3-3-03 帰還の訳? 23/1/3
20230103 加筆修正
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「ドクターアン、単刀直入にお聞きしますが、このタイミングで太陽系にお帰りになった訳は、いったい何でしょう?」
『ふむっお主には、もう見当がついているんじゃ無いのかい?』
「質問を質問で返されると困るんですが……そうですね大方キシャールの改修辺りでしょうか? 端から見るとそんなに傷んでる様には見えませんが、根本的に仕様が建艦された当時の古いままですよね。それに根本的なオーバーホールは一切されていない。最近は思ったほど出力が上がらなくなっているのではありませんか? 強いて言わせていただければ住環境の刷新が必要な段階に来ていると思われます。増築を繰り返した様な後が見えますし……現在の乗員の数は、どれくらいでしょうか? 元の乗員は、アンさんお一人だったと伺っていますが……」
『うん♪ 合格だね。よく一目見ただけでキシャールの老朽化を見抜いたよ。まあ、他にも理由はあるんだけどね。昔、迷惑かけた御礼回りみたいなもんかネ~、“あたしゃまだ生きてるよ!”言うね♪』
[憎まれっ子世にはばかると申しますからな、ほほほほほっ♪]
セバスチャン、余計なこと云わなくてもいいから、混ぜっ返さないでよ……、みんなも一緒に相槌打たないで!
「分かりました、改修案を纏めさせて頂きます。取り敢えず我々の現在の技術レベルを把握していただいて、ご希望と注意点をお願いします。出来るだけご要望に沿った形で改修案を纏めさせて頂きます」
『そりゃ~有り難いね。いつの間にか随分と人も物も増えちまってね~あの大きさでも厳しくなってきたところなのさ。たしか今の総人口は、2億くらいじゃなかったかね~。それに、あそこ迄大きいと小回りが効かなくてイケないよ』
「2億ですか。(日本の1.5倍以上だね)元のキシャールの大きさは、直径5kmほどと聞いていますが、大きさのご希望はどのくらいですか? 詰め込もうと思えば、生活空間の容積を今以上に増やしながら楽に艦体を500mくらい、最小なら100mくらいまでなら小さく出来ます。補機として小型の次元転換炉を数基増設してしまいましょう。主基のメンテナンスが楽に出来るようになりますし、キシャール自身への負担も減らすことが出来ます」
『呆れたね……そこまでかい! その大きさになったとして物理空間でのエネルギー出力は、変わらないっていんだろう?』
「はい、補機の分は別として、主基の次元転換炉のオーバーホール後の出力を計算すると改修後には、建造時より2割ほど出力も上がると予想されます。物理的な贅肉が削ぎ落とされますから、宇宙船としての機動効率は、さらに良くなると思ってください」
『難しい事を簡単に云うじゃないか♪ あんたの今云った事がいかに難しい事なのか、分かってて云ってるんだろうね?』
「はい、重々承知していますよ。これまで各エクストラNoのコアシップを改修するに当たって、色々と経験と実績を積むことが出来ました。ご心配には及びません、大船に乗った気持ちで任せてください」
『エンリル。今代は、今迄にない才の持ち主のようだね……流石に驚いたよ』
[そうよ~♪ アンちゃん。昴君は、ウンサンギガの技術を継承して学び始めてからまだ5年しか経ってないのよ。それでここまでタガが外れてるのよ~、凄いでしょ~♪]
「先代、その言い草は無いですよね、チョット酷くないですか! 全然褒め言葉に成ってませんよ」
[あらあら~褒めてるのよ~、大絶賛よ~♪]
『うむっ! エンリルがここまで褒めるのは、儂が生きてる内に見たことがないな。そうだ、大事なことを言い忘れていた』
「何ですか? 大事なことって……」
『此処に居る者には悪いが追手が来るかも知れん。……アンドロメダから……』
「[エエッ!?]」
◆
聞くところに依ると、アンドロメダ銀河は天の川銀河と構成元素の一部に違いが有り、天の川銀河ではまだほとんど観測されていない放射性同位元素のような物質が存在するらしい。
これを総称して魔素、ここでは仮に魔法物質と呼称しよう。
この元素をエネルギー源として進化発達したのが、アンドロメダの生物であり魔法科学文明なのだそうだ。
この魔法科学、割と大雑把で力技で何でも出来る反面細かいことが苦手、言い換えればマクロなことは得意だがミクロなことは苦手らしく、我々の使うナノマシン技術などは禄に理解も出来ないらしい。
正に、魔法か神の御業に等しい事として捉えているらしい。
病原菌やウイルスなどの理解は有るが、遺伝子やミクロン単位の分子や原子など微細な構成元素などの基礎技術は、喉から手が出るほど欲しいらしい。
そして、それらを唯一行使する事が出来、秘匿もしているDr.アンの団体は、アンドロメダ中から狙われ追われる立場に在るらしい。
『あんまり煩いんで、しばらく熱りを冷まそうと思ってこっちに帰ってきたんだけどさ~、どこで行き先を嗅ぎつけたのか追いかけて来てる奴らが居るみたいなんだよ。人気者は辛いよね~♪』
[ナウ~ン(マスター、そこは『若無人に銀河中を暴れまわってお尋ね者に成っている』と説明したほうが分かり易いと思います)]
[アンちゃんも相変わらずよね~♪ それで~、アンちゃんが幼女になってる説明が聞きたいわ~。是非是非!]
『ああっ、逃げ出した当時10666歳だったあたしにもとうとうお迎えが来たんだよ。3年後に倒れちまってね。私が冷凍冬眠させられている間にキシャールが250年ほど掛けて完全ナノマシン体として蘇生されたのさ。今じゃあたしに生身の部分は一欠片も残っちゃいないよ』
[ナ~ン(マスターが幼女なのは、私の趣味ですよ!)]
『何だって? あたしゃ初めてそんな事を聞いたよ。あんた、材料が足らなくて子供の体に成ったって云ってなかったかい?』
[ナウン(確かに最初はそうでしたよ。ですが、あれから9500年……マスターは、いまだ幼女のままですよね~。それは何故でしょう?)]
『何故って……大人の身体にしようとするとその度に拒否反応が起きて……って、お前の仕業かい! キシャ~~ル!!!』
[ウナ~ン(やっと気が付かれましたか♪ もう、最近は大人になろうなんて言い出す事もなくなっていましたが、まだ成りたいですか? 大人に……)]
『……いいや……、もうこのままで良いよ。大人の身体なんて忘れちまったしね♪』
[ナナ~ン(腐腐腐腐腐っ、勝利~♪)]
「(ねえねえエンリル様、キシャールってあんな娘なんですか? 少し怖いですよ)」
[(ウ~ン、昔のことだしもう忘れちゃったわヨ、あんな娘だったかしら~? 多分、アンちゃんに染められちゃったのね~)]
[(ああは成りたく有りませんが、マスター冥利に尽きるのではありませんかな、ホホホッ)]
『お主達、聞こえておるぞ! 釈然とはしないが理由は分かったな? エンリル』
[そうね~♪ アンちゃんは熱烈にキシャールに愛されちゃってるのね~、だいぶ拗らせてるけど~]
「えーと、何の話をしてたんでしたっけ?」
『ああっ、アンドロメダからの追手の話だったね、そんなに慌てなくても良いとだけ言っておくよ。天の川銀河は、アンドロメダ銀河からおよそ250万光年離れてるのは分かるね! キシャールの能力でも渡ってくるのに40年ぐらい掛かるんだ、奴らの船じゃどんなに頑張ってもその3倍は掛かるだろうさ。だから早くてもあと80年くらいは掛かるさね。奴らから接触が有るのはずいぶん先の話さ。まあ諦めの悪い連中だから追ってくるのは間違いないと思うけどね~』
「80年先ですか、少しホッとしました。最近は、そんなのばっかだったので……」
『何だい何だい? 面白いことが遭ったなら聞かせな!』
「……それは~、うちのハコに聞いて下さい。多分、聞かれない事まで詳しく教えてくれますよ……、ハァ~」
『ハハハッ、あんたも苦労してそうだね♪ でも、若い頃の苦労は金を払ってでもしろって云うじゃないか。今のうちに沢山苦労しておくと後がらくだよ♪』
「そんなもんですかネ~?」
[[『そんなもんさ!』よ~♪]です!]




