第一期 プロローグ 23/5/24
加筆修正 20230524
728文字 → 933文字 → 1020文字
想えば遠くへ来たもんだ……な~んちゃって。
俺達が今居る場所は、太陽系外縁のエッジワース・カイパーベルトだ。
頭上には、冥王星が手の届きそうなところに見えている。
あの星も今では準惑星にランクが落ちてしまったけれど、こうして見上げるとその名に恥じない立派な星である。
今は、世暦2008年6月吉日。
地球人類でこんな所まで来てるのは、俺達が最初だろうな~。
実は、俺達って言っている事からも分かるように俺一人で来ているのではなくて、ここに来てるのは嫁さんや家族関係者も一緒だったりするんだ。
そして俺は、ついさっき結婚式を挙げて来たばかりだ。
たった今、式を挙げたばかりの嫁さん達を引き連れてこの場に乗りこんで来ている。
これから俺達の結婚披露宴に臨むため、招待客の待つ会場に続く神社の階段を見下ろしている最中だ。
無駄にデッカイ鳥居を潜り抜け広く長い階段を下り切るとそこには、今日の式に出席した家族や友人、嫁さんの一族やお偉いさん、俺の村の住人に船のクルーやスタッフ全員が待ち構えていた。
父さんと母さんは、涙流してなんかすごく大はしゃぎだし、お義父さんもお義母さんも感極まって滂沱の涙を流している。
でもこれ、結婚式の嬉し涙じゃね~よな~……。
みんな頭上の冥王星を見上げて俺達の方は見てね~し……あれは、どう見ても上向いて涙堪えてるって顔じゃね~と思ってるのは俺だけじゃネ~だろうな、絶対!
[アテンション・プリーズ。本船は、この良き日、13時に地球を出発して現在冥王星軌道に到着いたしました。マスターの結婚式は、先程滞りなく終了し、現在時刻は14時です。これより本船は、予定通り太陽系の各惑星をめぐりながら地球軌道へと帰還いたします。到着は、日本時間で4時間後、18時の予定で御座います。主役も揃いましたので引き続き披露宴を執り行います。御出席の方々もご緩りとお楽しみください]
船の管制からのアナウンスが響いた。
給仕用のメイドが、忙しなく広場を動き回っている。
そう、ここは巨大な空間を持つ宇宙船の中だ。
宇宙が良く見える様に、空がそのまま外界を映していて、オープンテラス風の会場にしてある。
現在この宇宙船は、完全な無人制御で飛んでいる……。
無人制御って言うよりもこの宇宙船そのものが生きていると言ってもいいだろう。
そう、この宇宙船はオーガンシップという訳だ。
自らの自我を持ち、自分で成長し進化する夢の宇宙船……。
さあ、俺はこの宇宙船でどこまで行けるのだろう……。