでパワーアシストされますので坂道でもラクラクです。敷地内は、自動的にリミッターが解除出来るように調整されていますので、自走も可能です。リミッターを解除すると速度は、時速60キロほどまで出せますが、公道では原付き登録が必要になります。あっ、わたくしアルキオネと申します、お見知りおきください。昴さまと一緒に作った作品の管理とメンテナンスを任されております]
ムラサキ色の円筒が説明してくれた。
[護衛の為には、小まめな移動が必要になると予想されます。ご希望の数を御用意いたしますよ。後ほど数をお知らせください]
「ご配慮有難うございます。後ほど試させていただきます。それで、何か私に御用でしょうか?」
[皆さんに、この村での標準装備をお配りしています。このブレスレットで、この村の人間は全員把握できます。ここの入湯パスにもなっておりますし、健康状態もモニターしておりますので、ご老人の孤独死などこの村にはありません。所在も確認できますので、迷子連れ去り等の心配もありませんよ。Mボタンにタッチしますと近隣の地図とブレスレット所持者の場所がホロ表示されますので、お互いの位置の確認にも最適です。他にも機能が盛り込んでありますが、追々使いながら覚えてください。施設内の移動時に外してしまいますと入り口が開かなかったり、閉じ込められたりする場合がありますので、常に身に着けていてください。基本、このブレスレットをつけていない人物は、敷地内への侵入は許されません。この後、セキュリティーレベルをマックスにしますので、今のうちにお配りしております]
「あっああ、そうですか。ありがとう……」
[では、失礼いたします]
これ、通信機にもなってるのか。
俺達が使ってるのとは、雲泥の差だな……。
米軍でもこんな小型には出来てないだろうな、どっちかと言うと壊れにくく大柄なタイプが主流だし。
どれ、NSAのメンツと顔合わせと行きますか。
「荒垣事務次官。NSAとの顔合わせは、何人で行いますか?」
「そうだな、俺と冴島、権堂主任と譲でいいだろう。希美さんと昴くん、AI達は、まだ顔を見せないほうがいいと思う。余程の事態にならない限り出てこないでくれ。譲は、ハコさんからお土産のレクチャー受けといてくれ、誰か説明しなくちゃならんだろう」
「荒垣先輩、ハコの話だと自分で自己紹介させればいいだろうと言ってるんですが……どうですか?」
「うん、その手があったか。もう喋れるのかい?」
「大丈夫だと言ってますね。アメリカさんの度肝を抜いてやりましょうとハコが黒く笑ってるんですが……」
「それじゃ、そっちは任せるよ。取りに行ってくれ」
「了解です」
「それじゃ、1階の会議室で打ち合わせと行こうか。何かトラブルがあった時は、ブレスレットで呼んでくれ」
◆
俺は、キャプテン・ジョージ。
ステイツの犬に成り下がった男だ。
俺がNSAのエージェントとして仕事をするようになって、もう15年にもなるのか?
宇宙飛行士だった俺がオービターのテスト中の事故で手足を無くし、あの当時の最新テクノロジーのサイボーグ手術を受けた。
結局、その時の借金で死ぬまで国の犬をさせられるハメになってる訳だが、50も過ぎるとそろそろノンビリしたいよな~。
1986年にチャレンジャーが墜落して、新型オービター開発に舵を切った矢先の俺の事故。
公表できるはずのないNASAは、事故をもみ消して俺は幽霊になった。
最近は、ずっと日本勤務だ。
ここは、兎に角世界中からスパイが集まってくる。
仕事を抜きにして暮らしてゆくのならば、食い物は美味いし滅多な事じゃドンパチも無い。
何でも手に入るし物価が高い事を除けば、アメリカより暮らしやすいぐらいだが、昨年の911、いや一昨年の夏以来、NSAは蜂の巣を突付いた様に忙しくなった。
全部、あのハッカーのせいだ。
腹の中をかき回されたアメリカの情報機関は、躍起になってあのハッカーを探し回った。
NSAは、特にコンピューターによる情報戦に自信を持っていたから、そのプライドはズタズタにされ、目の色を変えて犯人のハッカーを探し回った。
そして、ようやく当時の通信ログを虱潰しにしていったところ、あの短時間で大量伝達できるだろう通信回線が限られてくる事が最近わかった。
そこから重点的に探し回ったところ、日本の国立天文台の通信回線が使用された事が分かった。
そしてあの夜、特に通信データ量の多かったのがXX天文観測所に繋がる光回線だったと言うわけだ。
それからは、XX天文観測所関連を調べると、専任のシステムエンジニアが直後に起業して辞めている。
そしてその会社は、尽く産業スパイや悪質な乗っ取りなどを撃退しているって事だ。
これはアタリだと思って来てみれば、丁度出入りの真っ最中と来たもんだ。
中国と半島の奴らは、特に日本を目の敵にしやがるからな、相手にしてほしいからちょっかいを出す、ガキみたいな奴らだ。
今回、何が奴らのターゲットになってるかは知らないが、ハイエナの様に全て持って行かれるのは癪に障る事この上ない。
幸い、国の上の方で交渉がまとまったらしい。
俺達は、お目当てのハッカーからお土産を貰う代わりに、サポートに入る事になった。
お土産とは一体何なのか?
中国と半島は、何に群がってきているのか?
少し楽しくなってきたぞ♪
◆
「あの人、大丈夫でしょうか? 見た目と違って気が小っちゃいですからね~。ま~権堂さんも一緒ですけど……」
「譲さんも一緒に居るし心配ないわよ。だいたいハコの見ている所で下手な事は、出来ないわ。美郷さんも、心配しすぎ♪」
「希美さんは、そう言いますけど~……」
「ウ~ン、それじゃ少しのぞき見しましょうか? ハコ、会議室映して!」
[肯定。会議室を映します]
会議室では、丁度顔合わせが始まる処の様だ。
父さんが、銀色に化粧直しされたワークステーション『ヒュアデス』を抱えている。
無駄なところが無くなって、銀色のオウム貝の様な形になっている。
あれ前面に出てるの強制接続用のマルチユニットだよね?
浮遊は無理だろうけど、モーター付キャスターで自走は出来るみたいだ。
そうすると、自分で充電しながら自立運用が可能な仕様に調整し直したのかな?
後でスペックを聞いとこっと……。
「俺が、経済産業省事務次官の荒垣聡だ。よろしく頼む」
「キャプテン・ジョージだ。NSAジャパンチームを纏めている」
「副官のマギーです。よろしくお願いいたします」
「失礼します。護衛のジェニーです!」
一人目は、金髪50過ぎの船長さんって感じ、雰囲気は柔らかいけど目元が鋭い。
二人目は。銀髪45歳くらいの黒縁眼鏡さん、スーツ着て指揮棒持ったらどこの秘書室長って感じ。
三人目は、30歳位、短髪黒髪の黒人女性、如何にも黒い女豹、黙ってアタシについて来なタイプ。
「お客さんが来る前に、単刀直入に始めさせてもらうとしよう。実は、俺達が探してたのは一昨年前のスーパーハッカーなんだが、何処に居るんだ? 交渉を持ち掛けてきたって事は犯人はそっちが抑えてるんどろう? 何時、そいつには紹介してくれるんだい?」
「まあ、そう慌てるな。順に説明するから、まずはこっちも紹介しよう」
「今回、護衛についております、警視庁警備部警護課第4係主任の権堂です」
「俺は、ここの家主の天河譲だ。山頂のXX天文観測所の研究員をしている」
「俺は冴島浩司。某工科大学の冴えない准教授さ」
「それで、どういった取り合わせなんだ? XX天文観測所の研究員って事は、ミスター天河がスーパーハッカーなのかい?」
「いや、彼は違うんだ。実際にハッキングしたのは彼女だ」
[Good evening, how do you dislike it。タダイマゴショウカイニアズカリマシタ、ワタクシは ヒュアデス トモウシマス、イゴオミシリオキクダサイ]
父さんがテーブルの上にヒュアデスを置いたら、ヒュアデスは勝手に自己紹介を始めた。
マルチ接続用のマニュピレーター(蛇腹の腕)を器用に掲げて挨拶をしている。
[ジリツ型サポートAI。ト、イッテモ、ゴリカイイタダケナイカモシレマセン。ジガヲモッタコンピュータート、ゴリカイクダサイ]
「! チョット待ってくれ、ソレじゃなにか? コンピューターが勝手にハッキングしたっていうのか? だいたいAIなんてまだ研究段階だろ、実在するなんて聞いてないぞ」
「眼の前に実物があっても信用出来ないかね。……どう説明したら信用する?」
「そうですね……ここからNSAの日本サーバに入れるかしら? 私が記録した来週末の予定を教えてくれる?」
[Roger! マギー様ノライシュウマツノ予定ハ、ギンザデショッピングノアト、イケブクロノ、オコノミ焼キ、ドウトンボリデコース予約ノディナー、ソノ後、ホストクラブ・アッシュニテ……………]
「ッ! ストップ、ストップ! 分かったわ。貴女がスーパーハッカーで間違い無いわね」
「Why? 今ので分かったのか?」
「ええ、間違いないわ。今日出てくる前に予約した通りだもの……」
「そっ、そうか…。マギーが言うなら間違いないな。それでミスター天河、貴方がそれを作ったのかい? ハッキングは、マシンが勝手にやったと言いたいらしいが、管理責任ってもんが有るだろう。どう責任を取るつもりだい? 納得の行く説明が欲しいところだね」
「先輩、どうしましょう。話していいですか?」
「仕方ないな。キャプテン・ジョージ、実はヒュアデスを作ったのは、彼、天河の息子だ。今年12歳になる、事件当時は、まだ10歳だった……」
「なんだって? 10歳のボーイが作ったっていうのかい、これを……」
「ああっ、間違いない。彼の作った発明の1つだ」
「ふ~ん……何となく分かって来たよ。中国や半島がヤッキになる訳だ。子供を攫って、色々と作らせようって魂胆だな。100歩譲って発明品の強奪が目的ってところか……」
「おう、理解が早くて助かる。そういう訳で今は責任の取りようもない。それで今回は、『ヒュアデス』の譲渡で上とは話をつけた訳だ。多分、何兆ドル掛けたとしても同じ物は、今後ドコでも作れないだろうな」
「う~む、分かった。承諾しよう。それで、そのボーイは紹介してくれないのかい? 是非会ってみたいのだが……」
冴島先生が天井の方を見上げて、投げやりに呟いた。
「……どうせ見てるんだろう? 昴くん、こっちに来てみるかい?」
『ハ~イ♪ 少し待って下さいね~、直ぐに行きます』
「やっぱり、覗いてたか……ここを作ったのも彼らしいからな、隠しようもないか」
「……どうも、サプライズの好きなボーイらしいな。楽しく成りそうだ……」
◆
NSA・ジャパンアタックチーム(8名)
キャプテン・ジョージ
52歳 元宇宙飛行士 空軍出身 ロートルサイボーグ 莫大な借金持ち
マギー
副官 マーガレット・スミス 41歳 若くしたマクゴ○ガル先生
ジェニー
護衛 ジェニファー・アンダーソン 27歳 どっかの○○・ク○フト
他5名




