3-4-07 ISSの夜明け 23/2/22
20230222 加筆修正
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軌道エレベーターの建設と共に、その存在が大きく取り上げられる事になった国際宇宙ステーションは、現在高度500kmに位置する第一低軌道ステーションに格納ドッキングを果たし、これまでの計画を大きく上方修正される事になりました。
建設中場での大きな方針転換ではありましたが、今後の物資補給や人員往還のことを考えてもこの変更は大いに喜ばれる事になったのです。
実験設備や研究施設は言うに及ばず、居住空間は拡張されライフラインもこれまで以上の余裕あるオーバースペックな物に刷新されました。
これまでは、国際宇宙ステーションにロケットやシャトルで建材や物資、実験設備を上げるだけでも膨大な労力と資金がかかり、下手な打ち上げをすると掛けた手間とお金が全て無駄になるという大きなリスクを背負っていたところですが、今後は時間とコストを掛けずに電車で物を運ぶ手軽さで維持管理が出来るのですから喜ばない人間はいません。
アッ、申し訳ありません、そういえば喜ばない人間も僅かに存在しましたね……これまでISSには直接タッチせず、独自に宇宙開発を進めていた国家組織がありました。
まぁ何はともあれ人も物資も研究設備も、自由に地上と宇宙を行き来できる軌道エレベーターの恩恵を受けることで、今後の安全と低コストを両立させた訳です。
そして、その恩恵を一番受ける事になったのは、今まで国際宇宙ステーションに缶詰同然にされてきたスタッフの面々だろう。
これからは、宇宙に上がるために必要だった半年間の研修や割と厳しい訓練も軽いもので済みます。
今後は、簡単な無重力下での行動研修と身体検査を受けるだけで宇宙に出られる様になるのですから……。
長期間無重力下に居ると筋肉量が落ち、骨が脆くなるとの研究結果も出ているようなので重力の効いた所に居るのがベストでしょう。
幸い軌道エレベーターの通常生活区画には、1Gの人工重力が発生しています。
ちなみに、軌道エレベーターの基底部を構成するセンターアイランドに居住していれば、地上と宇宙とを毎日通勤することも不可能では無いのです。
今後、国際宇宙ステーションの資金計画は大幅に改善され、その余剰分を新たな研究施設やスタッフの増員に振り分けることが可能となり、今まで宇宙に出たくても出られずに地上の管制センターでくすぶっていたスタッフ達も、日の目を見る事になるでしょう。
これまで宇宙の研究開発に携わってきた者の中で、実際に宇宙に出られる者は全体の内のほんの僅かなエリートだけだった事をおもえば、夢を諦めていた当事者からしたら本当に本当に夢のような話なのです。
これは本当に大事な事なので2度云っておきます。
そして国際宇宙ステーションには、これまでに無い新たな装備が加わることになりました。
まだ固有の名前はありませんので、ここでは仮にマルチ観測用プローブと呼称しておきます。
このマルチ観測用プローブは、直径およそ8mの球形をした多種多様なセンサーの塊です。
こいつは、重力制御で宇宙を飛び回りリモートコントロールで稼働式マニピュレーターで様々な仕事を熟します。
そう、重力制御技術を利用したアイテムを昴から貸与された訳です。
飽く迄も貸与なんですけどね。
こいつの最終的な管制制御は、軌道エレベーターの管制AIが主導権を持つので、使途不明な相手や不正や不法行為、軍事活動なんかに使用しようとすると制御を離れて取り上げられちゃうんです。
それでも国際宇宙ステーション関係者は飛び上がって喜んでいましたけれどね。
取り敢えず最初は6基(日本・米国・ロシア・ヨーロッパ・カナダ・予備機)、出資割合で最終的には参画している国の数まで増やす予定ですがお金のない国はESAの様に共同出資してもらうか予備機をレンタルしてもらいましょう、そうするとあまり数は増えないかも知れませんね。
2008年に完成予定だった国際宇宙ステーションは、思いもよらない形でずっと進化した形の完成を見る事になったのです。
およそ3年前倒しで完成した国際宇宙ステーションによって、今後の地球環境の詳しい観測や宇宙開発に拍車がかかる事になったのでした。




